SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2026年6月19日

#1019 小野 晃征 『PROUD TO BE SUNGOLIATH』-1

2025-26シーズン、小野ヘッドコーチへのインタビューが、開幕して2戦目を終えたタイミングで行われました。当初予定していた冊子が計画変更となって刊行されず、このインタビューは発表されなかったのですが、ヘッドコーチのコメントの内容はとても興味深いものでした。これは毎試合後に聞きたいと思い、すぐ本人に打診したところ、快諾を得て、次の第3戦からファンクラブ会員サイトにて「Head Coach Kosei Ono's After-Match Review」として連載してきました。今回、シーズン終了後のタイミングで、そのすべてを SPIRITS OF SUNGOLIATH としてまとめ、皆さんにもお届けします。

Kosei_01.JPG
第1節 vs. リコーブラックラムズ東京 ◯ 29-15
第2節 vs. トヨタヴェルブリッツ ◯ 43-25

"サム・ケイン=キャプテン、流大&ハリー・ホッキングス=バイスキャプテン"

堀越康介(前キャプテン)も常に言っていましたが、キャプテンはプレーで引っ張らないといけない。サム・ケインが100キャップを超えているオールブラックスの時から、キャプテンの時がいちばん良いプレーをしていたと思いますし、キャプテンシーというロールと経験もあるので、彼の良いプレーを引き出すために、さらに新しい刺激が大事だと思って決めました。

そして声のコミュニケーションで引っ張れる流大と、ハリー・ホッキングスは周りを落ち着かせる力があり、特にセットピースの部分でのバランスも考えながら、バイスキャプテンに決めました。堀越もリーダーグループの響グループに入れたのは、50試合以上キャプテンをしていて、そこはケインにとっても必要な部分だと思います。ケインの一言目が「ホリを残して欲しい」ということだったので、そこはアグリーして、あとは福田健太と小林賢太の6人で、リーダーの裏にリーダーもいるグループを作り、先頭に立っているのがケインという形です。

いっぱいリーダーがいればいるほど、落ち着いてラグビーが出来ると思いますが、響グループに入るからといって、ゲームメンバーに入れるわけではないので、全員にはプレーで引っ張らないといけないと伝えています。その上で、福田健太も小林賢太も日本代表レベルの選手で、自分のプレー以外にも余裕のある選手だと思うので、周りとのコミュニケーションも出来るふたりですし、今後のリーダーになっていって欲しいと思っています。キャプテンやバイスキャプテンの近いところでコミュニケーションを取って、キャプテンやバイスキャプテンが思っていることをドライブできるようにしていって欲しいと思っています。

Kosei_02.jpg

"ボールを持っていないところでも努力している粘り強いチーム"

ラグビーは大きく変えられないスポーツだと思っています。新しいサインプレーとか、選手のリクルートでちょっとプレースタイルが変わる時はありますが、このクラブのスタイルは大きく変えられないと思うので、ボールを持っていないところでも努力している、粘り強いチームを作っていきたいと思います。チャージひとつにしても、こぼれ球ひとつにしても、飛び込んで、やっぱりボールを大事にする、常にボールを取り返す。そうすれば自分たちのアタッキング・ラグビーが出来ますし、そのためにひとりひとりが反応できるように準備をしています。

GM(ゼネラルマネージャー)やTD(チームディレクター)と常にこのクラブをどう良くするか、成長させていけるかと話しています。その中で選手のコンディションや怪我などもあるので、入れ替えたら入れ替えた分、良い選手と入れ替えたいと思っています。日本人、外国人問わず、ベストなメンバーを選ぶことがこのクラブにとっていちばん大事だと思っていますし、勝つことが大事です。

強いチームって、状況によって対応できる、試合中に修正できるチームだと思います。75分過ぎにも対応して最後に勝ち切れるかということを、どんどん試させられると思います。いろいろな状況の中で相手にも対応する、レフリーにも対応する、あと自分たちの状況に応じて対応できるチーム、常に冷静な判断ができるチームを作っていきたいと思っています。

勝っているとより不安になりますね。やっぱり気がいちばん抜けやすいですし、負けたら明らかだと思うんですよ、何が足りないとか。勝つと見逃しちゃうところがあると思っているので、ポジティブにチームを前に進めなければいけませんが、常に課題を探していかなければいけないと思っています。そしてどの課題がいちばん大事なのかを、ピンポイントで探さなければならないし、勝っている時こそそのメッセージ性が大事だと思っています。

Kosei_03.jpg

"準備することはサイクル、試させられるのはスピリッツ"

いまブロックごとに課題のフォーカスポイントを絞って練習しているんですが、それを常に磨いていく。それでこの1ブロックが終わったら、2ブロック目に何を修正していくかを明確にして、2回、3回の練習だけではすぐに直せない部分だと思うので、数週間かけて磨いていくことを探していく。選手が変われば新しい刺激も入って、メンバーのセレクションのところも、常に変えるわけではありませんが、新しい刺激も必要だと思いますし、自分たちのプレーを活かす選手を選ぶことと、相手の強みをひとつ消すセレクションのやり方もある、と考えながらやっています。

このクラブのアグレッシブにプレーする、トライを取るという姿は、常に変わらないと思っていますが、今シーズン、より試されるのは、クラブのスピリッツの部分だと思っています。選手に常に言っているのが、PRIDE、RESPECT、NEVER GIVE UPの3つの言葉を、どう行動で見せるか。パートナーさんやファンの皆さんに対して、グラウンドにいる15人がクラブを代表してクラブスピリッツを見せている姿を、毎週見せたいと思っています。

今シーズン言っていることは、ラグビーのサイクルで、アタックする、蹴る、ディフェンスする、ボールを取り返す。それを常に練習して磨いていくということが、サンゴリアスのサイクルです。でも試させられるのは、ひとりひとりのスピリッツの部分です。だから同時にあります。準備することはサイクルですが、試させられるのはスピリッツです。今はサンゴリアス・サイクルとサンゴリアス・スピリッツです。そのふたつを同時にやって、サンゴリアスであることを誇りに思うことが今シーズンのスローガン「PROUD TO BE SUNGOLIATH」です。サイクルを磨いてスピリッツが試させられるということです。

Kosei_04.jpg

"スピリッツ PRIDE、RESPECT、NEVER GIVE UP"

昨シーズンの1年目のスローガンは「WIN THE ONE」。目の前のひとつに勝つ。自分も初めてで経験もなかったし、こういうことがあったからこうするというモノもありませんでした。だから、目の前でどう勝つかしか考えていませんでした。それは別に悪くはなかったと思いますし、やり切ったと思いますが、結果は6位で、オフシーズンに振り返った時に、ラグビーと一緒で同じミスは2度繰り返したくない、同じミスは繰り返してはいけないと思いました。

その中で、サンゴリアスであることを誇りに思う選手が何人いるかと考えた時に、じゃあそういうクラブを作っていかなければいけないと思いました。自分がいてもいなくても、絶対にこのクラブにあるものは、スピリッツ。PRIDE、RESPECT、NEVER GIVE UP、とてもシンプルな言葉なんですが、優勝した時はどうだったかと考えると、一緒に優勝したメンバーとは、「あの時、NEVER GIVE UPってこういうことだったよね」と、話が繋がると思います。その時の行動が一致していたと思うんです。

結局は優勝したからそうだったと思いますが、いま優勝していなくて、何がいちばん大事かを考えた時に、その3つの言葉をどう行動で見せるか。ラグビー選手だけじゃなく組織として100人以上がいて、その3つの言葉を行動に変えることができるようになりたい。いざ勝敗が決まる瞬間、いちばんキツい時間帯の時に一緒の行動を見せられたら、より強いチームになると思いました。

Kosei_05.jpg

その3つの言葉がどういう行動かというワークショップを、シーズンに入るキックオフミーティングから5週間かけて、選手とスタッフも含めて話し合いました。PRIDEはどういう行動なのか?RISPECTは?NEVER GIVE UPは?ということを言葉にしてミーティングルームにも貼り出して、開幕戦に向けても、PRIDEウィーク、RESPECTウィーク、NEVER GIVE UPウィークとし、その行動を開幕戦で試させられる前に、自分たちでこういう行動をしようと、2〜3つを選んで、選手たちがドライブして、その言葉を一致させ実行しました。

セイムページということです。何をゴールにしたいかというと、ぜんぜん知らない人がこのクラブハウスや試合会場に来てサンゴリアスのラグビーを見た時に、こういうことがPRIDEなんだ、RESPECTなんだ、NEVER GIVE UPなんだ、このクラブはこういう行動を大事にしているんだ、だからサンゴリアスだ、ということが分かるようにチーム作りをしたかったんです。最終的にはPROUD TO BE SUNGOLAITH、サンゴリアスであることを誇りに持つということ。僕がこのチームから離れても、このチームを応援しつつ、3つの言葉が自分の行動に繋がっているようにしたいんです。そのために、サイクルとスピリッツの両方を大事にしていきたいと思います。

第3節 vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ ● 20-79

Kosei_06.jpg

今シーズンはディフェンスを強化するということでやってきましたが、そこは実際にこの試合で出来ませんでした。3試合目になりますけれど、"出来ていない"という確認となりましたし、改めてまだまだそこは成長していかなければいけないところです。

ディフェンスもそうですし、相手にどうやってボールを与えているかというところも、考え直さないといけません。自分たちのミスから相手の点に繋がっているところも多かったと思うので、その両方だと思います。練習できないのは、スコアによるプレッシャーだと思いますが、そのプレッシャーの中で選手たちの判断がバラバラになったというところがありました。

常に勝つ準備をしなければいけないと思いますし、次の試合が始まったときは 0対0 なので、どうやって次のチームに勝つか、勝てる自信を持たせるか、ということが大事だと思いますので、そこをやっていきたいと思います。

この負けをモチベーションに変えるしかないと思っています。

第4節 vs. コベルコ神戸スティーラーズ ● 20-22

Kosei_07.jpg

クボタ戦から何かしら変えないとダメだと思ったので、メンバーを代えて臨みましたが、そういう点では選手の意識など、変化は見えたと思います。接点の激しさ、一人ひとりの接点に対する態度は、クボタ戦とはアタックもディフェンスも大きく違っていたと思います。ボールを持っている時も持っていない時も、意識が全然変わったと思います。そこが先ず前提としてないと、何も見えないと思いますので、良いところが見えてきたところはあると思います。

そんな中、14人になると戦い方も変わりますし、自分たちのペナルティも多くて、勢いに乗った時に自分たちで崩したところも、特に後半は何回かありました。そういうことをしていたら、点は取れません。自分たちのプレーの精度を、自分たちで何回も崩してしまったと思います。ラグビーは結果の世界であり積み重ねだと思うので、結果を残せば自信にも繋がりますし、こういうクロスゲームを落とすということは、もう1回、次にリセットしないといけないなと思います。

間違いなく明るいところは見えたと思いますが、結果は変えられないので、そこは磨いていかないといけないと思っています。選手のプライドとこのチームのファイティングスピリッツが先ず見えないと、土台がない状態と同じだと思いますし、そのためには磨くことを繰り返すことが大事だと思っています。磨いて磨いて、しっかり次に向けて改善していきたいと思います。

第5節 vs. 三重ホンダヒート ◯ 30-15

Kosei_08.jpg

勝つことがいちばん大事なので、先ずは良かったです。ホンダ戦に向けてホンダさんの戦い方をプレビューしましたが、勝利にはつながっていない1~4節でしたけれど、80分間通して粘り強いチームだと思い、実際に試合をしてみてもそういうチームだなということを感じました。

試合するまで実際にはどういう試合になるかわかりませんが、トライエリアでのパイルアップが3回あって、ひとつでも2つでもトライを取れていたら、また違う勢いになっていたなと思います。そこは自分たちが修正していかなければいけない部分もあるし、ホンダさんの粘り強いところもあったと思います。

後半、迫られていたところでも、選手は見ていても割と落ち着いていたので、相手のトライが取り消される判定の後にトライを取って、最後にももう1回チャンスがありました。そこのボーナスポイントを取り切るというチームに、なっていかなければと思います。勝っても負けても常に課題はあると思っています。完璧な試合はないと思いますし、いろんな状況を経験し続けて、自分たちのラグビーを常に磨いていかなければなと思います。

勝つと負けるのではぜんぜん違いますし、クボタ戦、神戸戦でこの勝った時の気持ちは体験出来なかったので、そこは前向きに考えられると思います。勝つための皆のチームに対するコミットや、準備は簡単なものではないと思うので、1週間やった結果勝てたことは、とても良かったと思います。次のパナソニックとは土曜日、日曜日の2試合あるので、元気で出られる選手は全員出ます。2試合、勝つ準備をしたいと思っています。

第6節 vs. 埼玉パナソニックワイルドナイツ ● 30-31

Kosei_09.jpg

選手たちの試合後の表情などを見ると、出し切ったのにもかかわらず、こうやって結果に繋がらないのは、とてもタフなことだと思います。勝てた試合に絶対に勝つのがサンゴリアスだと思いますし、結果的に勝てなかったということは、僕自身に矢印を向けて考えなければいけないことだと思います。

こういう試合で勝ち切るところまで行って、もっと自信を持つチームにしていかなければいけません。チームが勝ち切るところまで、アシスタントコーチ、選手のリーダーたちがどうやったら判断できるようになるか。ヘッドコーチとしてそこを見直すことが、まずいちばん大事だと思っています。

選手たちがプレー中、倒れても立ち上がってもう一度プレーに参加している姿は、一人ひとりのチームメイトのため、自分のためという気持ちの表れだと思いますし、そういう意味で今日の選手たちは、サンゴリアスの選手であることに誇りを持てるパフォーマンスだったと思います。

そしてこの厳しいハイパフォーマンスのリーグの中で上に行くためには、結果を出さなければいけません。今日で3勝3敗ですが、次には絶対に勝って、モメンタムになるようにしないといけないと思っています。

第8節 vs. 浦安D-Rocks ◯ 41-19

Kosei_10.jpg

選手たちが準備したことが、見えた試合でしたし、また選手とスタッフのこの試合に向けた、試合を意識した準備期間だったと思います。試合をどれだけ意識して準備したか。みんなラグビーをわかっているので、こなすことはできると思うんです。前の試合が中止になって、結構長い準備期間になったんですけれど、試合と同じ緊張感を持って、選手たち、サム・ケイン、ホッコ(ホッキングス)、ユタカ(流)を中心に、試合が中止になった1週間はコミュニケーションを取って、自分たちで緊張感をつくった上での練習ができたと思います。

週を通して何が起きるかわからないと思いますが、練習でやっていることが試合で出せれば、選手たちの自信になると思います。そこは自信の積み上げで、来週の試合はキヤノンの強みも理解して、どうやって自分たちの強みを出すかというところを、ゼロからではありませんが、もう一回積み上げていかなければならないと思っています。でも、やっていることが試合で出せるということは、やはり自信になると思います。

その中で何にフォーカスして、15人、23人が、今週何がいちばん大事かということを理解した上で、この1週間の準備をしたいなと思います。みんながこれが正しい、これが勝ち方だと思って、準備することが大事です。ラグビーって正解がないと思っていますが、ひとつの「これをやりたい」というところに、みんながコミットすることが大切です。自分とコーチとのコミュニケーション、コーチから選手たちへのコミュニケーション、選手内でのコミュニケーションを、3つ4つのポイントに絞って準備できたらいいと思います。

何よりも、勝ったことを喜ぶことが大事だと思います。試合に向けて精神的にも身体的にも、みんないろいろきつい準備をしないとダメなので、そこで試合をやった上でこうやってしっかり勝って、もう一回修正できるというのは、とてもいいことだと思います。もちろん満足はしていませんし、最後にシーズンが終わって優勝というのがゴールですが、それに向けてひとつ達成した、ひとつ積み重ねたという自信は持っていいと思います。

<続く>


(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ