ガレは特に1880年代から、作品のテーマに沿って、あるいは着想源として、文学者が綴つづった印象的な一節を作品に刻み込み、装飾と形の世界に見る者の心を揺さぶる旋律を与えた。こうした作品は「もの言うガラス」と呼ばれ、象徴性豊なガレの世界観をより一層深めていった。酒瓶である本作は葡萄が装飾となり、胴部にはボードレールの詩「毒」から、葡萄酒がもたらす酩酊を賛美する一節が刻まれる。機能と装飾、詩文がまさに一体となった逸品。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)