SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2026年6月26日

#1022 中野 幹 『本当に大事なのはラグビーのいちばん基本的なプレー』

サンゴリアスで6シーズン、右プロップとして活躍した中野幹選手が移籍します。常に明確な目標を持って練習や試合に臨む中野選手に、サンゴリアスについて、ラグビーについて聞きました。(取材日:2026年6月中旬)

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◆足りなかった

――2025-26シーズン4位、まずこの結果についてどう思いますか?

素直に、足りなかったなと思います。チームとしてもそうですけれど、僕は個人的にまだまだだと思いました。

――まだまだということは、言葉を変えればもっと出来るということですか?

そうですね。もっと出来ると思っていますし、逆に言えば現時点では、トップ3とは差があるとも思っています。

――それはチームとしても差があり、個人としても差があるということですか?

僕の考え方ですけれど、個人の集まりがチームだと思っているので、個人ひとりひとりのレベルが上がらなければ、結果としてチームとしてのレベルが上がらない。誰がと言うわけではないですが、僕自身がもっとレベルを上げなければいけないと思いました。

――トップ3との差は、どういうところに感じましたか?

ラグビーはいろいろな繋がりの中で動いているので、同じプレーをする機会なんてやって来ません。ですけれど、そこで大事なのは、規律や基本プレーだと思っています。

――規律や基本プレーが不足しているとミスに繋がるんでしょうか?

そうだと思います。ただ、負けたら終わりという緊張感の中で戦うので、やっぱりふだん通りにいかないことも起きます。いかに自分たちの基本的なところをブラさずに行けるかが、とても大きな要素だと改めて思いました。あとは、規律にも繋がりますが、やっぱりラグビーは反則をしたら負けます。反則が多いチームが負けるんです。その分、相手にモーメンタムを渡していることになって、自分たちがしんどくて相手が楽な状況を作ってしまう。改めて、反則が多いと負けると思いました。

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◆思い切り身体をぶつけるとアドレナリンが出る

――反則が多くなるのは相手からのプレッシャーもありますよね

もちろん、相手からのプレッシャーもあると思います。

――お互いにプレッシャーをかけているけれども、こちらが先に反則をしてしまう場合の要因は、先ほどの規律と基本プレーに戻りますか?

そうですね。ラグビーは複雑で、フィジカルの部分もあれば、それだけじゃなくてボールをどこに動かすかという、戦術的な部分もあります。いろいろな要素が混じり合っているので、戦術だけにフォーカスするのではなく、フィジカルだけにフォーカスするのでもなく、両方にフォーカスしなければいけません。それで言ったら、フィジカルで劣勢になったら、自分たちがやりたい戦術も出来なくなります。

戦術がめちゃくちゃ良くても、フィジカルがめちゃくちゃ大事だと思いますし、フィジカルがめちゃくちゃ良くても戦術がダメだったらダメだと思います。だから難しいですね。でも、僕たちはトップ4にいるので、フィジカルがめちゃくちゃ劣っているわけでも戦術がダメなわけでもなくて、高いレベルにはいると思っています。ただ、その高いレベル同士が戦った時に、本当に大事なのはラグビーのいちばん基本的なプレーだと思います。

――そこがラグビーの面白いところですか?

面白いというか、そこが僕の課題でもあると思うんですが、僕はラグビーで思い切り身体をぶつけるとアドレナリンが出るんですよ(笑)。それが楽しくて辞められない、という部分があります。あとは自分のポジションの中では身長が高くないですし、体重も重くはないので、その中でその部分をカバーする技術を身につけていくことが楽しいです。

みんなが持っていない技術と、僕のポジションで言えば、スクラムがいちばん大事になるんですけれど、そこでみんなが持っていない技術を持っていると思っています。そこを考えてやっていくことが、楽しいですね。

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◆ラグビーって最高だなぁ

――アドレナリンが出るのは、これからぶつかれると思って出るのか、ぶつかった後に出るのか、どちらですか?

どうなんですかね。いつも終わった後に、楽しかったって思うんですよ。プレーしている時はもちろんテンションが上がっているんですけれど、終わった後に「ラグビーって最高だなぁ」ってなるんですよ(笑)。

――身体を使い切ったことに対してですか?

そうではなくて、思いっきり走って、相手も思いっきり走って来ていて、そこでぶつかることなんて、普段の生活ではないじゃないですか。もちろんそこに技術も含まれるんですが、それに憑りつかれている感じだと思います(笑)。

――何歳から憑りつかれましたか?

社会人になってからですね。社会人になってボールをとても動かすチームでプレーするようになって、そこから感じるようになりました。高校は東海大仰星にいて、その間で手術を2回して、ラグビーを2年間できませんでした。高校1年からラグビーを始めたんですが、高校に入って最初にちょっとラグビーをやって、それで怪我をして2年間できなくて、最後の何ヶ月間だけ出来ただけだったので、高校ではほとんどラグビーをやっていないんです。

大学は東海大学なんですけれど、セットプレー命、モール、スクラムにフォーカスするチームだったので、あまりボールを動かす練習はしていませんでした。社会人になって、もちろんセットプレーも大事だけれど、「俺たちはボールを持って動かす、アタックするんだ」というチームに入って、その楽しさに気づけました。

――高校でほとんどラグビーが出来なかったのに、なぜ大学でもラグビーをやろうと思ったんですか?

単純に悔しかったんです。ラグビーを始めてすぐに手術するような怪我をして、復帰までに10ヶ月くらいかかってまた手術するような怪我をして、それを2回経験して、ラグビーには向いていないと思ったんですけれど、最後の大会で運良くメンバーに選ばれて、それで本当に運良く優勝することが出来ました。

監督や仲間にそういう経験をさせてもらいましたが、僕としては試合には出ていたけれど、何もしていない、役に立てなかったと思いました。その時にこのままでは終わりたくない、大学でもやりたいと思ったんです。ラグビーには向いていないかもと思いつつも、自分の気持ち的に辞められませんでした。それで東海大学に進み、ラグビーを続けました。

――そして社会人でボールを動かすチームに入ってみたら、これがラグビーだと感じたわけですね

新しいラグビーの楽しいポイントに気づけたという感じですね。

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◆毎日の練習で課題を持って取り組む

――最初の方に言っていた、みんなが持っていない技術とはどういう技術ですか?

これは言語化するのが難しいんですよ(笑)。今は身体に染み込んでいますけれど、毎日の練習で課題を持って取り組むということが、大事だと思います。みんなと同じようにやっていたら成長は出来ないので、少しずつ変えていくんです。言ってしまえば、スクラムの足の位置が5cm違うだけで、勝ったり負けたりします。そういう世界なんですよ。それに気づけるかどうか。いっぱいやっていった先に「これが自分の形だな」というものが見えてきます。

――それが自分の形になり、自信になったり、技術になるということですか?

そうです。チームの中には同じ3番の選手がたくさんいますけれど、みんなが違う形になります。チームとして基本的な「このアングルで組んで」というものはありますが、その中でみんな違う技術を持って組んでいます。身体のサイズもみんな違うので、同じスクラムは組めないんですよ。その中で自分の形を見つけていくしかないんです。

――毎日課題があるということですか?

毎回の練習で、これをちょっと変えてみようというのが、毎日あります。それをコツコツ積み重ねていく、という感じです。

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◆一喜一憂せずにコツコツ積み重ねていく

――サンゴリアスを離れることになりましたが、この後は?

サンゴリアスで学んだことがあって、これ毎回言っていることですが、本当に、一喜一憂せずにコツコツ積み重ねていくことなんですよ。それがいちばん大事だと思っています。自分の目標、行先だけ決めて、自分がコントロール出来ないことは置いておいて、コツコツ積み重ねていくだけなんですよ。それが出来るようになれば、変なことで一喜一憂しなくなります。試合のメンバーに入れなかった、練習で大きなミスをしてしまったとか、毎週毎週探り探りやっていると、メンタルがブレるんですよ。そうではなくて、自分のフォーカスは、毎日コツコツ積み重ねて成長することだけ。それを繰り返すだけです。

――それをサンゴリアスではなく、別の場に求めたのはなぜですか?

そこは完全に個人的な理由になるんですが、新しい環境に身を置くこと、そこでチャレンジすること、またいちから積み上げること、それは信頼関係なども含めて積み上げていくことが、ラグビー選手だけではなく人としての成長に繋がると思いました。

――何かきっかけがあったんですか?

もともと、ずっと同じことをすることが嫌なタイプなんですよ。同じ環境にずっといることを、好まないタイプなんです。どんどん新しいことにチャレンジしたい、新しい環境に身を置きたい、ニュージーランドに行ったこともそういう理由です。

――自ら新しい環境に身を置かないと、知らないうちに手抜きしていることもあるということですか?

手抜きするしないということではなく、そっちの方がワクワクするんです。ワクワクする方に行きたい、ということですね。

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◆負けていられない

――サンゴリアスへメッセージを

僕も含めて、本当に悔しい時間や苦しい思いが、めちゃくちゃあったと思います。それを一緒に乗り越えられたのは、間違いなくサンゴリアスのチームメイトがいたからだと思います。僕に関して言えば、サンゴリアスに入ってから、いろんな失敗、ミスをしてきたと思いますし、それで迷惑をかけたと思います。

それでも僕に対して真剣に向き合ってくれて、今チームにいるメンバーだけじゃなく、先に退団したメンバーたち、サンゴリアス・ファミリーの仲間たちがいたからこそ、6シーズンも全力で走ってくることが出来たと思います。本当に心からそう思っていますし、本当に感謝しています。

――残ったメンバーへのエールは?

エールを送れるような立場ではないですけれど。自分自身もまだまだ現役ですし、これから対戦相手になっていくわけなので、頑張ってとかは違うかなと(笑)。だけれど、みんなが活躍したら、嬉しい気持ちが出てくるでしょうし、同時に自分もまだまだ頑張らなければという悔しさも出てくるかもしれません。負けていられないという気持ちも出てくると思います。楽しみです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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