ロングインタビュー

Sunbirds Column

20251226日(金)

Vol.5 支え合う2人が見出したやりがい。 試練を経て、今充実している理由とは

Vol.5 支え合う2人が見出したやりがい。 試練を経て、今充実している理由とは

世代No. 1・鍬田憲伸の三冠を阻止した髙橋塁

現状に悔しさは抱えていても、悲観せず、自分のやるべきこと、できることにベストを尽くす。そんな彼らがいるから、チームは同じ方向を向ける。
サンバーズ入団4年目の鍬田憲伸と髙橋塁。同じアウトサイドヒッターの2人はポジションを争う間柄だが、兄弟のように仲がいい。マイペースな鍬田を兄のようにフォローする塁と、塁の悩みをポジティブオーラで吹き飛ばす鍬田。改めて2人に、お互いの関係性や今季の試練について語ってもらった。

同学年で仲のいい2人ですが、最初の出会いは?
塁:
自分が憲伸を認識したのは中学3年のJOCカップでした。僕は京都代表。憲伸は熊本代表のエースで、オリンピック有望選手に選ばれていたので、「すげえ。鍬田憲伸って言うんや」という感じで。
鍬田:めっちゃゴメンやけど、僕はその時はまだ塁のこと認識してなかった(笑)。
塁:高校の時は1回だけ、高3の国体で対戦しました。憲伸がいたあの時の鎮西高校は春高とインターハイの二冠を獲ったんですけど、(国体で勝って)三冠を阻止したのは僕ら東山なんです。
鍬田:僕が塁を知ったのはその時かも。自分は他のチームに興味がなかったので。
塁:うちはあの時、鎮西対策にすべてをかけていた。憲伸と(1年生だった)水町(泰杜)君(ウルフドッグス名古屋)の2人だけ、とにかく抑えろ!という感じで、めちゃくちゃ対策をしていました。映像を見てスパイクコースなどを徹底的に分析して、それが全部ハマった。結構大差で、ストレートで勝ちました。
鍬田:僕らは東山の対策とか、何もなかった。僕らの頃の鎮西はミーティングもなかったし、相手の対策はほとんどやらなかった。公式練習を見ながら、「あいつが打ってくるな」みたいな感じ。東山戦の時は、知っていたのは塁と藍が兄弟でやっている、ということぐらい(笑)。塁はキャプテンでエースだったのですぐわかったんですけど、「どれが弟なん?」と。試合をしながら、「あ、あれかな?」って感じでした。
塁:そしたら負けてた?
鍬田:スコスコにやられました。いつもは負けたらめっちゃ怒られるんですけど、畑野(久雄)監督も宮迫(竜司)コーチも、あの時はもう「これはしゃあないな」みたいな感じで笑っていました。対策されすぎていたから。

それからミーティングをするようになったとか?
鍬田:
映像をみんなで20分ぐらい、ちょろっと見るようになりました。

その試合での塁選手の印象は?
鍬田:
「ハチマキしてんなー」ぐらい(笑)。あとは、「めっちゃブロックに当てて決めてくるな」って。
塁:当時、僕らの世代は西田有志(大阪ブルテオン)か鍬田憲伸か、という感じでした。


鍬田:西田、あの時有名だった?
塁:1人で打っていた印象がある。世代ナンバーワンは鍬田憲伸。
鍬田:いやいや、まあ、あん時はね。
塁:否定せん(笑)。
鍬田:だって、春高優勝が夢だったので。そのために鎮西に入ったようなものでしたから。

その夢が叶って春高で優勝。
鍬田:一旦、完全に燃え尽きました。試合が終わったら熱が出て、3日間ぐらいずっと高熱が続きました。

今2人はSVリーガーになっていますが、「これがあったから今がある」といった土台になっている時期は?
塁:
高校じゃない?
鍬田:うーん、高校なんかな......。
塁:一番濃い3年間じゃない?高校時代がなかったら、今ここでやれてないでしょ。
鍬田:確かに。でも自分は小さい頃にテレビで春高を見て、「うわ!春高ヤバイ!」と憧れたことが大きかったかなと思うんですよね。兄の影響でバレーを始めたものの、それまではなんとなくやっていたんですけど、春高を見てから夢中になった。兄の高校が春高予選の決勝で鎮西と対戦して負けたんですけど、その試合を見て「鎮西カッコいい!オレ絶対ここ行く!」と母に言っていましたから。そこからバレーを本気でやるようになって、ずっと夢中で、春高優勝して。当時はVリーグ(現SVリーグ)なんて考えていませんでした。
塁:でもサントリーに憧れてたんじゃないの?熊本にバレー教室に来たって。
鍬田:あ、そうそう。バレー教室があって、当時はヨネさん(米山達也コーチ)やツマさん(津曲勝利チームディレクター)が現役選手で来てくれていました。だから「サントリーってなんかすごいな」と、サントリーだけ知っていて。大学生になってVリーグどこ行きます?となった時に、「サントリーしかない!」みたいな(笑)。
塁:なんかチョロいな(笑)。
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「憲伸は最初怖かった」。そこから意外な関係性に

塁選手は高校時代がベースになっている?
塁:そうですね。でも今の話で言うと、僕は憲伸とは逆かな。高校生の時は「春高に出たい」って、言わされているようなものでした(笑)。僕はメグさん(栗原恵さん)を見てバレーを始めたので、Vリーガーがカッコいいな、なりたいなと、小学生の頃からずっと思っていました。でもここに来るまでにはやっぱり高校時代が、人間性の部分だとか、一番鍛えられた濃い3年間でした。あれを超えるしんどさはもうないと思う(苦笑)。

何がしんどかったですか。
塁:
まず練習時間が長い!
鍬田:あーそれはマジですごいなと思う。1日中練習してるってすごいわ。
塁:平日でも午後3時半から夜の9時、10時頃までやっていました。

鎮西は長くないんですか?
鍬田:
2時間(笑)
塁:体力余るやろ。
鍬田:6時間も練習やってるなんて信じられない。練習メニュー教えて欲しいぐらい。何を6時間もやってんの?
塁:対照的やな(苦笑)。
鍬田:でも僕らも全体練習のあと、ちゃんと自主練はやっていましたけどね。2時間ぐらい。自主練って誰にも怒られないし、やりたいことをやれるから好きだった。全体練習はめっちゃ怒られるんですけど、その2時間だけ耐える(笑)。畑野先生には、ミスのことだけ怒られましたね。先生には「なんでミスにそんなに厳しいんですか?」って聞いてみたかったんですけど、先日突然亡くなられて......。もっと、いろんな話を聞いておけばよかったなと思っています。
塁:対照的な高校時代だったけど、最後、こうやって同じチームに来ているのは面白いよな。最初は憲伸、めっちゃ怖かった。オーラが。
鍬田:いやいや、どこがやねん(笑)。
塁:今でこそこんな感じですけど、最初は「鎮西のエース」というイメージがあって、「一緒にやっていけるんかな?」と不安でした(笑)。プレースタイル的に結構シュッとやっているタイプだったし、絡みづらいんやろうなと。それに同じポジションなので、やりづらさもあるのかなって。

バチバチするんじゃないかと?
塁:
はい。でもそんなのはまったく!なかった(笑)。「オレ、エースだから」みたいな感じがあるのかと思ったんですけど、マジでなくて、「こんな感じなんや」という意外なキャラだったので。

どんなキャラですか。
塁:
ザ・天然!(笑)。憲伸ワールド全開でした。人見知りも全然なくて、最初からめちゃくちゃ絡みやすかった。自分は長男ですけど、憲伸は末っ子で、性格も"末っ子感"がエグいので、もう今は同期感があまりない(笑)。

後輩のような、弟のような?
鍬田:弟のように扱ってきます。

サンバーズに合流した時のチームの印象はどうでしたか。
塁:
個々が本当に自立しているなと。Aチームだとかベンチだとか関係なく、全員が本当にしっかりしている。怒られるとか、誰かに言われないとできないなんてことはなく、しっかり練習をやるし、オンとオフも切り替えられる。「すげえな。マジでプロだな」と最初に感じました。
鍬田:僕はまず環境面に驚きました。体育館にはずっとネットが立っているし、エアコンがついているし、ボールはたくさんあるし、ウエイト場もシャワーもあって何でもできる。それに体育館がオレンジコートだったのでテンションが上がりました。

今シーズン、それぞれが見出したやりがい

2人がサンバーズに入団したのはVリーグ2連覇を果たした2022年。常勝軍団への道を歩み始めたチームは選手層が厚く、なかなか出場機会は得られなかった。その中で、塁はプレーの正確性と勝負強さを活かしたリリーフサーバーという役割でチームに貢献。鍬田は昨季、ヴォレアス北海道にレンタル移籍し、充実したシーズンを送った。

鍬田選手は昨季、ヴォレアスでレギュラーとして活躍しました。
鍬田:
もちろん試合に出られたことは楽しかったんですけど、僕は、試合に出られないからどうとか、出られるからどうとか、それはあまり関係なくて、バレーができる環境があればいいという感覚なんです。でももちろんチームに貢献したいという思いはあるし、昨季、出続けたことで試合の感覚が戻ってきたので、「いつコートに立ってもできる」という自信は持てた気がします。

ただ今年は8月の練習試合中に左足アキレス腱断裂という大怪我を負いました。
鍬田:はい。ブチーン!と行っちゃいました。スパイクの助走に入る時に。まるでバットで殴られたような感覚で、後ろにいたAJ(デアルマス アライン)に「お前蹴ったやろ!」って言いましたもん(苦笑)。そこから起き上がれなくて。
塁:あの時はびっくりしました。
鍬田:普通だったら落ち込むと思うんですけどね。

落ち込まなかったんですか?
鍬田:落ち込まなかったですねー(笑)。
塁:次の日には歌ってたよな。
鍬田:バレーはすぐに一旦頭から離れました。「あ、もう一旦無理やな。ちょっとバレーは忘れよう」と。その辺の切り替えが自分は変なんですよね。
塁:変!変!ぶっ飛んでる!

バレーを一旦離れて、その間どう過ごそうと考えたんですか。
鍬田:自分はもともとトレーニングが大嫌いだったんですけど、バレーができない状況になったら、「じゃあトレーニングやるしかないからやろう」と頭が切り替わった。そうしたらウエイトトレーニングが好きになりました。前はバイクをこぐのさえ嫌だったんですけど、今は楽しくて、めっちゃ充実しています。ウエイトトレーニングに向き合うようになったら、細かいところまで知りたくなって、「ここを鍛えたらこうなるんや」とか、自分でも調べるようになりました。毎日、練習に来るのが楽しくて。逆にみんながバレーの練習をしているのを見るのはちょっと嫌かもしれない。自分ができないから、「あーやりてえなー」と思うことはあります。でもそれで落ち込むとかはまったくありません。
塁:憲伸はマジでポジティブですからね。
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染野輝のヴォレアスへのレンタル移籍や鍬田の怪我があり、今季開幕前のサンバーズのアウトサイドヒッターは髙橋藍主将、アライン、イゴール・クリュカと髙橋塁の4人だけに。シーズン前、塁は「リリーフサーバーとしてのポジションを確立させながら、アウトサイドとしても挑戦できる1年にしたい」と意欲を語っていた。しかし10月24日の開幕戦、塁は14人のベンチ入りメンバーから外れた。

塁選手は今季、アウトサイドとしても出場機会を狙っていきたいと話していましたが、開幕はベンチ外からのスタートとなりました。

塁:外れましたね。憲伸と2人で外から応援していました。
鍬田:「もうオレだめだ」って、僕にずっと言ってました。結構弱音は僕にちゃんと吐きますね。
塁:横にこいつしかいなかったんで(笑)。テストマッチではすごくいい感じだったから、「え?外れんの?」とはなりました。開幕戦は、憲伸と並んで見ながら、「自分がピンサー(リリーフサーバー)で行くならこうだな」とか考えていた。あれがあったから、「ベンチインしたら絶対やってやるぞ」という気持ちになって、次の週からは(ベンチに入って)やったってます(笑)。

鍬田選手は弱音を吐いたり相談できる同期なんですね。
塁:そうですね。憲伸はポジティブ思考なので、憲伸と喋っていたら、自分がなんで悩んでいるのかわからなくなる(笑)。同じポジションですけど、憲伸が出ていたら普通に応援するし、逆に自分が出たら憲伸もめっちゃ応援してくれる。それって、たぶんおかしいんでしょうね。普通だったらもっと"ライバル!"って感じになるのかもしれないけど。昔一緒に出た近畿総合はめっちゃ楽しかったし。
鍬田:あれはおもろかったな!
塁:一緒に出たら一緒に頑張るし、自分が出られなくても、憲伸が点取ったら嬉しい。
鍬田:そこは難しいですよね。采配を決めるのは監督なので。
塁:その通りで。メンバーは14人以上いて、毎回何人かベンチアウトになるんですけど、みんな一流なので、誰が出ても強い。1位を取っているからこそ余計に納得できますよね、自分が出られなかった時でも。負けていたら、「自分を出せよ」って、みんななると思うんですけど、本当に決勝しか知らないチームなので。オリビエ監督の中で自分はアウトサイドの数には入っていないのかなという感じがしていますが、でもピンサーにはすごくやりがいを感じています。チームを救えるし、チームを終わらせることもできるポジション。1本ミスしたら調子が悪いと言われる世界なので、難しいですけど、やりがいはあります。

特に11月29日のVC長野トライデンツ戦では2本のエースを奪うなど大活躍でした。
塁:あんなのは初めてでしたね。今季は(小野寺)太志さんと代わる場合と、鬼木(錬)と代わる場合で全然シチュエーションが違います。(ブロックの非常にいい)イゴールが加わったので、太志さん、ディマ(ドミトリー・ムセルスキー)、イゴールが前衛に並んでいる時にサーブをミスるとオリビエにめちゃくちゃ怒られます(苦笑)。
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今季のSVリーグはまだまだ続きますが、リーグ後半戦に向けての意気込みや、どんな役割を果たしていきたいかを教えてください。
塁:チームとして、リーグの序盤から勝ち続けているのは僕が入ってから初めてのことです。今までは、最初何試合か負けて、負けから変わっていこうというシーズンが多かったんですが、今季は開幕戦に負けただけで、そのあと連勝してきたので、逆に難しさもあるのかなと。でも勝ち癖がついて、みんないい自信になっているので、年明けからも継続してやっていきたいと思います。
鍬田:僕はようやくギプスが外れて、歩けるようになりました。1月にたぶん早歩き、2月に走れて、3月にダッシュ、4月にたぶんボールを触れるようになるけど、ジャンプはずっと先です。最初は今季のファイナルでピンサーとして1回出られればいいなとイメージしていたんですけど、経過を見るとそれは無理。でも今できることとしては、声は出せる。声でみんなをいい方向に持っていけるようにしたい。自分は何でもやるので、そこは心強く思っていただければ。

そして塁選手の相談にも乗りながら。
鍬田:そうです。「そんなことで落ち込んでどうするんや。オレの足見てみろ!」って(笑)
塁:いやー、憲伸のこのキャラはやっぱりいい感じにチームにマッチしているなと思います。

1本で試合の流れを変えられる塁と、チームをポジティブな空気に包む鍬田。常勝チームはレギュラーだけで成り立っているわけではない。2人のようなサブメンバーの輝きがあればこそ、リーグ3連覇に挑むことができる。
(取材・文 米虫紀子)


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