ウーロン茶ができるまで

ウーロン茶をつくるためには、たいへん手間のかかる6つの工程が必要です。それは、よりよい香りを、より奥深い味を茶葉から引き出すために、長い年月をかけて進化したお茶づくりなのです。
摘んだ生葉を日光に晒す
01 サイチン

ウーロン茶の茶摘みは、必ずよく晴れた日の朝行ないます。摘んだ茶葉をその日のうちに天日に干す必要があるからです。たいていの茶農家では、丸い大きな竹籠にいれた茶葉を庭に広げて干します。日に干すと茶葉は少ししおれてやわらかくなります。人々は茶葉を時々かきまぜ、匂いを嗅ぎ、しおれ具合を確かめます。このとき茶葉の内部では、発酵の主役である酵素の働きが徐々に活発になっています。発酵酵素を目覚めさせる、という目的のためにどうしても晴れた日の力強い陽の光が必要なのですね。中国語で<サイチン>と呼ぶ、ウーロン茶づくりの最初の工程です。

葉を揺すって発酵をうながす
02 ヤオチン

日光の下でしおれさせた茶葉を、つぎに室内で陰干しして元気を取り戻させます。それから茶葉を竹の籠にうつして、少しずつ揺すります。籠の竹材との摩擦により、葉の縁の細胞が傷ついて発酵がうながされます。茶葉は縁のほうから赤く発酵し、まだ発酵していない縁の部分と混在するようになります。これがウーロン茶の有名な「半発酵」です。茶葉を並べた棚からは、えもいわれぬ、花のような香りが漂います。もしも茶葉のウーロン茶を買ったなら、飲み終わったあと急須に残った茶葉をつまみ出し、ひろげて観察してみてください。葉の縁に、たしかに赤い斑ができているのが確認できるから・・・。

加熱して発酵をほぼとめる
03 チャオチン

ウーロン茶は、お茶の分類でいえば半発酵茶に属します。ちなみに緑茶は不発酵茶、紅茶は100%発酵させる完全発酵茶です。発酵は放っておくとすすむので、半発酵茶をつくるには、途中で発酵をおさえなければなりません。それがこの<チャオチン>という工程。発酵中の茶葉を釜で炒って、発酵をほぼとめてしまうというやり方をします。半発酵といっても正確に50%発酵させるわけではなく、何%程度の発酵にするかは茶樹の種類によっても変わってきます。たとえば有名な鉄観音品種ならば発酵は20%〜40%のものがおいしい、とか。「半」という言葉にそもそも含まれる曖昧さが、人の技やカンを生かすウーロン茶の最大の魅力を生みました。

葉を揉み捻る
04 ローニェン

揉は「もむ」、捻は「ねじる」という意味です。日常生活の中で揉む、捻るといった場面をさがすとしたら料理のときぐらいでしょうか。粉と水を混ぜたり、具と具をよくこなれさせ新しい味を引き出すために揉む、それこそ捻る、千切る。さて<ローニェン>という作業は、ウーロン茶だけの大きな特質としてあります。<チャオチン>を終えたばかりのまだ熱い茶葉を素朴なる揉捻機にかけて、揉む。葉がよじれるまで揉む。料理の揉みと同じで、よく揉んで茶葉が持っている力を生かし、味をつくり出す。発酵をほぼとめてもまだ生きている細胞の成分が、揉みあげることで変化を起こし、ウーロン茶特有の味と香りをつくり出す。<ローニェン>という作業の、これが目的です。

布に包んでさらに揉む
05 ヤオチン

発酵をほぼとめてもまだ生きている細胞の成分が、揉みあげることで変化を起こし、ウーロン茶特有の味と香りをつくり出すのが<ローニェン>。<パオロー>の目的もこれとまったく同じです。いわばさらなる<ローニェン>、2回目の<ローニェン>です。これは<ローニェン>を終えた茶葉を白い布で丸く包み、細長い腰掛けを揉み台にして手でしごき、ぐいぐい揉みあげるというものです。味わいのコクとまろやかさをさらにさらに引き出す。ウーロン茶がいかに「揉むこと」を大切にしているかをあらわす工程です。実際は包揉とつぎの工程の<ホンペイ>によって、細胞が生きている最後の最後まで茶葉の成分を余さずウーロン茶のおいしさへと転化させるように努めます。

熱を加えて最終的に乾燥させる
06 チャオチン

<ホンペイ>は土を固めた竃で行ないます。凸型の鉄蓋で竃に蓋をしてあり、下の焚き口で起こした火は鉄蓋を介することで直火にならず、温気(うんき)となってじわり乾燥させる。そこに茶葉の入った<ホンペイ>用の竹籠を帽子のようにかぶせる。籠には中仕切りがあって、茶葉は中仕切りの上に置くので、焚き口の熱源からさらに遠ざかることになります。ほんわかと気の長い乾燥です。<ホンペイ>を終えると、烏(からす)の色をし、念入りな<ローニェン>によって龍のように曲がりくねったお馴染みのウーロン茶葉が完成します。日に干す、発酵させる、発酵をとめる、揉む、もっと揉む、焙じる、と手間をかけてきただけのことはある、濃厚で清涼な、ウーロン茶特有のおいしさの誕生です。