SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2006年5月18日

#13 栗原 徹 『イケーッ!気がつかないうちに声を出していた』- 2

◆負けることが受け入れられない

—— これまでキャプテンとか副将とかの役割は?

学生時代はずっとヒラのヒラです(笑)。サントリーで去年、副将でしたが、何もしていません、結果としてそうじゃないですかね。自分のスタイルで選ばれたので、そのままのスタイルでいこうと思ってやっていました。キャプテンだったらまた、違ったかもしれませんが。

去年キャプテンだったキヨさん(田中澄憲)を僕は尊敬しています。サントリーに誘ってもらったのもキヨさんからでした。7人制の日本代表合宿で、キヨさんが大学4年、僕が大学1年で、一緒の部屋だったんです。そこで就職の決まっていたキヨさんから「クリ、サントリーに来いよ」と言われました。それから学生時代はずっとその言葉を心に秘めて持っていました。大学を卒業してもラグビーをやりたいなぁって思って、じゃあサントリーだって、とても自然にというか、サントリーしか考えていませんでした。

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—— サンゴリアスとは最初からプロ契約ですか?

いや、最初の2年10か月は会社に勤め、経理部にいました。その頃のことは、いまためになっています。借方、貸方とか、損益分岐点とか、いま語れっていわれても語れないけれど(笑)、会社ってこういうことにお金を使っているんだな、とか、こういうところへ飯を食べに行くんだな、とか。CMにこんなお金をかけているんだとか。

—— お話を聞いていると、イチローとの共通点があるような気がしますが

イチロー?好きです、というか、嫌いじゃない。とくに誰が好きというのはないんですが、いろいろな人がかっこいいことを言っているなぁと思います。人だと見た目になっちゃって、デルピエロとかになります。がんばってる奴が好きなんです。

野球だと、城島(健司/シアトルマリナーズ)が、ナンバー(スポーツ専門誌)かなんかで言っていた言葉が印象的です。「勝負は時の運、誰でもがんばろうががんばるまいが、勝つ時も負ける時もある、でも何が大切かというと、そこまでの準備が大切なんだ」というようなことです。

試合数が違うので、ラグビーは野球ほど負けませんけれども、この3年間、気がおかしくなるくらい悔しかったですよ。こんなに負けることが受け入れられない。でも負けに慣れてはいけないけれど、負けを受け入れないとよくない、次へ進めないと思うんです。これは逃げではなくて、負けから逃げないで、負けてもいいじゃないと思えるくらい努力するという考え方です。

◆自分を再発見

—— プロになったきっかけは?

プロ制度ができて、大久保さん、小野澤さん、そして吉田(尚史)さんの次になったと思います。ワールドカップ(2003年)へ行って、結果はともかくとても楽しかった。例えば日本がフランスとやってかなわないんですが、フランスと仲が悪いオーストラリアの観客は日本を応援してくれました。日本人の応援もいっぱいいましたが、オーストラリア人たちがフランスに対してはブーイング、日本への応援は、秩父宮の日本代表戦が比にならないぐらいの大声援で、ホームみたいな感じでした。

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サッカーじゃないですけれど、レフリーの吹く笛が聴こえないくらい。ボールがいいところへ行けばワァーッ!簡単なキックが入っても、ワァーッ!って叫ぶんです。僕は冷静な方だと思いますが、自分でも気がつかないうちに、声を出してました。自分で蹴ったあと、イケーッ、イケーッって叫んでいるんです。自分を再発見しました。

その時、ラグビーって、すげぇ楽しいな、と思いました。日本でもそんなになったら嬉しい、例えブーイングされてもいいから、そうなってほしいと思いました。

僕は外国人と話をするのが好きで、大会期間中にたくさんの選手たちと、片言の英語でコミュニケーションを取りました。ミラー、アダム・パーカー、ルーベン・パーキンソンとかです。コニアはしゃべらないでニコニコするだけだったけれど。それでみんなから「クリは何を勉強しているの?何か将来やりたいことはないの?」って訊かれました。

「サントリーで働いていて安定してますよ」って答えたんですが、果たしてそれがやりたいこと?と自分で考えるきっかけになって、いま自分は何をやりたいかと考えたら、ラグビーだと思ったんです。家族には迷惑をかけるかもしれないけれど、こっちだと思ったらポンって行っちゃう方なんで、それでプロになりました。

◆10倍のポテンシャル

—— ご家族は?

嫁と娘1人です。娘は2歳で、7月に3歳になります。大悟(山下)の子供の一吹(いぶき)君と仲が良くて、「パパのこと好き?」って聞くと、「一吹パパが好き、パパより好き」って言うんです(笑)。

大悟とは家が近かったので、彼がプロ選手として入社後すぐ家に呼んだんですが、僕の家にはその頃ソファーもなくて、どこに座ったらいいかわからなかったみたいでした。気がついたら大悟は床に正座してるんですよ(笑)。コーヒーを出したら、正座したまま一気に飲んで、「ありがとうございました!」って言って帰っていきました(笑)。家にいたのは5分ぐらい。いまでも2人でその時の話をして笑います。

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—— 将来展望は?

2月の終りから3月の終りまで、鹿島アントラーズへインターンシップに行ってたんです。いま慶應大学の大学院に通っていて、スポーツマネジメントを勉強しているんですが、将来スポーツで飯が食えればとも思っているんです。

英語も英会話教室のジオスに通ってたんですが、ぜんぜん身になりませんでした。個人レッスンの方がいいということでやっていましたが、結局いま3センテンスぐらいしかしゃべれませんから(笑)。How do you say in English ? ぐらいですよ。

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アントラーズへのインターンシップでは、アントラーズがプロになるまでの話を聞いたりしました。それはサンゴリアスがどうこうという訳ではなかったんですが、住友金属時代のアントラーズといまのサンゴリアスとが、いいところも悪いところも似ているかもしれない、という話になりました。

プロもいて、社員もいて、外国人もいる、という状況が似ているし、試合があっても鹿島の人は来ないし、住金の会社からも興味がある人だけが来るという状況。でも住金は当時の観客300人という話で、少なくともいまのサンゴリアスには10倍のポテンシャルがあるな、と思いました。

サンゴリアスのチーム内を考えてみると、もっとみんなが親睦を深めるようなことを、これから何かしていけたらいいなと思っています。いろいろトライしてみます。

(インタビュー&構成 針谷和昌)

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