これからの季節におすすめのカクテル「ミドリ・サワー」を紹介したい。乾きを心地よく癒してくれる。
カクテル名からわかるように、日本が生んだ世界的な人気を誇るメロンリキュール「MIDORI」(以下、ミドリ)を使う。日本よりも海外でよく飲まれていて、ネットでこのカクテルについて探ってみると“1970年代のディスコ・ブームを彷彿させる”といったコメントをよく見かける。
実際、「ミドリ」はディスコとの関連が深いのだが、まずはその歩みについて簡単に説明する。
60年以上前、東京五輪に日本中が湧いた1964年に「ヘルメスメロンリキュール」が誕生した。
そして1971年、東京でIBA(国際バーテンダー協会)主催の第20回インターナショナルカクテルコンペティションが開催され、そこで海外のバーテンダーからこのメロンリキュールが大きな注目を浴びる。とくにアメリカの出席者から輸出への強い懇請(連載第104回『五輪とメロンリキュール』グリーン・アイズ』に詳細)があった。
ただし、輸出するためにはアメリカのリキュール規格に合わせながら、既存の「ヘルメスメロンリキュール」の香味品質と同等なものをつくり上げる必要があった。何度もアメリカへ試作品を送り、現地のバーテンダーから繰り返し意見を求め、香味品質を高めることに苦心する。
慎重なまでの時間を要し、1978年、「MIDORI」とネーミングされてついにアメリカで発売された。デビューしたのはニューヨーク・マンハッタンの伝説的ナイトクラブ、スタジオ54である。それも映画『サタデーナイトフィーバー』(アメリカ公開1977年12月・日本公開翌年)のジョン・トラボルタをはじめとした出演者、スタッフ、プロデューサーが集ったパーティーの場であった。
余談だが、ビージーズが歌うディスコ・ナンバーとともに日本でも『サタデーナイトフィーバー』は大ヒットする。しかしながら大学生だったわたしは六本木のディスコにしょっちゅう出かけて踊り明かしていても、この映画にはなんの想い入れもなかった。周囲がこの映画の話をしはじめると、わたしはただ黙って聞いているしかない。
小学生の頃に『マサチューセッツ』(1967年)を聴いてビージーズを好きになったのに、10年ほど経ったら急にディスコ・サウンドでイメージ・チェンジしてしまった。なんだかなー、の想いに陥ったのである。
そのせいもあってか、世の中が大騒ぎするほどにはジョン・トラボルタをそんなに格好いい俳優と感じなかった。勝手なファン心理であり、トラボルタには申し訳ない。
ディスコのバーカウンターでわたしはいつも「ソルティ・ドッグ」ばかりオーダーしていた。「ミドリ」というメロンリキュールがデビューしたことさえ知らなかった。これは当然のことでもあり、日本に逆輸入されたリキュールとなったからだ。その存在は時が経って知ることとなる。















