SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2025年11月21日

#985 流 大 『ラグビーには構造がある』

今シーズン、バイスキャプテンとなった流選手。様々な立場でずっとチームを引っ張ってきた生粋のリーダーは、いま何を考えているのでしょうか?(取材日:2025年11月上旬)

Nagare_01.JPG

◆ずっと高い強度でトレーニング

――昨シーズン目指したものは「常にグラウンドに立っていたい」そして「優勝したい」のふたつでしたが、まずひとつ目は達成しましたね

全試合に出ましたし、その個人的な目標に対してはクリアできて、自分のコンディショニングのところと、シーズン中もトレーニングの強度を落とさずにやったということが、自分の中でも良かったです。S&C(ストレングス&コンディショニング)の方たちやメディカルの方たちが、上手くやってくれたからこそだと思っています。

――あとそれまでやっていなかったストレッチもですよね

そうですね(笑)。割とやっていました。

――練習、試合でのプレーを見ていると、ベテランらしさという部分をあえて排除しているように感じるんですが、意識していますか?

自分はトレーニングもぜんぶやりたいと思っていますし、ベテランだからとかゲームタイムが長いからという理由で、自分から外れるようなことはしたくありません。ただS&Cからの指示もあるので、そこはちゃんと従うようにしますけれど、自分の中ではずっと、シーズン中でも高い強度でトレーニングすることを大事にしたいと思っています。

――それが出来ていると言うことですが、体力的な心配は全くありませんか?

ぜんぜんないですよ。今シーズンが始まる時のフィットネステストでも、自己ベストを出しました。なので、身体の心配はぜんぜんないです。

Nagare_02.JPG

◆僕の強み、誰にも負けないところ

――見ていて特に感じるのはキックで、技術的にも進歩していますよね?

引き出しは多くなったと思います。自分の中のキックに対する理念というか、哲学みたいなものは持っているんですけれど、そこを軸にしながらもいろいろなことを取り入れることは今も続けています。僕はこのチームの誰よりもインターナショナルや他の国のクラブのラグビーを含めて、いちばんラグビーを見ている自信があるので、その中で「こういう蹴り方をするんだ」とか「こういう時にこういうところを見て蹴っているんだ」ということを常に見るようにしています。あとアシスタントコーチのディーン(カミンズ)も、キックに対しての知識がとても豊富です。常に変わらない僕の強みはそこですし、誰にも負けないところだと思っているので、向上心を持って取り組んでいます。

――軸になるところとはどういうところですか?

キックの技術どうこうというよりも、ラグビーには絶対に構造があると思っています。こういうボールの動かし方をすれば相手はこう動くということが僕の中には刷り込まれているので、あとは自分の目でしっかりとその状況を確かめる、味方とコミュニケーションを取る、そういったことがラグビーの構造としてハマれば、相手が取れない位置にキックを蹴ることができるので、そのあとは自分の技術だけですね。

日本の選手はテクニックに関しては、本当に一流なんですよ。パスもキックも。自主練でやれと言えばめちゃくちゃ上手い選手ばっかりなんですけれど、いざプレッシャーがかかった状態で発揮するのがスキルだと思っています。それがテクニックとスキルの違いだと思います。そのスキルが伴っていない選手が多いと思うので、昨シーズンから始めたんですけれど、ただの練習や自主練の時にも、9番の選手にかなりのプレッシャーをかけたり、試合で起こりえるようなプレッシャーのかけ方をしながら、パスやキックの練習をしています。それを他の選手にも学んでもらいたいので。

――最初は構造が分かっていながらスキルが伴わず、「こうやればいいのに」ということが出来ないのではないんですか?

時間がかかると思います。それは経験とか慣れていくしかないと思います。

――その辺がだいたい出来るようになったのはいつ頃ですか?

どうですかね。キックに関しては割と大学生くらいから得意だったので、その頃からそういう構造がわかるようになってきて、サンゴリアスでは特に沢木さん(敬介)が監督になってからは、よりキッキングゲームを重視するようになって、更に学ぶようになりました。

Nagare_03.JPG

◆80点から90点を出せる方が大事

――沢木監督の時にはキャプテンで、両方やらなければいけなくて大変じゃなかったですか?

いや、ぜんぜん。その時はプレッシャーも何もなくて、敬介さんからのプレッシャーだけでした(笑)。若いキャプテンということで恐れるものはありませんでしたし、そこは大丈夫でした。

――そのスキルの会得の仕方は、やはり練習を通じて後輩に伝えていく方法しかありませんか?

基本はそうですね。ただ実際にそれを発揮するのは試合なので、もちろん僕もミスをすることがありますし、プレッシャーを感じて精度が低くなることもあります。そこはどんどん経験していくしかないと思っています。

――いま自分の中では何種類くらいキックがあるんですか?

何種類ですかね(笑)。本当にキックの種類がたくさんあるので、何種類ということはわかりませんが、かなりの種類はあると思います。両足で蹴ることができますし、右足だけじゃなく左足でのキックにも自信があります。

――キックしたボールがバウンドした後の転がり方もコントロールしているんですか?

いやいや、落ちた後のボールの転がりまで、すべてをコントロールできるわけではないと思っています。やっぱり正しい判断をして、ある程度のキックが蹴れれば、成功に繋がると思っているので、別に完璧を求めていませんし、相手に「嫌だな」と思わせたり、相手を背走さたり、ハイボールを上げるとしたら必ず味方が相手と競り合うようなキックをしたり、それらが出来れば良いと思っています。

若い選手にもずっと言っているんですけれど、「100点目指していたら、80点くらいだったらふだんは良いキックと思うのに、100点を目指すが故にがっかりしてしまう自分がいるから、本当に80点から85点、90点あたりをコンスタントに出せる方が大事」と常に伝えるようにしています。それで心の持ちようが違いますし、日本人は完璧主義者が多いので、「もう少し心に余裕を持って良いよ」と言っています。

Nagare_04.JPG

――味方も「流選手はこういうキックを蹴る」とわかっていないと、なかなか成功はしませんよね?

それは1週間の準備の中でも、今までの経験でも、ずっと話してきています。特にチェイスに行く機会が多いウイングの選手には、「こういう時には絶対に蹴るから、常に準備をしておいて」と言っています。試合中のコミュニケーションだけでは、もう遅いんですよ。だから「ずっと俺はここを狙っているからな」とか、練習中も蹴らなかったとしても、その後に練習中の映像を見せて「試合だったら、たぶんここで蹴ると思うから準備しておいて」とか。そういう信頼関係とか日頃のコミュニケーションが、成功に繋がりますね。

――そのやり方は前からですか?

ぞうですね。もうずっと続けていますね。

――そのやり方が良いとどこで気がついたんですか?

サンゴリアスの1年目、フーリー(デュプレア)と一緒に練習をした時、僕はディフェンスをしていたんですけれど、ラックが出来た時に相手方のフーリーが彼の味方のヤスさん(長友泰憲)に「ヤス、このラックの2フェーズ後、ちょっと裏を見ておいて」と言っていて、それで実際に蹴ってめちゃくちゃ上手くいったシーンを覚えています。その後にフーリーに質問しに行って、「あれは何を言っていたの?」と聞きました。そうしたら「1週間の中で、俺はこういう時に蹴るからと、ウイングの選手に口酸っぱく言っている」と言っていました。「へぇー」って思いました。

Nagare_05.JPG

◆次の試合がいのち

――自分のスキルが更に良くなっている中で、チームが勝てないときにはストレスがありますか?

ストレスは感じます。やっぱり負けることは好きじゃないので、昨シーズンのこのプレシーズンでは良い感覚を持っていて、自信をつけた上で臨んだ最初の4試合で勝てませんでした。今シーズンも練習自体は1日1日成長している実感はありますし、みんなの態度とか取り組みに関しては良いと思うんですが、僕は常に危機感とか緊張感を忘れないようにしないと、少しでも満足したら昨シーズンと同じ繰り返しになると思っています。

先日のリコー戦にも勝ちましたが、ただ勝ったで終わらせるのではなくて、開幕のリコー戦はまるでメンバーが違ってきますし、緊張感もあって、そういう時に同じようなプレーをしたらどうなんだ?ということです。そういう緊張感や危機感を常に持ちながら周りにも接しますし、自分自身にも妥協しないようにしないと。本当に満足したら終わりだと思っています。

――先日のリコー戦後には何か言ったんですか?

まだ言っていません。試合直後って何かを言っても伝わらないことがあって、それぞれがレビューをしていると思うので、言い方は考えますけれど、自分の中のスタンダードはちゃんと伝えないとと思っています。

――開幕して4試合連続で勝てなかったことは初めての経験だったと思いますが、やはり自分自身、もがきましたか?

プレシーズンはぜんぶ勝って、それで開幕戦のパナソニックに完敗して、次のリコーにもあぁいう負け方をして一気に自信がなくなったというか、みんながやってきたことに対する不信感とか、信じられないみたいなところが出てきて、そこからトヨタ、クボタと引き分けて、形は少しずつ見えてきたところではありました。ただ、勝てないというのは、かなり精神的にもくるものがあって、僕はリーダーグループに入っていましたが、ホリ(堀越康介)がキャプテンでめちゃくちゃキツイ思いをしていました。僕は自分たちのスタンダードを示すことと、ポジティブに前に進んでいくということを、ただただ考えながらやっていたんですけれど、やっぱり難しかったですね。

Nagare_06.JPG

――シーズン中、流選手にインタビューを申込みましたがかないませんでした。あの時の心境は?

そのときまでのシーズンを振り返るという状況じゃなかったですね。次の試合にフルコミットして、「何とかこのチームを勝たせないと」という気持ちだったので、時間がなかったということではないんですけれど、個人的に振り返りをするタイミングじゃないなと感じていました。あの時は「次の試合がいのち」で、ひとつ負けたらプレーオフに進めないような状況が続いていたので、インタビューを断らせてもらいました(笑)。コーチや選手間のミーティングも増やさなければいけなくて、僕がそれをセッティングすることも多かったので、ちょっと余裕がなかったと言うか、本当に死ぬ気でその1週間にすべてをフォーカスしなければいけない状況でした。

――プレーオフには「なんとか残った」という感じでしたか?

本当にそうですね。あの状況から最終的にプレーオフに進めたというのは、本当に「なんとか」という感じですね(笑)。良かったとも別に言えませんし。

――そういうシーズンを経験して、「サンゴリアスは強い」というアドバンテージが少し失せてしまったように思いますが

もう僕らは今は、強いチームじゃないです。チャンピオンだったことなんか本当に過去のことですし、こんなに強いウイニングカルチャーを築いてきたのはOBの人たちであって、ここからつくり上げるのが僕たちの仕事です。本当に、強いチームということは忘れないとダメですし、ただプライドを捨てたわけではないので、僕はこのチームは強くあるべきだと思っていますし、勝つためにこのチームに入ってきましたから。

この数シーズンは毎年大幅にメンバーが変わって、サンゴリアスに入ったことで満足するような選手も、中には正直いました。外国人選手とかプロ選手とか社員選手とかは全く関係ないと思っていますが、このクラブに来ることは本当に特別なことですし、簡単に入れるチームじゃないということは常々言ってきています。でもこのチームに入ったからには、何かを残さなければいけない。自分が良くなって、チームが勝つためにすべてを捧げるようなチームだから、「ただいるだけじゃダメ」ということを常に言っています。

Nagare_07.JPG

◆キャプテンのつもりで

――いま考える「サンゴリアスはここで勝負していくんだ」というものは?

まずは自分たちのフィロソフィーはアタックなので、そこは絶対に崩せないです。ただ、ここ数年で失われているものはディフェンスで、簡単に点を取られているところがあるので、そこはとても意識して取り組んでいるところです。ラグビーって本当にサイクルなので、アタックだけが良い、ディフェンスだけが良いではなくて、すべてがリンクしています。そこは突き詰めないといけないということと、あとは選手層ですね。

昨シーズンも結局、ホリやホッコ(ハリー・ホッキングス)、ショーン(ショーン・マクマーン)、あの辺のフォワードの核が抜けた時に、一気にチームのレベルも落ちました。その辺の選手がもしかしたら怪我をするかもしれないので、そういう選手たちにセレクションで勝っていくような選手が出てこないとダメだと思っていますし、若い選手を含め、良いコンペティションにはなってきているかなと思います。

――そこは意識して見ているんですか?

そうですね。いまジャパンに行っているメンバーとか、チェス(チェスリン・コルビ)もいますし、インターナショナルに行っているメンバーに、簡単にポジションを与えるようなチームじゃ絶対にダメだと思うので、彼らもうかうかしていられないと感じさせるくらいの緊張感とかコンペティションを、今やらないといけないと思っています。

――これだけ調子が良くて全体が見えているとすると、機会があったらプレーイング・マネージャーになっても良いように感じますが

いやー、僕はそれは出来ないですね(笑)。選手でコミットすることしか出来ないです。それは難しいと思います。

――出来るとすると流選手くらいしかいないと思いますが

出来るとは思いますけれど、自分の中の考えとは異なりますね。選手だったら、選手としてしっかりとコンペティションしてライバルに勝つこと、自分のパフォーマンスを上げることがいちばんの仕事だと思うので、そこにマネージメントが加わるのはなかなか難しいと思います。キャプテンとはぜんぜん違うと思います。

Nagare_08.JPG

――今シーズンはバイス・キャプテンという立場になりました

バイス・キャプテンって、ワールドカップの時に姫野(和樹)のバイス・キャプテンをやった経験はありますが、バイス・キャプテンって、いろいろと言葉も調べてみたんですけれど、特にピンとくるものもなかったので、キャプテンのつもりでやろうと思っています。ただ、ケイノ(サム・ケイン)といういちばんのリーダーがキャプテンをやってくれているので、そこに気を遣うこともないと思いますし、自分が前に出たいと思ったら出ますし、そこはケイノとも結構話したりしながら、お互いを尊重して出来ているので、良いと思っています。日本のクラブの日本人のリーダーとして、僕が厳しくないといけないというのは、自分が思っているいちばんのリーダーシップだと思っているので、自分なりのリーダーシップはやりたいと思っています。

――今シーズンの目標は?

目標は優勝です。それは絶対に揺るがない。ただ、先ほども言いましたが、昨シーズンはプレシーズンが上手くいっていると思って、実際上手くいっていたのかもしれないですけれど、そこでチームとして少し満足してしまったところがあったと思います。ここからあと1ヶ月くらいで開幕しますが、少しも満足することなく、1日1日で成長することが、まず大事なことです。とにかく開幕戦のリコー戦にすべてを懸ける、開幕戦でリコーに必ず勝つ、それが僕が思う目標です。あとは今シーズンも全試合に出場することが目標です。

――昨シーズン、いつ辞めるか分からないので「ファンの皆さんはなるべく僕の姿を見ておいた方が良いですよ」と言っていましたが、今シーズンはどうですか?

本当に、見ておいた方が良いですよ!僕のネームタオルも今シーズンまでしかないかもしれないので、買っておいてくださいね(笑)。本当に僕はいつまで続けられるかわからないので、僕のことが好きでも嫌いでも良いので、「見ておいた方が良いですよ」って言いたいですね(笑)。

――優勝するまで辞められないですか?

そんな生半可な覚悟で、1日1日、1年1年をやっていないので。優勝する覚悟で1日1日をやっていますけれど、いつか優勝出来たらみたいな半端な気持ちではないので、本当に「見ておいた方良いですよ!」って心から言っておきます(笑)。

Nagare_09.JPG

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ