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SPIRITS OF SUNGLIATH

#587 宮本 啓希 『周りと繋がる』

サンゴリアスキャップ数は59。プレーで、そして最も長く選手会長を務めチームを支えた宮本啓希選手が、今シーズンから新たにチームスタッフとしてデビューしました。選手としての道のり、そして新しい立場になってのこれからの展望を訊きました。(取材日:2018年5月21日)

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◆気がついたら夕方

――採用兼副務はどんな仕事ですか?

名前の通りです。採用担当と、副務はノムさん(野村主務)のサポートをするという形ですが、いちからなので、いろいろ教えてもらっていながらやっています。

――チームのマネージャーという感じですか?

はい。ノムさんが全てのマネージメントをされているので、一緒にやりながら毎日凄いなと感じています。スタッフと選手をバックアップしているという感じです。

――そうすると、グラウンドのこともやるんですよね?

はい。グラウンドにいます。

――やってみて自分に合っていると思いますか?

まだ合っている、合っていないと考える余裕もないです。朝クラブハウスに来て、気がついたらお昼になっていて、次に気がついたら夕方の5時くらいになっています。やることが多く、色々なことがあるなぁと思います。

――忙しい中にも楽しさを感じる時は?

本当に色々なことがあって、仕事で営業をやっていた時にはやることが大体予想ついていたんですけれど、今は全然予想がつかないことや今すぐにやらなければいけないということが出てきます。営業の時だったら、朝のうちにこれをやりたいと思って、朝に内勤して午後に得意先を回るというルーティンが作れるんですけれど、今はそういうイメージが作れません。毎日カチッと動けるかと言うと、そうではないということ、そこが一番今感じるところで、これからまた更に色々なことを感じると思います。当然、選手時代よりもクラブハウスにいる時間が長いということです。

――やれそうという手応えは?

やれそうというよりは、やるという感じです。

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◆マネージメントしていく立場になれる人はお前一人

――その役割をやってみようと思ったきっかけは?

耕太郎さん(田原ゼネラルマネージャー)とノムさんに話をしてもらった中で聞いた言葉でした。「営業はナンバーワンセールスマンと呼ばれる人もいますけれど、たくさんいる。でもサントリーサンゴリアスをマネージメントしていく立場になれる人は、お前一人だけ」という言葉に「そうだな」と思いました。「その中で自分の色を作れば良い」と言われたことです。

――将来思い描いていることはありますか?

全然ないです。今は毎日自分の今やること、色々なことが飛んできますけれど、それをしっかりとアウトプットしていくことです。

――選手が練習しているのを見てやりたいと思うことは?

今は春シーズンでみんな色々なところに行っているので、選手が少なくて結構練習に入ります。だから、普通に自然とラグビーをしています。

――どうですか?

めちゃくちゃしんどいです。みんなみたいに毎日トレーニングをしていないので。敬介さん(沢木監督)から「朝に自己啓発の時間を作れ。仕事に入っていくために何でも良いからそういう時間を作らなければいけない」というミーティングがありました。まずは頭を起こすという意味で、朝は自転車で来ているんですけれど、来てからもう一回体を動かします。それだけなので、練習に入ると肺がちぎれそうになります。選手に対する未練は全くないです。

――昨シーズンで終わりと決めたのはいつ頃ですか?

僕らは、結局はチームから言われる立場なので、チームからそういう話があって、「やります」と返事をしました。その時にここに来るのは決まっていました。

――最後となった昨シーズンの心境は?

ラグビーをやったという感じでした。最後は2連覇して勝って終わりたいとずっと思っていて、その中で若い選手にこっちから声をかけようかなという視野は持っていました。

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◆我はあった方が良い

――やりきろうと思ってやったことが、後輩たちへの声かけだったんですね

結構しゃべるようにはしました。毎日、一人一回はしゃべろうと思って来ていました。

――できましたか?

やっていました。カウントはしていないですけれど、帰り際に「こいつとはしゃべったな」と見てはいました。

――しゃべってみるとどうでしたか?

下の選手はみんな真面目ですよ。ずっと出られない選手もいますけれど、みんな考える力はあると思います。でも、遠慮があります。どこかに遠慮があって、自分はこの型で行けないという気持ちが勝ってしまって、そこの壁をぶち破れなくて、ゲームに出られていないんじゃないかと思います。

――もっと我が強くないといけないということですね

だと思います。我はあった方が良いと思います。みんなそれを自分自身で感じていると思うんです。そこで変わらなきゃと思って、細かいことは変えていっている。でも結果として出るかは、また別だと思います。僕も実際にそっちでしたし、みんな大学の時から試合に出ている選手ばかりですから。

何を変えたかという時に、僕の場合は、1回目は体質を変えて社会人2年目に出ることができたという成功体験があります。2回目は敬介さんが戻って来て、そして周りに凄い人が居すぎてフィジカルではなくてどうやって勝つかと言う時に、考えて自分がどうやってボールをもらうか、どういう場所にいるかを考えようと思った。そうしないと、サントリーにはフィットできないと思ったんです。

それで考えるとか、コミュニケーションをとるとか、そこに気がついたのが2つ目です。その2つがあって、昨シーズンの9年目の時に6〜7試合出たというのは、成功体験に繋げられたところだと思います。

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◆コミュニケーションをとる

――スペシャリティというよりもユーティリティですよね

そうですね。そこは一番意識していました。

――どういう意識の仕方ですか?

まずは、今のサントリーがどういうラグビーをするかを理解しなければいけないと思います。その中で理解をしたら、自分の仕事が出てきます。1/15の仕事はなんだろう?と考えた時に、この仕事をしなければいけないな、じゃあ僕は周りとどういうことをしなければいけないのか、と繋がっていきます。

じゃあこういう体の向きを取らなければいけないとか、こういう時はこういう選手と早めに喋っておかなければダメだとか、もっと枝葉の話になっていくと思います。監督が変わってもサントリーのラグビーは、そこだと思います。僕は途中でそこしかないと思いました。

――自分の自信と考え方を変えるというのは難しいところがあると思いますが、それはどうやって乗り越えましたか?

僕はそこがスムーズだったかもしれません。そんなことを思っていてもしょうがないなと思いました。最初は絶対に誰もが試合に出るという自信を持ってチームに入ってきているんですよ。でも、試合に出られなかったら終わりですから。

――なぜ出られないかを考え、自分の特徴や足りないところに気づくんですか?

最初に気づかされたのは敬介さんがコーチの時で、エディー(ジョーンズ元監督)が監督の時に言われました。「お前は何がいけないのか自分で考えろ」と言われて、私生活を変えなければいけないと思ったんです。それまでは次の日に練習があっても飲みに行っていましたが、思いっきりやろうと決めてからは、飲みに行かないようになりました。そういうところだと思いました。

一生懸命やっていて、気がついたら結果が出ていた時には「これは正解だ」と分かります。逆に若かったので、正解が出たからちょっと良いかなと思うと、次はダメだったりしました。

今、俺はそれどころではないんだと思い直し続けたら、試合に出られるようになりました。

――やると成果が出るって、やりがいありますよね

絶対にあります。それを感じて、若い選手はやって欲しいです。感じている選手もいるし、感じていない選手もいると思います。感じていないということは、まだ何かをしなければいけないと思うんです。何かを変えるのではなくて、プラスアルファで何かをしなければいけないと思います。それをやった時に、これくらいやらなければいけないんだな、しんどかったな、でもしんどいことやったらこうなるんだなというところだと思います。

――それは本人が心の底から思わないと変えられないですよね

絶対にそうです。僕はあの時悔しかったけれど、それしかないと思ってやって良かったとラグビーを辞めた時に思いました。それだからラグビーだけじゃなくて、例えばこの人って喋る時に何を考えているんだろうとか、他の色々なことも考えました。

そういうことを考えることによって「僕はこう思うんですけれど、どう思いますか?」というコミュニケーションができる。それで実際は考えていたことと違ったとしても、それも一つの勉強です。それが面白いです。コミュニケーションをとるということは、そういうところが面白いと思います。

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◆なにくそ

――自分のラグビーの良さはどこでしたか?

良さを判断してくれるのは第三者なので、どう判断してもらえるかだと思うんですけれど、僕が意識していたところは、周りと繋がることでした。4人いてパスを繋いでいくという時に、僕は最初でも最後でもないと思うんです。2番目か3番目でどちらかと言ったら2番目寄りの3番目という感じ。それで何かが決まるわけではないですけれど、「あの時はあれが効いていたよね」ということを意識していました。超地味だと思いますけれど。

――超地味なのは合っているんですか?

合っているんじゃないですかね。派手なことを求めていないので、欲しいとも思っていないので、合っていると思います。ポジションは地味ではないですけれど、派手ではないです。

――精神的に良かったところはどこですか?

言われたことに対して「なにくそ」と思ったことです。正直、敬介さんがコーチの時から「コラッ」と最後まで一番言われていましたけれど、ここを出る時に絶対に見返してやると思って毎日帰っていました。もし僕が「また怒られた・・・」と落ち込んで帰っていたら、無理でしたね。でも、なんか「なんでそんなに言われなきゃいけないのか」ってムカついたんですよ。言われているのはいけないからで、それをクリアしたら褒められるんだろうなと思って、「なにくそ」ってやるしかなかったんです。

――負けず嫌いということですか?

そうですよ。それはもともとみんなそうです。僕は昔から「なんやねん」と思って練習から帰ったことが良かったのかもしれません。

――選手時代の一番の思い出は?

僕はサントリーに来るまで日本一になったことがなかったので、初めて日本一になった時です。その時にグラウンドに立てた。2年目で大きく変えた時に試合に出ることができて、グラウンドに立てたことが思い出です。エディー1年目の時で、決勝は三洋電機が相手でした。

――自分自身のプレーではどうですか?

プレーも人とも繋がっていることだと思います。僕は人と話をするのが好きなんです。

――なぜですか?

面白いです。みんなで喋っていたら、楽しいです。もし嫌な人がいたとしても、その人が本当に嫌な人かは分からないじゃないですか。実際に喋ってみたら良い人かもしれない。嫌な人は誰にでもいますけれど、でもそうとは限らないと思っています。ましてやチームではみんな同じことをやっているし、ずっと一緒にいるから絶対に楽しいです。いつも同じような話をしているんでしょうね。でも、人と話をするのは楽しいと思います。勉強になると思います。

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◆未練はない

――試合に出て初めて日本一になって、その後も何回も日本一になって、幸せな選手時代だったと思いますが、出なくても勝つということは嬉しいことなんですか?

嬉しいですね。正直、試合に出ていなかった時は、自分が出ていないのに「一番嬉しいです」「死ぬほど嬉しいです」と言う人はいないでしょうし、僕もそう思っていました。そういう人がいたらダメです。でも、そこにどうコミットしたかだと思うんです。それを辞めた時に考えました。日頃の練習態度は、2年目で大きく変えた時と比べてどうだったんだろうなと考えました。そこを考えると、ダメだった部分が大きかったのかもしれない。自分で思いっきりやっていたら、そんなことを思わないはずだなと、結果的に最後に思いました。

最後の年は流が表彰式で賞状を貰っているのを見た時にブワーって涙が出てきて、良かったなと思いました。それが自然な気持ちだったと思います。僕はラグビーをプレーすることに未練はないんです。もうちょっと未練が合ってもいいだろうと思うくらい、自分でもびっくりします。

――仕事に対する未練はありますか?

立場が変わる時に、そこで切り替えました。

――一番つらかった思い出はなんですか?

エディー1年目の練習です。これまでにないくらいしんどかったです。毎日走っていて、朝練して体はキツかったですけれど、やったら結果がついてきていました。体はしんどかったけれど、メンタル的には充実していたかもしれないです。しんどいというメンタルはありましたけれど、圧倒的な結果がついてきていたので、あまり追い込まれた感じがなくてポジティブでした。いろいろな方と出会って、勉強したことはいっぱいあります。

――例えば?

世界のトップの選手がどんどん来るし、そういう選手たちはオンとオフの切り替えが凄いし、そんなところも勉強しました。陽気な選手もいれば、ちょっと暗い静かな選手もいて、でもグラウンドに出たら爆発するような選手たち。自分でちゃんとしたスイッチを持っているというとことは、凄くプロの選手だと感じました。

――そこが日本人選手と一番違うところですか?

そう思います。僕は社員だったので、仕事をしながらラグビーをしているというとことは、人によってですけれど、強みになると思うんです。違うスイッチだから、時間を調整するとか、先を見て話をするとか、そういう力は仕事をやりながらだからつく、と思いました。

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◆絶対に3連覇

――今後目指していることは?

具体的ではないですけれど、自分に余裕がないので、余裕を持って全てを見られるようになりたいです。余裕あるなと感じるフィーリングはあっても、実際はそうではないんです。その中でも少しでも余裕を持てるようになりたいと思います。でも、それはやらないと余裕は持てないと思うので、今はやるしかないです。

――今、喜びを感じている部分はありますか?

コーチのレビューが凄いです。毎日することがどんどん変わっていて、毎日朝のミーティングで練習を見直していくと全然違うなと感じます。自分が練習をやっている時と、感じ方が違うんです。より感じるんです。そういうのが凄く面白いと思います。

――コーチングの方も興味がありますか?

分からないです。今は見ていて、そういうのを感じるのが面白いです。自分が教えるとなったら、まだそんなイメージはできないです。

――今の立場での今シーズンの目標は?

絶対に3連覇です。あとは、僕はリクルートをやっているので、サントリーのカルチャーを理解できるような選手を取るし、作らなければいけないと思います。

――その時に選手のどこを見ているんですか?

やってみるのは後だと思うんですけれど、サントリーは常に成長しているチームだと思うので、そこに来てもらうということは、まず自分にそういう気持ちがなければ無理だと思います。僕は「もっと成長したいと思っているかどうか」だと思います。変わりたいとか、話をしていて感じられるかを、大事にしなければいけないと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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