Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

マイ・リトル・サーファー

マリブ 2/6
ルジェ クレーム
ド アプリコット
2/6
オレンジジュース 1/6
生クリーム 1/6
シェーク/カクテルグラス

クール・ダウン

マリブ 30ml
テキーラ サウザ
ブルー
15ml
ライムジュース 15ml
ジンジャーエール 適量
ビルド/銅製マグカップ
あらかじめ冷やしたマグカップに氷を入れ、材料を注ぎ、軽くステア。カットライムを搾り入れる。

懐かしいサンタモニカの風

アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス近郊にサンタモニカという名高いビーチがある。訪ねたことは一度もないが、わたしにとっては懐かしい気持ちにさせてくれる地名である。

学生時代の一時期、スポーツショップでアルバイトをしていたことがある。冬にスキー板の販売員として入ったのだが、シーズンが終わっても、暇な時はおいで、といわれ極めて適当に出勤していた。

社員におっかなくて素敵なサーファーのお姉さんがいた。かなりの本格派。年中、時間をつくってはどこかの海に行く。正直に言えば、サーフィンの話のほかはつかみどころのない人で、わたしはちょっと苦手だった。

仕事が終わると店の人たち行きつけのスナックによく誘われた。サーファーのお姉さんは皆とあまり語らず、ビールをすんごい勢いで飲み、そしてジントニックに変わる頃には勝手にいい心地になって、カラオケで『サンタモニカの風』という曲を女性アイドル歌手のモノマネで見事に歌い上げる。その時だけは苦手意識は忘れ、こころから拍手を送った。

つまりお姉さんのカラオケのせいでサンタモニカを身近に感じるようになってしまったのだ。いまでも夏になるとふとしたときにこの歌を口ずさんだりしている。


何年か前に事情通から、サンタモニカはかなり観光化していると聞いた。そんでもっておすすめは、クルマで30分ほど離れたところにあるマリブビーチのほうが素敵で落ち着いていると教えられた。高級別荘地でもあり、またサーファーたちの絶好のポイントでもあるらしい。

そう聞いて、あのお姉さんのカラオケの歌いっぷりがよみがえった。彼女はサンタモニカやマリブのビーチに行ったことはあるのだろうか、ココナッツリキュール「マリブ」を使ったカクテルを飲んだことはあるのだろうか、と思ったりした。

バルバドス産ラムとココナッツの果肉からつくられる「マリブ」の甘みはビーチの潮風とよく合う。

夏向けアフターディナーカクテル

ココナッツリキュール「マリブ」はパイナップルジュースやオレンジジュースと相性がいい。オレンジジュース割のカクテル名は「マリブビーチ」という。他にも、トニックウオーターやコーラで割ったりして飲まれることも多いが、仲良しのバーテンダーの創作カクテルに、「マリブ」を使った夏向けのアフターディナーカクテルの佳品がある。

レシピは「マリブ」にアプリコットのリキュール、オレンジジュース、生クリームをシェーク。グラスはほのかにオレンジがかったミルキーな感覚に染まる。口にするとオレンジミルクっぽい味わいのなかから、ココナッツの風味がそよぐ。生クリームがうまく効いていて、なめらかな口当たり。

ビーチサイドのテラスで、潮風に撫でられながら飲めば最高、と想わせる味わいだ。食後にもふさわしい。

カクテル名は「マイ・リトル・サーファー」。わたしが勝手に命名した。

50年以上も前のヒット曲、ザ・ビーチ・ボーイズの『サーファー・ガール』の歌詞から取った。ひと口含むと、オフショアに撫でられながらビーチに寄せ来る波のようにビーチ・ボーイズのメロディが耳の奥で流れ、歌詞にある愛しの可愛いサーファー・ガールの姿がアタマに浮かんだのだ。

残念ながらバイト先でのサーファーのお姉さんのイメージはまったくない。

潮焼けした長い髪、そこそこの美人でスタイルもよかったが、彼女に怒られたことはないのに、なんだかおっかなかった。自分がいつ休暇を取っても支障をきたさないよう、後輩社員や学生バイトにいろんな仕事を委ね、覚えさせるのだった。時間的融通のきく環境に甘えきっていたわたしにとっては、最も緊張する人だった。

いまになって、凄い人だったな、と讃えている。彼女はタリラリラーンとマイペースを気取り、面倒なことは他人任せのように見せて、ポイントはしっかりと押さえていた。だから一度も大きな混乱やミスを生じたことがなかった。

お姉さんはお元気だろうか。すでに還暦を超えていらっしゃる。いまもどこかのビーチで夏を満喫されていることだろう。


さて、もう一品、「マリブ」ベースの創作カクテルを紹介しよう。 

ココナッツリキュールにミックスするのはテキーラ、ライムジュース。これらをキーンと冷やした銅製マグカップに入れ、ジンジャーエールで割る。

ライムがこのカクテルのポイント。ココナッツの風味に爽やかさをもたらしている。あとからジンジャーエールのすっきりとした甘みとともにテキーラの味わいがふんわりと浮遊してくる。なんともいえない清涼感がある。

カクテル名は「クール・ダウン」。これもわたしが勝手に名前をつけてしまった。あくまでマリンスポーツを意識した。

太陽の熱、海面の眩い輝きを浴びて火照った身体を優しく癒すイメージ。ビーチの美しい夕景を眺めながら飲めば、クール・ダウンできるはずだ。

ただしこうした本格カクテルもいいが、先述したように「マリブ」はジュースやコーラで割る気軽なスタイルがよく似合う。トロピカルカクテルがお好きな方は、自宅に一瓶常備しておくといい。オレンジやパイナップルといったお好みのジュースとのミックスでトロピカルな気分を十分楽しめる。

「マリブ」に関連するエッセイはこちら

第14回「大人の夏、ココナッツ」マリブ

トロピカルカクテルに関するエッセイはこちら

第13回「甘くフルーティーな夏」グアバーナ/マンゴヤン/ヨーグリート

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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