SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2026年9月11日

#1033 小林 賢太 『プレーに一貫性がないんだったらちゃんと良くしていく』

順調に成長を続ける小林賢太選手。サンゴリアスを代表する選手として、様々な場面での活躍が期待されます。(取材日:2026年8月上旬)

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◆どう転ぶかは自分の努力次第や運

――レギュラーそして日本代表、サンゴリアスに入った時に自分がイメージしていたペースで成長できていますか?

思い描いていたイメージと同じようにと言うより、それぐらいの意気込みで入ってきた自分と、少しずつマッチする部分は増えてきたかなと思います。すべてが100%の思い通りではありませんが。

――100%の思い通りだったら?

それだったらスーパーだったと思います(笑)。

――歩んできたラグビー人生から、社会人になったらここまで来なければという思いもあったんですか?

サンゴリアスに入る時は、大学までずっと3番をやっていて、1番にチャレンジすることになりました。当時、アオサン(青木佑輔/アシスタントコーチ)が早稲田大学にスポットコーチで来てくれていて、その時に「チャレンジしないか?」と話をもらったんです。その時には、3番で来て欲しいという他のチームからの話もあったり、リーグワンにチャレンジする時に、いきなりポジションチェンジをするのはどうなのか?というところもありました。ただ、やるのであれば、トップのところで自分を試して、それでどう転ぶかは自分の努力次第や運もあると思いました。それがたまたま適応出来て、自分の強みも少しずつ出せてきていると思います。

――3番から1番への変更は大きなチャレンジでしたか?

そうですね。ここで1番と3番の違いを話し始めたら長くなってしまいますが(笑)、ぜんぜん違うポジションになるので、僕の中では博打的なところはあったかなと思います。

――自分の強みはなぜ1番の方が出せるんですか?

シンプルに1番の方が、スクラムでの負担が違います。1番と3番で違った負担はかかりますが、3番だとずっと我慢して組まなければいけない、我慢強く組んで、相手の2人に挟まれてどちらとも戦わなければいけないところがあります。1番は相手の3番とだけ戦えばいいので、バランスが悪いという部分はありますが、その分、脚への負担は少ないと思います。

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◆チャンスがあるのに挑戦しなかったら後悔する

――シンプルに集中できる気持ち良さがあったんですか?

集中も何も、1番をやったことがなかったので、ラグビー界の中では1番の方がスクラムの負担は少ないと言われていますが、やったことのないことをやるということに対する負担はありました。やっぱりなかなか上手く行かない日々が続いて、そこへのストレスはありました。

――それでも青木コーチは1番を薦めたわけですよね?

リクルートしてもらっている時にも、「なぜ1番で取りたいのか」という理由もちゃんと説明してくれました。アオサンが理想とする1番のサイズ感などへの思いがあったようです。僕は大学まで3番しかやったことがなかったのに、「お前は1番をやった方が良いよ」と言ってくれました。他のチームを選んでいてどうなったかはわかりませんが、不安もありながらも、サンゴリアスでラグビーをやりたい気持ちが強くありました。そのチャンスがあるのに、その選択をしなかったら、挑戦をしなかったら、後悔すると思いました。

――もともとはなぜ3番をやっていたんですか?

いや、なんでなんですかね。中学生までは実際にはポジションはなんでも良くて、高校に入ってちゃんとスクラムを組むようになって、高校に入学した時には3番でした。たぶん当時の身体の大きさなどもあったと思います。僕から3番をやりたいと言ったわけではなくて、たまたま3番だったんじゃないかなと思います。

――3番は自分に合っていると思いましたか?

それまでは合っている合っていないが、正直、自分の中にはなくて、高校生の時にボードに1番から15番まで名前が貼ってあって、それで3番のところに名前があったからやったという感じです。

――3番は難しかったですか?

高校生だったので難しさが今と違いますが、それまでスクラムを組んだことがなかったので、そこは難しかったです。

――それを素直に受け止めて3番をやっていたんですね

それで早稲田大学にも3番で入って、大学1年からずっと3番でやっていました。その流れ的に、リーグワンのチームも3番で声をかけてくれるチームがありました。

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◆はめ技

――大学の時は1番を試さなかったんですか?

サンゴリアスに入ることを決めたあと大学の監督に話に行って、1番に挑戦したいということを伝え、3番をやりつつ1番も両方やりました。

――その時の1番の感触はどうでしたか?

「いや、これ無理じゃね?」って(笑)。大学にもスクラムコーチはいて、大学4年の半年間くらいしか1番をやっていませんでしたが、やっぱり3番とは別物だったので、本当にゼロからのスタートでした。

――そこから数えてまだ1番としては4年少々ですよね。今は1番を把握したという感触がありますか?

逆に今から3番は無理です。試そうと思っていないのでわからないですけれど。

――それくらい1番が身体に染み込んでいる感じですか?

1番の組み方でどう相手を攻略するか、フッカーとのコネクションをどうするか、などを考えたりしています。スクラムに関しては、今はそういう考え方しかしていません。

――そうやって、1番に関してはだいぶわかってきたという感じですか?

そうですね。サンゴリアスに入った当初、毎回の練習後にアオサンとミーティングをしたんですが、僕以外の1番の選手にもそれぞれの強みがあって、相手の3番の特徴もあって、その人たちとの違い、どう自分の強みを見つけていくのか、ずっとアオサンと話をしていました。今日の練習ではこれだけにフォーカスして、その練習が終わったらそこだけをレビューして、そこが上手く行ったら、次は上手く行っていない場所をどう良くしていくかということを、繰り返してきました。

スクラムって人それぞれ背丈も違いますし、前の3人の組み合わせが変われば全く変わってくるので、やるべきことはたくさんあります。結局は、はめ技みたいな感じで、自分の足がここにあって、このバランスでバインドが取れたら負けない、押せそう、という感覚が今はあるので、そこにどう持って行くかになります。

――その感覚を掴むまでどれくらい時間がかかりましたか?

まだ模索中なところはあります。

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◆開幕戦に出て多くの試合に出場

――その中でも1年目は半分くらいの試合に出て、その後もほぼ試合に出続けていますね

1年目の時に掲げた目標が、半分以上の試合に出るということでした。その年は全部で20試合あって、ちょうど半分の10試合に出場しました。自分としては、最低ラインの目標は達成できたと思います。

――翌シーズンから飛躍的に出場数が増えましたが、何かきっかけがあったんですか?

1年目は10試合に出場したんですが、最後の方で怪我をしてしまい試合に出られない時があり、8試合分くらい怪我で出られない期間がありました。2年目の目標としては、怪我をしないことと開幕戦に出ることでした。1年目は開幕戦に出た上で10試合以上に出たかったんですが、開幕戦は出られずに達成できず、半分の試合出場は達成したという状況でした。だから2年目は開幕戦に出て大きな怪我をしないという目標にしましたが、開幕戦も出られて大きな怪我をすることもなく、多くの試合に出場できました。

――立てた目標を達成するコツはあるんですか?

1年目が終わった後、2023年にラグビーワールドカップがありました。1年目が終わって、初めて日本代表のスコッドに選んでもらえましたが、ワールドカップのスコッドには選ばれませんでした。そこでもっと成長したい気持ちが強くなって、2年目の目標を立てました。2年目が終わった後は、大きな怪我はしませんでしたが、振り返ると、思ったようなパフォーマンスは出せていなかったなと思いました。

――なぜパフォーマンスが出せていなかったんですか?

怪我はしなかったけれど、連続して試合に出るという経験が少なかったんです。1年目はリザーブから出場したり、先発の時も「やってやるぞ」という気持ちがあって、勢いが良かったと思います。それでシーズンオフに初めて日本代表の合宿などにも呼んでもらえて、1年中ラグビーをやる経験をして、それで2年目のシーズンは少し落ちてしまったと思います。パフォーマンスが上がらない期間があり、リザーブから出場したりしていました。

それで2年目のシーズンが終わった後には日本代表には呼ばれなかったんですが、その期間にどういう理由があれ、シーズンを通してパフォーマンスを出す必要性を感じていました。リカバリーや、どうやったら怪我をせずに良いパフォーマンスを維持できるかを考え、その期間に自分で1ヶ月間オーストラリアにトレーニングに行ったりしました。その期間に、自分と向き合う時間も作ることができたと思います。

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◆オーストラリアでトレーニング

――自分で行ったんですね

そうですね。どこかのチームに入って、めっちゃ試合に出るとかではなく、単純にトレーニングに行きました。夏の日本が暑すぎたということもありますが、オーストラリアで1ヶ月くらいトレーニングしていました。1ヶ月間のうちの最後の約2週間、以前サンゴリアスのS&Cコーチだった吉浦翔がコーチをしてくれたりして、それで3年目のシーズンでは全試合に出場できました。チームとしての結果は良くありませんでしたが、最後までのすべての試合に出ることができて、2025年にようやく日本代表キャップが取れ、それで2025-26シーズンを迎えました。

――なぜオーストラリアに行こうと思ったんですか?

ちょうどその年にプロになって、ちょっと環境を変えて自分を鍛えたいと思ったんです。あと2023年のワールドカップの時に、バックアップでバーバリアンズに参加させてもらいました。そこでオーストラリア代表のバックアップの人たちと一緒になって、仲良くなった選手の家にホームステイさせてもらいました。その選手から「オフシーズンにオーストラリアに来いよ」とも言ってもらっていました。

――オーストラリアでどうこうしようというわけではなく、とりあえず行ってみようと

そうですね。もちろんトレーニングはしましたが、ガツガツにラグビーというよりは、オーストラリアでは試合にも出ていないですし、クラブチームの練習に少し参加したり、トレーニングをしていましたね。

――面白かったですか?

面白かったですね。

――気分的にも変わりましたか?

オーストラリアでは誰も僕のことを知りませんし、そういう真っ新な状態というか、言語も上手く伝わらないし、食事も日本食の方が僕には合っているけれど、そういう環境に適応していかなければいけない状況に身を置いたことによって、順応力、適応力が得られたと思います。いま思えば、行って良かったと思っています。

――オーストラリアのどこですか?

ブリスベンに行きました。サンゴリアスにもブリスベン出身の選手が多くて、そういう選手たちとトレーニングをしたり、元サンゴリアスのブラッドリー・クーンのお母さんが、買ったばかりの新車を1ヶ月間フリーで貸してくれたり、ラグビーをやっていたからこそできた人との繋がりで、サバイバル出来た1ヶ月間でした。

――やはりチャレンジしている人をみんなが応援してくれるんですね

そうですね。あとはそういうところも含めて、運が良かったと思います。

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◆気持ちをリフレッシュ

――そういう経験を経て、2025-26シーズンは更に良くなりましたか?

オフ期間にずっと日本代表に行っていましたが、その前にずっとラグビーをしていてパフォーマンスが落ちるという経験をしていたので、チームのS&Cとも相談をしながら、メンタル面もそうですけれど、どういうリカバリーをしたら良いかということを相談しながらやって、2025-26シーズンはしっかりとパフォーマンスを出しながらプレー出来たと思います。

――メンタル面とはどういうところですか?

ほとんどコンディションと直結するところですけれど、ずっとやっているとシンドイという気持ちとか、終わりのない戦いをしているような感じが出てくるので、そこでどう気持ちをリフレッシュした状態に持って行けるかとか、そういうところも上手く行ったのかなと思います。

――リフレッシュするためにしたことは?

僕が腑に落ちたのは、日本代表のテストマッチの時もそうなんですけれど、5週間やって1~2週間休みがあって、また5週間やるというようなサイクルで、それがずっと続いていて、リーグワンのレギュレーションも5週間連続試合をして1週間休み。同じだったんです。

だからそのサイクルに入ってしまえば、ルーティンになると思ったんです。もちろん身体はキツいですけれど、5週間戦う準備を覚えたら、それをずっとやり続けるだけだと聞いて、なるほどと思いましたし、頭の切り替えもやりやすいと思いました。上手く行っていない時に、何が上手く行っていないのかが明確になると思います。

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◆ぜんぜん自分に満足していない

――今の課題は何ですか?

いちばんは、一貫性あるパフォーマンスを出すことですね。

――それはなぜですか?

リーグワンのレベル自体がどんどん上がっていますし、その中で少しの綻びがあると大きな失点に繋がったり、チームとしてのミスに繋がったりします。もちろん精度高くやっていくことも大事ですし、そういうところで一貫性が大事だと思います。

――その一貫性を保つためには何が大事になりますか?

練習だと思います。練習でやったことしか試合では出せないので、それはチームのトレーニングだけじゃなくて、例えば練習でミスした時に全体練習後にそこを個人練習したり、その日に解決できることだけじゃないですけれど、そのプレーに一貫性がないんだったら、ちゃんと良くしていくことが選手としての責任だと思います。

――今はある程度は出来ているけれど、もっと高くしていきたいということですか?

もっとですね。ぜんぜん自分のパフォーマンスに満足していないので、まだまだやらなければいけないことがあると思います。スクラムもそうですし、ボールキャリー、タックル、これが完璧というプレーはないので、毎日の練習で自分の課題を見つけて、そこを良くしていく。自分が上手くなるために、やらなければいけないと思います。

――そこが楽しさになっていますか?

楽しいというか、それが自分の仕事で、責任があるところだと思っています。

――今はどこにラグビーの面白さを感じていますか?

今はフロントローはスクラムを組んでおけばいいという時代じゃないですし、グラウンドに立つ15人全員が何でも出来なければいけないというわけではありませんが、与えられる役割があります。それが僕にとってはプロップというポジションで、その中で与えられた役割を果たしていき、その先に勝利や結果がついてきます。そこに面白さを感じています。

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――次のシーズンの目標は?

個人としては全試合に出場して、チームの勝利にしっかりと貢献することです。そのためには毎試合で、自分のパフォーマンスを100%出すための準備をし続けることが必要だと思います。チームとしての目標は優勝することなので、そのためにひとりひとりが準備して、成長して、100%やり続けることが大事だと思っています。

――日本代表に関しては?

シーズンの最後に怪我をして、日本代表のツアーに参加できていない期間が続いているので、しっかりと治して100%でプレー出来る状態に持って行きたいと思います。その先の選考についてはコントロール出来ないことなので、自分が出来ることをやるだけかなと。

――将来的にはどこまでやり遂げたいですか?

2027年にワールドカップがあるので、ラグビーをやっている選手は誰しもが憧れる舞台ですし、やっている限りは目指さなければいけないところだと思います。まずはそこですかね。その先がというよりは、今の自分の目標のスパンの中では、来年のワールドカップがひとつの大きなポイントかなと思います。

――ワールドカップで1番ですね?

はい。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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