連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2005年8月9日

7月時点での農水省の2005年ぶどう収量予測が公表されました。これによるとフランス全土の収量見込は55.2百万hlでしたが、これは前年比6%減で、ほぼ平年並み(1%増)となるようです。ボルドーを含むジロンド地方では、6.5百万hlで前年比16%減、平年比でも3%減が見込まれています。一方で在庫は、前年の豊作の影響から、フランス全体で94百万hlまで積みあがり、厳しい在庫過多状況が継続されると予想されています。

他の産地に関しては分かりませんが、個人的にはボルドーでの収量はもっと少ないのではないかと考えています。理由は3つあります。

1)INAO(国のAOC管理機構)の収量制限が厳しくなり、各AOCの生産上限が15%程度下がる可能性が高いこと。
2)開花期の低温で、部分的に花ぶるい(※1)が見られる産地が多いこと。
3)1976年以来といわれる乾燥が続いており、ぶどうの果粒がかなり小さくなりそうなこと。

まず1)については、INAOにより例年産地ごとに決定される生産上限(例えばサンジュリアンはここ数年58hl/ha)が、今年はほぼ一律に50hl/haに制限される可能性が高まっています。昨年は、INAOが生産上限「58hl/ha」を認めたにも関わらず、CIVB(ボルドーワイン評議会)によって販売は「50hl/ha」しか認められないという歪みが生じ、論議を醸したので、今年は生産自体も50hl/haに抑えられると予想されています。最終決定は9月上旬ですが、その可能性が高いため、各生産者は、夏場の摘果管理を強化するのではないでしょうか。

2)と3)については、今年の気象条件によるものです。今年のフランスは全国的に降水量が少なく、既に2/3にあたる66県で水の使用制限がかかっており、長期予報でも夏の降水量は少ないと言われています。ボルドーの1-7月の累積雨量は、平年527mmに対し267mm(51%)、特に5-7月は平年202mmに対し、68mm(34%)しか降っていません。もちろん収穫期あるいはその直前での降水量が果実の肥大には最も影響が大きいため絶対ではありませんが、現時点の感触としては、かなり収量が減る可能性が高いと感じています。

量は減ってもぶどうの品質という意味で、この乾燥はポジティヴなのですが、生活面から見ますと、特にフランス南西部での水不足は今や深刻な問題となりつつあります。農業用水の規制に止まらず、住民の生活でも制限がかかり始めました。例えばボルドーでも洗車場以外での洗車の禁止、ゴルフ場以外での芝生への散水禁止などが実施されています。シャトーの中庭への散水も禁止ですので、芝が大丈夫かちょっと心配しています。もっとも、ゴルフ場のオーナーはもっとハラハラしているかも知れません。地元紙では、『1ゴルフ場当りの散水量は住人約3000人分に相当するので、制限すべき』との手厳しい記事も見られますので、このまま乾燥が続くようであれば、ゴルフ場での制限も必至と思われるからです。

さて、ぶどうの生育状況ですが、上記のような天候の下、理想的な生育を続けています。ベレゾン(※2)も平年より早く進んでいる上、8月に入ってからは酷暑も一段落し、ぶどうにとっては理想的な気候が続いています。夏に雨が少ない分秋に…とならない事を祈りますが、あとは天任せです。人にできることは、摘葉、摘果をきっちりと行い、仮に収穫期までの天候が悪化した場合でも十分な品質が維持できるよう準備を整えることです。今回は、摘葉と摘果の写真を掲載してみました。摘葉については、ぶどうの成熟度を高めることや、湿度を下げることでの病害減少効果が期待できることから、ここ数年作業が標準化されつつあります。摘葉機の開発も進み作業が標準化されるに伴い、栽培管理の変化にも繋がりつつあります。この点に関しましては、別途折を見てご報告したいと考えています。

※1 花ぶるい:開花時の天候不良などにより、実を結ばず花のまま終わってしまうこと。

※2 ベレゾン:果房の着色開始。白の場合、果粒が柔らかくなり始める事で判断。

極度の乾燥により、ぶどう畑横の用水路も渇水状態。
極度の乾燥により、ぶどう畑横の用水路も渇水状態。
摘葉、摘果後の株の状態。作業はベレゾン期に行われる。
摘葉、摘果後の株の状態。作業はベレゾン期に行われる。
摘葉、摘果により、ベレゾンの進行自身も促進される。
摘葉、摘果により、ベレゾンの進行自身も促進される。
ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
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