SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2018年4月11日

#580 中靍 隆彰 『いっぱいトライを取って優勝に貢献したい』

優勝後の祝勝会で皆にかけられた言葉を発奮材料に、更なる飛躍を目指す中靏隆彰選手。6年目のシーズンに向けた心境を訊きました。(取材日:2018年3月29日)

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◆自分のスピードをどこで活かすか

――2017-2018シーズンの出来はどうですか?

結果としてチームが優勝して2冠獲得を達成できたことは良かったですし嬉しかったんですけれど、それは最低ノルマで、それに加えてもっと自分も満足できるような形でチームに貢献できれば、更に充実感があったと思います。

――「満足」や「チームに貢献」はどういう形だったら良かったのですか?

個人的にもずっと考えてはいたんですが、ウイングというポジションはトライが一番わかりやすいところだと思います。本当はトライだけではありませんが、ウイングのあたり前の仕事としてトライという結果が一番わかりやすいと思っています。それが昨シーズンはなかなか取れませんでした。

――数字としての結果が出なかったということですか?

そうですね。体の調子は全然悪くありませんでした。でも、まだ悩んでいて、間違いなく体の能力は上がっていると思うんですけれど、それを活かす場面がやるラグビーによって変わってきていて、どこで発揮するかを自分として最後まで見つけられませんでした。

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――2シーズン前と昨シーズンを比べるとプレーの選択肢が増えたということですか?

細かい部分で言うと、ウイングが幅を取ってスペーシングすることで、相手のディフェンスの幅を広げて、どっちから攻めるか分からないようにしたり、ボールが出ている方に何回も何回も追いかけて行ってスタンドオフやセンターのインサイドを狙ったり、ボールを追わず残って「こっち側も攻めるぞ」というオプションになったりと、様々な役割が増えたことで今までに比べて機会が減りました。

それに、ギッツ(マット・ギタウ)は自分でボールを持っていける選手で、そういう選手がスタンドオフに入ることで、ウイングに回る前に決まることが増えたと思います(笑)。それは凄く良いことなのですが、そういうラグビーをする中で、自分のスピードをどこで活かすかを来シーズンはもっと考えていきたいと思います。

――幅を広げながらもチャンスだったら中に行っても良いんですか?

そうですね。そういう選択をしても良いんですが、昨シーズン自分の武器を活かす場面を、自分であまり見つけられなかったと思います。

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◆もっとトライを取ってやろう

――今のところヒントはどこにありますか?

1つは、確実に取れる場面でしっかりと確実に取ること。人が余った状態でボールをもらった時の決定力が大事で、しっかりとトライを取らなければいけません。それに加え、前に出られる選手がいるので、そこに常にアンテナを張って、フォワードが抜けた瞬間にすぐフォローして、美味しいところを狙うというところです。

――集中している中で、更に意識の持ち方が大事になりますか?

一緒にやっていく中で「この選手は、次はこういう風に行きそうだ」と思えるには経験が必要ですし、他の人より動き出しを速くするには、やっぱり経験だと思います。あとは、優勝後の祝勝会の場でも「昨シーズンの方が良かったね」と皆さんに言われて、それを言われるのは分かっていなんですけれど、本当に「もっとトライを取ってやろう」と今は凄く思っています。やっぱりウイングはトライを取ってなんぼです(笑)。

そして、ウイングの役割はただ走ってトライを取るというだけではなくなっていると思います。ディフェンスでもフルバックを除けば最後に残る選手なので大事なポジションですし、ハイボールの処理も凄く多いので、やることがたくさんあります。

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――次のシーズンではいけるという感触は?

毎試合トライを狙っているんですが、昨シーズンは敬介さん(沢木監督)から試合が終わる度に「今、何本?」と聞かれて、「全然取れないね」と茶化されていました。取れない試合もあると思ってはいましたし、「次の試合はたくさん取れるだろう」と常に前向きに考えています。自分のできる準備は変わらないので、やれることを全部やって試合の準備をしています。

「この試合ではたくさん取れるだろう」と思いながら、シーズンが終わってしまいました。昨年はサンウルブズでできなかったので、春から夏にかけてもう一回いちから体をいじめて、レベルアップをしたいです。

――サンウルブズや代表の経験によって、自分の目指すもの、自分への要求が高まっていますか?

今年サンウルブズには選ばれていませんが、去年のサンウルブズが終わった後に、「1年間しっかりと足りなかった部分を鍛えて、もう一回ここに戻って来よう」と思っていました。毎試合、他のチームも含めてTVで観ているんですけれど、一度対戦した相手なので以前と見方や考え方が違ってきています。ですので、どうにかそういう舞台で、もう一回戦いたいです。

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◆プロに負けないように

――2019年の日本代表を目指すとここ数ヶ月が大事ですよね

2019年に向けて基本的にNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)以上でないとチャンスは本当に少ないと思うので、トップリーグの試合はまだありますし、今年がラストチャンスですが、そういう面で可能性がゼロではないと思います。たぶん自分の年齢的に一番ピークのワールドカップは、次の2019年だと思うので、自分の中で本気で目指していなかったら悔いが残ると思います。

あまりごちゃごちゃ考えずにやれることやって、自分の出せる限界を出して、あとはなるようになると思います。僕はやれることをやる。サンゴリアスでもそうですし、選ぶ選ばないは監督の権利なので、本当にコントロールできるところだけやります。

――コントロールできるところでやるべきことをやるというのは、例えばどのくらいやっているんですか?

それもやっていると思いながらも、色々と思ってしまいます(笑)。今はSNSが発達していて、例えばイングランド代表の選手が凄いトレーニングをしている動画がいろいろとアップされています。会社で仕事して、会議して、飲み会している間にも、ワールドカップに向けて全てをラグビーに集中している人がいる訳です。そういう人たちと同じところを目指そうとしているというのも、なんかちょっと自分は情けないなと思うこともあります。

プロになりたいと思ったこともありますが、プロになってラグビーが職業になったら、ちょっと怪我をして試合に出られなかったらクビを切られるのではないか、と僕は悩むと思いました。会社員だと、本当にラグビーを楽しめるというメリットがあると思います。プロの人はそれで生きている厳しさとプライドがあると思うので、そういう選手に負けないようにしたいです。

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◆いま何をすべきか

――例えば、そういう環境の中でやれるだけやっている部分はどこですか?

僕は長期的に計画することが苦手で、短くその場で判断します。会社では長期的に計画をしてやらないと目標に到達しないので、もちろんそれも分かりますが、僕はラグビーでは毎回毎回で良い方を選んでいく方が好きです。

そして、よりシーズンが深まっていく程、厳しい選択をしていけるかだと思いますが、もともと自分が好きでやっているので、厳しいとは思っていません。根本はやっぱりラグビーが好きで、勝つのが好きで、チームでやるのが好き、そこに自分も出たい、活躍したい、そうやってどんどん細分化していくと、いま何をすべきかになってきます。

――たった今は何をすべきですか?

トレーニングして、体に良いものをしっかり食べて、ラグビーを勉強して、睡眠をしっかりとる。ただ、そう決まっていることの基準が低くならないように気をつけています。やっぱり人間は慣れてしまうので、「俺はこれだけやっているぞ」と満足をしてしまったらダメですし、そういうところを厳しくしていかないといけないと思います。

――厳しくするコツは?

結果です。試合に出られていなかったら、出るために足りない部分をもっとやらなければ、他の人よりもっともっとやらなければとなります。それで試合に出られて、次は優勝できなかったから優勝するために、もっとやらなければとやっていきます。そして、優勝できたけれどトライがあまり取れていないから、そうしたらトライを取るためにもっとやらなければ、と厳しくやっていく。これで通用しているのか、次に達成できるのか、と考えてやっていくしかないと思います。

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――そうすると自ずと今シーズンの目標は、優勝とトライ王ですか?

トライ王は僕自身、あまりこだわっていません。いろいろな形のトライがありますし、トライってみんなのトライだと思っています。トライ王というよりは、いっぱいトライを取って優勝に貢献したい。いっぱい取れば、チームの役に立てているかなと思えます。

――いっぱいというのはどのくらいですか?

1試合で最低1本、良くて2~3本。そのくらいはコンスタントに結果を残したいです。こうやって強いチームにいる以上は、それができると思います。優勝チームにいるので、別に難しいことではないと思っています。

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◆考えている暇があったら

――一昨年のシーズンの優勝は昨シーズンの優勝とは違いましたか?

そうですね。一昨年のシーズンはそれまで優勝を知らなかったので「本当に優勝できるのか」という気持ちの方が大きかったんですが、昨シーズンは正直負ける気がしませんでした。

――フィールドの中で他の14人と一緒にいて、どの辺が凄いんですか?

ディフェンスではインサイドの選手たち、みんながバチバチッとタックルに入ってすぐに立ち上がります。それをウイングのポジションで見ていて、みんな気持ちが入っていて、凄く頼もしいと思いました。アタックはみんな上手ですし、敬介さん(沢木監督)のシステムや、コスさん(小野晃征)やギッツもいるので、トライはどこかしらで取れるだろうと思っています。ディフェンスがそれだけ機能しているのを外から見ていて頼もしかったので、昨シーズンは全然負ける気がしなかったんです。

――長期展望は作らないと言っていましたが、今は道の途中のどの辺にいますか?

それも悩んでいます。ラグビーは引退がないので、自分はいつ辞めるんだろうと思うこともあります。

――「引退がない」というのはどういう意味ですか?

例えば大学生だったら4年で終わりというのがありますが、社会人だとチームから「終わりだよ」と言われない限り続きます。そして、終わりと言われても、クラブチームなども含め他のチームに行けば、またできます。でも、いつかは絶対にやめなければいけない時が来るんですよね。今年28歳になる年ですし、いつの間にか6年目になっていて、あと4~5年くらいですかね。もっと早いかもしれないです。

――自分のなりたい像にはどれくらい近づいていますか?

欲を言えば、日本開催のワールドカップで、世界に通用するくらいの実力があって、自信満々に「俺は日本代表で活躍する」くらいの実力を付けておきたかったですけれど、全然たどり着けていません。残りの時間も少ないと思うのに、今やっていることはそれに見合っているのかと考えてしまいます。行ったり来たりして考えながら、結局「そんなの考えている暇があったら何かやれよ」と思います。

――新シーズンの目標は?

優勝は絶対にして、3連覇します。一昨年はたくさんトライを取っていたので、僕がトライを取るイメージだったと思うんですけれど、昨年は少し落ちてしまったと思います。今年はサンゴリアスがトライしているシーンに僕がたくさんいるように、チームの優勝のためにトライをたくさん取りたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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