かいひん まつ さくら まきえ すずりばこ
長方形、被蓋造で、見込中央に硯と菊座つき円形水滴を置き、両側に懸子を納める。蓋表には、浜辺と松と桜の生える洲浜に波が打ち寄せる様を描く。浜辺や洲浜には海松貝が散り、潮汲みの桶や塩を焼く塩屋も描かれる。閉じたり開いたりした巻物が、波間に漂う様は不思議であるが、何か物語や詩歌が隠されているのかも知れない。波は青海波を片寄せた形を主体に、紡錘形の渦巻きや波状線も交えて独特のリズムある空間を作る。蓋裏にも流水に桜と巻物、懸子の見込には桜の折枝を描く。総体黒漆地に文様は研出蒔絵で表す。(『水と生きる』サントリー美術館、2007年)
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