SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2007年1月31日

#75 浅田 朗 『各個人が上に上がるために考えてやっている当たり前の姿』

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◆1/27(土)11時、遠征組(Aチーム)以外の練習開始(於/府中グラウンド)

—— こういう時に皆がどんな練習をしているのか、初めて見に来ました

東京での試合であれば試合前日でもコーチがいるので、ゲームをやったりフィットネスをやったりするのですが、今日は次の試合に出るメンバーが遠征(大阪)に行っているので、こういう場合にコーチからトレーニングメニューで与えられているものは、ウェイトトレーニングだけですね。

もちろん各個人がやるべきメニューもありますから、それを各自がやるという練習になります。それ以外でも、例えば若手の藤原(丈嗣)だったら、上に上がるために自分で考えて、グラウンドを走ったりフィットネスをやったりしています。これはでも、いたって当たり前の姿です。

試合に出られない選手は、出られないなりの理由があって、それをカバーする練習をしたり、怪我をしている選手はリハビリをしたり、ベテランで疲れている選手はウェイトが終わったらしっかりと休む、そういうことが必要であるということを、それぞれ自分で考えながらやっています。

—— それはサンゴリアスいつものことなんですか?去年はどうだったんですか?

去年は試合にぜんぶ出ていたので、出てないメンバーのことはよくわかりませんが、今年に関して言えば、残ったメンバーは練習に対しての集中が切れている訳でもないですし、怪我人だったら若井さん(正樹/コンディショニングコーチ)中心に、いち早く復帰するためにリハビリをやっていたりしています。

それぞれがやっている姿をお互いに見ていますから、そういう姿を見て「オレもあれをやらないといけないな」と思いますし、刺激し合うという、とてもいい効果もあります。今日なんかは天気もいいので、ウェイトが終わったら皆でタッチフットしようかな?なんて声も挙がってます。

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—— では副キャプテンとして練習に気合いが入っていないのでカツを入れる、なんて場面はあり得ないですね?

そんなところでカツを入れなきゃならない集団じゃまずいでしょう(笑)。そういう話にまったくならないのは当たり前だと思ってますが、いい状況なんでしょうね。ただ間違いなく、ふだんの皆でやる練習とは違って、リラックスして取り組んでいるのは確かです。

あまり気合いが入った状態で、フィットネスとか近寄りがたい雰囲気でやってる人って、普通いないでしょう?(笑)リラックスしながらも、自分の課題に皆ちゃんと取り組んでいるなという感じです。

◆あれがなかったら今週の試合は心配だった

—— 今年1シーズン見ていて浅田選手の言うことと監督の言うことが同じことが何度もあって、感心したことが何度もあります

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それは僕だけではなくて、監督やコーチが練習で言っていることを聞いたり、皆が一緒に練習やミーティングをやっていくのに連れて、誰もが同じように感じられるようになってきているのだと思います。チームのメンバーと話をする中でも、重要なことが絞られてきています。

若い選手は自分のプレーに集中しているので、そんなところまで考えられないかもしれませんが、ある程度やってきた選手同士でチーム状況を話し合うと、だいたい同じ考えです。自分が言っているのが監督が言ったことに近いというのは、もちろんチームとしていい状況といえるでしょうが、それは僕だけじゃなくて、皆がこうした方がいいということがちゃんと分かっている状態なんだと思います。

例えば水曜日のコンタクトの練習の時に、BチームのフォワードとAチームのフォワードがやり合う場面がありました。Aチームの気持ちがノッていないなと感じていたんですが、そうしたら清宮さんがカツを入れた場面があって、そのカツでAチームのメンバーが熱くなって、だんだん激しいプレーができるようになったんです。

そのカツのタイミングは、フォワードだけじゃなくてAチーム全員に対して「もうちょっと荒々しくプレーしてほしいな」と、僕らが感じていたタイミングだったんです。川村(拓也)と昨日そのことを話したんですが、「あの時の清宮さんのカツがあって、隆道(佐々木)がガムシャラにいった。あれがなかったら、今週の試合(ヤマハ戦)は心配だったけど、あれがあったから大丈夫だと思った」と言っていて、川村も同じことを感じていたんです。

ゴリ(高野貴司)も練習中、Bチームが円陣を組んだ時に言っていたんです。「Aチームがあんなプレーしかしてないってことを、もっとオレらが気づかせてやらないといけない」。たぶんAチームのメンバーも同じ感覚だったと思うんですが、清宮さんもそこに気づいたのでカツを入れた訳です。だからだいたい皆、考えていることは一緒なんです。

皆が感じてたけれども、何ともその状態を動かせない時もあります。何かまずい雰囲気できてるなと思いながら、そのまま行ってしまうところを、監督がしっかり、敏感にそういう部分を感じて、上手く修正してくれています。

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—— 高野選手については、長谷川慎選手と話した時にも、リーダーとしての役割を果たしているという話が出ました

高野はほんとにそうですね。あの円陣でのコメントを聞いて、「コイツしっかりしてんな」と思いました。今はBチームにいますけれど、ずっと高野には「フォワードをまとめてくれ」という話をしてきました。

◆縮まずに伸び伸びとアグレッシブに

—— いよいよマイクロソフトカップ・ベスト4対決ですね

ここまでやっと来たな、やっと本番が来たなという感じです。「日本一を獲る」ということを目標に掲げて春からやってきて、やっと来たなという心境です。ここからが勝負です。

—— その最初の相手が今シーズン2戦目で初めて負けたヤマハですが、負けた時はどう思いましたか?

これはヤバイ、という感じはありませんでした。「トップリーグをずっと勝つのは難しいな、どっかで上手くいかなくなる時もあるな」と思っていたんですが、それがいきなり来ました(笑)。僕の印象では、春からそこまで積み上げてきたものを、出し切れてなかった、自信を持って出し切れなかった、という感じでした。積極性がなかったし、ちょっと守りに入った印象がありました。

それ以降は「常に攻める姿勢を持ってほしい」という目で現場を見ていますが、今度のヤマハ戦では縮こまっていずに伸び伸びとアグレッシブにいってほしいですし、確かヤマハで負けた後の日本IBM戦の前にも、ミーティングで同じことを言った記憶があります。

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—— ヤマハ戦の後は勝ち続けて9連勝、次に負けた東芝戦はどうでしたか?

ヤマハ戦の後はアグレッシブにいってました。東芝戦は正直、「互角だな」と思いました。上(スタンド)から見ている感じでは、どっちが勝ってもおかしくないという感じでした。うちの方が若いですし、東芝は成熟したチームですから、伸びしろはうちの方がありますし、シーズンが深まれば深まるほど、うちの方が強くなると思います。怪我人が出ずに、順調に伸びればですけれど。

だから来年のことを言っていいのかわかりませんが、来年はもっと安定してくるでしょうし、来年の方が更に強いでしょうね。今年も試合をやればやるほど、良くなっていくと思っています。試合の後でビデオを見たりしながら、清宮さんが言う1つ1つの要求があるんですが、その要求がたくさんあるので、時間が経てば経つほど、いいチームになっていくと思います。

1つ1つ課題をこなしていく感じですが、あまりたくさんやり過ぎると、前にできていたことができなくなったりもしますので、復習もしながら新しいことをやる、という考え方を基本に練習しているんだと思います。

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—— マイクロソフトカップを前に感じるチームの状態は、去年と違いますか?

ぜんぜん違います。去年は試合に出ていて今年は出ていないので、自分の感じ方がぜんぜん違います。そしてやっているラグビーも違いますが、でもチームの雰囲気としては、近いものもあると思います。

—— あと最大4試合、日本一に向かってのポイントは?

ヤマハ戦の出来次第だと思います。ヤマハの試合がキー(鍵)です。ここでどれだけ自分たちのラグビーができるか?勢いにのって東芝との試合に臨むためにも、ヤマハ戦での勢いが大事です。

慌てるとか、この前みたいなことになるとはまったく思っていません。慌てて、ペナルティを取られて、ゴールを決められる、そういうイメージは浮かんできません。圧倒して勝てるかどうかです。このレベルになってくると、圧倒して勝つというのはとても難しいことですが、それができれば勢いにのって、東芝にも勝てると思います。

負けるイメージはまったくなくて、どうやってトライを取れるかというイメージです。その内容ができて、圧勝できたら、勢いで決勝もガーンといけます。試合後に「あぁ、いいゲームをやったな」という、三洋戦みたいなゲームができればいいですね。

—— そのためにはやはり、まずフォワードですか?

ぜんぶの試合がフォワードです(笑)。もちろんバックスも大事ですが、フォワードが勝つこと、スクラムでもモールでも勝つことを前提に、練習していますから。

—— ではキープレーヤーはフロントローですか?

そうですね、フォワードの前5人と、それから僕の中ではバックスの菅藤心だと思います。もちろんフォワードが勝った上での話ですが、心のゲームメークとキックは生命線です。心は今、調子いいんじゃないですか?僕は期待してます。

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◆そして、ヤマハ戦を終えて(サントリー 40-39 ヤマハ発動機)

—— 圧勝はできませんでした

できればその方が良かったですけれど、勝つのが最低条件ですから.....。途中までは良かったんですが、最後に微妙な点差になって、気持ちが緩んで点を取られたところに、チームとしての若さがあるんじゃないでしょうか。選手それぞれ思うこともあるでしょうし、これを経験することによって、またレベルアップして、東芝戦で今回みたいにならないようにやればいいんじゃないですか?いろんな運命があって、こういうのが伏線になって、という場面もこれからあるかもしれません。あの時こうだったから、今度はこうやろう、みたいな。今日は結果、勝てて良し、いよいよ決勝ですね!

(インタビュー&構成 針谷和昌)

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