SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2022年1月21日

#780 尾﨑 晟也 『ボールをもらった瞬間に相手を振り切る』

リーグワン2022開幕戦でチーム初トライを決めた尾﨑晟也選手。ウイングとして好スタートを切った今シーズンの大きな目標を聞きました。(取材日:2021年1月中旬)


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◆チームのファーストトライ

――リーグワンでの東京サンゴリアスのトライ第1号!おめでとうございます

トライを狙っていました。ウイングでの出場だったので、チームのファーストトライを取れたら良いなと思って臨みました。試合の流れがたまたま右サイドだったので、最初に取ることができました。

――試合開始3分でのトライでしたが、試合が始まった直後からチャンスが来ると感じていましたか?

自分のところまで来るかという予想はつきませんでした。ただ、亮土さん(中村)が抜けて、亮土さんからボールをもらった時に、僕の内側にはサポートでユタカさん(流大)がいたんですが、「自分で取ってやろう」という気持ちで走り切りました。

――そのボールをもらう前の動きは、どんな動きだったんですか?

ウイングとしてしっかりと深さを保って、亮土さんの飛ばしパスに対して、トップスピードでもらえるようなタイミングで走り込みました。あれが浅すぎると上手くスピードに乗れなかったと思うので、しっかりとコントロールして走り込んで、ボールをもらうことを意識しました。

――ウイングとしての出場についてはどうですか?

サンゴリアスでウイングとして公式戦に出場するのは、たぶん2年振りくらいでしたが、元々やっていたポジションということもあって、不慣れな感覚はありませんでした。もちろん15番の時とは全く動きが違うので、練習でアジャストする時間が必要でしたが、試合では良いパフォーマンスが出せたと思います。

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◆スマートさで勝負

――15番での経験がウイングで活きていましたか?

そうですね。15番をやることによってウイングの気持ちや、どういうボールが欲しいかを感じることが出来ましたし、ウイングもフルバックもどちらの気持ちも分かることは大事だと思います。ウイングでの出場でも、15番がボールを離したいタイミングを予測するなど、周りが動きやすいようにタイミングを合わせて走るということを意識しています。ウイングは全体的に周りがいちばん見えるポジションで、いちばん余裕があるポジションだと思うので、そこは得意なことかなと思います。

――この後もウイングでの出場が続きそうですか?

2節トヨタヴェルブリッツ戦もウイングで出ますし、今は後半に15番に入ったりするので、練習でも両方のポジションをやるようにしています。

――他にも足の速い選手がいる中でポジションを取れた理由は?

僕はどちらかと言うとスペシャルなタイプのウイングではないので、タイミング、賢さ、スマートさで勝負したいと思っています。例えば、足の速いウイングであれば、少しタイミングがずれたとしても、そこから加速する力があると思いますが、僕はどちらかと言うとそういうプレーは得意ではないので、ボールをもらった瞬間にはトップスピードで、相手を振り切っているというイメージです。
あとはタイミングを少しずらすとか、いやらしいポジショニングをしながら相手を抜きたいと思っています。まあ、足がめちゃくちゃ遅いわけではないんですけどね(笑)。一応、自分の中で勝負できる足は持っていると思っていますよ。ただ、スペシャルではないなと。

――ウイングを極めたいという気持ちはありますか?

ウイングの仕事はトライを取ることが大事になりますし、ポイントだと思うので、ウイングで出るからにはそこにこだわりを持ってやっていきたいと思っています。

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◆タックルに8回行って8回成功

――開幕戦でトライや得点を挙げた選手は外国人選手がほとんどですが、改めて外国人選手のレベルは高いですか?

やはり現役の代表選手が多くいて、毎日の練習の中でレベルの高さを感じます。ですが、サンゴリアスは日本人選手のレベルが高いとも感じています。個人的な能力では劣っている部分があるかもしれませんが、ラグビー全体を見ると差を感じることなく、高いレベルで毎日練習ができていると思います。試合に出るからには「自分が活躍する」という気持ちを持っていますし、外国人選手には負けないと普段から思っています。

――最初の3分でトライを取って、その後の時間ではトライが取れませんでした。こういう時はどういう心境なんですか?

トライは取れませんでしたが、自分のプレーを見返してみると、アシストが2つくらいありましたし、トライのシーンにどれだけ絡んだかが重要だと思います。そこも2つ3つくらい絡めていたので、良かったかなと思います。
ディフェンス面でも、自分の課題だったタックルに8回行って、8回成功の成功率100%でした。これは見えないところのスタッツですが、そういうところでも結果を残していこうと思っています。

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――ディフェンスはチームとしてもテーマだと思いますが、開幕戦はいわゆる打撃戦になりましたね

開幕戦ということで少し固さがあったり、ちょっとしたミスがあって、そういうところからの失点がちょっと多かったかなと思います。その点は次のトヨタ戦に向けての練習で修正してきましたし、ペナルティーを少しずつ減らしていったり、少しのコミュニケーションミスなどを減らしていけば、問題ないかなと思っています。

――ディフェンスが破られる場面も目立ちましたが、そこはコミュニケーションの問題でしたか?

そうですね。次に向けて細かな部分の修正をしてきました。めちゃくちゃ綺麗にラインブレイクされてトライを取られたとか、そういったシーンは無かったので、自分たちのミスで苦しんだかなという印象です。

――ウイングとしてディフェンスをコントロールする部分もありますよね

ラインコントロールを行ったり、どういったディフェンスをするかという声を掛けるのはウイングの役目なので、そこの責任はありますし、ディフェンスのキーマンだと思っています。やりがいがありますし、トライを取られたら自分の責任とも感じます。

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◆改善するポイントは明確

――開幕戦で得たチームの手応えは?

ディフェンスでは少し失点が多かったんですが、改善するポイントは明確になっているので、そこはこれから伸びていくところだなと思っています。アタックに関しては、東芝相手に60点取れたということは、アタッキングラグビーをスタイルにしているサンゴリアスにとっては良い成果だと思いますし、良い形でトライが取れていたと思うので、その点については変わらずに自信を持ってやっていきたいと思っています。

――開幕戦、第2節と続けて味の素スタジアムでの試合になりますが、スタジアムとしてはどうですか?

僕はサンゴリアスに入って、初めて味スタで試合をしました。秩父宮ラグビー場と比べると、客席までの距離があるなと思いましたね。そして前日の大雪でグラウンドが凍っていて、僕が大転倒したってことくらいですかね(笑)。

――あれはドキッとしました

はい、頭とかを打たなくて良かったです。一瞬、何が起きたか分かりませんでした。ステップを切って抜いたと思ったら、滑ってコケていました(笑)。本当にカチカチでコンクリートみたいな感じでした。全体的には会場の雰囲気とか、入場時の炎とか、そういう新しい取り組みがあって、自分としては気持ちが盛り上がりました。

――試合後に選手がグラウンドを回ったのが良かったですね

はい、そうですね。ホストゲームということもあって、今後もやっていくと思います。

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◆手応えがあった開幕戦

――毎年の開幕戦と比べて、今シーズンの開幕戦はどうでしたか?

個人としては、毎シーズンのことですが、開幕戦に先発出場するということが目標ですし、開幕戦までの間、長い時間をかけてチーム内で競争してきたので、その目標を果たせたことがとても嬉しいことですし、自分としても良かったと思っています。プレーでは、最初ちょっと緊張していて、ノックオンから始まってしまいましたが、それ以降は自分の持ち味は出せたと思います。手応えがあった開幕戦でした。

――ミスをした時に悪循環させないコツは?

気にしないことですかね。忘れるようにしています。ミスした瞬間に、次に自分がやるべきことにフォーカスするようにしていますし、良いプレーがあっても、試合中は一喜一憂しないようにしています。試合が終わった後に、レビューをしたり反省したりしています。

――開幕戦の自己評価は良かったわけですね?

そうですね。自分の中では良いパフォーマンスが出せたかなと思います。やはり自信を持ってプレー出来るかどうかが重要だと思います。自信がない時って、それがプレーにも出ていると思いますし、上手くいかないことが多いと思うので、自信をどう積み上げていくかが大事だと思います。そうやって、毎試合、毎試合、良いパフォーマンスを出すことを心掛けています。

――チームとしての開幕戦の出来はどうでしたか?

今シーズンは代表組が少し遅れての合流だったので、チームに残っているメンバーでタフに追い込んできましたし、チームとしてのまとまりや絶対に勝ちたいという気持ちはとても強いと思います。毎シーズン勝ちたいと強く思っていますが、今シーズンは1人1人から本当に勝ちたいという気持ちが出ていると思います。

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◆1日ラグビーを楽しめるリーグ

――今シーズン、簡単な試合は無いと思うんですが、それはやりがいになりますか?

毎試合レベルの高い試合が出来るというのは良いことだと思いますし、日本のラグビー界にとっても良いことだと思うので、それに対してのやりがいがあります。

――今後、どんなパフォーマンスを発揮していきたいと思っていますか?

まずは自分に与えられた役割をしっかりとやり切ることが目標ですし、そのチームの動きの中で自分の見せ場を、もっともっと出していきたいと思っています。まずはチーム・ファーストだと思うので、チームの動きや役割を100%やり切る。その中で自分の見せ場が来たらしっかりと結果を出す、結果を残すということを目標にやりたいです。

――具体的な目標として、何トライ取りたいですか?

毎試合トライを取るということが目標です。1つでも2つでも、より多く取れれば良いと思いますが、毎試合、1つはトライを取るということを目標にしています。

――トライ王も狙えそうですね

毎試合トライを取っていったら、いけるかもしれないですね。でも、後半から出てきたテビタ・リーにすぐに追いつかれました(笑)。毎試合トライを取れば、必然的にトライ王に絡んでいけると思っています。

――シーズン序盤の今の時期は、どういうところに注目していくと良いでしょうか?

もちろん試合に注目してもらうことはそうですが、新しいリーグになって大きく変わった部分は、運営の部分だと思います。会場の雰囲気や試合が始まるまでのイベントなど、だいぶ変わったところだと思うので、1日を通してラグビーを楽しんでもらえればと思います。もちろん試合がメインなんですけど、試合だけじゃなくて1日ラグビーを楽しめるリーグになってきていると思うので、そういうところを楽しんでもらえればと思います。
世の中的には厳しい状況になっていますが、会場で応援してもらえることが選手にとってはいちばんの力になります。選手としての願いは、会場に来て1日楽しんでもらえるようになればと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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