SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2026年5月29日

#1016 森川 由起乙 『想いを感じながら想いを僕らにぶつけて欲しい』

鮮やかなサヨナラ逆転トライ!準決勝進出のトライを決めた森川選手に、その経緯とその後、そして準決勝へ向けての意気込みを訊きました。(取材日:2026年5月下旬)

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◆ホッとしたという気持ち

――プレーオフ準々決勝戦での決勝トライ!取った本人はどんな気持ちですか?

ホッとしたのがいちばんですね。サンゴリアスらしさが最後に出せたということも良かったですし、最後に勝って終われたということが何よりで、ホッとしたという気持ちがいちばんです。

――相当、カッコ良かったですよ

いや、僕だけじゃないです。ぜんぜん意識はしていなかったです(笑)。健太(福田)があんなふうに自分の良さを出してくれて、アドバンテージが出ている状況であの強みを出してくれたので、たまたま近くにいたのが僕で、その外側でイジー(イザヤ・プニヴァイ)がしっかりとリンケージしていて、それでディフェンスを引きつけてくれたおかげで、僕のコースが開きました。

――福田選手が前に進むこととシンクロして一緒に前に出ていましたね

僕とキエノリ(呉季依典)が順目回らなければいけなかったんですが、回る前に僕も健太にコールしちゃって、それで健太が左に反応しちゃったのかなという部分があって、右じゃなくて左に行ったのが「ヤバい」と思って、リアクションで動きました。ラッキーです(笑)。

――自分でも行こうと思っていたんですか?

いつもコスさん(小野晃征ヘッドコーチ)が言っている、アタックでのリアクションの部分で、誰かが仕掛けたところに対して近い人がしっかり動く、リンクするというところが、あの時は瞬時に出せました。

――トライをした後は、うつ伏せの状態で万歳をしているように見えました

試合を通じで、ずっと「ついてないなー」と感じていて、準備してきたことを出そうとしていたんですが、最初に自分らしくないというか、気合の空回りというか、あのような局面で飲み込まれたところがありました。

――飲み込まれたというのは相手と激しくやり合っていたところですか?

そういうところで自分のメンタルもブレたことが、その後のプレーになったんだと思います。やってやろうという気持ちと気合の入れ過ぎが、あるゾーンを超えてオーバーテンションになってしまっていたと思います。その中でも冷静にプレーしようとは思っていたんですけれど、終始ついてない部分がありました。

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◆流れを取り戻そうとした時に反則をした

――どの辺がついてなかったんでしょうか?

ゲームの流れを取り戻そうとした時に反則をしたのが僕でした。自分がイメージしていた内容とはぜんぜん違いました。自陣ゴール前でタタフ(テビタ)が取ったペナルティーを相手ボールにしてしまったというところ、あの点差でしたし、そこがいちばん大きいですかね。後半はずっと乗っかられていて、相手にモーメンタムが出てきて、相手のリザーブ選手が入ってきた時に、相手が流れを掴んでいました。その状況での出番だったので、そこで良い方向に流れを変えなければいけませんでした。
しかもタタフが流れを変えるプレーをしたことに対して、僕のひとつのプレーで相手に再度流れを与えてしまって、ラスト2分で逆転を許して、あのような状況に持って行ってしまいました。たまたま勝って幕を閉じられたのは、すごくラッキーだったと思います。

――負のサイクルに入っている中、どうやって最後のトライに持って行けたんですか?

もうラストチャンスで、行くしかない状況だったので、逆に吹っ切らないと。ついてないと思っていましたが、相手もついてないというキックで、ホイッスルさえ鳴らなければゲームは終わらないので、そこで吹っ切れました。

――よくその状態から冷静になれましたね

80分が過ぎていたので、そこから取らないと負けですし、ボールを持っていたのは僕らだったので、僕以外の14人の集中力と、「もう一回ここから」という集中力をとても誇りに思いますし、とても感謝しています。

――あの場面で他のみんなの集中力を感じていたんですね

みんな早かったですね、切り替えが。不思議な感覚でした。

――最後のアタックでは誰もミスせず、最後までつなぎ切りましたが、最後に回ってきた時はプレッシャーはありませんでしたか?

ないということはないかもしれませんが、そこに執着し過ぎても強いプレーはできません。ボールキープはできても、前に運ぶことが難しくなるので、そこはサンゴリアスが掲げているアグレッシブ・アタッキング・ラグビーのマインドで、シンプルかつ強いプレー、横との早いコミュニケーション。しっかりと横と繋がった状態で、そういうプレーをし続ける。その役割の徹底が早かったと思います。

――ずっと前から言っている自分自身のパワーリピートが体現できていたんじゃないですか?

全員ができていたと思います。

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◆どん底の状態から地上に戻ってこれた

――トライの後は万歳したように見え、その後は手をバタバタさせて喜んでいるように見えました

そこに動きの意味を聞かれても(笑)。自分の感情にあったものですかね。どん底の状態からその日のうちに地上に戻ってこれたような感じですかね。ただただ、ホッとしたというのが強く出ましたね。

――あのトライがなく終わっていたら、どん底のままだったわけですね

そうですね。怪我とは違う、結構な壊し方をしちゃっていたので。

――3シーズン前は全試合出場、昨シーズンは15試合、そして今シーズンはこれまで12試合に出場していますが、今の自分の状態は?

チームとも話しながらの僕のコンディションもありますし、特に今シーズンは敦輝(山本)も成長していますし、そういう意味では敦輝もチャンスを取れる位置にいると思います。僕もポジションを取られたり、取り返したりしている中でのプレッシャーを感じた上で、そこに自分のコンディションというところですかね。

――変わることのできたピラティスは継続しているんですか?

継続中です。良くなっていますが、その中でもラグビーはコンタクトスポーツで、日々エラーは起きるので、そこで上手く修正しつつ強化していくというところがなかなか難しいです。スポーツ選手のほとんどが痛い個所やコンディションが悪いところを抱えながらやっていると思いますが、もっともっと改善できるところはあると思います。

――痛みには強い方ではないかと思いますが、それでも痛い時は申告するんですか?

そうですね。ジャージを着て、チームに迷惑をかけてしまうのであれば申告します。自分1人の判断で試合に出た時に、できないという状況になれば、全員に迷惑をかけてしまいます。

――そこはトレーナーやメディカルと相談しながら判断するということになりますか?

そうですね。100%できない時には言うようにしていますが、あとは最終的に、自分のフィーリングです。

――年齢的なものはあまり感じませんか?

ぜんぜん感じないですね。むしろ今シーズンは、平松(航/ヘッドS&Cコーチ)とも話し合いながらやって、リピートパワーが上がっています。心拍数はやっぱり上がるんですけれど、そこでのリカバリーを早くするということに特化したトレーニングを続けています。しっかりコンディショニングを合わせながら、シーズン中は週2~3回は取り組んでいます。それが自分の中ではヒットしていて、昨シーズンよりも自分的にはパフォーマンスは上がっていると感じています。

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◆人生で初めて

――リーグ戦4位という成績で準々決勝も勝ち、今のチームの雰囲気はどうですか?

めちゃくちゃ良いと思います。

――あのトライに対して、いろいろな反響がありましたか?

人生で初めてくらいの量の連絡が来ましたね(笑)。そこに対しての喜びよりも、最終的にトライをしたのが僕であって、僕からしたら最悪の試合内容だったので、めちゃくちゃ複雑でした。良い意味では切り替えられているんですけれど、あの瞬間は不思議でしたね。チームとしてというよりも個人として、あれだけ準備したことがハマらなかったのが初めてでした。

――その反省を次に活かすことができそうですか?

もちろんです。この歳になっても、メンタルのところのちょっとしたところで、あのようなミスを重ねてしまう。あの大事な局面で、あのようなことをしてしまうということは、とても勉強になりましたし、何より勝って勉強できたこと、そしてあと2つチャレンジできるということが、とても嬉しいですね。ここはポジティブに捉えていこうと思います。

――言い方を変えると、森川選手のミスをチームで挽回したということですね

今シーズンは、チーム力があると思います。

――ご家族の反応はどうでしたか?

シンプルに喜んでくれていました。大喜びですね。僕の妻はルールなどを知らないので、僕がトライを取ったというだけで喜んでくれていました。父親も母親も、普通に喜んでくれました。

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◆僕らはずっとチャレンジャー

――もはや失うものがない準決勝に向けての心構えは?

今シーズンはサンゴリアスのラグビーを体現できている試合が多く、難しいことではありますが、それを80分間やり続けないといけない、選手58人の想いを背負って、選ばれた23人が80分間、それを体現し続けなければいけないと思います。準々決勝の前半40分は体現できていたので、ちょっとした修正をして、スティーラーズ戦では、自分の役割をしっかりと果たす。それ以上のことを求めないということにフォーカスして、自分の仕事をやりたいと思います。

――自分の役割とは?

しっかりとゲーム内容を見た上で、やるべきことをしっかりと整理して、特にスクラムやセットピースをもっと安定させること。あとどういう状況になってもプレッシャーを受けないで、プレッシャーをかけ、チームにしっかりと勢いを与える。それが自分の役割でもありますし、そこにしっかりとフォーカスして、スペシャルなことじゃなく、シンプルなことにこだわって、良い1週間を58人で過ごしたいと思います。

――準々決勝での状況を繰り返さないためには?

スペシャルなことを考えずに、起こることを想定するのではなく、目の前のことにしっかりと集中して、目の前で起こっていることに対しての自分の役割、それが何かを早く判断してやっていくだけです。

――チームとしてのハングリーさは?

満足はしていないですね。準々決勝で満足していたら、敗れたブラックラムズにも失礼ですし、僕らはずっとチャレンジャーです。優勝から8シーズンも遠のいていますし、リーグワンになってからは初年度以来決勝にも進めていないので、サンゴリアスは1番じゃなきゃダメなクラブだと思っています。

――ファンに向けて、サンゴリアスのどんなところを見て欲しいですか?

今シーズンは、これまでになかったようなシーズン途中で引退者の発表があったりしたので、ファンの皆さんも思い入れのある選手が引退したり、チームを離れることになりますよね。いろいろなシーズンの終わり方になると思いますが、その中で、コスさんがヘッドコーチで、ケイノ(サム・ケイン)がキャプテンで、バイスキャプテンにホッコ(ハリー・ホッキングス)と流がいて、響グループもいて、毎試合で勝つ準備をしてきました。

いろいろな想いが乗っかり、サンゴリアスのプレーにそういう想いが出てくると思うので、その想いを感じながら見て欲しいと思いますし、ファンのみなさんもスタジアムに来て、その想いを応援として僕らにぶつけて欲しいです。それがサンゴリアスにとってもパワーになります。そこに出ている23人、出ていない35人のトータル58人の見えない力が乗っかってくると思います。それが今シーズンのサンゴリアスの形になると思います。ラスト2試合では、PRIDE、RESPECT、NEVER GIVE UPのスピリッツが絶対に出る試合になると思いますし、またそこを出さなければ勝てないと思います。そういうところを見て欲しいです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

[追記:髭についても訊きました]

――テレビでも話題になっていましたが、その髭の手入れは?

美容室でやってもらっています。

――どのくらいの頻度で通っているんですか?

毎週くらいですかね。あまり不精に見られたくはないので。

――今のスタイルになったのは?

今シーズンからです。

――以前の爽やか路線から変身して、髪を伸ばして髭を生やしたのは、当時30歳になったからですか?

だと思います。最初は似合う似合わないではなくて、やったことのないスタイルというか、それが自分のマークというか、1年を通してのスタイルというか、そういうのになったらいいなと思って始めました。ですので、長髪だけでなく、その後シーズン前に思いっきり短髪にした時もありました。

――若い頃の爽やかスタイルと、今のワイルドスタイルでは、どちらが本質なんですか?

僕は肌が弱いんですよ。髭を剃ったりするとすぐに荒れるんです。それが嫌で伸ばしたということもあります。楽ですし、プロになったこともきっかけですね。

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