SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2006年12月20日

#62 長谷川 圭太 『スクラムはモロに自分に答えが返ってくる』

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◆卒業旅行3回

—— サンゴリアスに入ってから体重は増えましたか?

ちょっと減りました。入った当時は、学生の時のシーズンが早く終わったというのがあって、かなり体重がありました。大学(中央大学)最後の夏合宿で右足の靭帯を切ったんですが、手術したら間に合わなかったので、少しでも試合に出られるように手術せずにリハビリして、ラスト2試合で復帰したんです。

でもそれで終わりじゃなくて、そのあと(関東大学リーグ戦)2部との入替戦があったので、そのまま試合に出る予定でした。でもその試合の3、4日前に、同じ右足の太腿肉離れをやってしまって、結局出られなかったんです。

いちばん大事な最後の試合で出られなくて、その入替戦が終わったらすぐ手術しました。その入替戦はロスタイムに入ってもまだ負けてて、ラスト1プレーで山梨学院に逆転したんです。

そういう試合に出ていた頃までは体重を維持していましたが、最後のシーズンが2月初めに終わって、その後は遊べる最後のチャンスじゃないですか。それで卒業旅行に3回行きました。

—— 3回!?

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韓国とグアムとバリなんですが、行くメンバーが違ったんです。韓国には仲のいい友達と、グアムにはラグビー部と、バリには大学のクラスのメンバーで行きました。3回も行くのは、たぶん珍しいっすよ。そういうイベントごとみたいなのが、僕は好きなんです。

大学のラグビー部では、最初キャプテンがいなくて、リーダーが6人ぐらいでやってました。そのリーダーのうちの1人でしたが、いろいろ問題があって、キャプテン1人、副キャプテン1人という体制になったんですが、その中には入りませんでした。

◆入る直前123kg

—— サンゴリアスに入る直前は何キロぐらいあったんですか?

その頃123kgぐらいになってて、明らかに絞らなくちゃいけなかったんです。サンゴリアスに入って、最初はリハビリばっかりで、夏合宿までずーっとリハビリばかりでした。

最初、山本さん(和宏/理学療法士)とやっていて、途中から若井さん(正樹/コンディショニングコーチ)のメニューでやりました。きつかったですね、走るのが。手術して2か月でジョグを始めました。

今もまだ完治って感じではないんで、痛かったりする時もあります。切ったのは2回目、再断裂なんです。最初に切ったのは高3になりたての時でした。隆道(佐々木)たちがいた啓光学園と当たった、春の全国選抜大会の決勝で、ラスト5分ぐらいでブチーッと切れちゃったんです。

その時は怪我人が出ていたので交代選手がいなくて、靭帯切れたままで最後まで出さされたので、走っていて膝がガクガクでした。切った瞬間は痛かったんですが、しばらくしたら痛くなくなってました。

この時も1か月ぐらい経って、5月に手術して、高校3年の夏休み1か月は丸々入院・リハビリでした。花園に間に合わせたかったんですが、県大会の最初から間に合いました。

◆出されたものは残さない

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—— 網走の夏合宿での中村コーチ(直人/フォワードコーチ)とのマンツーマンのトレンーニング姿が印象的です

夏合宿の3週間は、中村コーチとマンツーマンでした。練習は厳しかったけれど、やっとそろそろ復帰という感じになってきたので、それで何とか耐えられました。やっとできるんだ、みたいな感じでした。とにかく肝心な時に怪我しちゃうんですよ。勝負弱いというか.......。

—— 我慢強い性格なんですか?

我慢強いというか、強制されたりやらされたりすると、与えられたメニューは絶対にやります。ご飯でも、出されたものは絶対に残さないんです。よっぽど嫌いなものでないかぎりは。

—— よっぽど嫌いなものは?

キュウリとニンジンです。キュウリは匂いがダメなんです。ニンジンは味。とにかく苦手です。昔は食べられたんですが、ある時意識したらダメになりました。「キュウリって臭いな」って。いつから嫌いになったか覚えてなくて、気がついたら「オレ、食べれない」でした。

—— 与えられた以外のメニューはやってますか?

首のトレーニングをやってます。スクラムに関することは最初、直人さんと前田(航平)と3人で、いつも練習が終わってからスクラムの1対1の練習とかやってましたね。首のトレーニングは、直人さんに押さえてもらって、数を数えるやつですね。

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—— 宴会部長の先輩たちから後継に指名されてますが

勘弁してほしいです。認められたのかも知れないですけど、自分ではそんな器じゃないと思っています。進んではやらないですね、ふだん。いつか開花するかも知れませんが、見ての通り僕、いじられるじゃないですか。みんな周りの人は「おいしい」って言うんです。大して何もしてないのに笑いを取るの、おいしいよって。

◆最初は優しく、入ったら鬼

—— サテライトで優勝を決めたクボタ戦の後、監督にいい意味でイジられていましたね

そうですね、監督にからんでいただけましたね。高校(東福岡高校)の時は、監督やコーチに怒られまくっていました。フォワードコーチの藤田先生という人がいて、その人がラグビーに誘ってくれたんですが、最初は優しかったんです。それでラグビー部に入ったら、鬼のようにしごかれました。だけど今は感謝してます。

—— いつからラグビーをやり始めたんですか?

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高校からです。親父はサラリーマンなんですが、転勤族で転々としました。埼玉、北海道、秋田、福岡。福岡の次は千葉で、今でも実家は千葉なんですが、僕は高2で一緒に千葉へ行かないで福岡に1人残ったんです、ラグビーをやるために。

高校の下駄箱の辺りを歩いてたら捕まって、部室にいきなり連れていかれて、ぼろいスパイクを履かされて、体操服に着替えさせられたんです。4月でしたが、気がついたらスクラムの基本姿勢をとらされてました。ラグビー初心者はみんなやるんですよ。スクラムをやって、何となく悪い気はしなかったんです。何かやろうかな、と軽い気持ちで入ったら、実はラグビー部は強くて、最初はまったく別メニューでやりました、部員も多かったですし。80人ぐらいいたと思います。そういう新人練習をやって、途中からABCDのいちばん下のチームでやっていました。

—— 中学では何をやってたんですか?

サッカーです。ポジションはいろいろやってて、よく「キーパーですか?」って言われるんですけど、キーパーだけやってないんです。当時はサッカーできる程度の体重で、80kgもなかったと思います。3年の8月に部活が終わって、9月から3月は受験勉強ばっかりで運動しません。それでも90kgないぐらいでしたし、高校でも最後の花園では100kgもなかったですね。プロフィールにはサバを読んで105kgとしてましたけど。

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◆視野が広がった

—— 中学校は何という中学ですか?

姪浜中(めいのはまちゅう)という学校で、福岡市にあります。小学校は3校転校したんですが、ずっとサッカーをやってて、最後は姪浜小です。北海道にいた幼稚園時代からサッカーをやってました。だから高校でもサッカーやろうかなと思ってました。

それで練習を見に行ったりしてたんですが、1学年で100人以上の入部希望者がいて、東福岡高がサッカーが強いのは知ってましたから、三冠取ったり本山選手(雅志/鹿島アントラーズ)が出たところだし、できたらいいなとは思ってました。

でもサッカーはすごく長い年数やったけど、あまり上手くならなかったんですよ。才能がなかった。たぶん視野が狭いからだと思うんです。今持っている視野があって当時の体型を持っていたら、サッカーも自信がありますけど(笑)。冗談です、昔に比べたら視野が広がった気がします。

—— ラグビーが面白いな、と思ったのはいつですか?

高校2年の時、たまに試合に出させてもらったりとかあったんですが、本当に面白いと思ったのは、最上級生になった最初の新人戦で、ラグビーが楽しいなと思いました。それまでも、とくに辞めたいとか思わなかったですけど、だからと言ってラグビーをすごくやりたくてやってきたわけでもなかったんです。とりあえずきついことをやってきたから、これで辞めたら損だ、と思って続けてました。

自分が試合に出て、たまたま自分の代が強かったこともあって、九州大会も勝って、選抜は隆道たちに負けたけど、勝つことが楽しいと思いました。幼稚園、小学校、中学校とサッカーをやってきて、勝てないチームばっかりだったんです。サッカーは楽しかったけど、試合で勝ったことがなかったし、高1、2のラグビーは勝ったんですが、自分が出てるわけじゃないから、いまいち楽しさが分からなかったんです。

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◆負けず嫌い

—— ラグビーでのポジションはずっと変わらないんですか?

フォワードです。バックスはやったことがないです。いちばん最初にロックをやったりしましたが、基本はプロップです。

—— ポジションとしての楽しさは?

押したとき、勝ったとき。何本か組んで、相手がスクラムが嫌そうだなぁと思ったら、よーしと。表に出さないけど、実は負けず嫌いです。

—— 今年の新人は試合にたくさん出て活躍してます

早く追いつきたいと思います。前田は同じポジションですけど、他の人はポジションも違うし、同期のみんなにはいっぱい試合に出て欲しいですね。

—— 大学時代とサントリーのラグビーはだいぶ違いますか?

大学時代にあまり僕は頭を使わないでやってたから、今はいろいろ考えなきゃいけないことが試合中にあるし、今の方が自分の仕事に重みがあるという感じです。

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—— 先輩たちにはかわいがられてますか?

慎さん(長谷川)も直人さんも優しいです。というか、最初、慎さんは僕のことしばらく心配していて、「ここでスクラム組めるか?」と言ってました。中大はスクラム強くないですし、サントリーは社会人でも上の方ですから、「ほんと大丈夫か?」と言われてました。

サントリーで初めて組んだ時には、「やべぇ」と思いました。やっていくうちに段々と慣れて、組めるようになってきて、慎さんがたまに誉めてくれたりすると、メチャクチャ嬉しいですね。スクラム終わった後に「今日、良かったやん」とか「だいぶ慣れてきたなぁ」とか。

◆体を頑丈にする

—— ラグビーをやってきて印象的な場面は?

悪い試合、悪い印象で言うと、衝撃的だったのが大学1年のときに初めてリザーブに入った関東学院とのリーグ戦です。後半20分に交代で入った時点で0-80、最終的に116点取られた試合が、公式戦デビューでした。唖然としました。相手の先発で剛(有賀)も出てたんですけど、次元が違うのかな?と思いました。

—— この間までちょっと体調をくずしてましたか?

すごい風邪をひきましたし、10月の頭に生まれて初めて喘息(ぜんそく)にもなりました。風邪が治りかけてたところで喘息になり練習に復帰したので、咳がとまらなくなって、スクラム練習をやってて咳をしすぎて吐いちゃったくらいでした。それももう治りましたし、膝もOKです。このまま慣れていくしかないですし、筋トレでとりあえず体を頑丈にして、早くトップで試合に出られるようになりたいですね。

—— 将来構想は?

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将来はまだ考えてないです。すべて未定です。

◆マイペース

—— 自分の性格をどう思います?

O型っぽいって言われるけど、実は思いっきり仲良くなってくると、お前B型だなって.....。マイペースです。

—— 以前感じた次元の違いは克服しましたか?

剛(有賀)とはポジションが違うんで何とも言えませんが、同じところでプレーできてるってことは、その時よりは近づいたんじゃないでしょうか。

—— 最後に、ラグビーの魅力は?

スクラムの話になっちゃいますが、スクラムは直接ぶつかるから、モロに自分の力を試せます。頑張っていれば組めば分かるし、モロ自分に答えが返ってくるのが楽しですね。スクラムに限ってのことですけど。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)

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