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2026年8月

黄金の曲線に、醸造家の想いと職人の魂を込めて

黄金の曲線に、醸造家の想いと職人の魂を込めて黄金の曲線に、醸造家の想いと職人の魂を込めて

SPECIALIST

黄金の曲線に、
醸造家の想いと
職人の魂を込めて

対談
漆器 山田平安堂
代表取締役 山田健太(写真左)
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サントリーホールディングス
株式会社
デザインセンター
デザインディレクター
太田裕司(写真右)

2026年3月、マスターズドリームの缶デザインがリニューアルされた。
とくとくとグラスに注いだビールの輝きを思わせる、まばゆいばかりの黄金の曲線は、
老舗漆器店、山田平安堂の蒔絵師がマスターズドリームのために描いたものだ。
その曲線にはどのような想いが託されているのだろう。
ザ・プレミアム・モルツブランドの商品デザインを担当する太田裕司が、
漆器産業の継承、発展に向けて挑戦を続ける山田平安堂の山田健太社長を訪ねた。

現代のライフスタイルの中で活きる漆器を提案

太田山田平安堂さんの成り立ちを教えてください。

山田1919年、東京日本橋の創業です。当時は京漆器の専門店でしたが、40~50年前からオリジナルの漆器を提案するようになりました。今は商品の99%が自社デザインで、自社工場もしくは委託工場で製造しています。漆器店の多くは、輪島や越前など産地で作られたものを仕入れて販売していますから、うちはかなり珍しい存在ですね。

太田僕は今まで、漆器は伝統的な食器というイメージを持っていたのですが、現代的なデザインの商品や、国内外のブランドや人気キャラクターとのコラボ商品などがたくさんあることに驚きました。伝統を守りながら、変化を恐れず革新的に動き続け、しかも会社として増収増益を続けておられるのは本当にすごいな、という思いです。

山田大変なことはたくさんありますが、おもしろくもあります。漆器の市場は、この100年で少なくとも300分の1くらいに縮小したと思います。でも、漆器の魅力が300分の1になったわけではありません。今のライフスタイルの中で活きる漆器を提案すれば、お客様は必ず手に取ってくださいます。それと同時に、自社の職人には複数のスキルを身に付けることを徹底して、職人の雇用を守ろうとしています。職人のために仕事を作っていくことが、私のミッションですね。

太田漆器の魅力はどんなところでしょうか。

山田日本の文化、価値観に近い器だと思いますね。実は、食事のときに器を手に取る習慣があるのは、日本だけなんですよ。漆器は木がベースですから軽いし、断熱性が高いので手に取っても熱くない。手の当たり、口当たりもいいから所作も美しくなるんです。

「漆器屋に生まれたので、家の食器はすべて漆器でした。漆器は音を吸収するので、金属や陶磁器のように触れ合ってもカチャカチャ音がしないのも優れた点です」と山田社長

じっくり向き合いたくなる「多重奏で、濃密。」なビール

太田今回、マスターズドリームの缶をリニューアルするにあたり、山田平安堂さんのお力添えをいただきました。マスターズドリームは、既存のビールの枠を超えていくことを目指しながら、ヨーロッパの伝統的なビール文化、日本のものづくり精神、職人のこだわりなどを宿すビールです。ザ・プレミアム・モルツブランドのフラッグシップでもあります。

山田僕は缶のデザインを見て、苦くて重めのビールを想像していたんです。でも飲んでみたら、最初に心地よい香りがパッと広がって、ああ綺麗な味だな、と感じました。想像と違ったから、より強く印象に残ったのかもしれませんが、最後まで飲んでも、やはり濃密さと心地よい香りがバランスよく愉しめるビールでしたね。

太田ありがとうございます。マスターズドリームを開発する際、醸造家たちが目指したのは、ドイツやチェコで愛されている、何杯でも飲みたくなるビールでした。濃密さと心地よい香りは、フロアモルティングによるダイヤモンド麦芽、トリプルデコクション製法、銅炊き仕込によるものです。これらの製法により、心地よく飲み続けられる濃密な味わい、芳しさが引き出されます。10年かけて開発し、苦味、コク、甘味、心地よい香りなど、もう一杯飲みたくなるビールを丁寧に作りこんでいます。

山田ああ、それはとてもよくわかります。ひと口目は旨いけれど、全部飲むのが辛くなるというビールとは全く違っていて、最後まで愉しめるビールでした。

太田僕は仕事を終えて家に帰ってから、マスターズドリームをゆっくり味わうのが好きなんです。例えが変かもしれませんが、ラーメンの有名店で、味に集中してもらうために、カウンター1席ずつに仕切りを設けているところがありますよね。それくらいの向き合い方ができるビールじゃないかな、と(笑)。醸造家たちのこだわりを知っているからこそ、1杯のビールとじっくり向き合いたくなります。

山田太田さんがおっしゃるシーンは、僕も想像できますね。完成した味なので、食事を引き立てながら美味しさを愉しむこともできますし、食前にビールだけいただくとか、寝る前の1時間はこのビールと向き合うとか、そういう愉しみ方もしたいです。

蒔絵師の一筆に託す、醸造家の魂

2026年3月より新しくなったマスターズドリーム
黒を基調としたデザインを継承しつつ、今回から力強い黄金の曲線が描かれた

山田缶をリニューアルされるにあたって、なぜ蒔絵に注目して下さったのですか。

太田以前の缶は、風格やプレミアム感のあるデザインとして高評価をいただいていましたが、その半面「ちょっと近寄りがたい」「手に取りにくい」という声もありました。チームで改善策を話し合うなかで、この商品の人となりがわからないから、近寄りがたいのでは?と気づいたんです。マスターズドリームの人となりと言えば、やはり醸造家たちのこのビールにかけるこだわりの強さ、想いです。そこを缶にインストールするためのデザインを検討するなかで、職人の魂の一筆というものがアイデアとして浮かび、蒔絵の部門で挑戦的な取り組みを続けておられる山田平安堂さんにお願いさせていただきました。

山田実はサントリーさんからお話が来た時、僕は「CGで作ればいいじゃん」と言ったんです(笑)。今の時代、CGでいくらでもそれらしい線は作れますから。そうしたら「職人の手書き感が大事なんです」とおっしゃっていると。それは光栄なことだとお受けしました。

太田ありがとうございます。あの一筆は刷毛目(はけめ)という技法だそうですね。シンプルなのに斬新なデザインです。

刷毛目の黒い器
40年前に誕生し、現在も人気を誇る「龍」シリーズ。従来の絢爛豪華な蒔絵を施した商品は、日常で使いにくく売り上げが落ちていたため、刷毛目を活かしたシンプルなデザインが考案された

山田あの躍動感は熟練した職人しか出せません。一定の勇気がないと、線にリズムや強弱が出ないんです。その躍動感を出しながら、何十、何百も同じものを描く。2つの相反するものを表現できるのが優れた職人と言えます。

太田納得です。山田平安堂さんに書いていただいた線が本当に素敵だったので、デザインに落とし込むにあたって、この線のディティールを缶の上で表現しようと限界まで挑戦を続けました。缶の印刷にはいろいろな制約がありますが、躍動感や金色の輝きを表現するため、色を多層に入れ込み、版を何度も調整していきました。当然、現物の素敵さにはかないませんが、職人さん、醸造家の魂に近づけたいという想いでした。

山田太田さんは職人のオーラを出しておられますね。

太田嬉しいです。僕は天才肌のデザイナーではないので、どんな仕事もしこりが残らないようチームでとことん話し合い、やりきることを自分に課しています。そうすることで自分の一線を越えられると思っているので。

山田完成した缶を見て、お!と思わず声が出ました(笑)。蒔絵師の技術を取り上げていただいて、私も嬉しいし、何より職人が喜んでいます。日々黙々とものづくりに徹する職人たちにとっては、自分たちの作品が、ビール缶として全国のお店に並び、日の目を浴びたわけですから。

太田8月4日からは、缶と同じ刷毛目をデザインした角皿も景品として登場します。漆器ではなく陶器ですが、曲面に金色の一筆を出来る限り再現するために、こちらも金の版を3回に分けて印刷しました。

山田金色の部分は手触りもざらっとしていて、缶とはまた違う雰囲気ですね。こういうごくわずかな立体感に、人間の目はちゃんと反応できるんですよ。大きさもいい感じです。

マスターズドリーム×山田平安堂 オリジナル角皿

太田マスターズドリームのお供に、この角皿にナッツなどをのせていただくと、より贅沢な時間を愉しんでいただけると思います。

ニッポンのものづくり、職人の技とこだわりを世界へ

山田昔からサントリーさんは、ウイスキーのラベルに手漉き和紙を使うなど、日本の文化を大事にされていますよね。日本のトップ企業のひとつであるサントリーさんが、日本の職人技を織り込みながら世界に発信してくださっていることは、伝統産業に携わる者にはとてもありがたいし、大きな励みにもなります。立場は違いますが、今後もともに歩んでいけたら、と思います。

太田おっしゃる通り、サントリ―には、日本の伝統産業を継承し、広めていくことが自分たちの責務であるという企業風土があります。私たちデザインセンターもその意識を強く持っていますし、マスターズドリーム自体もJAPAN MONOZUKURI BEERを謳っていますから、山田平安堂さんとのコラボは私たちにとっても大変ありがたいことでした。最後に山田平安堂さんの今後のビジョンについて、お聞かせください。

山田会社のポリシーとして掲げているのは、常に100年後の漆器業界に責任を持てるように努力し続ける、ということです。方向性としては、漆や蒔絵を定義し直し、今のライフスタイルの中でどう活かすかを考えて、新たなマーケットを創ろうとしています。うちの漆、蒔絵は長年、ハイブランドの時計の文字盤にも採用されています。既に海外ブランドとも様々なコラボをしていますが、食器に捉われず、アクセサリーや装身具、雑貨などに新しいデザインを吹き込み、マーケットを作っていけば、それがグローバルな商材になっていくと思っています。

太田山田社長は伝統を守りながら、常に革新、挑戦も大事にされていて、それが厳しい環境のなかでも発展し続ける要因なのかなと感じました。私たちもマスターズドリームのフィールドを日本から世界に広げ、より輝けるビールにするという野望を持って頑張っていきます。本日はありがとうございました。

漆器 山田平安堂 代表取締役 山田健太 Kenta Yamada

1972年東京生まれ。1919年創業、宮内庁御用達でもある漆器店、山田平安堂の4代目。1995年慶応義塾大学法学部を卒業後、三井住友銀行へ入行。1997年に退行し山田平安堂の代表取締役に。職人の育成も行う製造子会社「続々庵」を設立し、生産から販売までの一貫体制を構築。代官山本店、GINZA SIX店、オンラインショップの直営店のほか、2005年には成田空港に和工芸品のセレクトショップ「天正堂」、2014年には六本木に、漆のある空間と愉しむバー「Heiando Bar」を展開している。

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