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循環型農業の取り組みを進める「登美の丘ワイナリー」をレポート【前編】

サントリーグループのさまざまなサステナビリティの取り組みを、従業員の生の声でお届けします。初回は、100年以上の歴史を持ちながら、先進的な循環型農業への挑戦でも知られる「登美の丘ワイナリー」へ。栽培技師長の大山弘平さんにお話を伺いました。

循環型農業の実践場「登美の丘ワイナリー」をレポート【前編】

生産者の高齢化という課題に向きあい地域コミュニティと連携

100年以上の歴史を持つ「登美の丘ワイナリー」は2022年9月、体験・体感型ワイナリーにリニューアルしました。そんな登美の丘ワイナリーのぶどう畑では、社会課題や気候変動問題などに対応すべくさまざまなチャレンジを実施し、持続可能性を追究する、循環型農業の取り組みを進めています。

目の前に甲府盆地が広がるワイナリーの「富士見テラス」。標高500mの澄んだ空気のなか、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳、そして富士山が見わたせます。この雄大な自然が良質なぶどうを育てるのです。生産地を気軽に訪ねられるのも、日本ワインならではの魅力です。

目の前に甲府盆地が広がるワイナリーの「富士見テラス」。標高500mの澄んだ空気のなか、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳、そして富士山が見わたせます。この雄大な自然が良質なぶどうを育てるのです。生産地を気軽に訪ねられるのも、日本ワインならではの魅力です。

標高600mから富士山を見わたせる眺望台では、ぶどうの生育に適した風通しと日当たりの良さを実感。産地を守るため、地域の農業復興支援にも積極的にかかわっています。

標高600mから富士山を見わたせる眺望台では、ぶどうの生育に適した風通しと日当たりの良さを実感。産地を守るため、地域の農業復興支援にも積極的にかかわっています。

実ったぶどうも、一房ずつ人の手で手摘みします。収穫には、サントリー社員もボランティアで協力。「ワインができるまでの工程を知ることで興味や知識が深まる」と好評で、毎年必ず参加する人も。

実ったぶどうも、一房ずつ人の手で手摘みします。収穫には、サントリー社員もボランティアで協力。「ワインができるまでの工程を知ることで興味や知識が深まる」と好評で、毎年必ず参加する人も。

日本固有品種『甲州』の山梨県における生産量は、1999年頃の約8000tをピークにここ数年では約3000tまで減っています。生産者の高齢化や跡継ぎ不足で耕作放棄地も増えているので、山梨県など行政や地域の方と相談して荒れた畑をまとめ、山梨県内3ヵ所、合計で16ha規模のぶどう畑をつくりました。畑での植えつけを手伝っていただいたり、私たちは地域の清掃に参加したりするなかで、コミュニティが活性化したと喜んでいただけています。持続可能性は、環境だけでなく人の関係性でも言えることだと思っています」(大山さん)

循環型農業のキーワード「4パーミル・イニシアチブ」とは?

そして、農法におけるチャレンジの一つが、除草剤を使わず草が生えた状態で作物を育てる「草生栽培」という栽培法。近年は循環型農業として話題ですが、登美の丘ワイナリーでは粘土質の土壌を改善するため2000年頃から推進しています。下草の効果によって土壌の団粒化が進み、微生物や益虫が増え、生物多様性に富む豊かな土質となります。草の生えた地面を触るとふかふかと柔らかく、豊かな土壌であることが分かります。ぶどうの品質のためなら手間を惜しまない姿勢は、今も変わりません。

2000年ごろから実施する草生栽培は、草刈りをするなど手間もかかりますが、粘土質の土壌の改善などに効果的。植物の根が水はけを良くし、微生物の多い豊かで柔らかい畑に。

2000年ごろから実施する草生栽培は、草刈りをするなど手間もかかりますが、粘土質の土壌の改善などに効果的。植物の根が水はけを良くし、微生物の多い豊かで柔らかい畑に。

収穫後の12月から3月にかけて剪定した枝を炭化。畑に混ぜることで、炭素を貯留する効果に加え、水はけの改善、微生物の増加、病原菌の減少など、土壌や生育環境の改善も期待できます。

収穫後の12月から3月にかけて剪定した枝を炭化。畑に混ぜることで、炭素を貯留する効果に加え、水はけの改善、微生物の増加、病原菌の減少など、土壌や生育環境の改善も期待できます。

さらに、「やまなし4パーミル・イニシアチブ」へ貢献する農法でも注目されています。これは土壌の炭素貯蔵量を毎年0.4%ずつ増やし、温暖化を抑制しようという世界的な取り組みで、2020年から山梨県も参画。登美の丘ワイナリーでは剪定枝を炭にして畑に戻すことで、ぶどうが吸収した二酸化炭素を土壌に貯留する取り組みに着手しています。
「まずは有機栽培の畑で試しているところですが、興味を持った地域のワイナリーの方も視察に来られています。効果を数値化して発信することで、取り組みを広げていきたいと考えています」(大山さん)

(後編に続きます)

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