2026年8月28日
#1031 竹内 柊平 『もっとチームになる』
エモーショナルな選手と自己評価する竹内選手。自らとチームの成長に向けて、エモーショナルな熱いトークが繰り広げられました。(取材日:2026年7月下旬)

◆一貫して出せるか
――全試合に出場した2025-26シーズンの手応えは?
良いシーズンを過ごさせてもらいました。前のシーズンはあまりプレータイムを得られなかった中で、サンゴリアスでプレータイムを与えてもらえることは普通のことではないですし、自分にとってとても実りのあるシーズンでした。
――求めていたことが実現したということですね?
はい、めちゃくちゃ嬉しいです。こういうコンペティションを求めてこのチームに来たので、たくさん良い3番がいる中でこのように試合に出ることが出来ました。ただ優勝には届かなかったという現実があるので、そこは次のシーズンへの課題だと思っています。
――3番でプレーするようになってどのくらいですか?
まだ5年くらいですね。
――今の時点で、3番をかなり自分のものにしたと思いますか?
いや、まだまだわかっていないと思います。まだ自分の形に持って行かないとスクラムが組めていないですし、僕が求めているのはNo.1の3番です。誰がどの観点から見ても、「やっぱり竹内がいちばんだな」と思える3番には、まだほど遠いと思っています。
――どういう観点で見て、まだまだと思うんですか?
やっぱり、一貫性じゃないですかね。客観的に自分を見ると、面白い選手だとは思います(笑)。感情が豊かですし。ただラインブレイクをコンスタントに出せて勝利に貢献できているのか、タイトな相手に対してもラインブレイク出来ていたかと言われると、そうではないと思います。さらに勝敗に関わるようなプレーをしたかと言われるとそうでもないですし、自分が良い時のパフォーマンスを一貫して出せるかという部分が、まだ達していないと思っています。

◆エモーショナルな一喜一憂しちゃう選手
――一貫してパフォーマンスを出すためには何が必要だと思いますか?
とてもエモーショナルな選手なので、まず感情面を落ち着かせることが大事だと思っています。僕の場合、喜怒哀楽の"喜"と"怒"と"哀"の割合がとてもあって、ひとプレーひとプレーで一喜一憂しちゃうような選手なので、その部分ですね。前のプレーで良かった、悪かったと思って次のプレーに影響しちゃうことがあります。例えばスクラムでも、「ヤバい、しっかりしないと」って思っちゃいますね。自分としては、3番としての適応能力がまだ低いのだと思います。
――浮き沈みが激しいということですね?
そうですね。自分の中で、その部分は身体能力や技術ではないと思っています。パワーの部分は誰よりもトレーニングをしていて負けないと思っていますし、技術面でも誰よりもスクラムを見ていると思っています。僕が思うのは感情の部分で振り返ってみると、自分が良いパフォーマンスを出せた時は良いマインドセットで臨めている時です。良い緊張感で試合に入って、試合中も楽しんでラグビーをしていて、例えミスをしたとしても「次でやってやるぜ」みたいに切り替えられます。
でもそこは面白いところで、毎回そのマインドセットにはならないんです。同じ準備をして、同じプロセスでやっているつもりでも、試合によって感情の起伏が毎回違っているんです。そこに一貫性が出せたら、プレーにも一貫性が出ると思うので、代表期間でもそういうことを日々思いながらトレーニングをしています。

――日本代表でも一貫性の部分は課題になっているんですか?
自分でそう思っていたら、エディー(ジョーンズ ヘッドコーチ)もそう言っていたので、自分の見方が合っていたとは思いました。
――自分の良さを残しながらどう解決していこうと思っていますか?
頭の中でいろいろと組み立てなければいけないと思っていて、そういうところはラグビーだけではなく生活面すべてが関わってくると思っているので、自分をしっかりと理解するところからだと思っています。
――それは今どれくらい出来ていると思いますか?
自分をわかっているようでわかっていないので、50%くらいですかね。
――それを何%にしたいですか?
100%に行きたいですね。自分では大人であるつもりでも、まだ子どもみたいなところがありますし、実はその子どもの部分が良かったりすることもあります。子どもの心を大人の心が飲み込む瞬間が、ゾーンなのかなと思います。

◆ひとつ奥で考えられる
――ゾーンに入った状態とは、どんな状態ですか?
ひとつ奥で考えられると言うか、何かをまとっているような、フワッとしているけれど地に足がついているような感じですね。何か違うんですよね。
――そうなると、パフォーマンスとしてはどう違ってきますか?
全てにおいて、ちゃんと考えたことが出来るようになります。いつもそれが出来れば良いのに、と思いますね(笑)。本当に考えたことが出来るようになって、「ここでこうすれば、こうなる」みたいな。それに相手もあまり来なくなります。
――その頻度はどのくらいですか?
1年に2回くらいです。過緊張する試合でゾーンに入ることがあって、試合前に「ここでミスしたらどうしよう」という感情になったことがあります。2025-26シーズンで言うと、それはブルーレヴズ戦です。2024-25シーズンの時に日本代表でめちゃくちゃ自信をつけて帰ってきて、1戦目のダイナボアーズ戦はスクラムでめちゃくちゃ押して、ペナルティーを取りまくったんです。それで臨んだ2戦目のブルーレヴズ戦でしたが、スクラムをぜんぶ押されて、前半で替えられました。そういう経緯があって臨んだ2025-26シーズンのブルーレヴズ戦だったので、めちゃくちゃ緊張していました。2025年のオーストラリア代表戦でも、ゾーンに入っていたと思います。

――オーストラリア代表戦ではなぜゾーンに?
めちゃくちゃ強かったですし、国立競技場での試合でしたし、対面の選手も世界的に有名な選手で「押されたらどうしよう」って思っていました。自信を持って臨む試合よりも、ビビッて臨む試合の方が、良いパフォーマンスが出せるかもしれません。
――100%に達するためには、毎試合で緊張すれば良いと思いますか?
緊張は絶対にしなければいけないと思います。
――逆に緊張をしない時はどういう時ですか?
自信があって、「行ける、行ける」って思っている時ですね。自信がある時は緊張もあまりせず、パフォーマンスも良くないかもしれません。

◆謎の自信
――ポジティブな性格は、もともとですか?
小さい頃からポジティブでしたね。宮崎での育ち方が良かったんだと思います。「何でも出来る」と思っていましたね。出来ていないのに、何でも出来るという自信が小さい頃からずっとありました(笑)。
――なぜそう思えていたのでしょうか?
周りに恵まれていたと思います。褒められて育ちましたし、途中からは褒められなくても、何でも出来る気になっていました。
――逆に周りの人が、例えば自分が親だとしたら、心配になりませんか?
心配になりますよ。何度も挫折しましたが、なぜかそこで折れずに、謎の自信がずっとありました。
――その自信が今の自分を作っているんですよね
そうなんですよ。面白いですよね。
――自分には出来ると思えたのは、続けていると出来たからですか?
出来ていなかったんですけれど、出来るという自信がありました。中学の時は僕だけ県選抜に選ばれなかったんですけれど、それでも自分は出来るとずっと思っていましたね。
◆チームワークやコネクション
――2025-26シーズン、準決勝までは進んだことについてはどうですか?
初めてのプレーオフでしたし、正直、よくわからないまま進みましたね。初めて過ぎて、緊張もしましたが、地に足がついていない感じはありました。対戦したことがある相手でしたが、プレーオフは難しいんだなと感じました。
――その経験は自分の財産になりましたか?
めちゃくちゃなりました。なかなか経験できないことですし、少なくとも僕は経験したことがないことでしたし、めちゃくちゃ良い経験でした。
――更にその先に行くためには何が大切だと思いますか?
もっとチームになる必要がある、と感じました。僕個人もそうですけれど、移籍1年目でちょっと遠慮してしまった部分がありましたし、もっとメンバーやノンメンバー含め、言い方が難しいですが全員が正直である必要があると思います。僕も思ったことを口に出せない時がありましたし、このチームのカルチャーを尊重していましたし、喧嘩しても良いからもっと正直になった方が良かったかなと思います。
――どこかで遠慮してしまっていたということですか?
例えばですけれど、コミュニケーションの部分も含めて、アスリートとしての生活はこのくらいでいいだろうと思ってしまっていた部分があったんじゃないかなと思います。もちろん負けていい試合なんてないんですけれど、2025-26シーズンではイレギュラーなこともありましたし、どこがということは難しいんですけれど、勝ちを知っている集団で、もっと出来るのにって思います。
ファイナルとかでは持っているもの以上のものが出ると思うんですが、自分が持っているもの以上が出る時は、チームワークやコネクションが影響すると思います。やっぱり上位3チームとは、コネクションの部分が違うように感じました。上位チームは、プランに対する遂行力に関して執念に近いものがあると思います。
――準々決勝のラストワンプレーで見せたようなラグビーを、常にしなければいけないということですか?
そうですね。あれはまさにサンゴリアスだったと思います。正直にならなければいけないという話をしましたが、それは選手もコーチもマネジメントも全員だと思っていて、自分も正直にならないといけないと思いました。自分の中にも満足してしまっている部分があったと思います。
◆勝つプロップ、考えるプロップ
――選手としては何を乗り越えなければいけないと思いますか?
もっと周りと正直にぶつかった方が良いと思います。今はみんながそれぞれのやり方で頑張っているんですよ。それはさすがトップアスリートが集まっているチームだと思いますし、同じ方向を向いていないわけでもないんですよ。
僕の場合はリーダーシップを発揮しようとすると、自分のパフォーマンスが下がってしまうような選手なので、あまり前に出ないようにはしているんですけれど(笑)、若いチームリーダーたちのサポートをしようと思っています。更にもっと若い選手たちを引っ張って良ければ、もっと面白いチームになるんじゃないかなと思っています。
――次のシーズンに向けた目標は何ですか?
優勝です。個人としてはチームに徹して、勝つプロップになることです。
――それはひとつひとつのプレーで勝つということですか?
そうですね。目の前のコンペティションに勝つことです。ベスト15に選ばれるプロップと勝つプロップは違うと思っていて、しっかりと役割を遂行した上で、次の仕事を考えて動く。考えるプロップですかね。サンゴリアスのラグビーは、考えていないと出来ないラグビーなんです。チームの戦術がある中で、細かいディシジョンが行われるスポーツなので、考えるプロップになりたいですね。考えまくるというよりも、的確な判断が出来るプロップになりたいということです。
――的確な判断はどうやって得ていくんですか?
経験と言えば経験ですが、まずはしっかりとラグビーを理解すること。そして自分たちが何をしたいかを誰よりも理解しなければいけません。アグレッシブ・アタッキング・ラグビーとは?サンゴリアスのアタックとは?それを誰よりも理解して、そこにずれがないようにチームメイトと話さなければいけないと思います。
――最初に言っていた一貫性を得るためには何をしなければいけませんか?
マインドを整えることです。そこは戦術理解にも繋がります。チームとしてやらなくていいことをしてしまうとパフォーマンスに直結するので、本当に誰よりも戦術を理解しなければいけないんです。
◆ラグビーって頭のスポーツ
――日本代表としての目標は?
世界一の3番を目指しています。
――世界一の3番に向けて、いま足りない部分はどこですか?
それも一貫性です。より高いスタンダードを出し続けることですね。年齢的にも僕に求められているところはそこなので、そこをやっていきます。
――フィジカルやメンタル面での一貫性をキープするには?
僕の場合、フィジカルが負けているかと言われると、負けていないと思いますし、アホみたいにトレーニングしたおかげで、フィジカリティーのところは良いスタンダードがあると思います。そこは世界各国の3番を見ても、トップレベルにあると思います。ただ、それを適材適所で出せているかと言われると、まだ違う部分があると思っています。ここで出さなければいけないという場面で出せてない時もありますし、この場面は出すところでないという場面で出してしまっている時もあります。
インターナショナルレベルに近づくためには、どれだけ頭が良いかだと思っています。だから流さんは世界的なスクラムハーフになれたんだと思いますし、だから直人(齋藤)も世界で通用しているんだと思います。流さんや亮土さん(中村)、マツさん(松島幸太朗)がフィジカルが素晴らしいのかと言われると、世界的にはそこまで素晴らしいわけではないですよね。それでも日本代表として世界各国の選手を倒せたり、大きな選手を翻弄したりできるわけですよ。だから、本当に頭と心が大事だと思います。
そこの乖離、年齢とともにフィジカルが衰えていって、頭の部分と乖離していくわけですよね。ラグビーってやればやるほど、頭のスポーツだと思いますね。
――頭の部分はどうやって鍛えるんですか?
まずは自分のことを、誰よりもわかることです。だから、僕もまだ50%なんですよ。だからまだワールドクラスじゃないと思っています。そこがもっと理解できて、もっと言うと身体の構造もわかっていなければいけないと思います。もっと深掘りしていかなければいけないと思います。
――将来、コーチになったら良いコーチになりそうですね
本当ですか(笑)。コーチングも好きです。最終的には先生になりたいと思っていますし、今は筑波大学でもスクラムコーチをやっています。
――コーチングの効果は出ていますか?
出ます。楽しいですよ。それによって自分の知識も増えます。
――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします
いつも熱い応援ありがとうございます。2025-26シーズンも皆さんの応援が力になりました。僕たちの実力はこんなものではないですし、次のシーズンではもっと面白いラグビーが見せられるように、今から考えて準備しているので、引き続き熱い応援をよろしくお願いします。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]