ロングインタビュー

Sunbirds Column

20260402日(木)

Vol.8 チームにエネルギーを注入する2人。 「1点の重みを知っているからこそ、ワンブレイクでチームを助ける!」 デアルマス アライン 甲斐孝太郎

Vol.8 チームにエネルギーを注入する2人。 「1点の重みを知っているからこそ、ワンブレイクでチームを助ける!」 デアルマス アライン 甲斐孝太郎

出会いは高2。「高校生離れした馬力とジャンプ力」「トスもスパイクも全部していた」

2025-26シーズンSVリーグ、レギュラーシーズンでサンバーズは首位を独走し、早々とチャンピオンシップ・セミファイナル進出を確定させた。3戦2勝方式で行われるチャンピオンシップは、いかに勢いを掴むかが重要。1本のサーブやスパイクで流れを引き寄せる力を持つ若い2人、デアルマス アラインと甲斐孝太郎の活躍が、優勝へのアシストとなるかもしれない。
キューバ出身のアラインは、10歳でバレーボールを始め、高校1年の時、宮崎県都城東高校からの誘いを受け、日本でバレーをする道を選んだ。そのアラインと、サンバーズのメンバーの中で一番早く出会っていたのが、宮崎県で同学年として高校時代を過ごした甲斐だった。

ー高校時代のお二人の出会いを覚えていますか
アライン
高1で対戦あった?
甲斐:たぶん高2のインターハイ予選で対戦したのが最初で、自分たち日南振徳が負けました。僕らはシードに入っていたんですけど、勝ち上がってきた都城東に負けたんです。

当時のアライン選手の印象は。
甲斐:高校生離れした馬力とジャンプ力。AJ(アライン)1人に負けました(苦笑)。セッターまでボールが行ったら、絶対AJにトスを上げられるんです。そうなったらもうどうしようもない。全部上から打たれました。
アライン:でも日南振徳も、トスとかスパイク、甲斐が全部してたよ。

ー トスもですか?
アライン:だって、ツーセッターやってなかった?
甲斐:あー、ツーセッター......あまり覚えてないです(苦笑)。
アライン:たまにセッターでトス上げてるし、スパイク打つし、サーブ打つし、1人で点取ってた。その時は名前は知らなかったけど、"日南振徳の左利き"は覚えてた。
甲斐:2年の時は国体の宮崎県選抜で、一緒に国体予選を戦いました。都城工業が主体のチームに、僕らが入る形で。

ー その時に何か話したりしましたか?
甲斐:してないですね。
アライン:まだ日本語、全然だったから。都城東のキューバ人コーチのマウリセが、国体予選のチームにもついてくれていたので、ほとんど彼とばかり話していました。このチーム強いな、勝てるなと思ったけど、鬼木(錬)に負けた(笑)。

ー 鬼木選手?
甲斐:九州ブロック予選で(1学年上の鬼木のいる)福岡に負けたんです。あと、僕らは高3のインターハイ予選でも対戦しました。
アライン:自分たちが勝ちました(笑)。

ー 都城東がセットカウント2-1で勝ったんですよね。
アライン:
あの時は都城工業と日南振徳の2校がめっちゃ強かったんですよ。日南振徳は甲斐と、弟(優斗・大阪ブルテオン)もいたし、他にも動ける選手がいっぱいいた。でも都城東は自分と、今奈良ドリーマーズにいる小林瑞樹ぐらいしか打ってなかった。それでも勝てた。自分、めっちゃ頑張りました(笑)。
甲斐:僕の印象に残っているのは、自分たちが1セット目を取ったんですけど、その1セット目はAJがフェイントしかしなくて、打ってこなかったんですよ。バックアタックもフェイントだった。でも2セット目から打ち出して。「何やってんやろ?」って思っていました(苦笑)。

ー どうしてフェイントしていたんですか?
アライン:
覚えてない(笑)。でも自分はその頃、勝っても負けても関係なく、ただマウリセに言われたことをやるという感じでした。「フェイントしろ」と言われたらずっとフェイントする。「リバウンド取って」と言われたらリバウンドを取る。だからたぶんその時は、1セット目が良くなくて、怒られて、そこからもうずっと(ブロックの)上から打ってたんだと思う。
甲斐:僕らは全国大会に行ったことがなかったので、ブロックの上から打たれるなんて、それまで経験したことがなかった。だからどうしようもできなかったですね。パワーも違うし。対策は......なるべくAJに2本目を取らせる、ぐらいしか。サーブレシーブを乱して、ボールがAJのところに行くようにして2本目を取らせて、スパイクを打てないようにできたらラッキー、ぐらいな感じでした。
アライン:他のチームはだいたい1本目で狙ってきていた。僕が後衛の時は、前のほうにサーブを打ってきたりして。前に出て取ったら、バックアタックを打てないから。1年の時からずっとそうやられていたので、「AJにパス(サーブレシーブ)は取らせないように」という感じで試合をしてた。だから、アウトサイドだったけどほとんどパスはせずに、とにかくスパイク打て、という感じでした。
R80322 HOME W,D NAGOYA-3359.jpg
日南振徳を破った都城東は、初のインターハイ出場を果たすことになる。その2年前、アラインを含めわずか5人でスタートしたバレー部の快挙だった。


ーアライン選手はマウリセさんに誘われて高校1年で日本に来たということですが、日本行きを決めた一番の理由は何だったのですか。
アライン:日本のほうが活躍するチャンスがあると思ったので、そこにチャレンジしたかったから。キューバに残ってもどうなるかわからないから、それだったら日本に行こうと思いました。日本の高校で3年やって、そこからプロになるか、大学に行くか。日本語ができるようになるかわからなかったけど、いろんなことができると思ったから。もし行ってみて何もできなかったら、またキューバ戻ったらええやん、と考えて。とりあえずチャレンジしてみようと思いました。
 高校生の時は、とりあえず都城東という学校の名前を広めることと、自分の名前を広めることだけ考えていました。でも3年になった時に(この先)どうする?と考えた。日本語は勉強していたけど全然喋れなかった。戻るか、残るか......。その時、「Vリーグ(現SVリーグ)があるな」って。自分が日本に来たのは2017年で、2018年にはディマ(ドミトリー・ムセルスキー)がサンバーズに来たから、「ムセルスキー日本来てる!すご!」と思ってた(笑)。ムセルスキーはみんな知ってるから。

ー アライン選手は高校卒業後、そのサンバーズに入団。甲斐選手は専修大学を経て、サンバーズに入団し、そこで再会したんですね。
甲斐:その時の最初の印象は「あ、日本語話せてる」でした(笑)。「めっちゃ喋るやん!」と驚きました。
アライン:大阪に来てから、日本語頑張った。プロになって、日本国籍を取ることになったので、やっぱり集中してやらなあかんから。でもまあこんな感じですよ。敬語できない。漢字も書けない(笑)。

ー 敬語できますよね?
甲斐:うまい具合に、場に合わせて使い分けてる(笑)。

連勝ストップ。責任を背負った甲斐が感じたチームの優しさ

日本語を猛勉強したアラインは、2024年に日本国籍を取得した。パワーあふれるスパイクやサーブだけでなく、年々守備力も向上し、著しい成長を遂げてきた。サンバーズのアウトサイドヒッター争いはハイレベルで、昨季は日本代表の髙橋藍、ポーランド代表のアレクサンデル・シリフカという実力者が加入。それでもアラインはスタメンの座を譲ることなく、髙橋藍の対角でほとんどの試合に先発出場した。
 今季は新たに、ロシア出身で身長207cmのイゴール・クリュカが加わり、クリュカと髙橋藍が対角を組むことが多くなっているが、アラインは先発でも途中出場でも、与えられた出番で持ち味を発揮し期待に応えている。久しぶりに先発出場した3月28日のジェイテクトSTINGS愛知戦では、試合の出だしに勢いよくスパイクを決めたり、豪快にサービスエースを奪ってストレート勝利の流れを作り、髙橋藍は「今日は試合開始からAJが自分たちにエネルギーをくれた。そこはAJの素晴らしい強みだと思う」と讃えた。
 一方甲斐は、入団した時からオポジットには絶対的な存在であるムセルスキーがいた。その中で、勝負強いサーブで存在感を発揮。セット終盤にリリーフサーバーとして起用されると、1本目から勢いよく左腕を振り抜き、サービスエースを奪ったり、ブレイクに繋げて勝利を引き寄せる。
 オポジットで出場すれば、躍動感あふれるフォームから、幅広いコースに鋭いスパイクを打ち分け、得点を重ねる。ただ、3月5日の日本製鉄堺ブレイザーズ戦は、セットカウント0-3で敗れ、連勝記録が29でストップした。先発出場した甲斐は、「ディマさんに代わって入るのはすごくプレッシャーがあった。負けてしまったのはとても悔しいし、自分が入って連勝を止めてしまったという申し訳なさもある」と責任を背負い込んだ。
 限られた出番で力を発揮しなければならない難しい立場だが、2人はひるむことなく、コートにエネルギーを注ぎ続ける。

ー 今季は2人とも様々な形で起用されるシーズンとなっていますが、どんなことを意識していますか。
甲斐:ディマさんが今季限りで引退するので、「ああ、最後かー」という思いです。ディマさんのプレーを見られる試合も残り少なくなってきているし、このチーム、このメンバーでできるのも最後なので、「このチームで優勝したいな」という気持ちが強いです。
アライン:自分は「クリュカ、つよ!」って思ってます。クリュカ、18番、あのロシア人は強い!高い!(笑)。試合の時もそうなんですけど、練習の時のほうが、異常なぐらいの高さで、アンテナの上ぐらいから打ってくる。たまにディマより、イエゴ(クリュカ)のほうが高いですよ。そう思うやろ?
甲斐:高い!(笑)。ブロック跳んでて、上を見あげた時にスパイカーの腕が見えたのは初めてでした。
アライン:こっちがどんだけ跳んでも、30cmぐらい上からボールが来る。もう何もできないやろって。

ー そのクリュカ選手と、アライン選手はポジションを争っています。
アライン:まあ、負けたくはないけど、わかるんですよ。キツイ(苦笑)。どうやって勝ったらいいかわからない。だからとにかく練習して、俺の出番が来たら自分のベストを出す。それしかできないです。もう、ホントにスゴイから。
甲斐:しかもイエゴはめちゃくちゃ器用です。
アライン:うんうん。それに経験がある。だからブロックも、最初こう出してて、急にこう動かしたり。誰もできないやん、そんなん。ディマでもそんなことしないよ。ホントスゴイなーって。このチームはスターが揃っていて、この間はレギュラーシーズンで29連勝した。もうおかしい数字ですよ。誰もできない。どんだけ強いの、このチーム(笑)。

ー 3月5日の堺戦に敗れてその連勝が止まった時、スタメン出場していた甲斐選手は「ディマさんに代わって入るのはすごくプレッシャー」だと。責任を背負い込む言葉もありました。
甲斐:自分は、絶対ディマさんのようなプレーはできないし、ディマさんの代わりにもたぶんなれない。このチームはディマさんを基準にして作っているので。それにあの試合は、やっぱり連勝中という重みも感じていました。しかも30連勝目をかけた試合だったので。そこで勝てば、もっと乗れたと思う。でもこのチームはいい人ばかりなので、連勝を止めたことについては誰も口にしなかった。「相手が強かった」とか「よくやったよ」とか、そういう言葉をかけてくれたので、「ああ、いいチームだなー」と。

ー あの試合後、一緒に記者会見に出席していた髙橋藍キャプテンも「孝太郎が自分のせいだと言いましたが、自分は決してそうは思わない。孝太郎は非常にいいプレーをしましたし、チーム全員で負けたというだけ」と話していましたね。
甲斐:また出る機会があったら、もっと頑張りたいな、やっぱりこのチームで勝ちたいな、という思いがさらに強くなりました。
19_R80301 RINA AIUCHI -2584.jpg
ーすでにレギュラーシーズン2位以上が確定し、チャンピオンシップ・セミファイナル進出が決まりました。昨季も同じ形式でチャンピオンシップに臨みましたが、どんなことを感じましたか?
甲斐:レギュラーシーズンとは全然違いました。
アライン:全然違った。セミファイナルはウルフドッグス名古屋との対戦だったけど、本気で来てた。全然違った。1試合目は自分たちが1、2セットを取ってから、3セット取られて逆転負けしたから、「うわー!」とメンタルにも来たけど、それを2試合目から取り返せて良かったと思う。緊張とかプレッシャーとかあったと思うんですけど。ファイナルのジェイテクトとの試合も......3時間超え(3時間25分)!
甲斐:めちゃくちゃ長かった(笑)。
アライン:フルセットで、しかも3、4、5セットが全部デュース。誰も負けたくないし、みんな緊張してるし、ミスも出たし、チャレンジ(映像判定)もあって、「なんやこれ!」みたいな長さ。普通じゃない。レギュラーシーズンとチャンピオンシップは全然違う大会でした。
甲斐:そう思います。あのピリつき感......。サンバーズはたぶんプレーオフ(チャンピオンシップ)に入ったらまた一段ギアが上がる。自分は今(内定時代を含め)3年目ですけど、サンバーズは追い込まれた時にすっごい強いなと感じていて。ジェイテクトとのファイナルの1試合目に勝った瞬間、「これ優勝するわ」と思いました。
アライン:昨シーズンのチャンピオンシップで一番印象に残ってるのは(WD名古屋の)ニミル(・アブデルアジズ)選手のサーブ。普通はサーブのいい選手でも、1セットに1本か2本はミスするんですよ。でもニミル選手はミスしないから、おかしいやろって(苦笑)。3試合目の4セット目は、自分たちが24-20でマッチポイントだったのに、そこから(ニミル選手のサーブなどで)24-24になるのはおかしい。「いつかミスするやろ」と思ってもミスしないんですよ。1点が、本当に重いステージだと思う。

ー 今季のチャンピオンシップに向けての意気込みを。
アライン:また勝ちたいです。自分は出番があったら、自分のベストを出して、チームを手助けできるように頑張りたいと思います。
甲斐:自分はサーブで出ることが多いので、やっぱり1点の重みを知っているからこそ、ワンブレイクを取って、チームを助けたいですね。

ー その後もまだまだバレー人生が続くお二人が、将来的に目指す選手像は?
アライン:こういう選手になりたいというより、とりあえず自分は代表選手になりたい。代表に行きたい。有名になりたいとかそういうことじゃなく、ただ代表で試合に出たいだけ。
甲斐:自分も、なりたい選手像というのはあまりなくて。プレースタイルで言うと、宮浦健人選手(WD名古屋)のプレーを参考にしたいと思っているんですけど、最終的にどんな選手になるかというのは、最後、引退する時にわかるかなと思います。
7_R71024 SUNBIRDSxBLUTEON 3532.jpg


(取材・文 米虫紀子)

TOP