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SPIRITS OF SUNGLIATH

#602 田村 煕 『楽しく思いっきりやる』

開幕戦でサンゴリアス・デビューを果たした田村煕選手。初トライも記録した開幕戦を振り返りながら、サンゴリアスへの思い、そして今シーズンの展望について訊きました。(取材日:2018年9月3日)

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◆キックは大事

――開幕戦、5点差で負けていてホーンが鳴った状況でプレーしている心境はどんな感じなんですか?

ホーンが鳴ってスクラムを組みましたがその前までアタックしていて、完璧には崩せていなかったですが、トヨタが疲れていたのが分かっていました。サンゴリアスがいつものスピード感がない状況で終始相手のディフェンスの圧力に負けていましたが、あのゾーンに入って相手のラインアウトが途中で乱れた時点で何かいける気はしていました。どちらかというとポンポンと点を取られて途中で結構点差が開いた時にはチームがどうなるかなという感じだったんですが、なんとかなりました。

――もう何点か取られていたら危なかったですね

相手のキッカーがコンバージョンを結構外していましたが、キックが入っていたら負けていましたし、僕の3点キックも大事なところで1本外しているので、キックは大事だなと思いました。

――認定トライでなく、あそこで通常のトライを獲っていたら、またコンバージョンがどうなるか分からなかったですよね

そうですね。途中で最後のスクラムになる前に幸太朗さん(松島)がペナルティでタップして僕にパスして少し抜けた場面があったんですが、正直本当は外に流れて行ってハンドオフしてそのままトライできたと思います。2点のコンバージョンキックに自信がなかったわけではないですが、トライを取るなら勝ちたいというのもあったので、内側にステップを切って真ん中でトライを獲ろうとしたら転びました。

――それはある意味余裕があるというか、いろいろ考えた上でのプレーですね

そうですね。アドバンテージが繰り返し何回か出ていて、最後にも出ていたので、みんな思いっきりアタックしていましたし、そうではない時はしっかりボールキープしていました。1回ヘンディー(ツイヘンドリック)が左奥の方で真っすぐ突っ込めば行けそうだった場面もありましたが、あれでトライラインにパイルアップみたいになってしまうと、そのまま試合が終わってしまうので、行ききらない場面もあったり、みんなちゃんと状況が分かっているんだなという感じでした。

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――白熱した中でも気持ちはみんなクールだったんですね

そうですね。エキサイティングの中でもクールでした。最後行く前に1回相手にジャッカルされて相手ラインアウトが乱れてまた攻撃がそこから始まったんですが、そのジャッカルされた時には、僕はあまり思わなかったですが、みんな「やばい、あと2〜3分か」という感じでした。相手も結構時間を使ってきていましたが、でも、乱れた時にマイボールになれば良いし、「いけるな」という感じでした。

ただ僕が幸太朗さんと合わなくてトライを獲られた時は、トヨタ側の声援が凄くて本当にコールが聞こえなくて合わなかったし、最後ゴール前の時もトヨタの声援が凄かったので、トップリーグであんな観衆の中でやることは初めてなので良い経験でした。

――それだけのお客さんに見られているというのは、選手間の声が聞こえなくなっても選手としては嬉しいんですか?

大学の時に早明戦に出させてもらったりして観客が多い中で何回かやっているんですが、基本的にお客さんが多くてあれ程のアウェーではなかったので、あのような状況は初めてでしたね。でも、僕は一応豊田に父がいたので地元で知っている人もたくさんいて、アウェーでしたが知っている顔はちらほらいました。

――プレー中はクールでも、勝った瞬間はみんな大喜びしていましたか?

その瞬間は相当喜んでいましたね。最後も相手のキャプテンにシンビンが出て、しかもトヨタの強みのセットピースのところで押し切って、相手が反則してのペナルティトライなので、本当に嬉しかったです。

ただ、試合はもう全部トヨタがコントロールしていたし、サントリーが何も出せない状況でした。トヨタが全てに準備してきたものを出して来て、もちろん会場も相手の雰囲気という中でほぼ負けていた試合でした。そんな中で結果的に勝ったということは、僕は今年からこのチームで出ていますが、そういうチームなんだなと思いました。

――最大15点差がついて残り10分を切って12点差、それでも一緒にやっていて諦めている選手はいないという感じですか?

そうですね。僕が後半の最初の方に3点を取りに行った時点で、ベンチからも3点取って2トライ獲れば逆転という計算だったので、みんなやることは明快だという感じだったんじゃないですかね。

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◆1勝はとても大きい

――ギタウ選手にアクシデントがあって、前半28分から出場する時の気持ちはどうだったんですか?

絶対にビックゲームでは何かアクシデントがあるし、特にアウェーなので、常にずっと動いているようにしていました。役割も明確だったので、完璧なゲーム運びはできていないですが、慌てたりとかはしなかったです。

今回は特に2年ぶりのトップリーグということもあるし、アウェーでやるのも初めてだし、いつも以上に集中してゲームを見ながら、色々なことを自分の中で予測を立てながら、ゲームに入るようにはしていました。

――入って行ってトライを獲りましたが、あの辺は見えていましたか?

本当は1つ前のチャンスのところで僕がちゃんとパスを放っていれば、簡単にトライになっていたんですが、強気に仕掛けたという結果ですかね。自分がトライを獲ろうと思っていた訳ではないですが、良い判断ができていたかなと思います。

――開幕戦の出来は何点ですか?

10点くらいですかね(笑)。勝ったから良かったですけれど、負けていたら良くない部分の方が多かったので、本当に1勝はとても大きい。特に前年に優勝したチームが開幕戦アウェーで勝つというのは、相当大きなことなんだなと思いました。試合に勝ったことは本当に良かったですが、冷静にパフォーマンスだけ見たら、キックも入れないといけないですし良くないですね。

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――完全に支配されていたゲームというのは相当研究されていたということですか?

そうだと思います。フォワードのサインもそうですが、相手の監督さんもプロフェッショナルな方で本当に準備はしっかりして来ていたと思います。サントリーのビデオを何回も観たんだと思いますし、ムーブとかサインとか全部いろいろ研究して来ていました。もともとフィジカルが強いチームなので強みを出してきつつ、サントリーがどうやったら上手くいかなくなるかを準備してきていたと思います。

――そういうことを踏まえて、今後の課題はどう考えていますか?

アウェーだから難しくてホームだったら出来るという訳ではなくて、どこのチームもサントリーをターゲットにしてくる訳で、そこで練習でやってきたことを出せるか。例えばあのように豊田スタジアムで雰囲気が変わっていつものことが出来なくなると、やっぱりあのような展開になってしまいます。

チームを1つの方向に向かわせるのもそうだし、パフォーマンスがそれによって上がってくるので、エキサイティングするところがあっても良いですが、しっかりコントロールできる力を冷静に発揮したいですね。そこは上手くバランスをとって、10番として上手くできたら勝てるし、できないと負けるという感じです。

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◆試合を組み立てる役割

――そこはやりがいですか?

さっきお風呂でたまたまジョー(ウィーラー)とも話していたんですが、例えばジョーと「この試合でラインアウトはこれをやりたい」とか「このゾーンでこれをしたい」とかいろいろ話しています。やっぱり試合を組み立てる選手は決まっていて、9番もそうですし、ラインアウトで統制をとる人もそうですし、僕もそうです。その週のプランが出て来たらそういうことを考えています。フランカーの選手とかは役割が分かっていればボールを持って走るだけだし、やっぱりポジションによって役割が全然違うので、必然的に10番は責任が重いですね(笑)。

――それが10番の面白さですか?

はい、みんなができることではないので。もちろん僕もロックやフランカーが出来るわけではないし、逆にその人たちは10番の仕事が出来ないので、それはそれぞれ与えられた役割という感じですね。

――考えていく上での一番の難しさはどこですか?

これだけ準備したから必ずこういう風に行くということはないですし、同じ相手と毎年試合をしても毎回状況が異なっていて、傾向は一緒でも全然違いますし、それは人によっても違うし、入る人が変わってもそうです。この週にこれをこれだけ練習したから試合で必ずこれが出来るという訳では全くないので、いかに色々な状況を想定して、色々な状況になった時に引き出しとして持っている中で、すぐに試合中にパッと判断できるかがポイントですし、難しいところです。

――ベンチから見ていて、いつものサントリーではないなとすぐに感じましたか?

僕が東芝にいた時やサントリー1年目の昨シーズンの途中など、とても勢いがあった時に比べたら硬さがあって、やっぱり追われる立場だしアウェーだからなんだと思いました。でも、だからと言って「今日は負けるかもしれない」とは感じませんでした。目に見えないプレッシャーを絶対にみんな感じているというのは、ベンチで前半を見ていて感じていたので、やっぱり難しいんだなと思っていました。

――そこをほぐすというのは、そこまでは10番としても難しいですか?

そうですね。ギッツ(マット)が10番で出ていて上手くいかない時があるなら、本当にチームの中でも何か問題があるし、相手がいつもと違うことをしてきて対応しきれていない部分もあると思うし、それは誰が入っても難しい部分ですし、ずっと難しいと思いますが、だからと言って何も出来ないというわけではないと思っています。

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◆今シーズンは簡単ではない

――久々の公式戦でしたが、どんなことを考えていたんですか?

考えていたとかはないですが、改めてやっぱり長かったなととても感じました。終わった後に取材の方に「どうでしたか?」と聞かれて、たまたま相手にも茂野さん(海人/トヨタ自動車)がいたんですが、やっぱり「長かった」としか出てこなかったですね(笑)。

昨シーズンの今頃は確かにずっとノンメンバーで練習をしていたなと思いました。練習試合には出ていて、今シーズンも練習試合にたくさん出させてもらったので、メンバー発表の時も何気なく「あ、選ばれた」という感じだったんですが、公式戦だなという感じはあったので、当日になってベンチに入っていろいろなことをやってみると、「1年長かったな」と感じましたね。

――長かったと感じてどんな気持ちになりましたか?

昨シーズンはリザーブのリザーブに入って帯同させてもらっていたので、試合には出ないですが試合の雰囲気や一緒のホテルに入ってということなど、すべて経験させてもらいました。試合に出ないで帯同しているので感覚は分かりますが、いざ試合となってこのチームで公式戦に出たことがなかったので、どういう感じなのかなという気持ちはありました。でも、やっぱり試合に出た方が楽しいなという気持ちです。

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――2年ぶりの試合ということで感覚的なギャップはありませんでしたか?

秩父宮でブランビーズと試合をして、前年はワラタスとやっていますが、ナイターはしていないですし、秩父宮以外のスタジアムではやっていないので、「あぁこういう感じだったな」というのはありましたけれど、試合自体にはすんなりいつも通り入れました。

――改めてサントリーでやってみて、ここが面白いと思ったところは?

あそこからひっくり返せるチームということもそうだし、優勝しているチーム、特に2連覇している次の年なので、本当に難しいんだなと。まだ始まったばかりですけど、開幕戦でこういう試合になったのは、今シーズン簡単ではないということの表れだと思います。本当に難しいシーズンに、この1年はなりそうだなという感じがとてもしました。

――昨シーズンのメンバーとも違い、1年目の選手も出ていて、新しいチームという感じがするんですが、その辺は作っていく楽しさはありますか?

あまりそこまで余裕はないですが、トヨタもルーキーが出ていましたし、サントリーも大事なポジションでルーキーが3人出ていました。監督もよく言っていますが、ルーキーと言ってもいつ出てもおかしくない選手たちで、大学ではレベルの違った選手だった訳で、みんな本当に持っている能力が素晴らしいし、緊張も力に変えてしっかり出せている選手ばかりなので、良い選手たちだなと思います。

――先程、今シーズン難しいと言っていましたが、チームとしては今後どうなっていきそうですか?

練習中にわざとプレッシャーをかけている部分はあると思いますが、やっぱりメンバーが代わると質が落ちるとか、上手くいかなくなるとか、この前みたいな試合で負けてしまうとなると、それによって僕もそうですし、新しく入った選手に自信がなくなってしまう可能性もあります。それが良い勉強になって次のエネルギーになればいいですし、僕は言われるとうるさいなと思う方ですが、その経験がトラウマになってチャレンジすることにストップがかかってしまうようなことになると、かなり良くないと思います。

トヨタ戦は勝って反省できたから良かったんですが、本当にどの選手がどの時期にどのタイミングで出るかは全然わからないし、怪我人もどんどん出てくると思うので、昨シーズンやっていたので良く分かりますけれど、ノンメンバーの練習の日程だけをイメージしながら過ごしていると、次の週に急にスタメンという時に絶対に上手くいかないです。

言い方は悪いですけれど、これが勝てていないチームで巡ってきたチャンスならもうやるだけなので特に問題はないと思いますが、勝ち続けているチームにスタメンで出るということはとても大変なことだと思います。みんな気の抜けない、でも良い緊張感がもともとあるチームだと思うので、そんなシーズンになりそうです。

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◆学び途中

――そういうプレッシャーを更に乗り越えてチャレンジするためには何が必要ですか?

監督が負けることにビビッていつもと同じことばかりにチャレンジするようなことは絶対にやらないといつも言っているのですが、ポイントはメンタルの部分だと思います。例えば試合中、大きなスペースが出来ると思ったところに向かって思いっきりやりたいんだけど、ある種ギャンブルでもある訳です。そのプレーに対して守りに入ってしまって、固いプレーをしてしまうようなことが考えられますが、でもそれはやらないということなんです。

つまりチャレンジしたミスならまたいくらでもチャンスがくるという考え方で、監督は言っていると思います。そこは僕も1試合しか出ていないので、まだまだ感覚は掴めていないです。この前の試合中も色々とミスをしていますが、チームが良くなくても勝てるというのは、そういうところにチャレンジしていく文化があるチームだからなのかなと思います。僕も学び途中です。

――優勝を目標に、これを大切にしたいと思うことは?

楽しくやること。どんどん時間が経って、勝ち続けてプレーオフに行ったら難しくなるんでしょうけれど、でもプレッシャーが大きすぎて自分のプレーが出せなくなったり、言われたことをとりあえずやるだけでパンクしたりすると、勝つために言われたことをただやっているというプレーになってしまいます。

そうではなくて、ラグビーが好きでやっていると思うので、しっかり自分で考える余裕や幅を残しつつプレーする余裕が、持てる状態ではありたいなと思います。自分がチャレンジしたミスが大きな痛手になって負けてしまうことが、今後もしかしたらあるかもしれません。それでもみんな思いっきりやる姿勢だけは崩さない方が良いと思います。

――開幕戦でもっと簡単に勝っていたら感じないところですよね。やっぱりこれはあって良かった試練でしょうか?

そうですね。このくらい緊張感を持ってやらなければいけないシーズンという、スタンダードがしっかり決まった開幕戦だったと思います。どこも山場なんですけれど、大きな山場が来た時に対応できるかもしれない体験でした。今回の試合で自分たちが意識している以上にターゲットにされていて、最後運を味方につけないと勝てない状況になった時に、1つのミスが本当に命取りになるので、それを開幕戦で知ることができました。

傍から見たらファイナルみたいな試合をしていたので、シーズン最後のような試合を最初にしたというのは、僕もそうですし、いろいろな選手も緊張感あるシーズンが始まったという感じだと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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