SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2026年7月 3日

#1023 細木 康太郎 『サンゴリアスは特別な存在』

入団以来ずっと期待されてきた細木選手。その力を開花させることはなく、サンゴリアスを去ることになった本人の心境を聞いてみました。(取材日:2026年6月中旬)

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◆ゼロから新しい場所でラグビーをやる

――今回のサンゴリアスを離れる決断、どのようにしたのでしょうか?

昨シーズンの2024-25シーズンでは9試合出場で、半分くらいは試合出ていたとはいえ、自分としては全く納得がいっていませんでした。昨シーズンが終わったタイミングで、このままラグビー選手としてのキャリアが終わっていきそうだなと感じて、会社員のままだったらラグビーも社員としてできるんですけれど、それで終わりたくないという思いがふと芽生えて、チームに相談しました。

――プロになることを第一優先にしたということですか?

はい、そうです。別にプロじゃなくても良かったのかもしれませんが、4年間をサンゴリアスでやらせてもらって、怪我が多くて同じ怪我を繰り返していたということもありましたし、もっとラグビーに使う時間を増やしたいということと、あとは環境もガラッと変えて、気持ちも心機一転して、ゼロから新しい場所でラグビーをやることで、何か変わることもあるんじゃないかという思いもあって、今回こういう決断をしました。

――2022-23シーズンの終盤から試合に出て、次のシーズンへの期待が高まったことをよく覚えていますが、飛躍のチャンスだったのでは?

プレーオフ準決勝の週にメンバーに入っていなかったんですけれど、メンバーにアクシデントがあって、急きょメンバーに入りました。僕の分析では、あの時の試合は急にメンバーに入ったので、自分としてもパニックになって、それをユタカさん(流大)や先輩たちが察してくれて、僕がやるべきことをとても単純にしてくれたし、サインも分かりやすいものにしてくれたんです。ホッコ(ホッキングス)もラインアウトを混乱しないようにシンプルなサインにしてくれて、まったく考えることなく自分の強みを出すという気持ちだけで試合に臨めました。だからパフォーマンスも良かったですし、コーチ陣からも評価してもらいました。

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◆サンゴリアスが求めている3番

――それを受けて、次の2023-24シーズンはどうでしたか?

開幕戦はメンバーに入らせてもらって、たぶん前のシーズンの最後の余韻じゃないですけれど、その期待を込めてメンバーに入れてもらったと思います。ところが、フレッシュさというか、単純に自分の仕事をやり切れなかった。周りに頼らず自分で解決しようとしたり、変な自信があったのか、いろんなことをできるという勘違いからか、いろいろとあーだこーだを、し過ぎちゃったと思います。

自分の強みはスクラムと考え、そこにフォーカスしていたら、また違った評価になっていたのではと思います。ただ、サンゴリアスが求めている3番はそうではないので、自分の中でもその葛藤はありました。

――自分の強みはスクラムということを推しだす形に修正できませんでしたか?

そこは出来ませんでした。カッキーさん(垣永)もスクラムが良いですし、フィールドプレーでもスティールやラインブレイクしたりもしていましたし、幹ちゃん(中野幹)もフィールドでとても走ります。自分はスクラムだけという部分に劣等感じゃないですけれど、自分の中でモヤモヤする部分があって、自分もこれが出来ると証明したい気持ちがあったのかもしれません。

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◆スクラムでチームに貢献できる選手

――そこからの2シーズンは葛藤の連続だったんじゃないですか?

本当にそうですね。みんなにスクラムは認めてもらっているけれど、それしかないと思われたくなかったし、自分でも他のプレーもできると思っていました。けれどこのリーグワンの高い強度ではできなくて、怪我をして試合にも出られないところで悩みもありましたし、怖さもありましたし、葛藤もありました。

――他のチームでもリーグワンの強度を求められると思いますが、どうやって課題を克服していきますか?

正直そこは割り切って、スクラムでチームに貢献できる選手というところに、フォーカスしてやっていこうと思っています。もちろんフィールドのところでの苦手な部分だったり、チームから求められるところはやっていきますが、僕はそこではなく、フィールドでいろいろなことができる選手じゃなく、スクラムで絶対にペナルティーが取れる、マイボールでも相手ボールでもスクラムで絶対にプレッシャーがかけられる選手になる。その方がコーチ陣も使いやすいと思いますし、計算もできると思うので、僕の信念としては考えすぎずに、スクラムの細木を認知してもらえるような選手になりたいと思っています。

――2年間の葛藤を経て割り切れたんですか?

はい、割り切れました。このスタイルではサンゴリアスで長くやっていけないというか、サンゴリアスのプロップは、例えば賢太(小林)は、とても動きますし、判断も良くてラグビースキルも高いんです。サンゴリアスには今後もそういう選手が入ってくると思いますし、コーチ陣も求めていると思います。そういうチームで意地張ってスクラムだけでやっていても、評価はされないと思います。

他のチームでスクラムで活躍して欲しいというチームがあると思いますし、スクラムをアイデンティティとしているチームもあるので、スクラムを求めているチームで自分のポテンシャルを発揮したいと思っています。

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◆スクラムでプレッシャーをかけたい

――サンゴリアスでいちばん印象に残っていることは何ですか?

とても特別なことばかりだと思うんですが、サンゴリアスに4年間いさせてもらって、いろいろなことが当たり前になり過ぎているのかもしれません。ラグビーの練習もすごくキツいですし、ロッカーでは先輩や後輩、日本人や外国人と関係なく、めちゃくちゃ仲が良いですし、クラブハウスでのご飯もめちゃくちゃ美味しいですし、みんなめちゃくちゃ頑張りますし、そういうことがここにいることによって普通に感じてしまっているので、だから特別に印象に残っていることがないのかなと思います。

――今後サンゴリアスと対戦した時には吠えたいですか?

僕は吠えていることを意識していないというか(笑)、あれは勝手に出ているんです。吠えているところはあまり記憶にないです(笑)。

――サンゴリアスと対戦することを考えるとどんな気持ちになりますか?

とてもプレッシャーがかかると思います。それこそスクラムでプレッシャーをかけたいと思っている自分に対して、相手は僕のキャラクターも分かっていますし、細木はここで活躍したいと思っているはずと感じて、それを必死に止めてくるだろうと思っています。

けれど、それを超えて、スクラムでペナルティーを取ったりプレッシャーをかけたり、それで試合に勝った時には、大きな達成感があると思います。社会人になってこのチームを意識するということはなかったんですが、これを機にサンゴリアスは特別な存在になりますし、意識することは物事を行っていく上で大切なことだと思うので、良いことだと思います。

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◆山あり谷あり、良いこと悪いことも

――サンゴリアスへのメッセージは?

僕にとってとても印象に残っている選手は、例えば中村駿太さん(横浜キヤノンイーグルス)、祝さん(祝原涼介/横浜キヤノンイーグルス)、あとは直人さん(齋藤)とか、桐蔭学園の先輩たちだったり、ヘンディ(ツイヘンドリック)とか大学の先輩たち。みんながサンゴリアスに残してくれたものって、たくさんあると思っています。僕にとってとても楽しい時間でしたし、嬉しい時間でしたし、充実していました。

そういう人たちがつくってきたものを、ずっと残していった欲しいなと思います。サンゴリアスを去ってもチームに名前が残っているような人たちが、このチームにはいるということは、とても良い文化だと思いますし、それがサンゴリアスの良いところだと思います。チームを去った選手のことも大切にするチームですし、そのひとりになりたいという思いもありますし、サンゴリアスは強くて人としても素敵なチームのままであって欲しいと思います。

――細木選手自身は何か残せたと思いますか?

長く大きな歴史を残してきたサンゴリアスに、僕の短い4年間は、大きく見た時には何も残せていないなと感じると思います。みんなが偉大ですし、そういう選手ばかりなので。自分の中では山あり谷ありで、良いこともあったし悪いこともあって、とても財産になった4年間でした。

――それは次へのモチベーションになりますか?

正直僕のサンゴリアスでの4年間は怪我もあって、良い印象は少ないですね。そこはもうぜんぶ、切り離そうかなと思っています。サンゴリアスの思い出も学生時代の思い出も切り離して、本当にゼロから自分のキャラクターも次のチームで作りたいですし、ラグビー選手としても細木はこういう選手というものを作りたいですし、本当にゼロから細木という人間をもう一回作って、みんなに認められる選手になりたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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