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SPIRITS OF SUNGLIATH

#589 マット ギタウ 『良いプレーができなかった時はボールを家に持って帰って触れている』

1年目に期待通りの大活躍を見せたマット・ギタウ選手。1年目をどう振り返り、2年目を迎えて何を目指しているのでしょうか?朝の練習を終えたばかりのギタウ選手に訊きました。(取材日:2018年6月4日)

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◆100%でやる

――昨シーズンのプレーはどうでしたか?

個人的な部分ももちろんありますけれど、チームとして勝てたということがまず一番嬉しいです。自分が関わったチームが優勝できたということが一番幸せです。

――自分がやりたいと思うことはできましたか?

シーズンが深まるにつれてチームとして成長できました。自信がチームとしてもついてきていますし、トップリーグを進めながら調整していくことができたと思います。その中で自分が上手くできなかったと思うところはいくつかありますが、敬介さん(沢木監督)がどう思っているか、敬介さんが自分に何をして欲しいと思うか、ということを自分はやるだけです。パフォーマンスの評価は自分でするよりもメディアとか他の人たちが評価すると思うので、僕は敬介さんがどのようにやって欲しいかということを遂行するだけです。

――日本で一番難しかったところは何ですか?

最初に難しかったのはゲームのスピードとコミュニケーションのところでした。前年に勝っていたので、自分がそこに参加することでそれが崩れてしまうということを一番避けたいと思っていました。チームが良いレベルに上がっていって、プレッシャーの中で勝ち続けていくということに貢献することが、自分としてもしっかりできたところで、最後にホッとしました。

――一番、楽しかったこと、面白かったことは何ですか?

勝てたことです。決勝の最後のラインアウトで相手がボールを落とした時が、自分にとって一番嬉しかったです。

――「1%を大事にする」と以前言っていましたが、100%くらいに見えます。その気持ちをどこでもいつでも持ち続けられるというのは、どこに大元があるんですか?

自分は失敗するよりも、チームメイトや他の人に自分の役割をしっかりと果たせていないと思われることが凄く嫌なんです。そういう部分でチームメイトをがっかりさせたくない。自分の役割をしっかりと遂行する、やり続けるということを意識し続けると、そこに繋がってくるんだと思います。他の選手に一緒にプレーしたいと思ってもらえる選手になろうと思うことが、常に100%でやるということに繋がってきます。

敬介さんが言う通り、毎年同じことをやっても勝てないので、今年も何か違うことをやらなければいけないということを常に意識しています。それをやるためには、自分の役割をしっかりと果たさなければ今年も勝てないと思うので、そういうところで100%でやるということに繋がってくると思います。

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◆自分たちはそこにいる

――それを最初に褒めてくれたのがジョージ・グレーガンだと聞きましたが、ギタウ選手はサントリーの若手に対しても試合中に褒めたりしましたか?

例えば、晃征(小野)はファイナルでグラウンドに立てませんでしたが、彼は本当に素晴らしいプレーヤーで常に競争心を持って毎日練習しています。サントリーでは全員がそういう気持ちでやっていて、トレーニングのところからみんなが競争してやり続けています。逆に上手くできていない人を探す方が難しいくらいで、全員がお互いに競争心を持ってやり続けているということが、サントリーの素晴らしいところだと思っています。

――色々なチームを見てきて、サントリーはなぜそれができているんだと思いますか?

いつからスタートしたかは分かりません。エディーさん(サンゴリアス元監督)がいた時からかもしれないし、自分が来た時はすでにそういう状況でした。お互いが常に高いスタンダードを持ってプッシュし続ける、タフなセッションというのが毎日行われています。自分が来てから毎日そうですし、敬介さんがそれを作ってプッシュし続けている。居心地の良くない状況が居心地の良い状況になってしまったら練習ではなくなってしまうので、そこを敬介さんがプッシュしているというのは自分にとっても凄く有難いです。サントリーがそういうところを継続していて、今までずっとそれがあるということが、素晴らしいことだと思います。

――インターナショナルスタンダードをテーマにしていますが、サントリーはそこに達していますか?

全くその通りだと思います。全く疑う余地はありません。自分たちはそこにいると思います。ストレッチもリカバリーも全てがインターナショナルスタンダードにあると思います。これで良いパフォーマンスができないという言い訳はできないです。

――ブランビーズ戦は楽しみですね

ウエスタン・フォースに移った時にブランビーズと当たった時と同じで、自分がもともと所属していたチームなので、試合中にたくさんの言い合いがあると思います(笑)。

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◆父は凄くタフな選手

――どんな家庭に生まれましたか?

父、母、姉、兄、弟がいます。上の二人は子どももいます。弟は犬だけです。今年、自分の家族は子どもの英語能力を上げるために、日本には来ずオーストラリアに残っているので、今年は家族のいない初めてのシーズンです。ですので、自分にとってもチャレンジのシーズンになると思います。

――ギタウ選手のハートはお父さんに似ているんですか?

父はラグビーリーグでプレーしていて、凄くタフな選手でした。彼が見ている時、僕はそんなに体は大きくないけれど、力強いプレーをするように心がけていました。フィットネスのところは母から受け継がれていると思います。今も母は毎朝走っています。

――アスリート一家だったんですか?

休みの時は必ず何かのアクティビティをしていました。

――お父さんも良いプレーヤーだったんですか?

100試合くらいファーストグレードの試合に出ています。その当時はビデオ判定がなかったので、凄くラフでダーティープレーばかりしていました(笑)。そういう時代でした。

――お父さんの影響でラグビーを始めましたか?

ラグビーリーグとラグビーユニオン(15人制)のどちらもやっていたんですが、当時はラグビーユニオンが大っ嫌いでした(笑)。ラックなどのルールがよく理解できませんでした。3〜4年ラグビーリーグを続けましたが、土曜日にラグビーユニオンをして、日曜日にラグビーリーグをしていて、その土曜日が大っ嫌いで、早く日曜日にならないかなと思っていました。

――お父さんも教えてくれていたんですか?

ラグビーリーグのコーチをしていました。僕は歩けるようになったらいつもボールを持って遊んでいて、ボールと一緒に育ちました。選手とパスをしたり、幼い時からずっとボールと一緒に色々と遊んでいました。自分があまり良いプレーができなかった時は、ボールを家に持って帰って、ボールに触れていると落ち着きました。

――今でも持って帰っていますよね

先週は2回持って帰りました。凄く良くなかったので。

――例えば、ボールに名前をつけたりしているんですか?

いいえ(笑)。トム・ハンクスとは違います。映画『キャスト・アウェイ』のウィルソン(笑)。それと違ってこちらはノーマルです。映画を見ながらボールを触っていると、ちょっとフィーリング、感覚が戻ります。

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◆1つのゴール

――運動神経の良さから、他のスポーツの選択肢はなかったんですか?

オージーリーグとサッカーも学校でやっていました。でも、あまり居心地は良くなかったです。ラグビーリーグをずっとやっていて凄く好きで、学校が終わってスクールでラグビーユニオンをやって、ワラビーズに選ばれて、それをやらされていたと言ったらおかしいかもしれないけれど、そういう流れで来てしまいました。自分はその環境の居心地が良かったです。

――最初に始めた時はどこが面白かったですか?

仲間と一緒にチームとして1つのゴールを見つける、達成するところです。他の選手と一緒に成し遂げることが自分は凄く新鮮に感じました。今でも覚えているのは、12歳の時に初めてゴールキックして勝った時に、周りのみんなと凄く盛り上がりました。試合に勝って飴か何かを貰ったと思うんですけれど、そういう感覚がその当時からあって、チームメイトと一緒に1つのことを成し遂げたあとの楽しさは、今でも同じ感覚です。

――自分はラグビーを続けていくんだと思う間もなく続けていたんですか?

それは普通ではないかもしれません。学校が終わってからすぐにブランビーズのアカデミーに入って、エディーに呼ばれて7人制のラグビーをして、スーパーラグビーに行く前にそのままワラビーズに入りました。だから、全てが流れに沿ったまま来てしまったので、仕事としてこれをやるんだと思うタイミングはないままに来てしまいました。他の人とは違う感覚のままラグビー人生が始まったので、この時期にこれをやるというよりも流れのまま来てしまいました。

――その流れの中では、ラグビーのどこが面白かったんですか?

インターナショナルゲームというところだと思います。女王にもネルソン・マンデラにも会いましたし、ライフイベントです。たくさんの経験ができるし、子どもも日本に来て学校に行けたり、フランスの学校に行けたり、人生の経験は全てスポーツを通じてできています。

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◆サッカーはよく分からない

――お子さんは何人ですか?

男の子2人です。リーバイとカイ、6歳と4歳です。

――もうラグビーをやらせているんですか?

残念ながらサッカーをしています(笑)。彼が学校でそのようにオファーを受けたので、今はサッカーになっています。サッカーをやっているところ見に行ったら「どうやって上手くなる?」と聞かれたんですが、サッカーのことはよく分かりません(笑)。

――ラグビーをやらせたくないんですか?

やりたいと言ったらもちろん色々とやらせますが、彼らにとってプレッシャーになってしまう。自分からというよりも他の人からのプレッシャーの方が凄いかもしれません。コミュニケーション、チームとしてみんなと一緒に成し遂げること、そしてスポーツマンシップを学んでいけるので、何でも良いからスポーツはやってもらいたいです。

――子どもに「ラグビーはここが良いよ」と言うとしたら、なんて言いますか?

義理の弟がオーストラリアン・フットボール・リーグ(AFL)のプロ選手で、その試合を息子たちが見に行ったんですが、オージーリーグを良いなと言い始めてしまいました。だから、「オージーリーグはダメダメダメ、ラグビーにしなさい」と言いました。妻の弟がAFLの選手なので、僕がいない間にAFLやるようにと洗脳しているかもしれないです(笑)。

――お子さんたちは、昨年は日本に来ていたんですね

日本の幼稚園に行っていました。

――日本語は少し話せるようになりましたか?

自分よりも彼らの方が「おはよう」「ありがとう」とか日本語はたくさん話しています。

――ギタウ選手も日本語の勉強をやっていますよね?

昨シーズンが終わり、オーストラリアに4ヶ月いたので・・・。他の選手たちから、一番日本語が下手だと思われていると思います。先週は時間があったので、コーヒーを飲みながら自分で勉強していました。

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◆サイクルが重要

――ギタウ選手は心がとてもタフだと思うんですけれど、そのタフさはどこから生まれているんですか?

チームの中に必ずそういうリーダー的存在がいるべきで、チームとして上手くいかないタフな状況で、自分はそういう気持ちにならなければいけないと思っています。心の中ではそう思っていないこともあるかもしれないですが、チームのためにリーダーがそのような態度を示さなければいけないと思います。自分は難しい状況でもチームは乗り越えられると信じているので、そういう気持ちでプレーしていました。

――リーダーを意識しているということですか?

自分がよく言うのは、長男がやったことは全部良いと思って次男が真似をしてやるように、良い例をしっかりと上が示していかないと下が全部真似をしてしまう。例えば、ジョージ・グレーガンがストレッチをしてなかったら、自分はやらなくて良いと思ってしまう。そういう上の人がスタンダードをセットして良い例を出していかないと、上の人が教えて下が育って、その下がまた真似していくというサイクルができてこない。それをやることが自分にとって重要だと思います。

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――自分がそういうことを見せてもらって来たからということですか?

その通りです。それが1つでも出来なかったら怪我をしたりしてしまう。自分がやっていることは正しいと思いながら自分もやっているので、それが自分のスタンダードとしてセットして、それを他の人が見てくれるということが大事だと思います。

――普通の人は「自分が」となるけれど、周りまで広く見ていますね

どういうことが起こるかをみんなも見ています。例えば、練習が終わって敬介さんがパッと帰ってしまったら、ヤマさん(山岡フォワードコーチ)と剛さん(有賀バックスコーチ)がそういう役割をやります。そういうことと一緒だと思います。いろいろな仕事があって、その中でみんな見ていることはたくさんあります。若い選手が何もしないで帰ったら、何も言わないですが気づきます。自分は自分のスタンダードをセットして、ハードワークしてそれが誰かに伝わる。見ている人はみんな見ているから。そういう意味でも自分が自分のスタンダードでしっかりとやりきる。

――それはとても大変なことですよね

習慣にしていくんです。習慣にしていけば努力ではなくなる。それをやり続けるだけです。

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◆もっと日本人の選手が試合に出られるように

――今シーズンの目標は?

個人のゴールはチームのゴールなので、もちろん勝ちます。チームとして優勝すること、そして個人的には若い選手をもう少しヘルプして、選手たちがレベルアップできるようにサポートしていきます。それでもっとたくさんの競争が生まれるようにします。もっともっと日本人の選手が試合に出られるように、自分がそういう環境を作っていかなければいけない。

――昨年1年間で個人的にレベルアップしたところは?

ゲームコントロールのところです。今まで以上にそこにフォーカスしたので、その部分だと思います。相手のことをしっかりと知るということ、自分たちのゲームをしっかりと理解すること、何をやりたいかを理解すること。それをできるだけ週の頭にやることができれば、週の終わりにはリラックスしてゲームに集中することができます。上手くできたことを自分で言うことがあまり好きではないので、どういうことをどうやって成長できるかということばかり、常に考えています。上手くできたことというよりも、これからどういうことをして成長していくかに、いつもフォーカスしています。

――35歳ということに関してはどうですか?

歳のことはあまり考えないようにしています。みんなからたくさん聞かれるので、自分では考えないようにしています。

――何も問題ないですか?

そういう法律ができなければ何も問題ありません(笑)。体は全然問題ないです。凄く良いです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎 通訳:吉水奈翁)
[写真:長尾亜紀]

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