SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年4月22日

#426 中靍 隆彰 『トライも2倍くらいは取りたい』

1年目トップリーグ出場なしで迎えた2年目の昨シーズン。リーグ戦ではすっかりレギュラーに定着し、10トライを挙げた中靍隆彰選手。シーズン終盤の状況から、早くも来シーズンへの課題を明確にして、3年目のシーズンに向かおうとしています。インタビューを通じて、そのイメージを我々も共有していくことが出来ればと思います。(取材日:2015年4月2日)

◆課題がたくさんある

スピリッツ画像

—— 2014-2015シーズンが終わって、疲れなどはありますか?

開幕戦からメンバーに入ることを目標にしていて、その目標は達成できたんですが、競った試合が多くて、精神的にも疲れる試合が多かったと思います。最初は「この疲れが2月まで続くのか」と感じて、シーズンを通してメンバーに入ることは大変なことなんだと思っていました。

でもコンスタントにメンバーに入ることで徐々に慣れていき、シーズンが終わった時にはそれほど疲れているという感じではありませんでした。シーズン終盤にはメンバーに入れなくなってしまったので、疲れているというよりは、まだまだ課題がたくさんあると感じたシーズンでした。

—— シーズン終盤にメンバーに選ばれなくなってしまった理由は何だと思いますか?

ディフェンスの部分が大きかったのかもしれません。剛さん(有賀)からも、「もっとこうディフェンスした方が良いよ」とアドバイスしてもらっていたんですが、それがしっかりと出来ていない部分もあったと思います。

日本選手権からメンバーに入れなくなったことに、最初は納得できていなくて、ずっと悔しいと思っていました。ですが、スタンドからヤスさん(長友泰憲)のプレーを見ていると、ヤスさんのプレーでチームが安定していると感じましたし、勉強になることが多かったと思っています。

—— 長友選手のどういうプレーが勉強になりましたか?

例えば、僕がディフェンスしている時は、抜かれたとしても追いつけるので、対面だけじゃなく外にいる選手まで見ようとする癖があるんです。それで、外の選手まで見ることは出来ているんですが、結局はゲインされていることが多々ありました。

ヤスさんのディフェンスは、どこかのタイミングで前に出て、ドンピシャで相手を止めるんです。例えちゃんとディフェンスの人数が揃っていたとしても、外まで回される前に相手を止めることが出来れば、その分前で止められるので、そういうプレーが勉強になりました。そういうプレーがあると、フォワードも助かると思うので、そこがこれからの課題ですね。

—— 昨シーズンはチームとしてもトライ数が少なかったと思いますが、その点についてはどう考えていますか?

攻め方の部分でチームとして少し迷いがあって、「これがサントリーのラグビーだ」と固まったのが、シーズンの最後の方になってしまったと思います。チームの中にサントリーのラグビースタイルは浸透していると思うので、あとは選手個人の能力をアップさせていかなければ、サントリーのラグビーの破壊力は増していかないと思います。

◆自分の足りない部分

スピリッツ画像

—— 課題を克服するために、すでにトレーニングを始めているんですか?

この時期はまだ個人でのトレーニングで、試合のシチュエーションに沿ったディフェンスの練習は出来ていないので、春シーズンが始まってからしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

—— 過去にこれほどディフェンスを意識したことはありますか?

僕はウイングなので、メインの仕事はトライと取り切ることだと思っています。それは常に考えているんですが、いくらアタックが良くてもディフェンスのレベルがスタンダードにないと、チームからは信頼されないと思いますし、メンバーに選んでもらえないと思います。

昨年の春シーズンで、ディフェンスのスタンダードはある程度上がったと思っていたんですが、トップリーグでプレーしてみて、自分の足りない部分が更に見えてきました。

—— アタックについてはどう考えていますか?

まだまだ力不足だと思います。トライも昨シーズンの2倍くらいは取りたいですし、そのくらい取れる場面があったと思います。

—— アタックについての課題は?

サントリーのラグビーとして、外が余った状態でトライを取る形を目指していますが、例え外が余っていなくても、「ツル(中靏)に回せばトライを取ってくれる力がある」とチームメイトに思ってもらえれば、より多くボールを回してくれるようになると思っています。

そうなるために、内側の選手にボールをもっと要求していかなければいけないと思います。昨シーズンの中で、試合中のボールタッチの回数は意識していたんですが、まだ増やせると思っています。

◆僕にしか出来ないような動き

スピリッツ画像

—— 2013-2014シーズンは出場がなく、昨シーズンはリーグ戦で10トライを取っています。昨シーズンで成長した部分はどこだと思いますか?

サントリーでウイングとして試合に出ていれば、周りの選手が凄い選手ばかりなので、10トライくらいは取れる数だと思います。その中で、僕にしか出来ないような動きからのトライをもっと増やしていきたいと思っています。

これまでアタックについてはある程度の持ち味はあったと思うんですが、1年目の時はフィジカルやディフェンスのレベルがあまりにも低すぎたんだと思います。1年目の時よりもその部分が伸びてきて、試合でも使えるんじゃないかと思ってもらえたから、メンバーに選んでもらえたんだと思います。

—— フィジカルがパワーアップしたという実感はありますか?

身体は大きくなったと思いますが、プレーで強さを実感したことは、まだあまりないかもしれません。トップリーグの選手とコンタクトしてみて、まだ弱いんですが、サントリーに入った時よりは強くなっていると思いますし、トップリーグの試合に出させてもらったことで、少しは試合が出来るレベルくらいにはなったのかなと思います。

—— 2年目でこれだけ試合に出られるというイメージはありましたか?

僕としては1年目の時から試合に出るつもりでサントリーに入ったので、最初のイメージよりは試合に出るのが遅くなってしまいました。

—— 1年目の時に試合に出られなかったことで、試合に出るためにチャレンジしたことは何ですか?

意識したことは、他の選手がやっていない時にいかにやれるかという部分です。みんなと同じことをやっていたのでは、差というのはその選手のポテンシャルでしかないと思うので、他の選手に差をつけるために、みんなが意識していないことをしっかりと意識して食事やトレーニングをしていました。

—— 食事に関してはどういうことを意識していたんですか?

どうすれば安定して充実した食事が摂れるかを考え、朝食から低脂質高タンパク質のものを摂るようにして、今は自分のルーティーンになっています。1年目の時から栄養については色々なサポートをしてもらっていて、最初の頃は数値も悪かったんですが、自分で意識するようになってからは数値も良くなりました。

—— 体質が変わったことで、パフォーマンスにも繋がっていますか?

そうですね。身体も大きくなったと思いますが、僕の持ち味はスピードやクイックネスだと思うので、身体を大きくすることばかりを考えるのではなくて、自分の持ち味を伸ばしつつ、身体を大きくしていければ更に良くなっていけると思っています。

—— スピードは上がっていますか?

上がっているかは分かりませんが落ちてはいないと思うので、体重が1年目の時と比べて4~5kgくらい増えている中でスピードが落ちていないのは良い傾向だと思います。

◆最後までグラウンドに立っていること

スピリッツ画像

—— 来シーズンへの自信の程は?

昨シーズンの日本選手権でメンバーに選ばれなくなったので、来シーズンもメンバーに入れるという保証はないと思っています。ただ、メンバーを選ぶのは僕ではないので、僕としては練習や試合でのパフォーマンスも含めて自分が出来ることをやって、チームに判断してもらいたいと思います。

—— 2年目で15試合に出場したことで、サンゴリアスに入った当初イメージしていた姿に追い付きましたか?

いや、まだですね。日本選手権も出場し、決勝で勝ち、最後までグラウンドに立っていることが、僕がサントリーに入る前にイメージしていた姿です。 そのイメージした姿になるためには、1日1日が大切だと思います。これまでの悔しさを試合にぶつけるのは当然だと思っていて、練習であったり、日々の中でその悔しさをぶつけていくことを考えています。例えば、今日の夜ご飯に何を食べるかによっても変わっていくと思います。

—— 理想とする選手像のどのくらいまで近づいていると思いますか?

まだ2割くらいだと思います。昨シーズン、あまり力がない中あれだけの試合を経験させてもらったので、その経験を次にどう繋げていくかが重要だと思います。

—— 来シーズンに向けて、どう取り組んでいこうと考えていますか?

ディフェンスなどの昨シーズン見つかった課題は、春シーズンから意識して取り組んで1つずつ改善していこうと思います。例えば、マツ(松島幸太朗)みたいな選手は味方にいて心強いですし、あれくらい実力があると、どんな状況でも活躍できると思いますし、トライが取れると思います。

僕の場合は、今は外で余ってスピードで取るトライが多いと思います。そのトライも良いとは思いますが、それ以外に自分にしか出来ないようなトライの形を早く見つけたいと思います。

—— 日本代表は意識していますか?

ラグビーをしている以上は日本代表に選ばれたいとは思いますが、まずはサントリーでしっかりと結果を出して自信をつけていくことで、自ずと日本代表への欲も出てくると思います。

—— いま感じるラグビーの面白さはどこですか?

試合に勝つことがやはり面白いですし、自分が考えている通りのプレーが出来た時も面白いですね。あと仕事をしながらラグビーをやらせてもらっていて、会社の人たちが応援に来てくれたり、試合に勝った翌週に会社に行くと、色々な人が声をかけてくれたりするので、社会人になって新しい面白さを感じることが出来ていると思います。

—— ラグビーの良さは何だと思いますか?

ベタな答えになってしまいますが、勝った時にチームのみんなで喜べるところだと思います。

スピリッツ画像 スピリッツ画像

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ