SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2025年4月25日

#954 サム ジェフリーズ 『練習での激しさを次の試合に繋げる』

常に冷静なブルーヘッドで安定したプレーを続けるジェフリーズ選手。全試合出場に向けての心技体そしてサンゴリアスのやるべきことについて聞きました。(取材日:2025年4月下旬)

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◆出来る限り試合に出る

――前回の試合で27試合連続出場、素晴らしいですね

個人的なゴールとしては、出来る限り試合に出るということです。試合メンバーのセレクションに絡むようにやっていますが、その結果これだけ試合に出ることができたのは嬉しいことです。それがサンゴリアスでの50キャップに繋がっていくと思うので、試合に出続けるということは嬉しいことです。

――どうしてそれが出来ていると思いますか?

メディカルチームが頑張ってくれていることが大きいと思います(笑)。特にポピー(サイモン・ポープヘッドメディカル)が、いろいろとやってくれています。今シーズンも小さな怪我はたくさんありましたが、大きい怪我をしていないということは嬉しいことですね。メディカル、S&C(ストレングス&コンディショニング)と一緒に準備しているのが大きいと思います。それで試合メンバーのセレクションに絡んでいけていることは良いことですし、そして試合に出られていることも楽しいです。

――もともと身体は強いんですか?

いや、結構怪我もしています。怪我で2年間ラグビーから離れていたこともあります。ですからこの2年で多くの試合に出られていることは嬉しいことですね。それで身体に対しての自信もついてきていますが、リカバリーという部分は取り組んでいかなければいけませんし、年齢も年齢なので、そっちに時間を費やすことが大事になっています。みんなもそうだと思いますが、ラグビーというスポーツはフィジカルのスポーツなので、マインドセットとしてはそうなります。

――自分の身体について、かなりセンサーを働かせているんですね

一線から遠のいていた2年の間で、自分の身体をマネジメントすることが理解できてきました。痛い時やちょっと怪我をした時に、どう自分をマネジメントするか?練習をストップするか?などが上手く出来ていると思います。試合でのフィジカルはカオスが起きるところだと思いますし、全てをコントロールは出来ないので、戦略があることが大事ですが、それだけでは出来ない部分でもありますね。

――怪我をしない方法があれば皆に教えて欲しいです 

年齢も年齢なので、若い選手には膝とか足首は気をつけた方が良いと伝えています。日本は硬いグラウンドは多いですが、イギリスにも硬いグラウンドがありますし、そこは調整していかなければいけない部分だと思います。日本には温泉がたくさんあるので、身体には良いと思いますし、美味しい魚も多くて、関節には良いものがたくさんありますね(笑)。

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◆良い関係性があってこそ

――怪我をしないだけじゃなくて、プレーもレベルアップしてますよね

バックローが多かったですが、今はセカンドローもやっていて、コーチ陣も良いコーチがたくさんいる中で、アオさん(青木佑輔アシスタントコーチ)とスクラムについて打合せしたり練習したりしていますが、タイトヘッドのスクラムは大事なところだと思うので、タイトヘッド(3番)の後ろに私が入ることで自信をつけてくれていると良いですね。カッキー(垣永真之介)や細木(康太郎)、幹(中野)はプライドを持ってスクラムを組んでいる選手なので、そういう選手とプライドを一緒に共有できている関係性は良いことだと思います。他のゲームの部分でも成長できていると思います。

――プライドに加えて、技術的なところではどんなことにチャレンジしているんですか?

関係性、コネクションのところが大きいですね。タイトヘッドはみんな違います。例えばセットアップや身体の体型などが違うので、スクラムを組むのに調整をしなければいけません。そこでそれぞれの選手に合わせていくのは良い関係性があってこそだと思います。練習の時にいつも喋っていますが、そういう小さいコネクションが試合に繋がっていると思います。もっとバインドのところで力をかけて欲しいとか、あとで力をかけて欲しいとか、かけないでとか、肩の位置とか、小さい部分ですけれど、そういうところがスクラム全体を助けると思います。

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――ボールキャリーも良くなっていますよね

ボールキャリーはフォワードとしても今シーズンの最初に大きなフォーカスとしていて、個人としてもフォーカスしていますし、良くなっている部分だと思います。ホッコ(ハリー・ホッキングス)と同じ時間に出場することが多くて、それぞれタイプは違いますけれど、良い関係性が出来ていて、フィールド上でのそれぞれの役割を理解しています。トレヴァ(ホゼア)もそうですけれど、良い関係性が出来ていると思います。

――そこでのポイントは、やはり関係性なんですか?

いま言ったことがすごく似ていると思います。良い関係性を持った上で、もうひとり側が何を考えているかが分かってくると、フィールド上やプレッシャーがかかっている時にコミュニケーションが簡単に取れます。私がラインアウトのディフェンスをやって、ホッコがラインアウトのアタックを見ているので、ちょっと時間があった時に作戦のところを話したりしています。トレヴァが入る時もハーフタイムに「こういう作戦でやっている」ということを話しています。

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◆ラグビーと私生活の両方が上手くいっている

――ワクワクするという日本文化の中にいて、ラグビー面でも上手くいっていて、いまかなり楽しいのでは?

いろいろなことが人生の中で、いま楽しいですね。シーズン自体はチャレンジですけれど、プレー時間も長く取れていますし、チームに貢献も出来ていますし、日本での生活も素晴らしいものがあります。文化もそうですし、食べ物もそうですし、妻と日本を観光して、すべてを楽しめています。ラグビーと私生活の両方が上手くいっていることが素晴らしいと思います。

――奥さんも日本の文化が好きなんですね

IKEBANAを毎週やっていますし、東京に住んでいることを楽しんでいます。他の外国人選手の奥さんたちと街に出かけたりもしています。時間が出来た時には、お寺にもよく行きますし、ビーチなどにも行きますし、日本のいろいろなところに旅行に行っています(笑)。

――日本の中でこれから行ってみたいところはありますか?

まだ四国に行ったことがないので行ってみたいですね。11月の終わりくらいに広島へ行きましたが、そこから島が見えましたし、レンタカーなどで四国を回ったら楽しいかなと思っています。

◆キーとなる瞬間

――現在チームは苦しい状況ですが、昨シーズンはギリギリで勝てていたのが今シーズンはそこで勝てなくなっていると思います。何が違うと思いますか?

昨シーズンは勝つサイドにいましたが、今シーズンは負けるサイドに来てしまっています。努力していることは変わらないと思いますが、キーとなる瞬間に勝てていない。1試合でひとつかふたつ、小さいところですけれど、それが結果に大きな影響をもたらしていると思います。自分たちでコントロール出来るところでコントロール出来ていないことが、15節までを象徴しているかなと思います。

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―― "ブルーヘッド"と"レッドヘッド"で言うと、コントロールできるところでコントロール出来ていないのは、レッドヘッドになっているということですか?

その部分もあると思います。冷静に考えている時もあれば、規律の部分も含めてそれが出来ていない時もあるので、クボタ戦の時など最初の10分で5回ペナルティーを取られました。そこでペナルティーをしないというコール、リスクのあるプレーをせずに、もう一度ゲームに戻っていくことが大事ですが、流れでペナルティーを重ねてしまいました。悪い流れになった時にはコントロールしなければいけませんが、そこからの経験として学べることはあると思います。結果としては今シーズンは残念なパフォーマンスもありましたが、シーズン終盤になってきて次の3試合はプレーオフに行くために大事な試合ですし、これまで学んできたことが役に立つと思います。ポジティブに出来ると思います。

――それは練習などでチームから実際に感じることですか?

サンゴリアスのアタックのスタイルには自信を持っていますし、クボタ戦のレビューをして、自分たちがやり切れば相手はついてこられないというところもありました。試合の瞬間瞬間ではそういうプレーを見せることができていますが、一貫性がないということだと思います。レビューとしては、自分たちで試合をコントロールして、サンゴリアスのアタックをするということです。

――いちばん一貫性がある選手のひとりとして、残りの試合での役割は何ですか?

一貫性を持って、自分の役割をやることが大事になります。それは全員に関係することです。この3試合でドライブしていきたいのは、プレッシャーがかかった状態でチームがちゃんとパフォーマンスすること。だから練習でもプレッシャーがかかった状態でプレーしていますし、大事な瞬間や大事な試合の時にちゃんとパフォーマンスを出せることが大事になります。そこでの役割としては、チームが準備をするために自分が最善を尽くすこと。リーダーシップの部分でも、そしてセットピース、特にラインアウトのディフェンスをリードしているので、フィールド上でのアクションでも引っ張っていく。練習での激しさを、次の3試合に繋げることです。

――得意なタックルでも?

それが自分の仕事だと思っています。フィジカルのところ、ボールキャリーやディフェンスもそうです。

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◆フィジカルに身体を使ってプレーする

――以前10年くらいやっていたというクリケット、どんなところにその面白さがありますか?

クリケットではボウラーをやっていて、バッティングはあまり上手ではありませんでした。背が高いのでアドバンテージがあるんですよ。高いところから投げるのでボールが跳ねますし、ラグビーとも似ているところがあると思います。アグレッシブなボウラーで、相手のバッターが下がるような感じでした。クリケットをやっていて、フィジカルで表現できないところがイライラした部分ですね(笑)。クリケットではボールを速く投げることしか出来ませんが、ラグビーではフィジカルでプレー出来ますからね。

――それでラグビーを選んだんですね

そうですね。

――そのラグビーで「生涯の友を得られる」と言っていますが、クリケットとの違いは?

チームで練習するということには変わりませんが、ラグビーの経験で少し違うのは、フィジカルに身体を使ってプレーするということです。そのことでレベルの違うところにマインドセットが行くと思います。その仲間意識には、ラグビーでしか得られないものがあると思います。ラグビーを一緒にやった人だけが得られる仲間意識があります。チームメイトがチームのために身体を張っている姿を見ると、そこでのリスペクトは違うレベルに行くように感じます。

――日本に来て、生涯の友が増えたんですね

違う文化の人とも同じ経験が出来るので、カッキーとか身体を張ってチェイスしている姿を見ると、カッキーへのリスペクトが得られます。

◆50キャップ

――今後の目標は?

いま30キャップを超えたくらいなので、このペースで行けば来シーズンには50キャップを達成できるかなと思っているので、それがいま達成したいことですね。もし来シーズンに達成が出来なければ、もう1シーズンということも頭にはあります。自分のベストパフォーマンスを出せれば試合メンバーのセレクションに入ってくると思うので、それがモチベーションの元になると思います。ラグビー以外のことで言うと、日本での生活を楽しみたいと思っています。四国にも行きたいですし、日本の文化を楽しみたいですね。

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――今シーズンのリーグ戦残り3試合、どんな気持ちで臨みますか?

プレッシャーの中でパフォーマンスを出す。そこで一貫したパフォーマンスが出せれば、シーズンの終わりに強く終われると思います。良いパフォーマンスをして、良い位置でプレーオフに入っていければ、対戦相手がどこでも勝てるチームになっていけると思います。そうすればエキサイトできて、チャンスがあるという気持ちになると思うので、この3試合は自分たちでコントロールして、パフォーマンスをベストに持って行くことが大事だと思います。

――次の試合が大事ですね

この最後の連戦の最初になるので、特に大事ですね。このパフォーマンスによって、他のチームもベンチマークとして使うと思うので、次のトヨタ戦はとても大事になると思います。

(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:石森大雄)
[写真:長尾亜紀]

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