2026年9月25日
#1035 福島 秀法 『愚直な、地味な突破、身体を張ったプレー』
新人センターの福島選手。ちょっととぼけたコメントが、プレーへの興味を煽ります。(取材日:2026年7月下旬)
◆いろいろな価値観
――下川選手と高校(修猷館)、大学(早稲田)が、出身地も一緒ですね
そうです。地元も目と鼻の先くらいです。兄が甲嗣さん(下川)のひとつ下で、高校時代は甲嗣さんと兄が一緒にプレーしていました。それを見ていて、修猷館に行きたいと思いました。特に甲嗣さんを意識していたつもりはないんですが、意識していたんですかね(笑)。
――ラグビーを始めたこともお兄さんの影響ですか?
ラグビーを始めたのは父親の影響です。兄と僕は一緒に始めました。父親は高校からラグビーを始めて、僕は小さい頃に元気があり過ぎて暇をしていたので、ラグビーのグラウンドに連れて行ってくれました。
――修猷館高校はどうでしたか?
ラグビー以外のことも多く学べたので、楽しかったですし、行って良かったと思っています。いちばんは高校からラグビーを始める仲間も多かったですし、ラグビーだけじゃなく、勉強や学校行事、部活動もそうですが、いろいろな方面に頑張る友だちが多かったので、僕もその方が素晴らしいという価値観があって、いろいろな価値観を学べました。
――ラグビーだけじゃなくというところで印象に残っていることは?
周りのみんなが普段からとても勉強をするんです。ゆくゆくは東京大学を受験するという友だちも多くいました。普段はそういう環境なんですけれど、運動会などの学校行事の時期になると、勉強はそっちのけで夜通し運動会の準備などをして、それが終わると「運動会楽しかったね」とか会話しますけど、またとても勉強をする状態に戻ります。そこがとても印象的でした。
◆いろいろとやってみたい
――何歳からラグビーを始めたんですか?
僕は小学1年から始めました。片江ジュニアラグビースクールという、元九州電力ラグビー部の方が監督をしているスクールです。
――小1から始めて、どのタイミングでラグビーを続けようと思いましたか?
それは大学4年頃のサンゴリアスに行くことが決まったタイミングで、「ラグビーをやらなあかんな」と(笑)。
――ラグビーをやらなければ別の道もあったんですか?
僕は就職活動もしていて、商社に行きたいと思っていました。今でも海外で仕事をすることがカッコいいと思っているので、英語の勉強などもしていました。今はちょっとサボっているんですけれど(笑)。
――大学4年の時にサンゴリアスに来ることが決まったということは、日本代表に呼ばれた後に決まったということですよね?
そうですね。日本代表に呼ばれた時は、まだ迷っていました。なんならラグビーを続けない気持ちの方が大きかったと思います。
――日本代表に呼ばれるほどの力があるのに、なぜラグビーを辞めようと思っていたんですか?
僕の中でラグビーは軸ではありますが、全てではないという考えがあります。ラグビー以外もいろいろとやってみたいですし、ラグビーだけでやっていくことも性に合わないというか。
――サンゴリアスの選手は仕事もラグビーもどちらもやりますよね
だから、会社でもいろいろな機会があり楽しいですね。
◆絞るしかない
――そういう考えがありながら、小学1年生でラグビーを始めてこれまで続けられたのはなぜだと思いますか?
身体を動かすことが好きで、ラグビー自体が僕に合っていたと思います。ラグビーが得意でしたし、ラグビーの仲間が好きだったので、いまラグビーを辞めるとなると、そういう仲間にも会う機会が減ると思うので、そう考えると寂しいですね。
――他のスポーツはやりましたか?
ラグビーを始める前に、水泳を1年くらいやったくらいだと思います。
――ラグビー選手になるために意識したことは食事制限だそうですが、それはなぜですか?
大学3年くらいまでは食事制限をしたことがありませんでした。お酒も好きですし脂っこい食事も好きなので、太りやすいんです(笑)。ラグビーをやっていなければ、もっと太っていたと思います。
――それでも身体の自信のあるパーツはお腹だそうですね?
いや、そこはノリというか、たるんでいます(笑)。
――これから身体を絞っていきますか?
もう、絞るしかないですね。
◆ラグビー漬けの生活
――いろいろなことに興味があるのは昔からですか?
それを学校で学びましたし、これだけ頑張っているという人ではなく、いろいろなことを頑張っている人が周りに多かったですね。
――ご家族も?
兄もラグビーを頑張りつつ、医学部に行って医者になりました。姉もいるんですが、姉はスポーツではありませんが、勉強をしながら百人一首やアナウンスで頑張っていました。
――そのお姉さんが英才教育を施されたという記事を読みました
姉が早稲田大学に通っていて僕が高校生の時に、食事などいろいろと連れて行ってくれたんですが、早稲田のラグビーの試合のチケットを用意してくれて連れて行ってくれたり、早稲田大学のキャンパスにも連れて行ってくれました。姉は同じ大学に入って欲しかったみたいで、「早稲田、良いでしょ?」って。
――お姉さんに導かれて早稲田大学に入ったんですね
そうですね。家族としても「もう早稲田でしょ」という感じでした(笑)。
――早稲田大学では修猷館高校とはまた違った発見がありましたか?
そうですね。高校までとは違い、大学ではラグビー漬けの生活で、学部はスポーツ科学部だったんですけれど、そこでは様々なスポーツのトップ選手の友だちがたくさん出来て、とても楽しかったですね。
――スポーツ科学の分野で興味を持ったことはありましたか?
また姉に勧められたんですが、高校での教員免許を取って、高校生に教えるという経験は今までにないことで、難しさは感じながらも楽しかったですね。
――将来としては指導する方面にも行きたいと思っていますか?
いや、教員免許は取りましたが、僕としては教える側は向いていないと思ったので、今のところはないですね。口下手ということもありますし、性格として人に何かを教えることが苦手というか、自分が完璧じゃないのに、人にあーだこーだ言うのはどうなんだろうと思ってしまいますね。ラグビーのことも人には教えられないですし、自分の高校に行って「これはどうやってやるんですか?」と言われても、教えられないですね。
◆トップスピードでもらえるギリギリのタイミング
――ラグビーについては感覚でプレーしている感じですか?
そうですね。感覚ですね。
――感覚でプレーしていると、今日は合わない、とかあったりしますか?
試合ではあまりないんですが、高校生の時に大きな怪我をして、それから復帰した時には「どうやってラグビーやるんだっけ?」という感覚になりました。
――縦への突破が得意、パスが苦手、だそうですが
いや、最近はパスは出来るようになっています(笑)。キックは出来ないんですけれど、パスの感覚は掴みました。
――どうやってパスの感覚を掴んだんですか?
大学1年や2年の時にはウイングやフルバックだったので、試合で使っていないからパスが出来ないと思っていたんですけれど、3年くらいから試合に出始めて、試合で使い始めて「あ、出来るかも」って感じで、ちょっとずつ自信がついていきました。
――今はどうですか?
今は、まぁ行けると思います(笑)。
――ギリギリのタイミングでもらうことが好きだそうですが、それはなぜですか?
スタンドオフや12番に出来るだけ相手を引きつけてもらって、僕はもらったら抜いていくだけが好きですね(笑)。トップスピードでボールをもらうことって簡単じゃなくて、それを苦手とする人もいると思います。トップスピードでもらえるギリギリのタイミングが良いですね。
――トップスピードにはすぐになる方ですか?
そうですね。走りながら「ここだ」と思ったら行きますね。
◆何でも話せる繋がりが大事
――感覚的に言うと、ラグビーはどんなスポーツだと思いますか?
やっぱり結局は集団スポーツというか、どんなに良い選手が揃っていても、全員が戦術を理解して、全員が同じことを考えていないと勝てないスポーツだと思います。
――そのためには何が大切だと思いますか?
何でも話せる繋がりが大事だと思います。
――サンゴリアスでは何でも話せていますか?
そうですね。まだ1年経っていないですけれど、先輩たちも優しくて、これから更にそういう関係になっていけると思っています。
――同じ早稲田大学で同じポジションの野中選手が一緒に入りましたが、何か話し合ったんですか?
いや、そんなことはないです(笑)。野中の方が早めに決まっていましたし、ひとつ上にマサノリ(宮尾昌典)もいて、「一緒に行くか」という感じでもなく、僕もサンゴリアスに行きたかったので決めました。
――コンビを組みたいという思いは?
組めたら楽しいと思います。
――2025-26シーズンにアーリーエントリーで加わり、チームの雰囲気や試合を見ていてどう感じましたか?
最初に感じたのは優しい先輩が多いということで、入る前は怖い先輩が多いイメージを持っていたので、そこがいちばんイメージと違いました。正直、2025-26シーズンはまだお客さんというか、慣れることに必死という感じでした。
◆キックとサインとスプリント
――次のシーズンでの目標は何ですか?
直近では、シーズンが始まって1試合目でのスタメン出場です。
――そこではどんなプレーを発揮したいですか?
アタックでは僕が突破して、トライに繋がるようなプレーをして、ディフェンスでは詰めのディフェンスで、ターンオーバーの機会を作りたいと思っています。
――感覚としては、そういうプレーが出来るというイメージですか?
そうですね。頭の中ではイメージ出来ています。
――そこに向けての課題は何ですか?
スキル面で言うと、キックとサインを覚えることで、身体としては、もうちょっとスプリントを速く出来るようにしたいと思っています。身体作りは時間がかかると思いますが、いちばんはキックだと思っていて、沢木さん(監督)との面談で「センターにはスキルが必要だ。キックも出来ないといけない」と言われました。
今まで全くキックを使ってこなかった人生で、これまで幹也さん(高本)や亮土さん(中村)にもキックを教えてもらったんですけれど、全く上手くなりませんでした(笑)。そこをもっと真剣に捉えてやらなければいけないと思いますし、身につくまでに時間がかかりそうだと思っています。
――かなり自主練習に時間を割きそうですか?
そうですね。それはしないといけないと思います。
――キックのどの辺が難しいですか?
まだフォームが日によって変わるというか、昨日は出来ていたのに今日は出来なかったり、走りながらなど、試合で使えそうなキックの正確性が難しいですね。
◆体重を落とさなければいけない
――身体づくりの方はどうですか?
もっと身体を絞って、下半身の筋力をもっとつけないといけないと思っています。
――さっき通りかかった沢木監督が「俺に怒られてるんですよ」と声を掛けていきましたが、体重に関しては?
そうなんです。体重をあと2kgくらい落とさなければいけないので、まずは体重を落として全体的な筋量を上げるという感じです。
――出来るイメージは持てていますか?
まだ出来ていないです(笑)。
――普段はかなり量を食べるんですか?
そうですね。シーズンオフに入って気をつけていますが、何も気にしなければめちゃくちゃ食べます。先輩とかにご飯に連れて行ってもらったらテンションが上がって、もうお腹に入らないけれど頑張って食べちゃいます(笑)。
――料理は何が好きですか?
肉、寿司、そういう美味しいとされているものですね。
◆外国に行ってみたい
――日本代表に呼ばれた時は、自分のどこが評価されたと思いましたか?
いやー、何で呼んでいただけたのか、よくわからないです。エディーさん(ジョーンズ/日本代表ヘッドコーチ)からは、「アタックセンスが良かったから呼んだ」と面談で言ってもらいました。
――それで実際に日本代表の選手たちと一緒にトレーニングをして、その評価は変わりませんでしたか?
その期間は少し痛めている個所があって、あまり練習に入れなかったので、あまり良い評価は受けていなかったと思います。
――2年前に呼ばれて、その後はどうでしたか?
U23日本代表に呼んでもらいました。
――日本代表はサンゴリアスでのレギュラーとともに目指すところですか?
ラグビーをやると決めた以上は目指します。
――将来はどうなっていきたいですか?
大きくふたつあって、外国に行ってみたいということとお金持ちになりたいと思っています。そこをどう組み合わせるかは、まだ考えている途中です。
――突出することが出来れば、それはラグビーでも可能ですよね?
それはちょっと頭になかったです(笑)。ラグビーを辞めた後でと考えていました。
――考えていたのはビジネスの話ですか?
そうですね。人生1回だけですし、せっかくならお金持ちになりたいですね。
――将来やりたいことのもうひとつは何ですか?
サンゴリアスで試合に出て、海外に挑戦することも叶えたい夢のひとつです。
――ファンの皆さんに期待して欲しいところは?
今は器用なプレーが出来ないので、愚直な、地味な突破だったり、詰めのディフェンス、身体を張ったプレーを頑張りたいと思っています。そこに注目して、見ていただければと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]