2026年7月31日
#1027 中村 亮土 『インタビューのもっと深いところ』
スピリッツ・オブ・サンゴリアスが数百回目を迎える直前、「その記念の回には僕がインタビュアーになって逆インタビューします」と言ってくれた中村亮土選手。その時は実現しませんでしたが、今回の最後のインタビューで「やってみよう!」ということになりました。インタビュアー中村選手xインタビュイー針谷をお届けします。

◆インタビュー中に泣く
――いつからSPIRITS OF SUNGOLIATHは始まったんですか?
2006年です。
――20年!20年もの間、選手やスタッフにインタビューをしていて思い返してみて、この人へのインタビューがめちゃくちゃ印象に残っているというものは?
それは森川由起乙選手です。森川選手への1回目か2回目かのインタビューの時です (#535)。これまで1000回を超えるインタビューをしている中で、唯一、インタビュアーとして泣いたんです。
――それはなぜですか?
父親の話と帝京大学の監督の話が交互に出てきたんですが、どちらの話でも森川選手は愛されていると感じました。たぶんその親心みたいなものが、その時の自分の琴線に触れました。
――インタビュー中に泣くって、ユキオは泣いているんですか?
森川選手は淡々と喋っていました(笑)。冷静で「なんで泣いているんですか?」くらいの感じでした。呉選手もそうですが、森川・呉兄弟は心の奥底にとてつもない熱さを持っていますよね。呉選手にインタビューをしていても、途中からお互いにテンションが上がってくることが多いです。
――なんかイメージできます(笑)
それがいちばん印象に残っています。
――20年間やっていて、その時代も感じながら、監督も代わってチームの雰囲気も変わってくると思うんですが、その間に何がいちばん変わったと思いますか?変わらない部分はありますか?選手が発する言葉からの空気感みたいなものは?
いちばん変わったのは、選手がとても尊重されるようになったと思います。選手の意識というか、「自分がやることは何なんだ?」と、常に選手は自分に問いかけながらやっているように感じます。以前までは「これをやれ、そうすれば勝つぞ」ということがラグビー界全体にあったと思いますが、今はそういう時代なんだと感じます。
変わらないことは、いちばん最初に府中に来た時から変わっていません。選手たち皆が、例えばその時は僕も新米スタッフでしたが、そういうスタッフに対しても気にかけてくれていることがわかりました。皆優しいんです。そしてクラブハウスには、常に美味しい飲み物と食べ物が用意されていて、飲食を通じてのコミュニケーションもあります。
もうひとつは自分自身がこのグラウンドに来た時に、「うゎーっ、素晴らしい!この場所には日本のトップ選手が揃っていて、このチームや選手そしてラグビーの魅力を伝えるために、週にひとりずつインタビューをしていっても、全員終わるのに1年かかるな」と、素材の宝庫だと感じました。
極端な話、ここで取材中に自分が芝生の上に倒れてもしそれっきりになったとしても、何も後悔しないというくらい幸せだなと思いました。その気持ちは今も変わりません。

◆もうひとつ中に入ってくる感じ
――インタビューのもっと深いところを聞きたいのですが、それぞれその人によって聞くテーマを決めていると思います。それは何を持って、どういった観点から決めているんですか?
ひとつは試合を見ていて、「どうしてあんなプレーができるんだろう、ここで何を考えながらプレーしていたんだろう」という部分が、活躍した選手には必ずあります。そこをまず聞きたいと思いますし、その選手でしか味わえないこと、見ていただけではわからない内面を聞きたいということで、まず人を決めています。それから質問事項は前の質問に答えてくれた選手のコメントの中にあって、選手が喋った中に更に聞きたいことがたくさん散らばっています。
――それが針谷さんの得意なところですよね(笑)。僕が言ったことに対して、それってどういうこと?どう思ってやっているの?と、もうひとつ中に入ってくる感じは、このSPIRITS OF SUNGOLIATHならではの言葉の引き出し方ですよね
答えは選手の言葉の中にあるんだと思います。いちばんつまらないインタビューは「これを聞きます、次にこれを聞きます、結果としてこれを言ってもらえれば大丈夫」というように、ストーリーが予めできているインタビューだと思います。
――はいはい、僕もそういうインタビューが来られると答えたくないですもん
それがいちばんつまらなくて、選手がどう答えるかによって、このインタビューがどこに行くかわからない、試合と同じようなものですよね。まさに今、一緒に何かをつくっているという感覚で、運が良ければそこに新しいものが生まれるんじゃないかなと思います。よく外国人選手は「Good Question」って言ってくれますが、そういうことを言う時は「それは今まで考えたことがなかったな」ということだと思っています。今まで考えたことがなかったことを一緒に掘り下げていくということが、面白いんじゃないでしょうか。
あと、わかったふりをしない、ってことも常に気をつけています。選手に「この人は自分のことを知っている」と思ってもらえる信頼感は大切ですが、選手が言ったことの意味を自分なりに理解して「わかった」と思ってしまうと、次の質問は出てきません。なので、選手の言葉がシンプルな時は、それはこういうことですか?と自分なりの解釈で聞き直してみます。そうすると「はい、そうです」もありますが、キッパリと「違います」と言われて(笑)、その後説明してもらうこともあります。
ですので自分の気持ちを常に白紙の状態にしてインタビューできているか?インタビュアーとしての心のコンディショニングも大事で、そこは毎回気をつけています。あとはリスペクトですね。試合に出ていない選手であっても、みんな日本の何本かの指に入る優秀なラガーマンであり、トップアスリートです。その人に僕が知らないことを聞くという姿勢は常に変わりませんし、僕はファン代表という意識でずっといます。

◆こんなことを思っていたんだ
――僕は他の選手のインタビューが出た時には必ず読んでいて、「あ、こんなことを思っていたんだ。意外にこういうことを考えていたんだ」と感じることがとてもあります。ふだん見えている時との違いもありますし、やっぱりふだん言っていることと同じことを言っていて、正直だと感じる選手もいます。そこでその選手のことを知るという部分では、本当に良いものだと思っています
そう言っていただけて、本当に嬉しいです(笑)。
――だからこそ深いところを探って欲しいと思いますね。普段じゃ聞けないようなところを
昔の話になりますが、ある選手のSPIRITS OF SUNGOLIATHをその奥さんが読んで、泣いたという話をその選手から聞きました。
――そうかもしれないですね。応援してくれる人たちがいちばん喜んでいるかもしれないですし、嬉しいでしょうね。アスリートって自分で抱え込んで自分で解決しちゃう人が多いので、相談しても仲間内だけとかの人もいるので、そのインタビューで初めて想いを知る人は多いかもしれないですね
それはとても嬉しかったですし、そういうやりがいを自分で見つけながら、役割を全うしながら、自分の範囲を超えないように、初心忘れるべからず、で毎回やっています。選手たちの年齢層は23歳くらいから35歳くらいまでで変わらないのに、僕は始めた時から比べると20歳も上になっています。それによって年齢的なギャップは出てきています。そこを読者が感じられることもあるかもしれませんが、ラグビーの素人であることを常に思い返して自覚しながらインタビューする。「なぜこれを始めたのか?」それこそ毎回インタビューの前に思い返しながらやっています。

◆ストーリーを作らない
――インタビューをする上での覚悟というか、僕らの試合で言うものが針谷さんでいうインタビューじゃないですか。決心してやることってありますか?
何でも来いって感じです。
――心構えはそんな感じなんですね
こういうふうになって欲しいという気持ちを捨てます。
――ストーリーを作らないと。それって着地点が難しそうですね
やっぱり共通して聞いていることは、現状と課題と目標なので、その辺の大きな流れはあります。ただ着地点は、ほぼ聞きたいことが聞けた、というところです。ほぼ記事として載っている順番で聞いていて、前と後ろを入れ替えたりということはほとんどありません。ですので面白いところで終わって余韻を残すことも結果的にあったりしますが、ほとんどの場合はとことん聞いて、「もうこれ以上話すことはありません」というところが着地点になっています。
話を聞いている時と、後から文字にして読んでいる時と、面白さが違ったりする場合もあります。「今日のインタビューはあまり面白いものにならないのでは?」と感じたものでも文字にすると面白かったり、その逆でインタビューをしている時はとても面白かったのに、文字にしてみたらそうでもないと感じる時もあります(笑)。

◆サンゴリアスだけの道
――未来の話をすると、「チームがもっとこうなって欲しい」とか「こうなったら良いのにな」と、チームを客観的に見て思うことはありますか?
強いサンゴリアスであって欲しいと思いますし、いろいろなところにサンゴリアスにしかないもの、サンゴリアス発の新しいスタイルが生まれてきたらいいなと思います。
――我が道を行くじゃないですけれど、サンゴリアスだけの道を作って
はい、そうやってサンゴリアスの道を行くというのが理想的ではないでしょうか。競技面で言えば、みんな日本代表になって欲しいですしね。
――サンゴリアスにいる選手は、みんな入れると思います。もし日本代表に入れない理由があるんだとしたら、そこから逃げずに、言い訳をせずに、そこと戦って欲しいと思います。そういう意味では、可能性はたくさんありそうなので楽しみですね
そうやって戦ってきた中村選手の話は、いつも面白かったですし、それを順に読んでいったら、まさに成長の軌跡だと思います。
――僕も喋れないことがたくさんありました。喋れる範囲ではぜんぶ話そうと思っていましたが、自分だけじゃないこともあるので。まあ、そこに配慮できることもラグビーの良さかなと思いますね
そこを言い始めたらきりがないですよね。
――そんなことはたくさんあって、上手くギリギリのラインを聞きこんでやって欲しいですね。これからは僕もチームの状況がわからなくなってしまうので、辞めてからの方がいつインタビューが出るかを気にかけるかもしれないです。今後も楽しみにしています

◆本当に魅力ある選手たちがたくさんいる
逆インタビューでいつものSPIRITSに一瞬戻って欲しいのですが、SPIRITS OF SUNGOLIATHの登場回数が中村選手は歴代ダントツの28回です。インタビューをお願いされた時の気持ちって、どんなものですか?
――やりたくない時期もあるんですよ。喋ることがないという時と、今はあまり気持ちを出したくないという時があるんです
それは結果を出してから喋りたいということですか?
――それはあるかもしれません。耐えている時はあまり言いたくないというか。
そういう時にインタビューを受けた時もあったんですね
――そうです。そういう時に引き出されるんですよ(笑)。今日はあまり話さなくてもいいかなという時にも引き出されるので、上手いなーって思っています(笑)
こっちも必死ですから(笑)。
――お互いに戦っているみたいなものですね。本当に魅力ある選手たちがたくさんいるので、それを読者やファンの皆さんに伝えられるように、これからもお願いします
ありがとうございます。

――最後に読者に向けてメッセージはありますか?
SPIRITSはウェブサイトのコンテンツとして展開していて、今システム上、一方通行だと思います。あまり僕の顔も知らないかと思いますが、試合会場などで会った際には、良い方も悪い方も含めて、感想をもらえるとありがたいです。
――では、この辺で終わりにしましょうか
またいつかサンゴリアスOBとして、インタビューを受けていただければと思います。
――そうですね(笑)。機会があれば
ありがとうございました。
――ありがとうございました
<了>
(インタビュー:中村亮土)
[写真:長尾亜紀]