2026年7月17日
#1025 中村 亮土 『出られない時期やくすぶっている時期を大事に、自分の準備をしていく』
スピリッツ・オブ・サンゴリアスへの登場回数歴代最多の中村亮土選手。今回の登場が28回目、現役最後を飾る特別なロングインタビューとなりました。(取材日:2026年6月下旬)

◆幅が大きい
――2025-26シーズンは4位という成績でした
シーズンを通して成熟しきれていなかったという部分が、今シーズンはありましたね。
――昨シーズンそして今シーズン、徐々に上がっていったけれど成熟しきれなかった、ということでしょうか?
それぞれパフォーマンスや準備のところは、もっとやらなければという思いがあり、今シーズンは昨シーズン以上のことをやってはいたと思います。ただそれがチームになった時に、プレッシャーがかかった時に、ある一定以上のパフォーマンスをずっと出し続けられたかと言うと、そんなことはなかったと思います。良い時のマックスは上がっています。ただ、悪い時パフォーマンスがガクッと下がるので、その幅が大きいと感じました。
悪い時やプレッシャーがかかった時に、一貫したプレーができなかったと思います。負けた試合の後、はっきりともっとこうした方が良かったとうものがありましたし、それを次に活かせていない時もありました。そういう意味でも、チームの成熟度が足りなかったと思います。
そして負けることに対してのひとつの重みが変わってきていますね。本当にレベルが上がってきているので、どのチームに対してもその怖さは出てきているんですが、負け慣れているということもちょっとは感じています。

◆本当に死に物狂いで這い上がる空気感
――優勝するために、何かが変われば優勝できるという感覚はありますか?
変わると思いますよ。変わると思います。
――それは何でしょうか?
......空気感。空気感が変われば、ぜんぜん変わってくると思います。もっとこう......なんだろう、殺伐としたというか。必死というか。本当に自分自身と戦う感じ。チームでつくるというよりも、ひとりひとり、個人個人が本当に死に物狂いで這い上がる空気感。
僕の場合は目の前のことと戦ってきて、サンゴリアスでプレーできなかった時には、必死で背番号をもらえるようにやり続けましたし、背番号をもらえるようになったら、その先に日本代表があって、それを取りに行くためにも死に物狂いで取りに行きましたし、日本代表になったらいろいろな若手が出てきたり、いろいろなライバルがいましたが、その中で番号を譲りたくないという必死な思いでやりました。その先にチームとしてテストマッチで勝ちたい、ワールドカップで勝ちたいって、ひとつひとつやってきました。
いま自分が置かれている立場はどんなものか?試合に出られない選手は、本当に死に物狂いで次の1年間戦い続けることが大事ですし、試合に出ている選手たちは、今まで以上の努力をしないと試合に出られないと思います。サンゴリアスの背番号を守りつつ、次の日本代表、そこがすべてではないですけれど、もっと高みを目指してやっていくことが、必要だと思います。
――そのモチベーションはどうやったら持てるんですか?
簡単に言うと、ハングリーさですね。サンゴリアスの中でもハングリーという言葉は結構使いますけれど、そこに対して執着してやっていくことができたら、空気感はだいぶ変わると思います。
――それはもともと持っていなかったとしても、環境としてつくれるものですか?
つくれると思いますよ。それを自分が感じるかどうかだけです。

◆後ろから見守られている安心感
――コーチへの興味は?
興味がないわけではないんですが、もっと違う視点で勉強したかったんです。
――また違った世界に飛び込むということも、ハングリーさがないとできないと思いますが、そのハングリーさはすべての選手に必要だと思いますか?
そこは人によって変わってくると思います。できなかったことができるようになって自信になることもそうですし、僕の場合は逆で、できないことがあるとできるようになりたいとか、マイナスのエネルギーから出てくるものが強くて、それがあるとハングリーになれます。自分ができないことに対してとても腹立たしく感じてしまったり、試合に出ていないこととか、人より劣っている部分があるとか、そういうことがあると、そこに執着するかもしれないですね。
――そこには「自分にはできるはずだ」という自分に対する信頼があるんですね
そうですね。根本には、とても自信があります。ひとつずつ乗り越えてきたものがあるから、自信があるんでしょうね。すべてをクリアしてきたという。
――子どもの頃からそういう感じだったんですか?
いや、いつからですかね(笑)。でもできないことを諦めるということはなかったですし、もともと負けず嫌いという部分もありました。
――ご両親の教育など、思い当たることはありますか?
あまり怒られた記憶はありません。否定されたり、頭ごなしにダメとか、そういうことはなくて、本当に見守ってくれている感じがありました。「自分で考えてやりなさい」という感じで、あまり言葉では伝えて来ないけれど、後ろから見守られている安心感はありましたね。だからこそ、変なこととか、両親を裏切るようなことはしたくなかったですし、期待じゃないけれど、そういうものに応えたいという思いでやっていました。
――それは自分の子どもに対してもそうですか?
僕はそうですね。僕は大きく見守っている感じです(笑)。

◆腹立つぐらい悔しい
――最後のシーズンでのパフォーマンスはいかがでしたか?
本当にメディカルとS&Cに支えてもらって、コーチ陣もいろいろなサポートをしてくれて、パフォーマンスは良かったと思います。
――ある種吹っ切れているという精神的な部分もあったんですか?
いやー、どうなんですかね。でも「まだ現役だな」と思ったのは、試合のメンバーから外されたり、リザーブにも入れない時がありましたが、腹立つぐらい悔しいんですよ(笑)。それを感じている時に、まだ現役でできている感、戦っている感をとても感じましたね。
タイミングとかもあったと思いますが、そこでポンっとメンバーに選ばれた時に結果を出すということ。社会人になって12年くらい経ちますが、それが大事だと思っていた部分でもありました。いつになるかわかりませんが、いつか来るチャンスをモノにできるかできないかって、本当に見え方が変わりますし、本当に大事な時間なんですよ。出られない時期やくすぶっている時期を大事にしながら、そこに向けて自分の準備をしていくということを本当に学びましたね。
――試合に出られるチャンスは1週間に1度しかなく、それがいつ来るかわからない中、試合に出た時のイメージを常にしているということですか?
そうですね。本当であれば、そのチャンスは2025-26シーズンでは来なかったかもしれません。いまチームにいるメンバーは、それが来シーズンに来るかもしれませんし、その次の次のシーズンかもしれません。それがいつ来るかわかりませんが、自分でちゃんと準備をしていれば、絶対にチャンスは来るんです。そのチャンスが来た時に、ベストを出せるかどうかが大事です。
――その時にベストを出す秘訣は?
自信ですかね。それまでに積み上げてきた自信です。
――練習をひとつひとつ積み上げてきて、それでも足りないと思ったら追加で練習をしたりしていると思いますが、それがどこまで行けばその日の練習はOKと思えるんですか?
どこまでなんだろう。それはわからないですね。時間や身体の疲労などがあるので、日によって変わってくると思います。それよりもやり続けることの方が大事で、例えば1週間の中で3日間トレーニングの日があった時に、1日だけ30分やるよりも、3日間続けて5分だけでもやることの方が良いと思っています。一貫性を持って同じことに毎日取り組む。そうすることによって、ステージが変わってきます。
――それは身体に覚えさせるということですか?
そうですね。ラグビーは感覚も大事になるので、何かを習得する時には毎日続けること、一貫性を持って少しずつでもやり続けることが大事です。

<続く>
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]