2025年3月 7日
#947 中野 将伍 『モメンタムをつくる』
ここ数試合、躍動感溢れるプレーを見せてくれている中野将伍選手。顔つきも変わった様に感じられる、その要因を訊いてみました。(取材日:2025年3月上旬)
◆感触が良くなってきている
――ここのところ良いプレーが続いているように見えますが、自分自身の手応えは?
試合毎に感触が良くなってきている感じです。より試合を重ねる毎に、良くなっています。
――キヤノン戦で尾﨑泰雅選手のトライをアシストするパスも良かったですね
まずは自分の前にスペースがあって空いていると思ったので、そのスペースに走りこんでボールをもらって、外から声も聞こえました。外の泰雅(尾﨑)がフリーの状態だと見えていたので、自分の前のスペースを突いて、最後にフリーの泰雅にパスを通しました。
――フリーというのはどの様に確認したんですか?
ボールをもらう前のセットした時に外の状況、誰がいるかを見ているんですけれど、実際にボールが出た時にどういうディフェンスの仕方をするかはボールが出てこないと分からないところもあるので、外の味方の状況を確認した上で、ボールが回ってくる時にギャップが出来て、自分の前にスペースがあることに気づいたので、まずはそこを突いてパスをしたという感じです。トライに繋がったので、良かったなと思います。
――あのプレーも含めて、とても楽しそうにプレーしているように見えますが、いかがでしょうか?
考え過ぎずに、迷いがなくプレー出来ていると思います。
――迷いなくプレー出来るというのは、なかなかないことですか?
そうしようと思ってプレーすれば、簡単なことなのかもしれません。でも体を痛めてプレー出来ない期間が長くて、昨シーズンも1試合しか出られず、しかも万全の状態ではなくて、1年半近くリハビリをして、復帰して今シーズンが開幕して、数試合は完璧を求めていました。完璧なプレーを求め上手くやろうとしている部分があって、そういう中で若干プレーに迷いが生まれていたと、自分自身で思うこともありました。
――それが吹っ切れたんですね
自分がキャリーするところと、パスしてスペースにボールを運んでモメンタムを作る、そこの判断が速く明確に出来ている部分もあると思いますし、本当に上手くやろうとし過ぎず、良い意味で自分の直感で行けると思ったらボールをもらいに行ったり、チャンスだと思ったらボールをもらったりしていて、思い切り出来ていると思います。
◆ボールをもらう前
――迷わずに判断を速く出来るようになったのはなぜですか?
アタックするボールをもらう前の段階で早いセットをして、その時に味方の状況、相手のディフェンスの状況を見て、自分がボールを持った時には判断がクリアになっています。ボールをもらってから「どうしようかな」と考え始めるよりも、ボールをもらう前に味方と相手の状況が見られるようになっているからだと思います。
――それが見られるようになったのはなぜですか?
練習中から意識してやり続けているからだと思います。
――そこが自分の中で伸びた部分ですか?
そこが上手くいっているところかなと思います。
――基本的なスピードやパワーが以前よりもついているように見えますが、そこはどうですか?
そこのところは、怪我をする前の状態と比べると、まだまだ上げていけるところかなと思います。
――まだまだだけれど、日々良くなっている?
数値的なところではなく、トレーニングでの感覚、コンタクトやスピードトレーニングでの感覚は良くなっている感じがあります。
――まだまだ上げていくとして今は何パーセントくらいですか?
どのくらいですかね。どのくらいかは分かりませんが、まだ若干力が弱いかなとトレーニングで感じる部分はあるので、そこが前の状態まで戻ってくれば、もっと良くなるんじゃないかなと思っています。痛みはないですが、まだ以前との差があるかなと思います。
◆精度、我慢
――今の課題はその部分ですか?
そこは日々のトレーニングでやっているので、グラウンドで判断、パスとキャリーの判断だったり、キャリーの質、ボールのもらい方、どうゲインラインを取っていくか、パスの精度、というところは、まだ上げていけるかなと思います。
――ディフェンスについてはどうですか?
ディフェンスについても12番はコンタクト回数が多いポジションなので、激しくディフェンスするのはもちろんですが、やっぱりセンターのところではディフェンスの判断が多くなるポジションでもあるので、相手のアタックに対しての読み、横との繋がり方というのを、もっともっと改善して良くしていかなければいけないところかなと思います。
――ディフェンスの部分でも判断を速くするということですか?
事前にコミュニケーションを取り、相手のパスする人を見て、自分の対面の人の動きを見て、ある程度予測できるところは予測して動くという読みも、大事になってくると思います。
――浦安D-Rocks戦ではサム・ケレビ選手に2トライされましたね
あそこのプレーについては、来ると想定していたんですけれど、チームとしてしっかりと止めなければいけないところだと思います。
――今シーズンは得点も失点も多い状況かと思いますが、失点の改善についてはどう考えていますか?
セットプレーから取られることも多いと思うので、コミュニケーションそして予測という面で改善しているところもあります。そしてセットプレーに繋がる前の段階で、自分たちで簡単なアタックのミス、防げるようなミスが起きて、そこから相手ボールになってしまっているので、そのアタックの小さいスキルのミスを減らしていければ、ディフェンスをする回数が減るんじゃないかと思っています。
――攻撃ではトライを取り切れないというところもありましたね
キヤノン戦でも何回もゴール前までは行っていたけれどという場面があるので、取り切れていないという感覚もあります。ゴール前で取り切れないところもそうですし、中盤でのバックスのノックフォワードや、タッチに出たりなど、そういう防げるミスで相手のセットプレーになるということがあるので、アタック面では取り切るという部分も含めて、精度ですね。
ゴール前になると、スコアをしたいという気持ちがあるので、自分が取りたいということではなくチームとしてスコアをしたいという思いが強くなって、僕もそこで積極的にボールをもらいに行くこともありますが、僕も含めて全員が焦ってラッシュをしてしまうのではなく、コントロールすることも大事かなと思います。我慢してボールを失わずにプレーするということも大事だと思います。
◆味方のチャンスを作りたい
――復帰した松島選手が試合後メディアに、「ぜんぜん悪くない。ミスを減らしていければ」とコメントしていましたが、選手として同じ気持ちですか?
まだまだ試合が続きますし、1試合ずつ勝っていけば、まだまだいけると思っています。少ないチャンスで取り切るということ、接戦になるとそういうところで勝敗がつくと思うので、本当に取り切るところ、スキルの精度のところは、より一層意識しないといけないところだと思います。
――そこで自分にボールが回ってきたら「任せろ」という気持ちですか?
モメンタムは作りたいと思っていますし、パスの精度がもっと上がれば、もっとチームに良いモメンタムが生まれると思っています。
――楽しそうにプレーしていると同時に、顔つきに自信が出てきたように感じますが、いかがですか?
試合を重ねる毎にゲームでのプレーに対する感触が良くなっているところがあるので、それが少しずつ自信になっていると思います。まだまだやらなければいけない部分もあるので、そういうところも含めて試合毎に成長が出来ているかなと思います。
――残り8試合の目標は?
残り全試合を勝つことです。自分の体調もどんどん上がりながら来ています。自分の役割はアタックでもディフェンスでもモメンタムをつくることが大事だと思うので、そういう意味では今以上にオフロードもして、味方のチャンスを作りたいと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]