サントリーウイスキー蒸溜所便り

閉じる

山崎蒸溜所便り

【山崎蒸溜所】樽の違いによる多彩な原酒づくり

2025年8月29日

こんにちは、水野めぐみです。
夏の陽射しが強まり、緑が一層鮮やかに映える季節となりましたが、皆さんは、いかがお過ごしでしょうか。


山崎蒸溜所でも、木々の葉が太陽の光を受けてキラキラと輝き、心地よい風が吹き抜けています。このような季節には、きりっと冷えたハイボールやミストの冷涼感とともに、ウイスキーづくりの工程に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


2508_yd_001.jpg

形や材質の異なる6つの樽


長いウイスキーの製造工程の中で、皆さんのお気に入りはどの工程でしょうか。私が特に魅了されるのは、熟成の工程です。

熟成を静かに進める樽が並ぶ貯蔵庫は、荘厳な雰囲気に包まれています。山崎蒸溜所では、多彩な原酒のつくりわけをするために、主に6種類の樽を使用しています。つくり手は、材質や大きさ、形状の異なる樽を使い分けて、狙った味わいの原酒づくりを追求しています。樽の大きさ、材質、前歴などによって、色や香り、味わいなど、原酒に独特の個性が生まれます。

そこで今回は、見学ツアーではお伝えしきれない、一つひとつの樽の個性についてじっくりとご紹介します。


2508_yd_002.jpg

左:パンチョン樽、中央:ホッグスヘッド樽、右:バーレル樽


まずは、アメリカ産ホワイトオークのパンチョン樽です。
ウイスキーの原酒は、貯蔵する樽の大きさによっても個性が変化します。樽が大きければ大きいほど、原酒全体の樽に触れる表面積が小さくなるので、熟成がゆっくりと進みます。そのため、一番大きなパンチョン樽は長期熟成に向いており、しっかりとした樽香の原酒をつくることができます。


ホッグスヘッド樽は、バーレルを解体して、一回り大きく組み直した樽です。豚一頭の重さと同じことから「HOGSHEAD(豚の頭)」と呼ばれています。白州蒸溜所でもよく使用している樽で、穏やかな樽香が特長です。


バーレル樽は比較的に小さいため、熟成が早く進むのが特長です。こちらは、アメリカでバーボン樽として利用したものを再利用しているため、内面が強く焼かれていて、バニラのような甘い樽香の原酒を育みます。


2508_yd_003.jpg

ミズナラ樽


ウイスキー樽は丈夫なオーク材でつくられています。オークは主に落葉樹であるナラ(楢)の総称で、日本産ミズナラ、アメリカ産ホワイトオーク、ヨーロッパ産スパニッシュオークなど、種類や産地も、でき上がる原酒に大きな違いが生まれます。


こちらは、ミズナラ樽です。ミズナラは日本産のナラの一種で、水分を多く含み燃えにくいくい性質があることから、その名が付けられました。ミズナラ樽で熟成した原酒は、独特の香味を生み、国際的にも高く評価されています。ミズナラの歴史もとても面白いので、ご興味がある方はぜひ以下の記事も併せてご覧ください。


「国産ミズナラ樽の誕生」の記事はこちら

2508_yd_004.jpg

左:ワイン樽、右:スパニッシュオーク樽


最後は、ワイン樽とスパニッシュオーク樽です。
ワイン樽は、名前の通りワインの熟成に使用されていた樽で、この樽で熟成することでワイン特有のフルーティで甘酸っぱい香味が生まれます。

スパニッシュオーク樽は、かつてシェリー酒を熟成させていた樽で、シェリー樽ならではの強く赤みがかった色と、深みのある独特の熟成香が生まれます。さらに、ドライフルーツのような凝縮された甘みも感じられるので、私のお気に入りのウイスキー原酒のひとつです。

このように樽の前歴によっても、でき上がるウイスキー原酒に個性が生まれるのです。

2508_yd_005.jpg

モルト原酒が並ぶ「ボトルライブラリー」


樽によって生まれた多彩な個性の原酒をブレンダーがバランスよくブレンドすることで、繊細な香りと味わいをもつウイスキーに仕上がります。

また、今回ご紹介した条件だけではなく、同じ貯蔵庫内でも場所によって気温や湿度が異なるため、上段に置くか、下段に置くか、入口の近くに置くか、遠くに置くかといった貯蔵環境の違いによっても、香りや味わいに少しずつ違いが生まれます。


目指すべきべきウイスキーをつくるために、様々な環境変化を見極めながら、つくり手たちは原酒づくりに取り組みます。長いものでは、熟成に60年以上もの期間がかかるウイスキー原酒。シングルモルトウイスキー「山崎」は、つくり手たちが代々受け継ぐ技術と情熱があってこそ完成するのです。


2508_yd_006.jpg

ショップスタッフおすすめの「樽材コースター」


熟成という重要な役割を終えた後、つくり手たちの想いが詰まった樽は、サントリー「樽ものがたり」というプロジェクトによって、家具やグッズに生まれ変わります。ウイスキーづくりに欠かせない樽の一生の物語を、身近に感じていただくことができますので、山崎蒸溜所ギフトショップや樽ものがたりオンラインショップで、ぜひ商品をご覧ください。


「サントリー樽ものがたり」のサイトはこちら


今回は山崎蒸溜所の原酒のつくりわけに欠かせない樽の違いについてご紹介しました。
樽によって生まれる原酒の個性が、ウイスキーの魅力に結びついていることを感じていただけましたでしょうか。ツアー抽選倍率いまだ高いため、「山崎蒸溜所のテイスティングカウンター(有料)では、「山崎12年」のパンチョン樽原酒、スパニッシュオーク樽原酒、ミズナラ樽原酒をご試飲いただけます。ご来場の際は、樽による原酒の個性をぜひお愉しみください。


※ご来場には事前予約が必要です。詳細は山崎蒸溜所ホームページでご確認いただき、予約のうえご来場ください。


山崎蒸溜所のホームページはこちら



★アンケートはこちらから

最後までお答えいただいた方には、オリジナル壁紙をプレゼント!

山崎蒸溜所便り 最新記事