English

  1. サンゴリアスTOP>
  2. SPIRITS OF SUNGLIATH>
  3. 2018年

SPIRITS OF SUNGLIATH

#579 畠山 健介 『代表復帰して日本代表の試合に出たい』

日本人選手でのチーム最年長選手となった畠山健介選手。まさに円熟期を迎えた経験豊かなプロップが、今、何を考え、何を目指しているのでしょうか?ロングインタビューをお届けします。(取材日:2018年3月26日)

@171007_1971.jpg

◆チームの勝利のためにできること

――2017-2018シーズンはどうでしたか?

体の状態は怪我もなく、シーズンを通して良い準備ができました。でも、初めてサントリーで出られない試合があり、ファイナルを含めてリーグ戦でも何試合か出られなくて、監督とも何度かミーティングをしましたが、そこでメンタル的な部分でまだまだ未熟だと感じました。体とメンタルが合致していなくて、個人としては満足できるシーズンとは言い切れないです。

――体の状態は良かったんですね

体の状態は悪くなかったです。前シーズンに少し怪我をしていた部分がありましたが、そこもしっかり治すことができて、再受傷することもなくシーズンを通せたので、そこは凄くポジティブな部分です。

――調子が良いけれど試合に出られないというところに、キツさがありますか?

そうですね。僕はパフォーマンスを出しているけれど、なかなかメンバーに入れないという部分で、どうしてもギャップが生じるので、そういう意味では苦しいシーズンでした。

――そこは終盤に乗り越えたんですか?それとも来シーズンの課題になっているんですか?

来シーズンの課題です。アスリートとして「負けたくない」「自分が出て活躍したい」という気持ちは絶対に持ってないといけないと思います。特にこのチームは、まず日本一になることを目指していますし、ハイパフォーマンスを求められているので、そこで出られなくても良いんだという気持ちを持っていると、アスリートとして良くはないです。そういう選手は、言い方は悪いですけれど、サークルとかラグビー同好会で楽しくラグビーをやれば良いと思います。

このチームはそれプラス勝利もしっかりと追い求めなくてはならないので、昨シーズンのテーマのように個人がハングリーであることは大事だし、ただその上で「出る、出られない」「勝った、負けた」があるので、負けたり、ノンメンバーだったりした時のメンタルと言う部分も凄く大事になってくると思いました。

――新しい課題という感じですか?

そうですね。でも、2012〜2015年のエディージャパンの時もそのような自己超越が必要な時期がありました。自分というものがあった上でそれを乗り越えて、「チームのために」「仲間のために」という、「チームを勝たせるために自分の役割は何なのか」ということを認識することが凄く大事だと思います。晃征(小野)が言っていたんですが、「僕の仕事は試合に出ることではなくて、監督のメンバー選考を迷わせることだ」と彼が言っていて、それは凄く正しいと思いました。

今まで自分は出させてもらっていて、「出なきゃ」というところにマインドがあったんですけれど、終盤になってそうではなくて、あくまでも「チームの勝利のために自分ができることは何なのか」を考えさせられました。新シーズンは自分というものを持ちつつ、その上でチームがどう前に進むために自分があるのかをしっかりと考えて、グラウンドの外と中で行動していきたいです。

A171203_3005.jpg

◆他人がやらないことで強みを出していこう

――新シーズンは日本人最年長ですね

僕一人ではなくて長友が同期としていてくれるので、バックスに彼がいてフォワードに僕がいる。彼はキャラクター的に口が達者なわけではないですが、グラウンドの中でも外でも態度でみんなを引っ張れる。そういう同期がいてくれるのは凄くありがたいです。僕も彼を見習って、態度や行動でしっかり示していければ良いと思います。

――話すのが速いということは頭が回転しているということだと思いますし、それがラグビーにも良い影響を与えていると思いますが、それは意識していますか?

特に意識していないです。

――パッと見た瞬間に言葉にする、そして判断する能力が相当ありますよね

それを活かせる場があまりないのでね(笑)。でも、疲れてきた時に、試合を重ねてきてこのシチュエーションはこうだとか、もちろん外れることもありますけれど、そうやって考えられる癖はついていて、なるべくそれを言葉にしてアウトプットするようにしています。

コミュニケーションをして、サントリーの共通キーワードだったり、サインコールだったり、ジャパンでもなるべく言ったりしながら、チームのためにグラウンドの中でそういうところはできていたと思います。あとは、回転するのを中でなく外に見せられるようにし、「チームのために」ということに結び付けられるようになると、良くなっていくのかなと思います。

B170525_1989.jpg

――自分のプレーヤーとしての能力を、その力が助けているという部分もありますか?

凄くあると思います。正直、僕自身才能があるわけではないですし、他人より倍の努力をしていると言い張れる自信はないので、僕は他人よりも能力的には劣っていると思っています。でも、劣っているからこそ、勝ちたい、負けたくないという気持ちが強いので一生懸命やってきたし、他人がやらないようなことで強みを出していこうと思ったから、スクラム全盛期の時に仕事量にこだわるとか、声に出してコミュニケーションを取るということを続けた結果、今があります。

他者と同じ勝負をしても、才能と努力に満たされていないので勝てません。それ以外の付加価値、プロップの役割を果たした上での付加価値を付けて、「自分がこのチームに必要なんだ」とメンバーチョイスする人に判断してもらおうと思って頑張ってきました。そこをなくしてしまうとただの普通の選手になってしまうので、そこだけは譲らないようにしてきました。

――それだけフル回転する状態は人間が常に持てるわけではないので、集中している時と空っぽな時とコントロールをしていますか?

あるかもしれないです。今までは家がそうだったかもしれないです。家ではあまり考えずに、テレビを観たり、インターネットをしたり、情報を受け取る姿勢だったので、自然と入って来ていました。あとは、グラウンドに来て他人と話す時に入れたものをアウトプットするように、バランスはとれていたかなと今になって思います。

C170606_s3397.jpg

◆次の世代にバトンを

――海外に行ったり、代表で活躍したり、相当いまの自分に力を与えていますか?

与えていると思います。やったことのない人の発言は根拠がなくて、正直入ってこないです。キツいことをしたことがない人に頑張れとかキツいことをしろと言われても、正直よくわからないです。だから、僕はスーパーラグビーに行ったことがないのであまりスーパーラグビーのことは発言できません。逆に五郎丸(ヤマハ発動機)やフミさん(田中史朗/パナソニック)や堀江(パナソニック)など、他の選手が「スーパーラグビーはこうだよ」と言うと凄く説得力があります。

僕がイングランドに行って、「イングランドはこういう感じだったよ」というのは説得力が違うと思うんです。いくら「イングランドはこうで、システマチックで...」と言われても、「行ったことあるんですか?」と僕は思いますし、「よく調べているなぁ」と感じてしまいます。調べるのと、体感するのは若干違うと思うんです。

映画で見て、ある歴史上の人物がこういう人生を送ってきているということを知っていても、実際のその場所に行って、その場の高さや匂いやどういう装飾品があると語れるわけではありません。僕は後者の方をできればやりたいので、いろいろなことを体験できれば良いと思っています。

――イングランドの体験で一番面白いと思ったことは何ですか?

全てが面白かったです。仲間が環境を整えてくれて、すべての生活が面白かったです。当時は苦しいとか、サポートが薄いとか、感じた部分はありましたが、イングランドはやっぱりプロで「お金をあげるから後は自分でやって」というスタイル。日本はいろいろやってくれるので、日本は良すぎるんですけれど、イングランドはそうではないので、やっぱり行ってみて感じました。終わってみて思うのは、「行って良かった」ですね。

――プレーヤーとしても選手会の代表としても活きる部分ではないかと思います

そこに関しては、イングランドは完全にプロなので、色々とまとまりやすい部分はあると思いますが、日本は社員選手もプロ選手もいるという、凄く難しい状況です。僕は選手会の立ち上げにはあまり参加していませんでしたが、立ち上げる時にプロで固めた方が良いのか、全体をまとめた方が良いのかという、色々な議論はあったみたいです。チーム数も凄く多いですし、その中でやっていかなければいけないことも多いと思います。

僕の考えでは、サントリーから大久保直弥さん、清宮さん、永友さん、色々な方々が他のチームに行って、日本ラグビー界の底上げをしてくれていると思っていますし、サントリーが日本ラグビー界に与えている影響は、もの凄くあると思っています。エディー(ジョーンズ/元監督)が来て、菅平でフィットネストレーニングをやったサントリーが結果を出しました。その影響で、菅平でのフィットネストレーニングを重要視するチームが出てきました。もちろん菅平に行かずにトレーニングしているチームもありますが、多くのチームが導入して、良い影響をどんどん与えられているチームだと僕は思っています。

それと同様に、選手の意見も日本ラグビー界を良くしていくために凄く重要だと認識しています。それをしっかりと話し合って、良い方向に進んで行ければベストだと思います。今は選手やチームの意見が宙ぶらりんで、どこにも向いていない感じが凄くするので、僕は立場上、選手なので選手の意見を聞いてくださいとか、選手はこう思っているんですとか、みんなの意見をまとめられたら良いんですけれど、なかなか難しい部分があります。

僕らはあくまでも日本ラグビー界を良くしていきたいだけなのですが、それは選手も、チームも、協会も、ファンも、どういう立場の人も同じだと思うんです。みんなの意見を集めて良い方向に向かえたら良いと思いますけれど、今までそれがなかなかできなかったので、廣瀬前代表が立ち上げた選手会を僕が引き継いで、今は次の世代にバトンを作っているイメージです。

D170516_4916.jpg

◆ラグビーは必要なんだ

――今の日本のラグビーのプロと社員というチームメンバー構成は、今後の日本のラグビーの成長という観点からどう思いますか?

それもしっかり議論しなければいけなくて、単純に「強化する」という意味だけだったらプロの方が向いていると思います。ただ、プロスポーツはそんなに甘い世界ではないし、日本はスポーツという土壌がまだまだ根付いていないと思いますし、スポーツを観る層を他の競技と取り合っている感じなので、その分母を増やさない限りスポーツは発展していかないと思っています。この前ファン向けのイベントをした時にも感じましたが、結局スポーツを見ている人は違う競技を観に行くという流れがあって、全く興味がない人やスポーツを観たくない人や雨が降っているから行きたくないという人を取り込もうということは、他のスポーツと比べるとやっていないという意識があります。

そして、スポーツ界全体で、スポーツに全く興味がないという人を取り込んでいかないといけないと思います。その中でラグビー界はこういうサービスをやります、他の競技に比べてこういう強みがあります、ということを謳っていかない限り、発展はしていかないと思います。そういう意味で必ずしもプロが良いのかどうか、社員選手の強みももちろんありますし、そう言った部分はしっかりと議論していかなければいけないと思います。

――日本のラグビーが「強くなりさえすれば良い」というものでもないですね

そう思います。僕がこういう話をする時の一番良い例として挙げたいのは、広島東洋カープさんです。言い方は悪いかもしれないですが、今は凄く強いけれど一昔前は全然勝てなくて、勝てないけれど広島市民には凄く愛されていました。勝てないのに愛されて「必要だ」と広島市民を勇気づけている象徴のような存在として頑張ってきて、強化が上手くいって今は強い。だから、今とんでもない現象が起きていると思います。

それと一緒で、勝つから愛されるのか、愛されているから勝つのかは別にして、まず愛され、「必要なんだ」と思われる組織にラグビー界がならない限り、ずっと「勝ち」を要求されるんです。オールブラックスが勝てない時期もあって、バッシングはもちろんあったけれど、「もう必要ではない」とか「競技を辞める」というふうにならないのは、何か絶対に理由があります。

そこに何かがあって、僕は「教育」だと思っています。ラグビーと教育を上手く紐づけて、ニュージーランドの中で良い影響があって必要だとされているからラグビーはなくならないし、その上で価値を求めるから国技になる。日本においても、勝つことは凄く必要な要素だとは思いますけれど、まずその前に「ラグビーは必要なんだ」という強いメッセージがない限り、勝ち続けてもその瞬間は爆発しますけれど、そこからは勝ち続けない限り続かないです。

E171109_5204.jpg

◆良いチームで居続ける必要

――9位からこの2年、サントリーが非常に強いチームに変わりましたが、要因はなんだと思いますか?

もちろんその前から良い選手もいますし、何が変わったかと言ったら、やるラグビー、それに対して求める能力、要素が明確化されて、こういうラグビーをやるよ、こういう能力が必要だよ、だからここをちゃんとやってね、というようになったのが大きいと思います。

――それは監督が代わっても続いていく文化になったら良いですね

本当にそうですね。サントリーのハードワークする文化はエディー時代から継承されているので、凄く良いことだと思います。ただやみくもにハードワークをするのではなくて、ちゃんと意図があったハードワークをしない限り難しいと思うので、そこはしっかり考えなければいけないと思います。

F170606_0620.jpg

――畠山選手は世界を見て来ていますが、日本で一番のサントリーは世界的にはどうですか?

環境で言えば、間違いなくトップクラスだと思います。環境をサポートしていただいている会社、佐治会長をはじめサントリーグループの会社の皆様のご協力、ご支援、ご理解を含めて、サポートと環境は凄く高いものだと思います。海外でも普通は何社もスポンサーを集めて、スポンサーのためにノンメンバーは試合後にご飯を食べたりしてスポンサーサービスをするのが当たり前の世界です。素晴らしい環境を与えていただいてラグビーができるというのは、凄く恵まれています。それをもう少しみんな理解した方が良いのと、必要とされるという部分があればもっともっと良くなれると思います。

勝つのも凄く大事だし、その上でサンゴリアスがなぜ必要なのかを、さっきも言いましたが僕は日本のラグビー界に良い影響を与えている存在だと思いますし、ラグビー界に必要だと思われるような、導入者のような存在でいてほしいと思います。僕は世界的に見ても、とても良い環境でジョージ・スミス、フーリー・デュプレア、ジョージ・グレーガン、ダニー・ロッソウ、ピーター・ヒューワット、マット・ギタウ、ジョー・ウィーラー、ジョーダン・スマイラー、キャンベル・マグネイなど、若手からレジェンドまで、あんなに才能ある選手と一緒にプレーできるなんて、普通はあり得ないです。

――その思いをチームメイトにも伝えているんですか?

本人たちも気づいていると思うので、あまり僕がやかましく言ってもと思いますけれど、サンゴリアスからラグビーを取った時に何が残るか?ということを、もう少し考えて行動した方が良いと思います。ラグビーはサントリーに必要なの?と言われた時に疑問を抱かれるようだと危ういので、ラグビー界に良い影響をもたらすサンゴリアスは、ラグビーを除いた部分でも優れているからサントリーには必要だ、と結び付けてもらえればと思います。そして、永遠にサントリーからバックアップしてもらって、良いラグビー界をつくるために良いチームで居続ける必要があると思います。

G170426_s9150.jpg

◆自分の居る場所から発信

――新シーズンの課題は?

まずはフィジカルを良い状態で1年間キープして、常にハードワークすることです。メンタル的な部分も、もう少し成熟させていきたいと思います。ベテランと言ってもまだまだ幼い部分を自分でも感じているので、しっかりとそういう部分を成長させたいです。

――メンタルの部分は「深く考える」ということもポイントですか?

決断するのは自分なので深く考えることも大事だし、自分と対話することも大事だと思いますが、逆に他人とも話をすることも大事だと思います。自分に向き過ぎるとどこかで自我が出てくると思うので、信頼できる人とも、意見が合わない人とも、なるべく話をして、いろいろな意見を取り入れて持ち寄った話を自分でできるようになると、また一つ成長すると思います。今までは自我が強かったので、今年はそのようにしていきたいシーズンです。

――その先はどのくらい見ていますか?

僕は代表に復帰して、日本代表の試合に出たいので、必ずそこにコミットできるようなパフォーマンスを出し続けることと、さっきも言いましたが、選ぶのは監督とスタッフなので、しっかりチョイスしてもらえるように、良い状態を保とうと思います。

H171203_2840.jpg

――昨シーズンは今までのラグビー人生の中で一番良いということですか?

んー、それを判断するのは難しいです。でも、本当に悪くはなかったです。本当は悪くなかっただけに...という感じです。

――チャンスさえあれば行けるぞという感じですか?

そうですね。でも、チャンスというのはそうそう転がっているものではありません。僕は何度もチャンスをいただいているので、若手にもチャンスを与えるべきだし、僕ばかりがチャンスを与えられ続けるのも変な話で、そこは対等だと僕は思います。しっかりと若手にもチャンスが与えられて若手が応えて、それでメンバー選考に困るのであれば役割を果たせているのかなと思います。

チャンスを与えて若手が失敗したのに、ハタケは調子が悪いからといって若手が選ばれたら、僕は仕事を全うできていないことになります。そうではなくて、ハタケもカッキー(垣永)も元樹(須藤)も良いという状況をみんなで作り上げることが、サンゴリアスと日本のラグビーが良くなる要因の一つだと思います。日本ラグビーが良くなる、ラグビーに携わる人が笑顔になると思って、まずは自分の居る場所から発信していきたいです。

――今、若手選手達には積極的にアドバイスをしているんですか?

それはもちろんします。アドバイスと言うか、意見交換はします。ただ元樹と僕では組み方が違ったり、カッキーと僕では柔軟性が違ったりするので、一概にこうだと言えないです。そこらへんは柔軟に話しています。

――後輩だけれどもライバルであり、そうやってみんなが高め合うということが良いんですね

そこで純粋にそう思えないと、チームとしても脆いし、自分自身も人間として成長しないです。そうするために色々な意見を聞いて、結局は自分で答えを出さなければいけないと思っています。今年はその勝負だと思います。

I171203_s1855.jpg

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

  • 一覧へ
  • このページの先頭へ