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SPIRITS OF SUNGLIATH

#596 真壁 伸弥 『磨きたい個性は"エネルギー"』

大きく、強くて、いつも頼りになる真壁伸弥選手。ワールドカップ前の今シーズンに向けて、何を考えどこを目指しているのでしょうか。お酒のことを含めて、じっくりと話を訊きました。(取材日:2018年7月17日)

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◆ラグビーの生活にコミットする

――今回の日本代表はどうでしたか?

僕は不甲斐ない結果で終わりました。最終的にジョージア戦には出られましたけれど、昨シーズン決勝からの体調不良がずっと響いてしまっていて、なかなか良いパフォーマンスが出せませんでした。一昨年のサントリーや日本代表のパフォーマンス程、納得のできたものではなかったです。

――サンウルブズは?

サンウルブズも日本代表も、ほぼ同じような感覚でした。どちらも1試合ですし、納得できるシーズンではなかったと思います。

――日本代表やサンウルブズでやりたいと思っていたことについての成果はどうですか?

いることはできたので、チームとしてどういう状況なのかということや、僕の役割は分かるようになりました。でも結局試合に出ないと、役割があったとしてもワールドカップに繋げられないと思うので、そこは出たかったですし、これからも出たいですね。

――ワールドカップへの手応えは?

ないです。チームとしてはあるかもしれないですけれど、個人的にはサントリーでもっとやらないと、次はないだろうと思っています。

――サントリーでもっとやることは?

まずコンディションを上げること。あと、セットプレーに関してはスクラムやモールの自信はついているんですけれど、ラインアウトでもっと自分の精度を上げられるようにしたいです。そして、フィールドプレーですね。

――得意のディフェンスはどうですか?

最近のジャパンではフィットネスが非常に求められるディフェンスになっているので、結局コンディションのところに繋がります。そこをしっかり上げていかなければいけないと思います。

――コンディションを上げていくためには?

ラグビーの生活にコミットすることと、意志をしっかりと持ってフィットネスをすること。

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◆俺だろ

――真壁選手は、やると言ったらやりきるタイプだと思うんですが、自分ではどうですか?

僕は年齢的に次のワールドカップがラストチャンスだと思っているので、やらないと後悔するだろうと思ってやっています。結局2015年もワールドカップでベスト8に行けなかったから後悔して2019年を目指しているので、やらなきゃという感じです。

――行けなかったという感覚はどこに?

3勝しても上に行けなかった。準々決勝に行きたいと思って取り組み、その目標を達成できたら2015年で辞めても良いと思っていたんですが、今もやっています。

――そこの執念は何に繋がるんですか?

芽生えてしまったからしょうがないですね。そう思っちゃったという感じです。

――ベスト8に行けなかった瞬間に思いましたか?

じわじわきましたね。例えば、試合に出られなかった時やノンメンバーになった時は決まった瞬間にそうなるんですけれど、今回はみんながあれだけ盛り上がっているのを見てから「行きたかったな」という思いがだんだん強くなっていきました。特に2017年から「行きたい」と思うようになりました。

――そこの根源は何ですか?

負けず嫌いだと思います。俺の代わりに矢田部(洸太郎/パナソニック)やルーク・トンプソン(近鉄ライナーズ)が出ていて、「いや違う、俺だろ」みたいな(笑)。

――しかも、もう1つ先に行きたかったということですか?

そうですね。そうなっちゃいますよね。

――チームとして見た場合に今の代表はそこに行く可能性はあると思いますか?

あると思います。

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◆強い時は常にチャレンジ

――どこが成長したところだと思いますか?

いろいろな選手がテストマッチプレーヤーになっているということです。世界基準になっているので、スーパーラグビーでも見劣りしないぐらい戦っていますし、サンウルブズのおかげで今まで日本が持っていた感覚は完全に抜け出したと思っています。2015年より今の方が良いと僕は思っています。

――スーパーラグビーでの経験はそれほど影響力があるんですね

非常に大事だと思います。コンタクトやスピードや恐怖心などの感覚も全然違うので、絶対に必要だと思います。そこに慣れていくということは大変ですけれど、3年目になったらいろいろなプレーヤーが順応しています。

――今回は1試合だけでしたけれど、サンウルブズでの慣れというのは自分自身もあったんですか?

もちろん、あります。

――今までみたいなギャップを感じるのではなくて?

恐さはないですね。イタリアやジョージアと試合をしても、スーパーラグビーの方が凄いなと思います。今まではそういう考え方がなくて、イタリアでもいっぱいいっぱいでしたし、ジョージアにもフィジカルで負けてスクラムとモールで勝てないと思ったことが何回もありましたが、6月のテストマッチはそういう部分では成長したなと思いました。

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――そうやって日本代表が成長していて、それぞれのチームに持って帰って更にチームがレベルアップしている中で、今のサントリーが更に強いというのは選手の一人としてどのように感じていますか?

サントリーが強い時は、例えばトレンドは必ずあってその中でどう勝つかをサントリーは考えて、それが正解か不正解かは分からないけれど、常にチャレンジします。

――停滞していないということですか?

同じことをしないというわけではないけれど、他のチームがやりたくなることを毎回探してやっているという感じです。失敗があったとしても、自分たちがやるべきことをシーズン通してしっかりとやり通せます。チャレンジしているチームだから、勝っていけているのかなと思います。

――トータルで見て、昨シーズンはどうでしたか?

優勝した後で追いかけられる立場だったので非常に難しかったです。1回優勝した時は、一人一人のラグビーに対する考え方がレベルアップしたから勝てました。それで、もう1回優勝するためにどうするかと考えたら、フィットネスや精度をもっと高めないと勝てないというみんなの意思があったので、ナレッジの部分に加えてもっとハングリーにやれたと思います。

――今シーズンに向けてはどうですか?

今シーズンが非常に勝負の年だと思います。僕がキャプテンをやった時も優勝して、翌年ハングリーというテーマでやりましたが、3年目というのは難しいです。3年目こそ、新しいことにチャレンジすることが大事だと思います。例えば、もっとセットピースを重視してみたり、アタックがフォーカスされているけれどアタックをするために止めるディフェンスをしたり。そこら辺は沢木さん(監督)がサントリーのDNAを分かっていると思います。一番サントリーが好きですからね。

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◆ウイスキープロフェッショナル

――プロフェッショナルさを感じますが、自分自身はサラリーマンという意識なんですか?

サラリーマンで二足のわらじを履いているので、切り替える時はもう一方のことを一切考えないようにしています。ふつう仕事が上手くいかない時はラグビーも上手くいかなくなってしまいますので、ラグビーをやっている時はラグビーだけを考えるようにしています。代表でも一緒で、代表にいる時は代表のことだけを考えます。

――仕事で目指している"プロフェッショナル"というのはどんなものですか?

長期的なスパンで仕事に就けていなくて、そういう部分では全くスキルがないので、単発的なスキルとしてウイスキーの勉強をして、どこでも行ってポンっと出せるような仕事をしたいと思って、その方向に働きかけています。

――それはどんな仕事、役割なんですか?

「ウイスキープロフェッショナル」の資格を取ってチャレンジしてみたいと思うことは、有料のセミナーを開催してみたいです。

――どんなセミナーですか?

ウイスキーです。こっちの方でもしっかり自立できれば良いと思っています。

――これはまだ取っていないんですか?

取りましたが、やるかどうかは仕事の関係でまだ分かりません。部署もそういう部署ではないので。

――そこを分かっていながらあえて取った心意気や目指しているものは?

ラグビーをやっている間に取ったら有利になると思ったからです。会社の自分の仕事に対しても有利ですし、結局ラグビーもそうですが仕事の時はラグビーを利用しています。ラグビーの時も資格があれば、広報誌でウイスキーについて取り上げてもらったりと結構良い効果がいっぱいあります。ウイスキーに詳しいだけではそういう仕事は来ないので、資格を取れば仕事も来るようになります。

――なぜウイスキーに興味があるんですか?

歴史が深いということ。ビールも深いんですけれど、ビールは限られています。あとは、ドイツの方の文化が多くて、日本は日本独自のビール製法があって歴史がある。でも、ウイスキーはスコットランド、イングランドで歴史も深くて結構いろいろな関係があって、歴史自体が面白いです。
スコットランドとイングランドとの戦いで、中継地点の白馬亭というホテルがあってそこに集まった人たちがよく喧嘩をしていたそうなんですけれど、今ある「ホワイトホース」というウイスキーは白馬亭で喧嘩している時にできたウイスキーなんです。あくまで例ですが、ウイスキーは歴史があって面白いです。ラグビーと少し似た部分があって、あまり知らないけれどはまったら抜け出せない。ウイスキーも飲み始めたら凄くはまるんです。だから、隙間産業ではないですけれど、そういうところを攻めていきたいです。

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◆「季」が好き

――ウイスキーの味も好きなんですか?

大好きです。はまってしまいました。

――どこが美味しいと感じますか?

作っているのが全部穀物で一緒ですが、水や設備や気候や樽が違うだけで何万という種類のウイスキーができます。ウイスキーは成分が少し変わるだけで味が変わってしまうところが面白いです。

――「真壁」というウイスキーを作ったらどうですか?

それは簡単にできますよ。市販のウイスキーの樽を買って、違うウイスキーをスプーン1杯入れるだけで「真壁」という名前をつけることができます。ワンティースプーンと言うんですけれど、例えばマッカランにスプーン1杯別のものを入れただけでマッカランとして売れなくなってしまいます。

だから、スコットランドのメーカーは自分の持っている樽を他のメーカーに売ります。それをボトラーズと言うんですけれど、好きな名前で売って良いということをしています。ただし、マッカランという名前はつけさせないよと言って、売る時に1杯だけ違うものを入れるんです。味はほぼ同じだけれど違います。

――サントリーのウイスキーの中で何が一番好きですか?

日本では売っていないんですけれど、「季(とき)」が好きです。

――これはどこで売っているんですか?

ハワイとかで売っています。外国人向けのブレンドをしているウイスキーです。日本で作っていて、山崎や白州で作っています。

――香りの表現で言うとどのような感じですか?

これはどちらかと言うと、グレン系が強いので穀物臭が結構強いです。穀物が強いけれど柔らかくてとげとげしくないので、ハイボールと凄く合います。和食と合うハイボールを作れます。炭水化物という感じです。分かりやすく表現すると、これと似ているのは「知多」です。「知多」も和食に合うと言われています。

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――続々とバックからお酒が出てきますけれど、常に持っているんですか?

あしたお酒の取材があるので(笑)。こういうことができたのも知識が増えて、しかもラガーマンでこういうのがあると、雑誌でも取り扱ってくれるんです。酒の知識だけだったら取り扱ってくれないです。

――ラグビーがウイスキーに似ているところはどこですか?

いろいろな個性があります。スクラムハーフやロックみたいにいろいろなタイプがいて、それが15人集まって1つのチームで1つのプレーを作ります。これはウイスキーに似ていると僕は思います。ウイスキーでも「響」という有名なウイスキーがありますが、あんなに繊細なウイスキーを作るために、いろいろな原酒が混ざっているんです。15と言わず、170の原酒が集まって「響」というハーモニーを作っています。ラグビーと一緒で個性が良ければ良いチームを作れます。

ラグビーも15人だけではなくて、チームスタッフやノンメンバーやリザーブなどの、何十人何百人という人が関わって優勝まで持って行くことが凄く似ていると思います。ラグビーと一緒で個性が良ければ良いチームを作れます。

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◆二足のわらじ

――個性として自分が更に磨きたい個性は何ですか?

サントリーでは完全に"エネルギー"の部分でしょうね。サントリーってなんだかんだ淡々とやるので。ジョー・ウィーラーが来てからチームに元気が出始めましたけれどね。そういう淡々とやるチームが例えば疲れていた時に、「頑張ろうぜ」とか言ってエネルギーを与えられる存在になっていきたいと思います。そこは十何年も変わらないです。

――真壁選手には先頭をきっていくというイメージもあります

ないですよ。みんな凄いから、みんながトライしてくれる、みんながゲインしてくれるためにどうするかを考えています。

――サントリーでそういうカルチャーがあるけれど、元気でいるのが大切だということは、後輩にどう伝えていけますか?

伝えるつもりは全くないです。

――でも、いないとダメですよね

後輩に伝えていくというチームではないと思います。部活動とは違うんだから、勝手にやってという感じです。その時のメンバーでしっかりやろうということで、僕は今こういう役割でやっています。新しい選手が来ても1年目だろうが10年目だろうが関係ないからやってという感じです。

――そうやって見ると、マット・ギタウ選手はどうですか?

凄いですよね。1年目からチームに与える影響はめちゃくちゃ大きいです。人としても素晴らしいですし、ギッツ(マット・ギタウ)みたいな人がプロでどこに行ってもできる人なんだと思います。僕はサントリー以外でできないです。サントリーに何年もいるからこういう人間になれました。

――例えば代表とかは?

代表も長いですからね。

――サンウルブズは?

代表と一緒です。入っている時はグイグイ自分の色を出して、チームに影響を与えています。ギッツは1年目から「俺のチーム」と思っているんじゃないですかね。それがプロだと思います。ショーン(マクマーン)も相当ですよ。彼は真面目ですし。

――サントリーは良い外国人が多いですよね

そうなんです。サントリーはリクルーターが良いんですよね。悪い外国人選手を見たことないですし、人間性が素晴らしいです。何年もいると、そういう良い外国人をいっぱい見るので勉強になります。でも、俺にはできないと思うところがいっぱいあります(笑)。性格的にあんなに明るくて楽しそうにするのは、絶対に無理です。

――どうやったらできるんですか?

例えば、ゲームの持って行き方です。僕が二足のわらじを履いているのも、ジョージ・グレーガンが「ラグビーだけをやっていても成功しない。ラグビーでは成功するかもしれないけれど、人生では成功しない」と言っていて、素晴らしいプレーヤーはみんなそれを言います。ミーティングをしたわけではなくて、そういう話をした時にみんな同じことを言うんです。なので、自然と僕もそうなんだという感覚になっていました。

――例えばギタウ選手は何をしているの?

ギッツとはそういう話はしていないですけれど、ギッツの良さはそのチームをしっかりと楽しむことと、自分のチームだと思うことだと思います。社員選手は社員選手として考えることがあるけれど、プロの選手の考えって面白いです。

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◆毎日100%で頑張る

――今までのキャリアの中でプロになろうと考えたことはなかったですか?

何回もあります。話が来てお金を聞いて悩んだことは何回もあります。あとは年齢もあるし、家庭もあったので、目先の「これで良いのか」ということもありました。今の生活で不自由はないですし、仕事もお酒系のことがしたいので、総合的に考えたらこれで良いと思っています。僕が独身でもっと若い時に話が来ていたら、考えていたかもしれません。

――今シーズンの目標は?

優勝です。

――個人としては?

パフォーマンスに納得したいです。

――どうしたら納得するんですか?

優勝しても自分には納得しないですからね。結局、来年のワールドカップが終わったら終わりだと思って取り組みます。

――納得するためには?

とりあえずは、自分のプレーに納得できるように。それが最後のシーズンになったら納得できて終わるのか、できないで終わっているのかは、なってみないと分からないです(笑)。

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――納得するというのは、力を出せているということですか?

そうです。

――それはどうしたら分かるんですか?

毎日100%で頑張ることです。若い頃は毎日100%で頑張れるんですけれど、だんだんと変わってきます。

――見ている我々が納得しているなと、どうやったら分かりますか?

見えないんじゃないかな(笑)。それは僕にしか分からないです。引退した時にもう1回インタビューして訊いてもらった方が良いと思います。見ただけでは絶対に分からないです。僕が良いと思ったプレーは大体みんな知らないです。バックスとは違いますし、トライも取りませんし、地味なところでやっていますから。

ラックのところで相手を抑えて、相手がノットリリース取ったらしめしめと思っているタイプです。そういう時って大体ジャッカルの体勢をしている選手が取ったことになっていますが、心の中では「お前のジャッカルだけじゃないよ、俺も抑えていたよ」と思っています(笑)。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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