大理石状のマーブルガラスに、まるで化石化したような蜻蛉がとまる。背後には魂が抜け出ていくのか、蜻蛉の影が内包される。この杯は、晩年白血病を患い、死期を予感したガレがデザインし、友人や親戚に贈ったものといわれる。背面には蜻蛉をかたどった「G」で始まるサインが彫られている。蜻蛉は繰り返し使用され、ガレ自らを象徴するモティーフとなった。染み入るような孤独感の表れに、ガラスの中で永遠に生き続けたいというガレの想いが感じられるようである。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)