1450年頃、無色透明ガラス「クリスタッロ」が開発されたことを契機に、ヴェネチアン・グラスの興隆が始まった。この無色透明ガラスと、磁器を模した乳白ガラス素地「ラッティモ」が織り成すレースグラスは、16世紀初頭に発展し、その繊細優美なたたずまいが各国の王侯貴族を魅了した。ヴェネチアン・グラスの顔の一つとも言えよう。二種類のレース文様が交互に配置された本作は、洗練されたフォルムもまた優雅な美しさを湛えている。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)