ふうぞく さんじゅうにそう しなやかそう てんぽう ねんかん けいせい の ふうぞく
《風俗三十二相》は様々な年齢や職業の女性たちの感情やしぐさを半身像で表わした全32枚のシリーズ。寛政年間(1789~1801)から安政年間(1854~60)、および明治年間の女性たちを描いており、それぞれの作品に、取り上げている時代と女性たちの身分を説明する題名が付けられる。時代に合った髪型、服装、風俗が正確に描き分けられており、芳年の研究熱心な一面がうかがえる、晩年の美人画の代表作である。 No.118(《風俗三十二相 しなやかそう 天保年間傾城之風俗》)は天保年間(1830~44)の吉原の風俗で、華やかな衣装に身を包んだ花魁の姿を捉えている。蝶が羽を開いたように見える髷は横兵庫と呼ばれ、何本もの簪や笄、櫛を挿して華やかに飾り立てるのがこの時代の高級遊女の特徴であった。遊女は当時のファッションリーダーであり、女性たちはその衣装や髪型、メイクをお手本とした。本作の白い襦袢の襟には空摺が施されており、細部まで凝った摺となっている。 No.119(《風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間妻君之風俗》)は明治年間の既婚女性の姿で、西洋風の服を着て、花菖蒲の咲く庭を歩いている。帽子にはバラの花、髪には赤いリボン、青いリボンとボタンの付いた襟付きドレス、洋傘という最新のファッションであるが、このような洋装は当時まだ珍しく、一部の上流階級の女性たちのみに許された贅沢であった。せっかく着飾っているので、早く外に散歩に出て人々に見せびらかしたいらしい。菖蒲の花弁の筋は空摺になっており、背景に立体感が生まれている。(『リニューアル・オープン記念展Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY』、サントリー美術館、2020年)
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