2026年1月23日
#996 中野 幹 Vol.2『積み重ねていけば状況は変わる』
計画と積み重ね、良きライバル、勝利...。自分に必要なものとチームにとって必要なこと、両方について中野幹選手に聞きました。(取材日:2026年1月中旬)

◆耐えられる、もっと行ける
――サンゴリアスに入ってから、ずっと試合に出ていますね
僕の感覚は、1年目は10試合くらい出て、2年目は3試合、いま5年目くらいなんですが、3年目くらいから結構試合に出だして、昨シーズンもずっと出て、今シーズンもいまのところはずっと出ています。
――この計画性というか、自分は何を強みにする、そのためにここを鍛える、体重を増やす等々、その計画性はどこから生まれるんですか?
もともとはぜんぜん違います(笑)。もともとは今が良ければ良いと思うタイプでした。でも、今が良ければ良いでやると、将来後悔するんです。
――それは後悔をしたわけですか?
僕はしました。
――それはいつの時ですか?
社会人に入ってからです。良い時は、確かに今が良ければ良いでいいんですけれど、本当に苦しい状況になった時に後ろ盾が何もなくなる感覚になります。今までやってきていないという感覚になってしまうんです。それで自信が一気になくなってしまうんです。めちゃくちゃ一喜一憂して、そういう思いをした感覚があって、とても後悔というか、みじめに思ったんです。
そういうことがあったので、ちゃんと計画性を持って、これが強くなりたいとか、ここまで行きたいということを具体的に出して、それに向けて取り組んで来たら、良い時にはそれがあったからと思えたり、悪い時にはまだ結果は出ていないけれど積み重ねられているという感覚があるので、耐えられるというか、もっと行けると思えるんです。
ここ2~3年は、大きく言えば、それのおかげですね。毎日、積み重ねる、ちょっとずつ成長していくんだと。例え試合に出られなかったとしても、今の積み重ねが足りていなかっただけで、積み重ねていけば、状況は変わると思えるので、それを毎日繰り返していくんです。
――結果が出ない時もあったとのことですが、良い結果が良いペースで出ているということですよね?それが自信の元になっている?
自信というか、やっぱり満足はずっと出来ないんですよ。

◆良いライバルがいるのは嬉しい
――ホームページのプロフィールで、自分の性格のところに自信過剰と書いていますが
そうやって言うんですけれど、例えば同じポジションのカッキー(垣永真之介)がずっと試合に出ていました。僕がリザーブという試合があって、それでカッキーが怪我をしてずっと試合に出られなくて、僕が3番として試合に出ている。そうすると、ずっと試合に出ているので周りからは結果を出しているように見えるけれど、カッキーに本当に勝てたのかどうかは、僕の中でわかっていない状況の中ずっと試合に出ているみたいなことがありました。
だから心の中では、自信を持って話せていない自分がいたんですよ。いつも自分は才能があるタイプじゃないと思っているからこそ、周りからもそう見られているんじゃないかって勝手に思っちゃうくらい、心が強くないからこそ、本当に積み重ねていくんだという気持ちになれているんだと思います。
めちゃくちゃ自信があります、と言う感じで言ったりしますが、本当はそうじゃなくて、本当は自信過剰じゃないからこそ、積み重ねるんだという気持ちなんだと思います。
――その期間は、自分の成長にとっては大事なんじゃないですか?
そうだったと思います。今シーズンは自信を持って、勝てると言えると思うんですよ。カッキーに勝てると言えますし、今はTK(竹内柊平)との勝負もあります。
――竹内選手との勝負もあり、竹内選手に勝てれば日本代表も見えてきますよね?
良いライバルがいるのは嬉しいですね(笑)。人によっては、自分と同じポジションで、しかも同い歳の選手を取るのか?って怒る選手もいるかもしれませんが、僕はそういう気持ちにはなれなかったですね。そういう気持ちにはなれなくて、TKがサンゴリアスに来るって決まった時に、嘘だと思われるかもしれませんが、「よし!」って思ったんですよ。

これを超えていければ日本代表になれる、倒せば日本代表というわかりやすい構図が出来ましたし、今の日本代表のスタメンで、3番でプレーしているTKがどういう技術を持っていて、どういう考え方でやっているのか、そこも学べるとなったら、プラスしかないと思ったんです。試合に出られなくなるかもしれないということは、僕はあまり考えないので、プラスのことばかり考えたんですけれど、そういうことはありましたね。もとはと言えば、サンゴリアスに入ってきた時も、そういう感じで入ってきています。
――その時にいたのは?
その時の3番の選手は、元樹さん(須藤/現浦安D-Rocks)、カッキーさん、セミセ・タラカイ、それで僕がいて、あとイワさん(祝原涼介/現横浜キヤノンイーグルス)が1番やったり3番やったりみたいな感じでした。その時にはカッキーさんが日本代表に呼ばれたりしていましたし、元樹さんも日本代表キャップを持っていますし、サミー(セミセ・タラカイ)はオーストラリアでバリバリの選手でしたし、今はイワさんも日本代表に入ったりしています。
ここに立ち向かってメンバー争いをして勝って行く、それがしたい、それが出来たら、今は日本代表に呼ばれていないけれど、日本代表に入れると思ってサンゴリアスに入ってきました。ずっとそれは変わらないんです。今だったら、ホッキー(細木康太郎)も素晴らしい才能を持っていますし、ホッキーはポテンシャル的にはいちばん持っているんじゃないかなと思っています。

◆モメンタムを生むプレーをしたい
――プレーではずっと安定感があり、ずっと試合に出続けていると思います。それについてははどう思ってますか?
周りは一貫性があると言ってくれて嬉しいんですけれど、自分の評価としては、ちょっと面白くないなって思ったりします(笑)。
――この前のホンダ戦のようにトライをしたりスティールをしたり、ガンガン行きたい感じですか?
そうですね。そっちの方がチームにモメンタムを生めるんじゃないかなって。僕らはチャレンジャーじゃないですか。モメンタムを生むプレーをしたいんですよ。例えば、僕たちがチャンピオンだったら、先ほどの話の一貫性のところがもちろん大事で、それがありきなんですが、それだけで大丈夫なチームじゃないんですよ。
――そういう選手が、今のサンゴリアスにはたくさん欲しいと思いますが、今のチームはどんな感じでしょう?
僕が知る範囲では、自信は失う必要はないなと思っています。そうやって思っているメンバーはいっぱいいると思います。クボタに大敗して、その後、神戸に負けて、めちゃくちゃ悔しくて、ずっと早くやり返したいという気持ちだったんです。モヤモヤした感じがずっとあって、結果で見ると大敗なんですけれど、自分たちでペナルティを犯して、自分たちに原因があると思ったんです。クボタに対して、確かに強いけれど、あんなゲームになるような実力差じゃないということが、心の中にはあります。僕たちはそう思っていて、本当に自分たちの実力を思いっきりぶつけられたら、勝負事なのでそれが難しいんですけれど、それが出来たらぜんぜん違う展開になると思っています。むしろこっちの方が優勢に進められるんじゃないかな、と僕は思っています。
――それをホンダ戦で体現したということですよね?
はい、そうですね。きっかけがあって、試合の2日前に、何かアクシデントがあればラグビーが出来なくなるかもしれないなって思ったんです。でもそれでも良いと思えたんですよ。今まで本当にラグビーにちゃんと向き合ってきた、そうやって積み重ねてきた自信があったので、ここで終わっても良いって思えたんです。そういう思いが、ホンダ戦でのプレーに出たのかもしれません。試合前は本当にナーバスになっていて、もしかしたらラグビー選手はみんなが持っているかもしれませんが、もう終わるかもしれないという危機感みたいなものを感じていました。改めて考えてみたら、それも影響していたんじゃないかなと思います。
――その気持ちを忘れなければ、次の試合でも同じようなパフォーマンスが出せるんじゃないですか?
そうですね(笑)。
――調子はとても良いということですね
はい、調子良いです。
――今の状況での今後の目標は何ですか?
個人的には、シーズンが終わるまでに「3番は幹に任せようか」ってなることですね。それが今シーズンの最終的な個人的な目標ですね。チームとしては、もちろん最後は優勝というところがあるんですけれど、例えば、いまクボタとかパナソニック、東芝、ここ最近は公式戦でほとんど勝っていないと思います。僕がサンゴリアスに入ったのは2020年なので、そこからほとんど勝てていないイメージです。
リーグ戦でもどんな試合でも良いので、1勝する、それらのチームに勝つ。それで一気に雰囲気は変わるんじゃないかなと思っています。みんなの自信も、今は負けていても自信があると言っていますが、そうじゃなくて、ちゃんと結果を残して自信が持てる状況にしたい。それで本当の意味での自信がつくんじゃないかと思います。次の試合、パナソニックに勝つこと。それが目標です。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]