2026年02月27日(金)
Vol.7 真ん中に立っている以上は、どんな攻撃にも粘り強く食らいつく! 佐藤謙次 柏田樹 樫村大仁 鬼木錬
「ミドルブロッカーの報われる瞬間」とは
2025-26 SVリーグで首位をひた走るサントリーサンバーズ大阪。連勝街道の裏では、静かなポジション争いが繰り広げられている。
今季の開幕戦でミドルブロッカーのスタメンを掴んだのは、小野寺太志と柏田樹だった。その後、小野寺の対角には鬼木錬が定着して試合を重ねたが、鬼木が不調となればすかさず佐藤謙次がコートに入り存在感を発揮する。ポテンシャル豊かな樫村大仁も虎視眈々と出番を狙っている。
身長204cmの高さと頑強な肩腕からなる堅いブロックで相手に立ちはだかる鬼木。サウスポーから繰り出す唯一無二のクイックや、ブレイクに繋げる強力なサーブが持ち味の佐藤。躍動感あふれるクイックや得点後の情熱的なガッツポーズでチームに火をつける柏田。198cmの恵まれた体格と、豊富な知識や思考力を兼ね備える樫村。個性豊かな4人に、それぞれが考える"ミドルブロッカー"について語り合ってもらった。
ー ミドルブロッカーの皆さんが感じる"ミドルブロッカーの魅力"とは、どんなところでしょうか。
柏田:
駆け引きですかね。例えばブロックで、相手が打ってくるところにスッと手を出して、シャットアウトしたり、タッチできたら気持ちがいい。自分はどちらかというとブロックよりもクイックで、速いスパイクを打つほうが気持ちよさはあるんですけど、一般的なミドルと考えたら、そこが挙げられるのかなと思います。
鬼木:
やっぱり"ミドルブロッカー"と言うだけあって、ブロックはどこにでも跳びに行くので、止めた時はもちろん、触れただけでもすごく気持ちいいし、達成感があります。
佐藤:
僕的には、レシーブをあまりしなくていいのが魅力です。サーブレシーブが、自分はめちゃくちゃ緊張するので。例えば相手のマッチポイントの場面で、強力なサーブをみんなセッターにピタッと返しますけど、よくできるなーと思います。あと、たまにミドルがいいディグを上げたらめちゃくちゃ盛り上がるんですけど、それぐらいがちょうどいい(笑)。
ー 今季はミドルの選手がディグを上げて盛り上がるシーンが増えている気がします。
鬼木:
ま、いっぱい練習してるんで、その成果だと思います。
佐藤:
アウトサイドの選手のようにレシーブをメインとして練習していないだけで、みんな練習すればできる感じはしますね。サンバーズのレベルになるとみんな上手いから、僕らは下手って言われますけど、でも普通に一般の人に混ざったら、めちゃくちゃ上手いぐらいのレベルにはいるんで。
樫村:
一般の人に混ざったら(笑)。僕らは表面積というか、当たる範囲は広いから、その分は有利かなと。感覚的なところはたぶん鈍いんですけど。
ー 樫村選手が感じるミドルの魅力は?
樫村:瞬間的に気持ちのいいプレーがあるところ、ですかね。クイックは、たぶんサイドの選手が打つ時に比べると、自分で考えてやる幅はちょっと狭くて、瞬間的に決めなきゃいけないみたいなところがある。空いているところにポンと落とすとか、ブロックが来たら瞬時に逆に打つとか、それが決まる気持ちよさはあります。
ブロックは、僕のイメージでは「決まったところにどれだけ速く動けるか」みたいななところがある。ブロッカーが止めにいくというよりは、相手が(打つコースを)選択して、当ててくれるみたいな感覚なので、そこを突き詰めていく楽しさはあるかもしれません。
ー チームとしての戦術もあると思いますが、それプラス自分でも突き詰める?
樫村:
コミットブロック、リードブロックとか、基本的にどこに跳ぶとか、チームの約束事はあるんですけど、イレギュラーな時もありますし、跳んだ後に相手の目線を見て手を動かしたり、個人プレーもあるので、そういうところは楽しいですし、それが思い通りにハマった時は気持ちがいいですね。
ー クイックでもブロックでも、ミドルが得点を奪うとワッと盛り上がりますね
樫村:
しょっちゅう出るもんじゃないので。特にブロックは、サーブ&ブロックというパターンで取ることが多いですし。あまり焦点があたることはないですけど、あの急に来る感じが、ミドルの報われる瞬間というか(笑)。
ミドルは陰で支える存在?「目立ちたい人は嫌かな」
ー逆に「ミドルブロッカーはここがつらいよ」というところはどんなところですか。
鬼木:
樫村さんが言ったように、報われる瞬間が少ないというか。辛抱強くずっと囮として跳んだり、ブロックの移動やジャンプも多くて、陰の支えみたいな感じになっているところは、自分はもう慣れていて大丈夫ですけど、目立ちたい人とかは最初は嫌なんじゃないかなとは思います。
柏田:
ラリーが続いた時に、ミドルはブロックでレフトに行ったり、ライトに行ったり、ブロックフォローに入ったり、でボールが返ってきたらまた囮になって、もちろんクイックも打つし。そこですかね。ラリーが続いた時は結構しんどいです。
ー ラリー中はミドルが一番運動量が多いでしょうか。
柏田:
ですねえ。セッターもキツそうですけど。ボールが違うところに飛んで行ったら追いかけて、トス上げて、フォローにも入って、なので。
佐藤:
リバウンドを取って、逆サイドに(トスを)上げて、またリバウンドを取って、逆サイド、みたいな形が結構セオリーになっていますけど、そういうパターンだとミドルが一番キツイですね。逆サイドに振るにつれて、しんどくてミドルがどんどん遅れていく(苦笑)。サイドのブロッカーは、めちゃくちゃ真面目に中に寄ってくれる選手だったらキツイと思うんですけど、相手のクイックがないなとなれば、移動距離を短くしていける。でもミドルは移動距離が変わらないので。
ー 佐藤選手の「つらいな」と思うことは?
佐藤:
2つ思い浮かんだんですけど。ミドルはボールに触る回数が少ない分、ミスが印象に残りやすく、引きずる、引きずられる雰囲気があると感じています。ブロックの時も、駆け引きを、自分だけじゃなく相手もしてくるので、ブロックを利用されることのほうが多いんですけど、そういう時に相手のナイスプレーというよりはミドルのミスみたいな空気になりがちで(苦笑)。
僕らも頑張って仕掛けているんですけど、「いや、その手の動かし方いらない」とか「それやらずに後ろ(ディグ)に任せたほうがいい」と言われたりするのはありがちです。実際僕らが他のチームのミドルを見ていて、「うわ、それ動かさないほうがいいでしょ」と思うこともあるんですけど。でも逆に、そうやって仕掛けて止める選手もいるので、そういう選手が一流なのかなと思う。そういうことをしても許されるようなプレーヤーになっていけば、どんどん楽しくなっていくんだろうなと思います。
もう1つは、ミドルは打数が少ないので、スパイクを打つのが好きな選手は少し寂しいかなと。特にもともとサイドをやっていた選手からすると、ミドルは限られたシチュエーションでしかトスが上がってこないので、もっと打ちたいなって思うこともあります。相手のサーブがよかったり、ブロックが来ていて、「上げられない、ごめん」みたいにセッターに言われることもあって、それは本当に仕方ないとわかっています。でもやっぱり試合に出ている以上、自分が活躍したいという気持ちは僕にもあるので、自分だけではどうにもできないというのはつらいな、と思うところですね。
樫村:
僕もみんなと被っているのでもういいんですけど、1つ言うとしたら、ミドルはヒエラルキーが低いこと。(練習の最初に行う)ツーボールゲームでは厄介者扱いなんで、そこはちょっとしんどいですね(苦笑)。
ー ミスの話がありましたが、例えばクイックをミスしてしまった時、リピート(すぐにもう一度トスを上げる)して欲しいですか?
佐藤:
して欲しい、ですね、だいたいは。
鬼木:
自分もリピート派です。
樫村:
状況によります。来ないで欲しいって思う時もあります。例えば、ディマ(ドミトリー・ムセルスキー)と太志さんのブロックが前にいるのにリピートされたら、「なんで俺のとこ?」となると思います。逆に相手セッターが前だったら、1本ミスったけど決める自信があるから持ってきて欲しい、となると思いますし。
柏田:
うーん、僕は半々ぐらいですかね。持ってきて欲しいけど、持ってきて欲しくない、みたいな。場面によりますね。
ー 持ってきて欲しい時はセッターに伝えますか?
佐藤:
僕はあまりハッキリとは言いませんね。「ブロック来てる?」と聞いてくれたり、関田(誠大)さんからのアクションのほうが多いので、「あんま来てないっす」という感じで、欲しい気持ちをほのかに醸し出す、みたいなのはあります。「行けますよ!持ってきてください!」みたいなタイプではないです。
樫村:
リピートして欲しくても、パス(サーブレシーブ)ありきですからね。オポジットやアウトサイドは、ある程度パスが乱れても、呼べば来るんですけど、僕らは「1本ミスったからもう1回頼む」というのは自分からはあまりないです。
ー サンバーズには個性の違うミドルが揃っていますが、それぞれが考えるミドルブロッカーにとって一番必要なものとは?
樫村:
さっきも話したように、僕にとっては決められた動きやステップを速くやるとか、クイックも、どんな位置からでも速いテンポを維持するとか、そういうのが僕の中のいいミドルのイメージなので、それを実現できるようなパワーとフィジカルが一番大事なのかなと感じています。
鬼木:
僕もほぼ同じで、そういう細かいステップや速い動きが一番求められているところだと思うんですけど、あとはブロックでのしつこさ、粘り強さみたいなところもすごく大事なのかなと思います。
柏田:
ちょっと被るところがあるんですけど、僕もブロックの粘り強さやファイティングスピリットみたいなところですかね。やっぱり真ん中に立っている以上、相手の攻撃に対してブロックで絶対に両サイドとも止めに行かないといけないので、どんなシチュエーションでも跳びついて、1つでもワンタッチを取っていく粘り強さは大切だと思いますね。
佐藤:
何が必要か......僕が個人的に思ったのは、特にブロックに関してですけど、やっぱり戦術をしっかり理解しておくことが大事かなと。サイドの選手ももちろんですけど、よりミドルが理解しておかないといけない。どの攻撃もミドルが跳びにいくので、どこも通されるみたいな展開になるとすごく難しい試合になりますから。やっぱりブレイクを取れないと勝てない競技だと思うので。
ー 皆さん"高さ"ではないんですね。
佐藤:
それがありなら......ミドルに必要なもので、もし何かもらえるなら「高さ」って言うかなと思うんですけど。でも高さって、必要だけど、簡単に手に入れられるものじゃないので、だからあえて。(高さがなくても)なんとかなるかどうかはわからないですけど、やるしかないですから。
4人から見た"小野寺太志"とは
サンバーズにはもう1人ミドルブロッカーがいる。日本代表で東京、パリの両五輪に出場した揺るぎない存在・小野寺太志である。現状、ミドルの2枠のうち1枠には小野寺が固定され、その対角のもう1枠を4人で争うかたちになっている。
小野寺が高さと技術、経験を兼ね備える実力者であることは間違いないが、彼を脅かすほどの存在が出てくれば、サンバーズはさらに高みに登ることができる。佐藤、柏田、樫村、鬼木の4人は、現状をどのように受け止めているのだろうか。
ー 皆さんから見た小野寺選手はどんな存在なのか。また、小野寺選手が不動で、残りの1枠を4人で争っている現状についてどう捉えているのかを聞かせてください。
佐藤:
同じポジションとして見ていて、やっぱり上手いなとか、自分よりまさっている部分が多いなと思います。太志さんが出ているとチームが落ち着くし、周りの信頼を勝ち取っている感がすごい。でもやっぱりライバル心みたいなものはあります。太志さんの状態がどんな時も100%だというわけではないですし、自分が出た時にはやれるように準備しておいて、チャンスが来た時に頑張ろうと。そうですね......負けたくないと思っているんですけど、仕方ないなって思っている部分もありつつ、でも出た時には、太志さんよりいいプレーをしてやる、という気持ちはあります。
鬼木:
太志さんは、本当に安定感がすごくて、尊敬しています。それでもやっぱり負けたくないですし、やっぱり自分が出て勝ちたい。太志さんを休ませたいという思いもちょっとありますし、だからこそ負けたくないって気持ちはすごくあります。
樫村:
僕はプレーや動きについ力が入っちゃうんですけど、太志さんは脱力感がすごいし、無駄がない。要領がいいというか、最低限の動きでこなすイメージがあって、自分が真似したいものがたくさんあるなと日々感じています。何か聞いたらしっかり教えてくれるいい先輩です。でも、太志さんが1人いて、その対角を僕らみんなで争っているみたいな現状は......。いい感じで刺激しあっているとは思うんですけど、もっと全体として頑張って、全員で競争できたら、よりよくなるかなと思います。
柏田:
太志さんは本当に器用な選手ですし、カッシー(樫村)が言ったように、無駄のない動き、最低限のエネルギーで最効率のプレーをする選手なので、本当にすごいなと思います。昨季は太志さんが怪我で抜けた期間が長かったので僕らが出ることも多かったんですけど、今季も膝を痛めたりしているので、そういう時に自分が入れたらいい結果を出したいですし、負けないように頑張りたいなと思っています。
鬼木:
ミドルの誰が出ても強いというところを、自分たちで証明していきたいなと思っているので、これからもみんなで切磋琢磨しながら競い合って、頑張ります!
戦術を完璧に理解して、粘り強くハードワークし相手の攻撃に食らいつく。4人が理想とするミドル像を極めるにつれ、サンバーズの連覇と世界一への可能性は広がっていく。
(取材・文 米虫紀子)