2026年4月 3日
#1008 山本 敦輝 『一歩、二歩、前に行く』
安定した強さを発揮している山本敦輝選手。そのためにどんな練習をし、シーズンを通して何を目指しているのでしょうか?(取材日:2026年3月下旬)

◆姿勢は大事
――アーリーエントリーのシーズンが3位決定戦の1試合、昨シーズン4試合、そして今シーズンは6試合に出場、順調に出場数を増やしていますが、今の状態は?
本当に少しずつですけれど、成長していると実感しています。
――どの辺が成長していると感じますか?
やっぱりフィジカルの部分です。ボールキャリー、ブレイクダウン、それらの判断や、フィジカルバトル、そういうところが少しずつですけれど、強くなっていると実感しています。
――例えばボールキャリーで前よりもキャリーができていたり、タックルに入る回数が増えていたりという実感はありますか?
はい、ありますね。
――そこを目指して、どういう練習をしてきたんですか?
本当に同じことを繰り返し練習してきた感じです。ボールキャリーだったらキャリーする瞬間の身体の姿勢や低くするタイミング、そういったところをひたすら練習しまくりました。それで練習でも試合でもできるように、自主練をしてきました。
――姿勢が大事なんですね?
姿勢は大事ですね。

◆低すぎず高すぎず
――それによって成否が分かれるとすると、どういうところに気をつけているんですか?
低くなり過ぎず、高くなり過ぎずというバランスですね。自分のコアにいちばん力が入る姿勢があって、それを口で説明するのは難しいんですけれど(笑)。
――重心を下げる感じですか?
前に持っていく感じですね。何なら倒れるくらい前です。相手にタックルされる瞬間にその位置に持っていくんです。
――ずっとその位置、ではないんですよね?
それだと簡単にタックルに入られてしまいます。最初は高い状態で、コンタクトが起きる瞬間に自分のいちばん強い姿勢になるようにしています。
――それが上手くいっているんですね
そうですね。結構上手くいっていると思います。
――その姿勢になるのが、早すぎず遅すぎずということですね
はい、それで低すぎず高すぎず、です。
――かなり練習を積み重ねたんですか
そうですね。ほぼ毎日やりました。
――その練習は今も?
今もやっています。

◆スクラムは責任
――スクラムはどうですか?前回のインタビューではスクラムのことを考えることは好きだと言っていましたね
スクラムはもう責任なので、できて当たり前ですし、できていなければ責任を果たせていないことになります。とは言っても、自分の良い部分を見てもらう部分であり、アピールするための部分でもあるので、スクラムにはしっかりとこだわってやっています。
――現在良い感じで組めていると思いますが、どこがポイントなんですか?
フッカーとのコネクションですね。やっぱりそこが弱かったら上手くいきません。
――コネクションとは、コミュニケーションなのか、バインドなのか、どういうところですか?
肩のコネクションですね。肩の位置です。そこがちょっとでもズレていたら、力が分散してしまいます。
――それは同じ高さにするということですか?
いや、ちょっと下がっています。真ん中が少し上がっていて、両側は少し下がっています。
――それはスクラムをセットする前に3人でムズムズ動いている時に調整しているんですか?
そうです(笑)。あのムズムズが大事です。
――それが上手くいかない時はどうするんですか?
上手くいかない時は、何かが合っていない時です。そこは自分たちのセットアップで、相手は関係ない部分になるので、試合に入る前に1番、2番、3番でしっかりと合わせて、完璧な状態で試合に挑むんです。
――合わせることについては、2番によって違いますか?
やっぱりフッカーによって変わってきますね。1週間かけて、試合に向けて合わせていきます。

◆内に組んでくるのか外に組んでくるのか
――スクラムについて考えることが好きというのは、何を考えているんですか?
姿勢や、力がしっかりと集まっているかどうか。
――それはどこで感じるんですか?
自分で組んでいてわからない部分もあるんですけれど、良いスクラムを組んでいる時は、素人の人が見ても綺麗な姿勢をしていると思います。力がしっかりと伝わっているんだろうなっていうスクラムを組めれば、勝てます。そこにどう持っていくかが大事になります。
――リザーブで出場する時は、ベンチで見ていると上手くいっているかどうかがわかるんですね
分かります。
――上手くいっている時はそれを継続させて、上手くいっていない時にはどこを変えれば良くなると、見ていてわかるんですか?
結構、わかりますね。相手の特徴がわかります。リザーブの時、例えばハーフタイムの時に1番の選手に、相手の3番が内に組んでくるのか外に組んでくるのかを聞きながら、今日の相手の特徴を頭に入れるようにしています。そこは相手の3番によって変わってきます。
――普通に考えると、外に行くと力が分散しそうですが、そんなことはないんですか?
それは8人が固まって外に向けて押すのであれば、そっちにパワーが行きます。だいたいはフッカー側、内側なんですけどね。そこは選手やチームによって変わってきます。
――それは試合前に1週間かけて映像を見て研究するのか、それとも実際に組んでみてわかることなのか?
映像で見て、ある程度はどういうスクラムかはわかりますけれど、結局は試合で組んでみないとわかりません。

◆真っ向からの力勝負
――リザーブで外から見ていた時と、実際に試合に入って組んでみたら違うということもあるんですか?
多少はありますけれど、大きくは内側に行くのか外側に行くのかですね。
――相手の内か外かは、1試合を通じで同じですか?
基本的には同じだと思います。途中で変えると味方もわからなくなってしまうので、この組み方で行くと決めたら、試合を通して同じ組み方だと思います。
――相手が内に向けて組む時は、こちらとしても内に向けて組むわけですよね?それはやっていて面白いですか?
真っ向からの力勝負みたいな感じになりますし、そこは相手によりますね。
――肩を合わせる時にはよく喋るんですか?
いや、肩を合わせるのは1週間かけてセットアップしてきているので、ちょっと感覚が違った時にはフッカーから言ってもらうようにしています。
――フッカーのフィーリングが大事なんですね
僕側のフィーリングもありますけれど、基本的にはいつも通りにやっているので、それでフッカーがちょっと違うと感じたら、そこで上手くコミュニケーションを取るようにしています。

◆塩梅
――スクラムでは新しいことを考えたりもするんですか?
そこは考えないですかね。
――逆に決まったことをきっちりとやることが重要なんですか?
そうですね。毎回新しいことをやっていたら、一貫性がなくなってしまいます。そうなるとパワーが出なくなってしまいます。
――一貫性をもってパワーが出た時は、どこでそれを感じるんですか?
ヒットした瞬間ですね。そこで「あ、行ける」って感じます。
――相手に一度押されたら厳しくなりますよね?
逆になると厳しくなりますね。
――それを求めるためにアーリーエンゲージが起こりそうですが、そこはどうやって抑えているんですか?
基本的に1番は相手の3番の肩に頭を置いているので、セットの声がかかるまではあまり力を入れずに、セットの声がかかった瞬間に一気にパワーを出す感じです。
――例えば陸上の100mのスタートみたいな感じですか?
そうです。そこで100%のバインドバトルをしたら、相手がちょっと引いただけでアーリーエンゲージを取られたりするので、そこはもう、フロント―では塩梅って言っています(笑)。
――やっていて、そこの勝った負けたは面白いんじゃないですか?
面白いですね。駆け引きの部分なので、やられた時には「うわー」って思います。

◆スクラムに勝った時、負けた時
――他にどういった駆け引きがあるんですか?
相手がどうしてくるかによって、自分たちがどうするかを考えることも良いんですが、自分たちがしっかりとこれと決めた押し方を相手にぶつけて、相手もずっと押されたままじゃなくて修正してきます。そこで「ちょっと距離を詰めてみようか」とか、「相手は距離を取ってくるからちょっと待って、相手が足を伸ばしてからバインドしてプレッシャーをかけよう」とかありますね。
――そこは2番と話すんですか?
そこはフロントローの3人で話します。
――スクラムは好きになりましたか?
好きになりましたね(笑)。まあ、もともと好きと言えば好きです。スクラムに勝ってなんぼですから、スクラムに勝った時は嬉しいですし、負けた時には本当にやられたと思いますね。試合に勝ってもスクラムで負けていたら、正直、勝った気はしないですね。
――試合中に何回もスクラムがあると思いますが、半分以上勝てば勝ったと言えますか?
ぜんぶ勝つのは難しいと思いますし、スクラムでめちゃくちゃペナルティーを取られたという印象が残っていたら負けですかね。

◆いちばん身体が強い場所
――全体的に見ると良くなっている今、課題は何ですか?
今のボールキャリーやスクラムは、もう一段階、二段階くらい上げないといけないと思っています。
――そこを上げるためには、具体的にどういうことをやらなければいけませんか?
いま自主練などでやっていることは間違いじゃないと思うので、それを試合でどれだけ発揮できるかだと思います。例えばボールキャリーの仕方は、先ほど言ったような高さなど1試合の中で2~3回できたら良い方です。その回数をどんどん増やしていきたいですし、それが出来るようになることが、自分がもうひとつ先に行く方法かなと思います。
――自分に適切な高さは、どうやって会得するんですか?
そこも言葉で説明するのが難しいですが、ボールキャリーの姿勢になった時に、いちばん身体が強い場所があるんです。そこは相手側から押してもらうとわかるんです。パワーがいちばん発揮できる姿勢があるので、そこにしっかりと持っていきます。
――その姿勢に加えて、スピードも大事ですか?
スピードも大事です。
――そのトレーニングもしていますか?
スピードもトレーニングしています。
――目指しているスピードと比べると、今はどんな状態ですか?
速いに越したことはないので(笑)、速ければ速いほど良いと思います。
――速くなる可能性を感じていますか?
そうですね。もっと伸びしろがあると思います。
――トレーニングしていてどんどん速くなっている?
そうなんですけれど、相手よりも速くなったら良いと思っています。相手のタックルが強い姿勢になる前に僕が良いキャリーができれば、絶対にゲインできます。
――タックルは相手に合わせてタックルするので、アタック側の方が速そうに感じますが、そういうわけではないんですね?
そんな簡単じゃないですね(笑)。正直、僕のポジションはラックの近くで当たりに行くポジションなので、ディフェンスからすると来るってわかりやすいんですよ。だから相手が待ち構えた状態で当たりに行くので、そこから一歩、二歩、前に行くのは難しいんですよ。
――そこで一歩でも二歩でもゲインしたら嬉しいですか?
そうですね。一歩、二歩ゲインしたことによって、次のボールが出るスピードが速くなって、チーム全体が良いアタックできることに繋がります。

◆しっかりと取り切る、相手を抑え切る
――当たりの強さ、一歩、二歩前に行く、それらは最近の試合の勝負の分かれ目になっているように思います。今のチームの状態はどう感じていますか?
相手に対してもう1トライ取る、スコアをもうひとつ取る、逆にディフェンスでもう相手のトライをもうひとつ抑える、そういうところはチームでもずっと言っています。ほんのちょっとしたプレーでトライに繋がることがありますし、相手の敵陣にいる時にしっかりと取り切ることと、自陣に攻め込まれた時に頑張ってひとつ止めることができれば先日の試合は勝ったと思いますし、その前の試合も勝てたと思います。ほんのちょっとしたことでトライできたシーンはたくさんあったと思いますし、そこでしっかりと取り切る、相手を抑え切ることが大事だと思います。
――そのためにはどうすれば良いと思いますか?
ひとりひとりが自分のやるべきことを遂行することじゃないですかね。
――自分自身についてはどうですか?上手くいっていますか?
上手くはいっているかなとは思いますが、ちょっとした僕のミスで、結果的にトライを取られている部分もありました。
――例えばどんなミスですか?
ひとつのタックルミスで相手にゲインされて、その後の2~3フェーズ後にトライを取られてしまったりしました。そのひとつのタックルミスがトライに繋がっている部分もあるので、そういう細かいところにしっかりとこだわって、勝っていかなければいけないと思います。
――その時のタックルミスを振り返って反省すると、何が足りなかったんですか?
シンプルにタックルスキルというか、タックルを外されてしまったので、しっかりと前に出て止めなければいけません。そこは練習するだけです。

◆チームの優勝の力になれたと思えるような働き
――今シーズンも終盤に入ってきましたが、今シーズンの目標は何ですか?
もうチームとして優勝することが大前提としてあって、それに向けて自分がチームの力になることが大事だと思っています。このチームの優勝の力になれたと思えるような働きをすることが目標ですかね。
――優勝できるという自信の源は?
やってきたことを信じるだけだと思います。やってきたことをしっかりと出せば、勝てると思います。
――そこへ向けて、ファンの皆さんに観ていて欲しいところは?
ひとつはスクラム。そこにこだわってやっているので、見て欲しいですね。あとはボールキャリー。正直、一歩、二歩くらいのゲインは、観ている側からすると些細なことかもしれませんが、結局はそれが良いアタックに繋がっているので、そういうところを観て欲しいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]