2026年1月13日
#993 流 大 『自分がパフォーマンスを出して勝つ』
インタビューのタイミングは第4節の前で、「今シーズン限りで引退」を発表した直後。流選手の今の気持ちを聞きました。(取材日:2026年1月上旬)

◆自分で決めたこと
――シーズン前よりもスッキリした顔をしているように見えますがどうですか?
いやいや、そんなことないですよ(笑)。シーズン前には決めていました。
――改めて、このタイミングでの発表の意図を教えてください
ラストと決めたので、応援してくれているファンの人たちやお世話になった人たちに、少しでも現地で見て欲しいという思いがあって、シーズン終わっての発表じゃなくて、このタイミングで発表させてもらいました。
――シーズン前に決めていたなら、シーズン前に言うことも出来たんですか?
出来たんですけれど、僕個人のことなので、その時はチームが勝つこと、今もそうではありますが、その時はそっちの方が優先順位が高くて、3試合が終わってバイウィークで正月休みもあって、少し落ち着いた段階でやろうと思っていました。
――実際に発表してみたら、世の中の反響はどうでしたか?
すごいですよ。たくさん連絡も来ましたし、コメントもたくさんきて、すごいです。
――今シーズンのプレーを見ていたら、「まだぜんぜん出来るでしょう?」という声もあったんじゃないですか?
ほとんどがそうですね。「まだまだやって欲しい」とか「まだまだ良いプレーしていると思います」という声もあるんですけれど、自分で決めたことなので周りには左右されません(笑)。

◆そういう選手に出てきてほしい
――タイミングとしては年齢ですか?
年齢はまったく関係ないですよ。ただ、次のことを始める上での年齢ということであれば、少しはあると思います。早い段階でスタートしたいという思いはありました。
――次にやることはシーズン後に発表ということですが、ラグビーに関わることですか?
はい、そうですね。
――自分が言っていることがチームの中では正しいとされているけれど、リーダーになりたい人がリーダーシップを執る機会を作りたい、とのことですが、その心境を教えてもらえますか?
それはここ1年とかの話ではなくて、3~4年続いていることです。もっと議論が起きて欲しいことも、僕が発言するとそれで終わってしまうことがあったり、影響力が強くなったが故に、少し委縮させていると感じることもありました。そんな中でも僕のポリシーとして、勝つため、チームのためであれば言いたいことは全て言う。それが僕なりのリーダーシップであり、これまでそうやってきたんですが、でもそろそろチームが次に進む時かなとも思いました。このチームで勝ちたい、変えたいと思っている選手はたくさんいると思うんですが、今はチームへ影響を及ぼしていないと思うので、そういう選手に出てきてほしいと思っています。
――自分を乗り越えるだけの発言をする選手が、自分がいる時に出てきて欲しいと思いませんでしたか?
思います。それがいちばん理想だったんですけれど、3~4年続いていて、まだ出てきていないので、自分から(笑)。そういう場を作ってあげることも大事だと思うので、自分が次のキャリアに進みたい時期も被ったので、ちょうど良かったんじゃないかなと思います。

◆試合で完ぺきだったことは一度もありません
――今シーズンの自分自身の出来は?
まあまあです。僕は上がり下がりが少ないというか、浮き沈みが少ないのが僕の特徴でもあるので、ここからめちゃくちゃ良くなるわけでもなくて、めちゃくちゃ下がることもなく、今のレベルをしっかりとキープすることが僕の中で大事にしていることです。
――100%でなく常に80%を目指すコツはありますか?
コツと言うか気持ちの持ちようですね。準備をしっかりと100%やって、1週間の中でチームメイトとしっかりとすり合わせて、どれだけ100%の準備をしたとしても、僕は試合で完ぺきだったことは一度もありません。だからこそ、80点~90点。90点なんて言えば、ほぼ100点だと思っているので、心の持ちようだけだと思います。
――プレッシャーがかかった中で普段通りのテクニックが出せなければ、それはスキルではないし、そのプレッシャーは試合でしか経験できないと言っていましたが、それも普段の気持ちの持ち方が大事になりますよね
そうですね。

――それを再度チームメイトにアドバイスすると、プレッシャーがかかった状態でも力が発揮するためにはどうすれば良いですか?
ひとつは、本当に経験するしかない、ということがあります。あと練習でもスクラムハーフの選手たちにプレッシャーをかけているんですけれど、そういう小さな経験をどんどんしていくということ。絶対にプレッシャーはつきまとうものなので、まずプレッシャーは絶対になくならないと受け入れた上で、どうするか。まだそこを言語化して教えられるほど、僕もそこにはたどり着いていないですね。
――それは考え方の違いなのか、心の強さが影響するのか、それについてはどうですか?
両方あると思います。プレッシャーに弱いとラグビーだけじゃなくていろいろなところでプレッシャーを感じたり、いろいろなところでそれが出てしまうので、心の持ちようというか考え方を、少しずつ変えていくしかないと思います。
――考え方が変わらなければ、いくら練習や試合でプレッシャーをかけても、変わらないかもしれませんね
本当にチャレンジするというか、ミスを恐れていたら、「これで負けたらどうしよう」とか「自分がミスしたらどうしよう」って思った時点で良いプレーが出来ないことは決まってしまいます。それをどうすればいいかは、僕も自然とそうなったと、今のところ言うしかありません。
――ミスを恐れないということは、守らないと言うことですね
そうですね。まさに、アグレッシブ・アタッキング・ラグビーという言葉があるように、やっぱりリスクを取りに行かなければいけないので、守ったプレーをしていてもダメということですね。

◆リーダーシップグループの出番
――チームの状態として、第3節までを終えて2勝1敗という状況はいかがですか?
まあ、良いスタートは切れたとは思いますけれど、第3節のクボタ戦は本当に目を背けられないような結果で、そういうパフォーマンスをしてしまいました。ただそこはみんなでしっかりと受け入れて、レビューもしっかりして、次に進もうということで今週はとても良い準備ができたので、また前に進んでいくしかないと思っていますし、シーズンは長いと言いますけれど、僕の中ではシーズンの先のことなんて考えられないので、1試合1試合、ひとつの練習、その次の練習のことしか考えていません。そこにフォーカスするだけだと思っています。
――今後も、勝つことも負けることもあると思います。負けた時に自信を失わずにやっていくためには、どういう方法があるんですか?
そこがリーダーシップグループ、響グループの出番というか、方法というよりも、それぞれの選手との関わり方とか空気の作り方、ミーティングの空気の作り方、そういうことでひとつひとつクリアしていくことですね。
――それは難しいけれど面白いところですね
まあ、いろいろな経験をしてきているので、そこの引き出しはあります。
――やはり選手個々にケアをしなければいけませんか?
そうですね。ラグビー選手って身体は強いし気持ちも強そうですけれど、実際には心が繊細な選手がたくさんいるので、どうやってケアするかとか、今は声を掛けないでおこうとか、飲みに連れて行って少しリラックスさせてあげようとか、いろいろな方法があります。それを僕もやってきてもらったんです。こういう時に良かったなとか、この先輩はこういうことをしてくれたから気が楽になった、という経験を若い時にしました。

――負けん気が強いラグビー選手の中でも、流選手はとくに負けん気が強いと思うんですが、負けん気が強いからラグビーという競技を選んだということはありませんか?
いや、そんなことはないですよ(笑)。楽しかったからラグビーを選んだだけです。負けん気をいちばん発揮できるスポーツというのは、どのスポーツでも言えると思いますよ。ラグビーを始めたのは楽しかったからです。
――その楽しかったラグビーが、いよいよ残り十数試合になりました。それについてはどんな気持ちですか?
もう、自分がパフォーマンスを出して勝つ。それしか考えていません。ラストのシーズンだからということは全く考えていないので、今まで通りしっかりと準備をして、自分のパフォーマンスでチームを勝たせるということしか考えていません。
――昨シーズンからずっとファンの人たちに「見ておいた方が良いですよ」と言っていますが、特にどこを見てもらいたいですか?
自分がいちばんエナジーを出して、声を張り上げて、ハツラツとプレーしている姿です。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]