2026年8月 7日
#1028 中野 将伍 『もっと前に出られる』
昨シーズン後半、力強い突破力を何度も見せてくれた中野選手。来シーズンへますます期待が高まる中野選手に、現状と展望を訊きました。(取材日:2026年7月中旬)

◆自分らしいプレー
――日本代表に呼ばれていましたが、途中で戻ることになったんですね
2025-26シーズンのシーズン中から痛いところがあって、最後の方は我慢しながらプレーしていました。そこが良くならなかったので、一度治すために離れました。
――痛い個所があってもシーズン中は相当走っていましたね
めちゃくちゃ痛かったです(笑)。シーズンの最初の頃はちょっと痛いという感じでしたが、シーズンが進むにつれて痛みが大きくなっていったような感じです。試合が終わった後は、結構痛かったです。でも痛いところがあった方が意識するというところもありますし、更に悪化するような痛みではありませんでしたので、相対的には自分らしいプレーが出せていたんじゃないかと思います。
――これまでよりもプレーのレベルが上がったと感じていますか?
結果として、良いところでラインブレイクできたりしていたと思います。ボールをもらう前から「ぶち抜いてやろう」と思って行くというよりは、試合の動きの中で相手のいないスペースが見えたり、ボールが回ってくるところでディフェンスのギャップが見えたりして、それに身体が反応して、「空いた」と思って走りこんだ結果、抜けたという感じですね。
最初から準備をして、次にボールが回ってきたらここを抜いてやろうというよりは、ある程度はポジショニングして相手のディフェンスの状況は見ていますが、ボールが自分のところに来る間にディフェンスの状況が変わったりするので、動きの中での判断、反応は良かったんじゃないかなと思います。この辺りは自分でもなんて表現すれば良いのか難しいんですが。

◆相手のギャップやスペース
――相手のディフェンスはどんな感じで見ているんですか?
例えばひとつラックが出来てポジショニングした時に、ある程度は相手のディフェンスの状況、ディフェンスの間隔を見ています。相手チームによってディフェンスの出方も違うので、早くセットして相手のディフェンスの状況を見ているんですけれど、ボールが回ってくる間にひとりだけ飛び出してくる可能性もあります。ですからセットした段階で予測じゃないですけれど、「ここが空きそうかな、こっちが空きそうかな」ということが少し頭にありつつ、実際にこちらの10番の選手がボールをもらって自分のところにボールが来た時に、相手のギャップやスペースに走る、という状況判断が出来ていたと思います。
――常に探しているということですか?
もちろん常にラインブレイクしたいと頭の中にありますが、すべてで出来るわけではなりません。ディフェンスが固くてポイントを作らなければいけない場面もありますし、どういう状況でも「少しでも前に出られるか」が常に頭の中にはあります。
――事前に予測が出来るようになったのはキャリアによるものですか?それともより身体が動くようになったということですか?
そういう意味では、自分がボールをもらう前のポジショニングの早さや、ボールをもらう前に相手の状況をしっかりと見るということは、成長できている部分だと思います。そこは意識をして取り組んだ部分ですね。

◆空いているスペースを見る
――何か意識するきっかけがあったんですか?
自分でも上手く行く時と行かない時があって、その中で自分のプレーが上手く行っていない時は、相手のディフェンスの状況をしっかりと見ることが出来ていなかったり、味方ともあまりコミュニケーションが取れていないという場合もあって、ボールが回って来てからどこに走ろうとか、どこに当たりに行こうと判断している時は、上手く行かない時が多いという感覚があります。
そこを意識して練習して、早くセットして自分のポジショニングの深さ、幅、自分のポジショニング位置を意識し、相手のディフェンスの状況を見るという部分はシーズンを通してやってきて、成長できたところだと思います。それが出来るようになってから、自分がラインブレイクすることもそうですが、自分が仕掛けて外のスペースが空いたらパスをしたり、裏の選手にパスをしたり、そういう状況判断がしやすくなったと思います。もちろんまだミスはありますけれど、そこは成長できていると思います。
――その土台には、自分でぶち抜くという意識があるんですか?
ぶち抜こうというか、ギャップがあれば突破できると思っていますし、そこで仕掛けることによってその選手が空いたらパスをするということもあります。そういう意味では、空いているスペースを見るという面は、前と比べて成長できていると思います。
もちろんラインブレイクも大事ですけれど、自分がラインブレイクするスペースなのか、自分じゃない人のスペースなのか、自分が仕掛けて誰かのスペースが空くのか、スペースを探すという部分は成長できたと思います。
――そうするとプレーしていてより面白いんじゃないですか?
そうですね。間違った選択をする時もありますが、ボールをもらう前に周りを見る、相手のディフェンスを見ることによって、パスで味方のラインブレイクに繋げたり、自分が裏に抜けたり出来るようになります。

◆早くポジショニングして周りの状況を見る
――スペースを見るというのは、立体的に見ているんですか?
上から見ているような感じではありません。まず自分の前とウイングの選手のスペース、それに加えて事前に何パターンかを予測しています。相手がこういうディフェンスをしてきそうだとか、自分がボールを持った段階で相手が前にいて、自分が仕掛けたら詰めてきそうだと思った時は、そこで仕掛けたら隣の味方のスペースが空きます。この選手は前に上がってきそうだから、山なりのボールでパスすればウイングの選手のスペースが出来そうという時もあります。
そうならない場合もあるので、上がってきたらこう投げよう、そうじゃなければ普通にパスしようとか考えています。自分がボールを持った時も、この選手はさっきのプレーで前に詰めてきたけれど、詰めて来なかったら自分の走るコースが空くとか、何通りか予測しながらのプレーが出来ていたと思います。
――それは最近になって出来るようになったんですか?
ポジショニングを早くして、相手のディフェンスの状況、味方の状況を見る。それを早くすることによって、次を予測する時間的な余裕ができるようになったと思います。早くポジショニングして周りの状況を見るということは、ずっと課題というか伸ばさなければいけないところだと思っていました。そこがこの時のこの試合から良くなったというよりは、徐々に良くなってきた感じです。
2025-26シーズンでも、ポジショニングが遅くて味方の状況を見ることが出来ていない時は、プレーの選択が違ったりして、もっと良くできた場面はありましたが、少しずつ良い場面も増えたんじゃないかなと思います。

◆ぶつかる局面に行くまでの立ち位置や追い方
――相手が変わりさらに試合の中での状況も変われば、ディフェンスの仕方も変わると思いますが、そこに対応していく面白さはありますか?
相手チーム全体の特徴や、バックスの特徴は違うので、チームとして週の初めからそれらの分析や、それらに合わせた練習もするんですけれど、相手に対する対策もしつつ、ただ対策をし過ぎず、自分たちのプレーを出すということを考えています。
――ラインブレイクをすること、味方を上手く使うこと、その両方とも喜びですか?
はい、自分のプレーやパスでチャンスをつくることが出来ること、自分の突破でチャンスをつくることも、トライを取ることよりも嬉しいかもしれません。
――ディフェンスについてはどうですか?
ディフェンスも2025-26シーズンでは、成長できたと思います。
――どの辺が良くなりましたか?
ぶつかる局面は自分の強みを出せる部分だと思っているので、そこに行くまでのディフェンスの追い方、自分の立ち位置やその追い方、ディフェンスの上がり方は良くなったと思います。そこもシーズンの最初は上手く行かないところもあって、練習中や練習後に亮土さん(中村)と話しながらアドバイスをもらったりして、成長できたと思います。

◆こういうディフェンスをしよう
――その亮土さんが、中野選手はミーティングで毎回話す機会が設けられ、喋りが良くなったと言っていました。その部分についてはどうですか?
週の半ばくらいのユニットミーティングで、その週の相手がしてくるスクラムアタックをみんなに見せて、サンゴリアスとしてはこういうディフェンスをしよう、という話をするようになりました。今までは聞く方が多かったんですが、センターはアタックでもディフェンスでもバックスの中ではいちばん大事だと思っているので、そういう面で相手のプレーを分析して、チームとしてこういうプレーをしようと話すようになりました。ミーティングで話すことによって、喋りが上手くなったかはわかりませんが、そういうことをやっていました。
――それによってプレー中により言葉を使うようになるなどの効果はありましたか?
なっていたのかもしれないですね(笑)。
――今のその他の課題は何ですか?
ディフェンスでももっとコミュニケーションの質や、状況によって駆け引きの仕方など、そういう部分はもっと良くできると思いますし、アタックでも状況判断や、ボールのもらい方、そこを変えたら仲間をもっと前に出すことが出来たり、それらが出来れば自分ももっと前に出られると思っています。

◆そういうプレーを増やして優勝したい
――そういう中で改めてラグビーは面白いと感じる部分は?
自分がトライをするよりも、自分のところでチャンスや勢いをつくって、それによってトライが生まれることが嬉しいですし、自分自身もそういうプレーを増やしたいと思います。優勝するサンゴリアスを見てサンゴリアスに入ってきて、まだ一度も優勝が出来ていないので、そういうプレーを増やしてチームに貢献して、あとは優勝したいというだけですね。
――そのためにもリーダーの役割も担っていくんじゃないですか?
年齢的な部分もありますが、喋りが上手い方じゃないので、コミュニケーションでチームを引っ張るという部分もまだ成長できると思いますし、プレーやグラウンドでの姿勢の部分、まずはプレーで引っ張って行ければと思っています。
――日本代表については?
本当に来年のワールドカップは大きな目標です。まだまだ成長できていると思いますし、前回のことがあった分、より一層、そこに向かって自分のベストな状態で臨めるようにと考えています。
――新たなシーズンに向けて選手や体制も変わりますが、ファンに注目してもらいところは?
大きく変わるところとしては、監督が変わります。僕が大学3年の時に、サンゴリアスに練習に来ている時の監督が沢木さんで、沢木さんのもとで練習をしていました。大学を卒業してサンウルブズの時にも沢木さんはコーチでいたので、そういう意味でもラグビー選手として、もう一段階成長できるチャンスだと思っています。
――2026-27シーズンに向けて、もう体調は大丈夫ですか?
はい、ちょっとずつ良くなっています。大丈夫です。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]