こあつもり えまき
若くして一の谷の合戦に散った平家の公達・敦盛の遺児(小敦盛)を主人公とする物語。敦盛の悲話は「平家物語」などにより広く親しまれているが、本作はその後日談ともいうべきもので、母との巡り合い、そして亡き父への強い思慕により、ついには出家するまでを描いた遁世物の一つ。謡曲「生田敦盛」と同材であり、室町時代の作と考えられる。さらに小敦盛を拾って育てる法然上人の登場により、高僧伝説の要素も窺われる。本作品は詞と絵を交互に配する段落形式により成るが、画面の幅の長短が一定でなく、描写も大和絵特有の伝統的様式を継承しつつ、柔和な筆つかいによる人物の描写には人形のような可憐さを宿した稚拙なところがみられる。御伽草子絵巻成立への兆しが窺われる作品である。小敦盛絵巻には、書写年代の古い伝本が多数現存するが、本作品は慶応義塾大学図書館本と絵の構図が全く一致をみせ、御伽文庫二十三篇中の作品とは内容や詞書も異なっている。(『絵巻小宇宙―絵の中に生きる人々―』、サントリー美術館、2000年)
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