Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

ハーベスト・オールドファッションド Harvest Old-Fashioned

ジムビーム ライ 30ml
カルヴァドス ブラー
グランソラージュ
30ml
シュガーシロップ 2tsps.
アロマティック
ビターズ
2dashes
ステア/オールドファッションドグラス
材料をステアして、氷を入れたグラスに注ぎ、オレンジピールを飾る

昔々パールというドリンクがあった

カクテルの歴史を紐解こうとすると、ビターズ(bitters)について語る必要がある。ビターズはいまに通じる元祖カクテルの構成要素として重要な役割を担っているからだ。

カクテルの定義に触れた文献で、現在把握されている最古と言われているものは1806年の新聞記事だ。アメリカはニューヨーク州コロンビア郡ハドソンで発行されていた『The Balance and Columbian Repository』(週刊新聞)の5月6日の記事にカクテルというワードがあった。読者からの“それは何か”の問いに5月13日付記事で、カクテルはスピリッツ、ビターズ、水、砂糖をミックスした刺激的な酒、と答えたというものだ。

ここでいきなり登場してくるビターズとは何か。簡単に説明すると、アルコールに薬草、香草やスパイスなどを漬け込んでつくられる苦味酒のことを言う。独特の強い味わいを持つこの苦味酒がカクテルへと通じる道は大昔のイングランドで飲まれていた「パール」(purl)にはじまる。

古くはシェイクスピアの戯曲『ウィンザーの陽気な女房たち』(1597)に登場している。ニガヨモギ入り(詳細不明)のビター的な風味のあるエール(上面発酵ビール)やワインをパールと呼び、長く愛された。

1690年頃、ストートンズ・ビターズが誕生する。ロンドンの薬剤師リチャード・ストートン(Richard Stoughton/1665–1716)が生みだし、製品化した。エール(上面発酵ビール)あるいはワインにリンドウの根やビターオレンジの皮、ニガヨモギなど22種類ものボタニカルを漬け込んだものだった。これが元祖アロマティックビターズである。

胃腸を整え、さまざまな体調不良に対処できる万能薬として、エリクシール・マグナム・ストマキクム(Elixir Magnum Stomachicum)の名で宣伝していった。ちなみにエリクシールとは、中世において霊薬、薬液として扱われたものであり、現代のリキュールといえるものだ。

エールやワインが入ったグラスにストートンが開発したエリクシールを小さじ1杯ほど加えると、ちょっと刺激的な「パール」(purl)ができあがった。イングランドではこれを健胃薬的に早朝に飲む習慣が生まれた。

1710年代にはビターズが一般名称となり、1712年にストートンズ・ビターズは医薬品として王室特許を取得する。この頃にはブランデーに加えて飲まれたり、ジンにも用いられ(ジン&ビターズ)、現代のカクテルに通じる味わい方になる。さらにはイングランドに留まらず、ヨーロッパはもちろん北米までその人気は拡大していく。

そして19世紀。冒頭で述べたアメリカの新聞でカクテルというワードが登場した。そこには“俗にビタード・スリング(bittered sling)と呼ばれる”との補足もあった。スリングはスピリッツに甘みを加えて、水やソーダ水などで満たした飲み物をいう。

ファンシーではなくプレーンがいい

18世紀後半のアメリカ東海岸の酒場では「ウイスキー・カクテル」が大人気だった。ライウイスキーもしくはスコッチやアイリッシュにビターズと砂糖を少量加える。現在のようにキーンと冷えた口当たりとは大きく異なる。洗練のない荒々しいウイスキーに氷無しの常温である。砂糖を少量の水で溶かし、ビターを加えることで飲み口がよくなったのかもしれない。

19世紀前半までこの「ウイスキー・カクテル」が全盛だったようだ。一方で1820、30年代にはラムやブランデーをベースにした現在も愛されているアロマティック・ビターズが誕生し、ストートンズ・ビターズは次第に主役の座を譲ることになる。

都市の酒場が充実していくと、バーテンダーは独自の工夫を凝らしたカクテルを考案するようになる。1870年代になるとキュラソーやマラスキーノ、アブサンをはじめとしたリキュールを使った“ファンシー(凝った)”と呼ばれるバリエーションが生まれていく。

そうしたなか、ウイスキーベースのカクテルにおいてはファンシーではなく、ウイスキーの味わいを生かした“プレーン(素朴)”な昔ながらのスタイルで味わいたい、という人たちが存在した。「ウイスキー・カクテル」の根強いファンがいたのだ。つまりオールドファッションドである。

1880年代には角砂糖、ビターズ、氷、ライまたはバーボンウイスキーというスタイルが飲まれるようになる。ケンタッキー州ルイビルのペンデニス・クラブ(Pendennis Club)発祥説があるが現在は否定され、「オールドファッションド」を広めた、という言い方をされたりもしている。

ロンドンのジェントルメンズ・クラブをモデルに設立されたこのクラブはケンタッキーの有力な紳士の社交倶楽部だった。ここでは「オールドファッションド・トディ」(ビターズは使わない)というカクテルが飲まれていたらしく、それとの混同があるようだ。

20世紀に入ると「オールドファッションド」にフルーツが加わる。オレンジやレモン、ライムのスライスやマラスキーノ・チェリーなどを飾るようになった。これは禁酒法時代にしっかりと定着したようだ。質の悪い密造ウイスキーを飲むための工夫であった言われている。

ところが1960〜70年代にかけてホワイトスピリッツとジュースというレシピが流行すると、このカクテルは忘れられてしまう。救いはヨーロッパだった。フルーツを使わない古典的なレシピに根強いファンがいた。ビターズと角砂糖の「シャンパン・カクテル」が飲まれているのも、古典を愛する人たちがいる証ではなかろうか。

1990年代にロンドンでカクテル・ルネサンスがはじまると、「オールドファッションド」は復活し、スタンダードの座に帰り着く。アメリカでも1880年代のスタイルに回帰していくことになる。

さて、今回紹介するカクテルは「ハーベスト・オールドファッションド」。古典にアレンジを効かせた温故知新といえるものだ。

ライウイスキーとアップルブランデー、カルヴァドスを合わせる。他にはシュガーシロップにビターズ。古典レシピにカルヴァドスが加わったシンプルなものだ。柔らかな果実味にライとビターズのほのかなスパイシーさが潜んだふくよかな味わいで、好きになる方は多いのではなかろうか。

とくにいまの季節、秋におすすめの味わいといえる。是非どうぞ。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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ジムビーム ライ
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カルヴァドス ブラーグランソラージュ
カルヴァドス ブラー
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