くさばな ちょうじゅう らでん まきえ さめがわばり びつ
大型の洋櫃。黒漆地に金銀の平蒔絵と螺鈿で片輪車や七宝繋文などの幾何学文様で縁取る。その内に螺鈿によって窓枠を設け、窓枠内に同じく金銀平蒔絵と螺鈿で草木や鳥獣を描き、外の空間には鮫皮を貼っている。鮫皮は、実はエイの皮で、漆を塗って研ぎ出すため、白い小さな斑点模様ができ、高い装飾効果が得られる。鮫皮貼りは、南蛮漆器の中では比較的後になって登場したもので、オランダ東インド会社の貿易記録には1634年頃から1640年代中頃にかけて漆器の注文リストに頻出するようになるという。実際、1614年の禁教令まではよく造られたイエズス会の紋章を付すキリスト教の祭儀具には見られない。窓枠内には、金平蒔絵と絵梨地、螺鈿によって、楼閣、人物、草木、鳥、虎を描き、背面の窓枠には葛の蔓草文を描き、内部は黒漆塗りとした上で、蓋裏に金銀平蒔絵と絵梨地によって桐と鳥を描いている。蓋を留める金具には、有翼の人物がかたどられ、四方の金具や蝶番にもやや見慣れない植物文が刻まれる。(『南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屛風の謎』、サントリー美術館ほか、2011年)
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