たがしゃ さんけいまんだら
中世末から近世初頭にかけて、社寺参詣曼荼羅(以下、参詣曼荼羅)と呼ばれる大画面の宗教的な案内絵図が数多く制作された。これらは縁起的図像を内包し、参詣人で賑わう社寺の景観を描いたものであり、社寺への参詣を誘致するため、あるいは参詣を疑似体験させるために、各地に折って持ち運び絵解きに使用されたものと考えられている。滋賀県犬上郡多賀町に鎮座する多賀社(昭和22年に「多賀大社」に改称)を描く参詣曼荼羅は、現状二曲一隻屛風の本作(以下、サントリー本)の他にも、多賀大社が所蔵する二本が確認されている。なかでもサントリー本は、画面右上の多賀社本殿が大きく表されており、他の二本には見られない本殿斎庭の湯立神事の様子も詳しく描かれている。一方で、画面左下隅の大鳥居から、聖域の境界にあたる御手洗川(画面右下から左上へ斜め上に流れる)までの参詣路描写が詳細さに欠けており、サントリー本は、多賀社までの参詣ルートを案内するというよりも、むしろ、まるですでに参詣したかのように多賀社境内のなかを詳しく説明することに主眼を置き制作されたものと想定される。(『水―神秘のかたち』サントリー美術館、2015年)
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