義務化で求められる職場の熱中症対策!【症状と初動対応を解説】

平均気温の上昇に伴い、熱中症にかかる患者の数は増える傾向にあります。厚生労働省の2025年(12月末速報値)のデータによれば、職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は1,681人にのぼり、前年比では486人(約41%)増加していました。熱中症は真夏の屋外だけではなく、条件によっては屋内でも起こります。適切な対処をしないと重大な労働災害につながるケースもあり、職場でも注意が必要です。
この記事では、熱中症対策が義務化された背景を起点に、症状や重症度の見分け方、初動対応の重要性を整理し、企業が重篤化防止のために取り組むべき対策のポイントを解説します。

注目される職場の熱中症対策とその背景

近年、職場での熱中症対策は企業の重要な取り組みの一つとして注目されています。職場での熱中症による死亡事故の発生などを背景に熱中症対策が義務化され、企業には具体的な予防体制と迅速な対応が求められるようになりました。また、対策は法令への対応という側面だけでなく、夏場でも従業員が安心して働ける環境づくりや、従業員を尊重する企業姿勢を示す取り組みとしても重要です。まずはその背景を確認しましょう。

増加する職場の熱中症死亡災害と初動対応の重要性

厚生労働省の統計によると、2022年から2024年までの3年間、熱中症による労働災害では毎年およそ30人の死亡が確認されています。死亡災害の約7割は屋外作業で発生しており、特に7月・8月に集中する一方、10月から翌年5月と真夏以外の時期にも発生しています。これらの死亡災害の背景には、多くのケースで初期症状の見逃しや対応の遅れが指摘されています。
熱中症は重篤化の進行が早く、初動対応の遅れが重大な災害につながります。現場任せにせず、企業として予防と対応を仕組み化することが重要です。では、企業には具体的にどのような対応が求められているのでしょうか。

初動対応の徹底を目的に義務化された職場の熱中症対策

職場での熱中症災害の増加を受け、労働安全衛生規則が改正され、2025年6月以降は事業者に具体的な熱中症対策が義務付けられました。WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境で長時間作業が見込まれる場合、企業は熱中症の早期発見と重篤化防止のため、「報告体制の整備」「悪化防止措置の手順作成」「関係作業者への周知」を実施する必要があります。
適切な対策を怠った場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性もあり、熱中症対策は安全管理の一環として企業が主体的に取り組むべき重要課題となりました。

そもそも熱中症とは?

「熱中症」はよく耳にする言葉ですが、具体的にはどのような病気なのかをまず確認しておきましょう。

熱中症の定義

熱中症とは、高温で多湿な環境の下で体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節など体の重要な調整機能が働かなくなったりして発症する病気の総称です。

症状は多彩で、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛、吐き気・嘔吐、倦怠感・虚脱感、意識障害、痙攣、手足の運動障害、高体温などが起こります。

<イメージ図>熱中症とは、体内の水分や塩分バランスが崩れ、体温調節機能が働かなくなり、体温が上昇することです

日本の夏は気温・湿度共に高く、近年は特に厳しい蒸し暑さが長期間に渡って続く傾向にあります。そのため、汗をかいても体温調節機能が十分に働かず、熱中症のリスクが高まりやすくなっています。職場においても働く環境への配慮が不可欠です。

熱中症の原因については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらもご覧ください。
熱中症の原因とは?起こりやすい条件となりやすい人、企業の対策事例を紹介

熱中症の具体的な症状

熱中症にはさまざまな症状が現れるのが特徴です。それぞれ次のような病名が付けられています。

熱失神 暑熱環境下で皮膚血流の著しい増加と多量の発汗とにより、相対的に脳への血流が一時的に減少することにより生ずる立ちくらみが起きる。
熱けいれん 汗で失われた塩分が不足することにより生ずる筋肉のこむら返りや筋肉の痛みが出る。
熱疲労 脱水が進行して、全身のだるさや集中力の低下した状態をいい、頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐などが起こる。
熱射病 「熱疲労」を放置した状態。中枢神経症状や腎臓・肝臓機能障害、さらには血液凝固異常まで生じた状態のことで、普段と違う言動やふらつき、意識障害、全身のけいれん(ひきつけ)などが現れる。

出典:厚生労働省『職場でおこる熱中症』


実際の現場では、これらの状態が混在して発生します。一般社団法人日本救急医学会『熱中症診療ガイドライン2015』では、熱中症の症状をI度~Ⅲ度に分類しています。

Ⅰ度(軽症)

めまい、立ちくらみ、生あくび 大量の発汗 筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、意識障害を認めない
<臨床症状からの分類「熱けいれん」「熱失神」>

Ⅱ度(中等症)

頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下
<臨床症状からの分類「熱疲労」>

Ⅲ度(重症)

中枢神経症状(意識障害、小脳症状、痙攣発作)、肝・腎機能障害、血液凝固異常
<臨床症状からの分類「熱射病」>

重症度を判定する際に鍵となるのは「意識がしっかりしているか否か」です。少しでも意識状態がおかしいと思われる場合は、Ⅱ度(中等症)以上と判断して病院への搬送が必要になります。完全に意識がない場合は、全てⅢ度(重症)と判断して、絶対に見逃さないことが重要です。

もしかして熱中症?というときの判断と対処法

熱中症の症状は多彩で、めまい・失神、頭痛・吐き気、けいれんなどさまざまです(イラスト参照)。高温多湿な環境下などで、イラストにあるような症状が見られたらまずは熱中症を疑って対処しましょう。

<フロー図>熱中症への対処・判断の流れ(完全に回復するまで、1人きりにしないことが重要です)

意識があるか確認する

まずは涼しい場所に避難させ、意識があるかどうか確認するために、次の質問をしてみます。
・自分の名前
・当日の日付
・現在の居場所
・直前まで何をしていたか
もし、返事の内容がおかしかったり、返事がなかったりした場合はすぐに救急車を呼びます。意識があったとしても、症状が完全に回復するまで必ず誰かが付き添うようにします。

自力で水分を取れるか確認する

意識がある場合も、服を緩めて体を冷やします。その上で冷たい飲み物を渡し、自分で飲めるか確認します。冷たい飲み物は胃の表面から体の熱を奪い、同時に水分補給もできます。経口補水液やスポーツドリンクなどが最適です。

吐き気を訴えたり、嘔吐したりする場合は、口から水分を取るのは難しいです。病院での点滴が必要ですから、すぐに救急車を呼びましょう。

状態が回復するか確認する

意識がしっかりしており、自力で水分を取れる場合は、体を冷やしながら症状が回復するか、状態を見ます。完全に回復するまで安静を保ちます。もし症状がよくならなければ、救急車を呼びましょう。

熱中症の具体的な症状については従業員に周知しておき、いざというときにすぐ気が付き、対処できるようにしておくことが大切です。

職場の熱中症の応急処置と救急搬送のポイント

これまで見てきたように、職場での熱中症死亡災害の多くは、初期症状の見逃しや対応の遅れが要因となっています。特に重篤化を防ぐには、現場での応急処置や搬送判断を適切に行う初動対応が鍵となります。
こうした背景を踏まえ、法改正では重篤化防止のための3つのポイントとして「報告体制の整備」「悪化防止措置の手順作成」「関係作業者への周知」が求められています。ここでは、その中でも悪化防止措置にあたる、現場で押さえておきたい応急処置と救急搬送のポイントについて解説します。

応急処置:涼しい場所へ移動、衣服を緩める、冷却(首・脇・足の付け根)

熱中症が疑われる場合は、次の手順で迅速に対応します。なお、経過観察中は対象者を決して一人にせず、必ず誰かがそばについて状態を継続的に確認してください。

1.涼しい場所へ移動させる

・冷房の効いた室内、または風通しのよい日陰へ移動させる
・地面や機械の熱が強い場所は避ける

2.身体を冷却する

・衣服や装備を緩め、体の熱を逃がしやすくする
・首まわり、脇の下、足の付け根など太い血管を重点的に冷却
・保冷剤、氷水、濡れタオル、送風などを組み合わせる

3.水分・塩分を補給させる

・意識があり自力で飲める場合のみ経口補水液などを補給
・無理に飲ませず、状態の変化を継続して確認する

サントリーでは法人専用の熱中症対策サービスを提供しています。応急処置での水分・塩分補給としてはもちろん、熱中症予防としてもご活用いただけます。

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暑く過酷な環境で働く人を想定して開発された法人向けの熱中症対策飲料です。発汗時に失われやすい塩分と鉄分を補給できる設計で、0カロリーのため作業中でも飲みやすいのが特長です。厚生労働省が推奨する食塩相当量の基準にも配慮した中味設計となっています。

DAKARA PRO

救急搬送:危険な症状が出たときの行動フロー

次の症状が見られる場合は、速やかに救急搬送を検討します。

救急車を呼ぶべきタイミング

・呼びかけに応答しない、受け答えが不自然
・けいれんがある
・ふらつきが強く歩けない
・自力で水分補給ができない
・体が異常に熱い、皮膚が赤い、発汗しない
・処置後も症状が改善しない

※判断に迷う場合は「救急安心センター(#7119)」に電話して相談することも可能です。

また、医療機関に正確に状況を把握してもらうために、症状だけでなく以下のような情報を伝えるとよいでしょう。

救急隊へ伝える情報

・発症した場所の環境(気温、湿度、屋外か屋内かなど)
・何時間その場所にいたか
・どのような活動をしていたか
・どのような服装をしていたか
・本人の身長、体重、既往歴、服用中の薬など

熱中症の疑いのある人を医療機関に搬送するときは、発症時の状況をよく分かっている人が医療機関まで付き添うようにしましょう。医療機関に発症までの経過や発症時の症状などを伝えることで、的確な処置につながります。

サントリーでは、法人企業向けの熱中症対策セミナーも実施しております。

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まとめ

熱中症は気温や湿度の高い環境で発症しやすく、早期の気付きと適切な対処が重篤化防止の鍵となります。近年は職場での発生増加を背景に対策が義務化され、企業にも具体的な対応が求められるようになりました。症状を正しく理解し、基本的な応急処置を把握しておくことが重要です。加えて、そもそも熱中症を引き起こさないための予防策を日常的に整えておくことも大切です。日頃からこまめな水分・塩分補給を促すなど、現場で実践できる対策を整えることが、従業員の安全確保につながります。

サントリーの『法人専用熱中症対策サービス』では、『DAKARA PRO』を始めとする熱中症対策飲料をご提供しています。従業員が専用カードを自販機にタッチするだけで、いつでも冷えた飲料を入手でき、利用状況をデータで管理できるサービスです。従業員向けの熱中症対策セミナーなど安全教育のサポートも行っており、ご好評いただいています。詳しくは以下のリンクをご参照ください。

監修ドクター紹介

田中 完(たなか・ひろし)先生

KOMET産業医センター 統括指導医
株式会社 HJ Link-do 代表取締役
医療法人 Link-do 総長

名古屋徳洲会総合病院・救急総合診療科勤務、製鉄会社専属産業医を経て2022年実践的産業医育成を行う神栖産業医トレーニングセンターを開設。2023年に小規模事業所にも手厚い産業保健サービスを提供することを目的に産業医DX、産業医支援(SaaS)を提供する株式会社を設立。
製鉄会社産業医のころより熱中症対策に力を入れ、2016年以降中央労働災害防止協会・熱中症予防対策の講師を務める。その他、熱中症対策ウエアラブル装置のベンチャー企業のアドバイザーを兼務。

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