どうじょうじ えんぎ えまき
熊野詣の秀麗な僧に恋慕し蛇身と化した女と、道成寺の釣鐘内で焼き殺され大蛇に転生した僧は、夫婦の契りを結び、やがて寺僧の供養で天人として生まれ変わる。安珍、清姫の物語として著名な道成寺の縁起を描いたもので、数多くの異本があり、謡曲「道成寺」などの作品も生まれた。道成寺本は巻末で法華経の尊重と熊野信仰を勧め、縁起的性格を強調しているが、同材による「賢学草子」「日高川草子」と呼ばれる系統の作品群では、宗教性がやや稀薄化している反面、説話的な面白さが加わり、より御伽草子化している。絵と詞を入れ込みにして、人物を大きめに描くなど、正統的な画系とは別の、稚拙ながら自由な表現が見られ、鮮やかな色使いによって、女性の変化の凄まじい迫力を出している反面、どこかユーモラスな趣も生み出すなど、御伽草子的な特色が顕著である。(『絵巻小宇宙―絵の中に生きる人々―』、サントリー美術館、2000年)
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