SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年8月 7日

#707 須藤 元樹 『小さな目標を積み上げて大きな目標を果たす』

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、新しい趣味を始めたという須藤元樹選手。入部5年目、常にマイペースで前向きにラグビーに向き合う須藤選手に、いま目指していることを聞きました。(取材日:2020年7月中旬)

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◆コロナの影響で始めた趣味

――まずは、最近はどのように過ごしていますか?

4月からプロ契約になったので、基本的には平日の午前中はクラブハウスでトレーニングをして、午後は自分の趣味や好きなことに時間を使っています。ロードバイクをやっていますが、梅雨の時期で晴れ間を狙って行ったりするので、あまり長時間はこげないんですけどね。あとは、ギターやキーボードも始めて、キーボードに関しては僕のインスタグラムに演奏している映像をアップしました。簡単なものしか弾けなくて、まだ練習中です。

――子どもの頃にやっていたんですか?

いや、子どもの頃は全くやっていませんでした。コロナウイルスの影響で始めた趣味になるんですが、小さい頃から音楽とか歌うことが好きで、コロナの前は趣味でカラオケによく行っていました。そこから派生したのかなと思います。あとは、みんなと同じように、映画やドラマを見たりして、リラックスするところはリラックスするようにしています。

――ギターも初めてですか?

そうですね。まだ初心者の初心者です。

――これからも続けていけそうですか?

どうですかね。まだかじった程度なので全然分からないですけど、僕は楽譜が読めないので、YouTubeで演奏している人の映像を見て、手の動きを暗記してそのまま弾いています。覚えることには自信があるので、続けていけば弾けるようになるかなと思っています。

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――ラグビーに共通することはありますか?

見て学ぶところは通じているかもしれないですね。

――やろうと思ったことは比較的すぐに始めてみるタイプですか?

興味あると思ったことがあっても、すぐには始めないんですよ。1~2日寝かせて、それでもまだやりたいという気持ちがあったら、買ったり始めたりしています。

――久しぶりに趣味が増えましたか?

かなり久々ですね。これまでのダイビングとロードバイクは色々と準備をしなければいけないので、やろうとすると結構時間がかかるんですが、キーボードやギターは10~15分くらいあれば出来るので、今後やっていく機会は増えていくと思います。

――バンドとか作ったら面白いですね

そうですね、現役ラガーマンで(笑)。

――練習している曲は何ですか?

キーボードは洋楽も邦楽も色々やっていて、ギターは最近やり始めたばかりなので、まだコードを覚えているような段階です。

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◆身体の面で一番良い状態になってきている

――2020シーズンはどうでしたか?

大きな怪我から復帰して、その後も細かい怪我などが続いて、試合に出たのが第3節神戸製鋼戦と第4節NEC戦だったんですが、スクラムやラインアウトについては上手く出来たかなと思っています。けれど、フィールドプレーについては、自分でも上手くいっていないと感じながら試合をしていたので、このオフシーズン中にコーチなどに相談をして時間を作ってもらい、スキルなどを見てもらったりしているので、次のシーズンではスクラムやラインアウト以外の部分にも力を入れてやっていきたいと思っています。

――フィールドプレーについては、どの辺りが上手くいかなかったんですか?

細かい部分になるんですが、フォワードのアタックシェイプであったり、チームでのアタックの中で15人の内の1人にハマり切れていなかった部分がありました。

――イメージと自分の動きがズレていたんですか?

そうですね。頭で思い描いているものと、自分の行動が合っていませんでした。怪我によってみんなと一緒に練習をする時間が短かったということはあると思うので、まずは怪我をしないで、高いレベルでの練習をみんなと一緒に出来るようにするところから、始めないといけないと感じました。

――体に覚え込ませる時間が足りなかったんですか?

それもありますね。1年という長い期間、離脱をしていたということもありますし、復帰をしても小さい怪我が続いたりしていたので、ずっとグラウンドに立っている時間があまりありませんでした。そこが試合に響いたのかなと思います。大学の時にも大きな怪我はありましたが、その後に小さな怪我を繰り返すということはなかったので、社会人になって初めての経験でした。

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――今はトレーニングを再開し始めたという時期になりますか?

7月に入ってから自分で本格的に体を動かし始めて、個人で出来るレベルではほぼフルに近い状態でやっていて、それに加え、先ほど言ったコーチを捕まえてスキルの部分をやっています。

――仕上がりに向けては、今はどの辺りですか?

身体の面で言えば、過去と比べても一番良い状態になってきていると思います。自分の中で体質を変えましたし、今までは僕の強みの部分はありましたが身長はあまり大きくなくて、トレーニングをし過ぎると負荷がかかって怪我をするということが分かったので、ラグビーの動きに近いトレーニングをやるようにしています。ただ重いおもりを上げるのではなくて、それほど重くないおもりを如何に速く上げるかという、ラグビーに直結するようなトレーニングにしました。

――その効果が表れてきていますか?

自分でも見た目が変わってきていると感じていますし、今の段階ですが、スキルトレーニングでも上手く出来ていると感じています。体重を3kgくらい落としたので、身体が絞られていると思います。フィットネストレーニングでも今までよりも長い距離を走れていますし、そこが自分のいちばんの課題でもあるので、みんなとの差をどんどん詰めていきたいと思います。

――その感覚は初めてですか?

初めてかもしれないですね。大学生の時や社会人になったばかりの頃は、「今できることをやっていく」という感覚があって、やらなきゃいけないという思いはあったんですが、そこまで出来ずに過ごしてきました。4月からプロとなり、自分の身体ひとつでお金を稼がなければいけなくなったので、危機感というか、ラグビーに対する想いであったり、そこが変わってきたのかもしれません。ラグビーに対して100%取り組める環境になったので、プロになったということは僕の中では大きいかもしれないですね。

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◆またみんなで日本一を奪還したい

――ラグビーに100%取り組める環境になって、どんな心境ですか?

今までの4年間をサントリーという素晴らしい会社で働かせてもらったことは、自分にとってとても良い経験になりました。大学を卒業していきなりプロになることと、社会人を4年間経験してプロになることは全然違うと思います。この社会人として過ごした4年間というのは、今後プロとしてやっていく中でも、礼儀作法などの社会人として当たり前のことを、しっかりと学べたと思います。プロとしてラグビーに取り組めること自体が幸せですが、社会人で学んだことを肝に銘じてやっていきたいと思っています。

――仕事とラグビーを両立させている時の良いところは?

社員選手はほとんどが営業なので、得意先やお客さんに挨拶に行った時に「ラグビー観たよ」、「頑張ってね」という一声かけていただくだけで頑張ろうという気持ちになりますし、自分だけじゃなく人のために頑張れると感じていました。それを励みに頑張っていましたね。

――そんな中、環境を変えようと思ったのは?

実は2年前からプロになりたいと思い出し始めました。社会人1年目の時に優勝を経験させてもらい、2年目でも連覇することが出来ました。その辺りから日本代表にも呼ばれるようになって、そこにいる選手はプロ選手ばかりで、そういう選手たちと話をして、プロの良いところや悪いところを聞かせてもらう中で、現役でいられる期間は限られていて、引退した後の方が人生は長いので、引退した後からでも仕事は出来ると思ったんです。だったら、いま取り組んでいるラグビーに対して100%コミット出来る環境に身を置きたいと思いました。そこからプロ選手になりたいと思うようになりました。

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今年の4月からプロになって、まだこれからですけど、ラグビーに100%身を置ける環境にいられることに対して幸せですし、責任も感じていますし、サントリーというチームで、またみんなで日本一を奪還したいという想いがあります。

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◆「これだ!」というラグビー

――社員選手だろうがプロ選手だろうが、サントリーに対して変わらないというところはありますか?

社員として入れさせてもらったサントリーに対して本当に感謝していますし、サンゴリアスで5年目になりますが、やっぱりサントリーのラグビーは規律がしっかりと取れていて、「これだ!」というラグビーがあるので、そのラグビーに対して誇りを持っています。そこは社員選手だろうとプロ選手だろうと、変わらない部分だと思います。みんなサントリーのラグビーが好きでこのチームに入ってきていますし、好きだからこのチームでプレーしていると思います。

――プロの厳しさは感じていますか?

以前までは社員選手だったので、何かあれば引退して社業に専念という事でしたが、今は自分を守ってくれるものは自分しかありません。自分の身体を含めて、自分で全てカバー出来るような環境作りをしていかないと、もし万が一、怪我など、何か起きた時に大変な状況になってしまうと思っています。危機感を常に持ちながら、ただそこをあまり考え過ぎずに、僕はプラス思考なので、ポジティブに捉えてやっていこうと思っています。

――いまターゲットにしているものは何ですか?

とりあえず、いちばん近い目標としては、サンゴリアスの中でレギュラーとしてずっと試合に出続けることで、それが出来ると、自ずと日本代表がついてくると思っています。そして、現時点での最大のターゲットとしては、2023年のフランスでのラグビーワールドカップに選手として先発出場することになります。僕はこれまで小さな目標を積み上げて大きな目標を果たしてきていて、そこはプロになろうと変わらないので、まずやるべきことはサントリーでレギュラーとして試合に出続けることを目標にしてやっていきます。

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――2019年のラグビーワールドカップを見て、ワールドカップへの想いは更に強くなりましたか?

いやー、ならない人はいないんじゃないですかね(笑)。目標としていたベスト8を果たしたことも大きいことだと思うんですが、自国開催で勝つことが出来たから注目を浴びたと思いますし、もし負けたりベスト8を果たせなかったら、これほど注目されることは無かったと思うので、凄いことをやってのけたと、いちファンとして見ていましたね。

――トップリーグのレベルが上がっているから日本代表の活躍もあったと思うんですが、そのことに対する自信は?

亮土さん(中村)が良い例ですけど、亮土さんは世界のセンターの選手と比べたら、身体が大きいわけではないんですが、あれだけディフェンスで身体を張って、アタックでも機能していた姿を見ると、自分にもチャンスがあるんだなと感じましたし、ラグビーをやっている以上はあの舞台に立たなければいけないと思いましたね。

――次のトップリーグに向けて、ボーデン・バレット選手がやってきますね

本当にスーパースターです。選手みんなに良い影響があると思います。サンゴリアスはインターナショナル・スタンダードを意識してずっとやってきて、それが選手の中に落とし込まれていて、日本で満足せずに物事を世界基準で考えることを選手みんなが実践しています。どんな素晴らしい選手が来ても、対等に渡り合えるトレーニングを積んできていますし、これからも積んでいかなければいけないと思っています。

プロ選手として世界のトップ選手と一緒にプレーが出来ること自体が素晴らしいことだと思いますし、社員選手にとってもそういう選手と一緒にプレー出来ることが素晴らしいことだと思います。社員からプロになったので、そういう環境でラグビーをする素晴らしさ、その中でも社員選手にとっての素晴らしさは痛いほど分かりますね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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