SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年7月24日

#705 大越 元気 『みんながラグビーのことを本当に好き』

2020シーズン、トップリーグのリーグ戦初出場を果たした大越元気選手。成長著しい入部3年目の近況、そして新たなシーズンへ向けて、いま目指していることを聞きました。(取材日:2020年7月上旬)

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◆社員選手としてのやりがい

――先ずは途中終了となった2020シーズンについて、どうでしたか?

もっとシーズンを続けたかったというのが正直な気持ちですし、トップリーグの試合にも出ることが出来て個人としても手応えを感じていたので、もっとたくさん試合に出てチームに貢献したかったんですが、それが叶わなくてとても残念でした。チームとしてもやろうとしていることが1試合1試合表れてきていたところだったので、優勝を目指してチームとして活動したかったですね。

――シーズンが終わってからは、どう過ごしていたんですか?

平松(航/アシスタントS&Cコーチ)と密にコミュニケーションを取って、まだトップリーグが再開するかどうか分からない段階では、いつ試合が始まっても良いように身体を動かし続けていました。

――仕事の方はどうでしたか?

テレワークになったので、僕の得意先であるスーパーにはなかなか顔を出すことが出来ず、電話でお店の状況を把握するくらいで、なかなか直接的な営業活動が出来なかったですね。直接会って、熱意などを伝える方が相手は感じ取ってくれますし、コロナの状況で先方も忙しい状況だったので、いろいろと難しかったですね。

――試合に出るようになると、営業先での反応は変わりましたか?

はい、とても違って、「試合を見たよ」とか「この間の試合、頑張っていたね」と声を掛けてくれる方が多くて、少しかもしれませんが受注に繋がることもありました。

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――試合を見て応援してくれているんですね

見てくださっているんですよ。映像で見るのが難しくても、試合結果を見て「何分から試合に出ていたね」など、細かく見てくださっていて、嬉しいですね。

――お客さんであり、貴重なファンですね

そうですね。ファンになってくれていると思います。

――試合に出たことによって、新たな仕事の面白さなどもありますか?

試合に出ることの大事さを改めて感じましたし、お客さんが気にしてくれていて、試合に出れば尚更「見たよ」と声を掛けてくれるのがとても嬉しくて、そこに対して社員選手としてのやりがいや嬉しさを感じることが出来ました。そういった中でのシーズンだったので、もう少し活躍の場が欲しかったですね。

――その嬉しさ社員選手ならではですね

そうですね。一般の社員の人と比べたら「ラグビーと仕事の両立」と大きく言えるほどの仕事量はしていないと思うんですが、仕事を任せてもらっている以上、仕事もラグビーもどちらも一生懸命やるということが、それぞれでサポートしてくれている人に伝わるんだなと思います。

――社員として目指しているところは?

しっかりと予算目標を達成するということですね(笑)。

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◆チームファーストのプレー

――ラグビーでの今の課題は何ですか?

プレーのことは色々とあるんですが、そこよりもまず勝つためにチームファーストのプレーをするということをいちばん感じています。試合ではユタカさん(流大)が最初に出ることが多いんですが、私としても9番として試合に出るためにアピールをしていますし、新しく直人(齋藤)も入ってきて、更に頑張らなければいけない状況です。

出た試合では「自分の持ち味を活かしてアピールしなければいけない」といちばんに思ってしまうと思うんですが、その気持ちは抑えて、試合に出る状況や時間帯など全てを考えて、まずは「チームが勝つためには何をしなければいけないのか」をしっかりと考えてプレー選択をしなければいけないと思っています。

――チームファーストを大事にするということですが、チームファーストではないプレーとは?

一言で言えば、自分勝手なプレーですね。チームにとってその時間帯に必要ではないプレーを選択してしまうことがあったので、そこを改善しなければいけないですね。

――そういうプレーは、試合後に気づくんですか?

試合中にも感じますし、スタンドオフのギッツ(マット・ギタウ)や煕さん(田村)に「この場面ではこうだろ」と声を掛けられることもありました。試合後にもミルトン(ヘイグ/監督)や耕太郎さん(田原/コーチングコーディネーター)、剛さん(有賀/BKコーチ)とレビューをして、「この場面ではもっとこうした方が良い」とアドバイスをいただくことで、「チームのためにはそうだな」と気づきこともあります。

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――プレー中の選択肢としては持っていたけれども、違う方を選んでしまったということですか?

そうです、その通りです。

――正しい選択をするためには、どう改善していくんですか?

「自分をアピールしなきゃ」と強く思ってしまっていたので、そこをグッと抑えて「チームのためのプレーはどっちだ」と考えるようにすることだと思います。アピールする想いを抑えるということが自分の持ち味を潰すということではなくて、チームファーストのプレーを考えた時にどっちを選ぶかということを、自分の中でもう一度考えなければいけないと思います。

――全体の状況を見たり、次のプレーをどう予測するかなど、より広く深く見ていかなければいけないですね

その通りですね。今までは試合のメンバーに入って活躍するということが全てで、試合に出なければ意味がないと思っていたので、メンバー発表の前後では気持ちに大きな浮き沈みがありました。メンバーに入れなければもちろん悔しいのは当然なんですが、2020シーズンで引退された芦田さん、竹本竜太郎さん、竹下さんは、例えメンバーに入れなくても、チームのために、試合に出るメンバーのために本気で練習の相手をしていて、そのために本気で頑張るという姿を見てきました。

試合に出られなくてもしっかりと相手を分析して、相手チームの同じポジションの選手の特徴を捉えて練習で出す。試合のメンバーじゃなくても一緒に試合に臨んでいると感じて、そういう選手が本当にチームの中心にいるのだと思っていました。そういう選手たちが引退してしまったので、自分の練習態度を見直して、試合のメンバーに選ばれる選ばれない関係なく、切り替えて気持ちを前に出していくことが大事だと思いました。そういった先輩たちと同じように、後輩たちやチームに良い影響を及ぼすことができる選手にならなければいけないと感じましたね。

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◆試合同然の100%の練習

――アスリートは自分のためにプレーすることも大事だと思いますが、自分のためにプレーすることと、チームのためにプレーすることとバランスはどう取っていますか?

そこが本当に難しいですね。もちろん自分のためにやっていますし、9番で試合に出るために練習でチャレンジしますし、9番で優勝に貢献するということは大前提としてあります。そういう中で、例えばそういう状況ではなくなった時に、自分がどういう態度でいるかということを考えさせられましたし、先ほど言ったチームファーストのプレーに繋がると思いますが、チームマンになること、そういう考えにならなければいけない、成長しなければいけないと思いました。

――チームファーストのプレーをするためには、ラグビーを見る目を養い経験を積むということが大切だと思いますが、そこはどう考えていますか?

常に練習から試合を意識して、試合同然の100%の練習を毎日するということがひとつの方法だと思います。あとは、一概には言えませんが、海外の試合を見てどういう選択をしているかとか、プレーだけを見るのではなくて、「このスクラムハーフはキャプテンで、今この時間帯でこの点差で負けている状況で、どういうプレー選択をしているか」というところまで考えて見るようになりました。

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「今この時間帯で、この点差で勝っているからシンプルな選択をしているんだろうな」とか、表面上のプレーだけを見るのではなく、その時の状況や選手のバックグラウンドまで考えて、その選手のプレー選択を見るようにしています。「スクラムハーフとして当たり前」と思う方はたくさんいると思うんですが、それがとても重要だと、改めて感じました。

――ラグビーワールドカップ2019のイングランド代表の練習に、完全なる練習相手として参加したわけですが、その体験が活きているのでしょうか?

それはありますね。試合のメンバーに入っていたらビッグニュースになっていましたよね(笑)。練習に参加した1日目とかは、そばにエディーさん(ジョーンズ/イングランド代表ヘッドコーチ)がいて、普段テレビの前で見ている選手たちと一緒に練習が出来ることにワクワクしていましたし、もちろん自分も成長するために練習に食らいついていこうと100%で練習をしていました。

それをエディーさんが感じ取ってくれたのかは分かりませんが、その後、何回も練習に呼んでくれるようになって、それからはどんどんイングランド代表チームが好きになっていきましたし、このチームのために自分が少しでも貢献できることは無いかと考えるようになりました。プレーのことではありませんが、準決勝のニュージーランド戦の前の練習には、アーロン・スミス(ニュージーランド代表スクラムハーフ)のように坊主にしていきました(笑)。少しでもチームのために貢献したいと感じることができた経験だったと思います。

――その経験によって、サンゴリアスでも同じようにチームのために本気で貢献しようとしている選手も見えてきたんですか?

そうですね。そういう選手の姿にも気づけるようになりました。

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◆全員が同じ犠牲を受け持っている

――改めて、サンゴリアスに対する想い、ラグビーに対する想いは?

サンゴリアスは素晴らしいチームだと思いますし、大好きなチームで、色々な先輩がいて、色々なコーチングスタッフがいて、それが変わる時もあれば変わらない時もあって、本当に歴史あるチームだと思います。このチームに対して自分が何か少しだけでも更に良いものを加えて、良い効果を生み出せるよう、ファンも含めて「このチームが大好きだ」と更に思ってもらえるようなチームに、それに自分がひとつでも力になれればと思っています。

――サンゴリアスの好きなところはどこですか?

やっぱりみんながラグビーのことを本当に好きですよ。あと、選手、スタッフみんなが真面目です。ラグビーが大好きで、真面目な選手、スタッフが多くて、だから良いなって思います。

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――ラグビーに対する想いは?

もちろんしっかりと試合に出て、チームの勝利に貢献するということが大前提としてあるので、そこはブラさずに、サンゴリアスでチャレンジするという自分の目標の中で、しっかりと頑張っていきたいと思っています。あとはラグビーにもサンゴリアスにも、人として成長させてもらっていると感じています。

――人を成長させてくれるラグビーの良さは何ですか?

表現が難しいですが、たとえ自分が犠牲になってでも、チームが勝つという良い方向に進めば良いと、本気で思えることですかね。自分の中の犠牲を、良い意味で犠牲として捉えないということかなと。誰かの犠牲の上に他の人がいるんじゃなくて、全員が同じ犠牲を受け持っているような感じです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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